緋弾のアリア 狂牙の武偵   作:セージ

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最近仕事のシフト関係で夜型になって来てます・・・常に深夜のノリで書いてますがご了承下さい


101話<化かし合い>

昼下がり、校舎屋上にてあかりはかなめに追い詰められていた

 

「遠山かなめ・・・あなたは一体・・・」

「間宮あかり、あたしの計画じゃ一人ぼっちになったお前は今日ここで飛び降り自殺するんだ。ナイフは残してやったから手首切ってから行けよ?」

 

どうすれば・・・私一人じゃとても勝ち目はない・・・

逃げようにも銃も奪われフェンスにまで追い詰められた・・・もう逃げられない・・・

 

「安心しろ。来月までにはお前のお友達、佐々木志乃も乾桜も火野ライカも島麒麟も全員仲良く送ってやるから」

 

どうすれば・・・どうすれば・・・

絶体絶命の状況で打開策を必死に探していると

 

「うるせえな・・・誰だ?人が気持ちよく寝てる横で物騒な話してるのは?」

 

「「――ッ!?」」

 

上から声が聞こえ、声がする方を見れば・・・いつの間にか給水タンクの上に寝そべっている人がいた

「九狂先輩!?」

「またお前か・・・何の用?」

「別に用なんかねえよ。ここは俺の昼寝場所なんだよ」

「そんなところで一人さみしくか?恋人二人もいるんだからそっちに行けば?」

「恋人じゃねえ嫁だ。そこは間違えんな」

「あっそ、じゃあ用はないならそのまま寝ててくれない?もしくはどっかに消えて」

「そうしたいところなんだがな・・・」

氷牙はめんどくさそうに起き上がると給水タンクから飛び降りた

 

「生憎とここは俺にとって思い出深い場所でな?俺の目が届く限りはこの場所をそんな血生臭い理由で汚されるわけにはいかないんだよ」

「なら・・・戦るつもり?」

「めんどくせえけど引く気が無いなら相手になるぜ?お前にはレッドクイーンと俺の右腕に傷つけられた借りもあるからな。ぶっ飛ばす理由がある」

めんどくせえと言っておきながらその目はやる気に満ちていた。何せ借りがあるのは本当に事実だ。

「じゃあさっさとやれ――ボゴォォォン――‼‼‼‼――ッ!!??」

言い切る前に氷牙はかなめのボディーに電撃を纏った右掌底を入れて吹っ飛ばした

「じゃあお言葉に甘えて遠慮なく本気でやったよ」

 

(くそっ!!本当に本気でやりやがって!!あらかじめボディーに磁気推進繊盾巻いてなかったら肋骨や内臓どころか背骨まで砕けてたぞ!!!)

かなめは吹っ飛ばされながら心では文句を言うがそれでも計画通りと口を吊り上げた

 

屋上の出入り口へと飛んで行き

 

――バァンッ――!!

 

そのままドアに叩きつけられ、そのドアの向こうには・・・

 

「か、かなめちゃん!?」

「ど、どうして吹っ飛んできたの!?」

「どうしたの!?何があったの!?」

予め呼んでおいた兵隊たちがいた。本当は間宮あかりの自殺現場の発見者として呼んでおいたが計画を変更して九狂氷牙の暴行現場の目撃者に仕立てさせてもらおう

 

「く・・・九狂先輩が・・・」

弱々しくドアの向こうにいる九狂氷牙を指そうとしたら

 

――ドドドドドォォォォォォンッッ――!!!!

 

屋上で何かが崩れるような音がした

「え!?な、何この音!?」

「九狂先輩ってもしかして2年の九狂氷牙?」

「もしかして九狂先輩に何かされたの!?」

「と、とにかく行ってみよう!!」

女子二人でかなめを抱きかかえると全員で屋上に出て

 

直後、言葉を失った

 

「え!?な、なに・・・これ・・・」

屋上には・・・床に教室一つ分の大穴が開いていた・・・

「く、九狂先輩!!生きてますか!?死んでてもいいですから返事してください!!」

そしてその穴の淵ではあかりが下を見渡しながら氷牙の事を呼びかけ続け

「勝手に殺すな」

傷だらけになった氷牙が穴から飛び出してきた

「く、九狂先輩!!大丈夫ですか!?幽霊じゃないですよね!?」

「これくらいで死ぬかよ。地獄ですら門前払いにあってるんだ。今さらあの世に行っても即座に追い返されるだけだよ」

と言って肩についてる瓦礫を払った

「ったくこの制服新調したばっかりなんだぞ・・・埃まみれになっちまったよ・・・」

「いえいえ!!むしろ頭から流血して血塗れになってますよ!!」

あかりが突っ込んでいるとそれに乗じて女生徒の一人も問い詰めてきた

 

「お、おい!?この穴なんだよ!?いったい何があったんだよ!?それに九狂先輩・・・あんたかなめちゃんに何したんだよ!?」

 

女生徒の一人が問いかけて来ると氷牙は

「ああ、突然床に亀裂が入ってな。ヤバいと思ってかなめを突飛ばしたらその直後に床が抜けてな・・・かなめは落ちずに済んだけど代わりに逃げ遅れっちまったよ・・・」

と白々しく話をでっち上げた

「え!?床が!?何で床がいきなり抜けるんだよ!?」

「そうよいきなり床が抜けるなんていくらなんでもおかし――」

「んなもん俺が知るか、老朽化でもして傷んでたんじゃねえのか?そもそもドンパチ騒ぎや爆発騒ぎやボヤ騒ぎが日常茶飯事なこの学園に傷みの無い壁や床や天井なんてあったか?何ならその辺のポスター剥がしてみろ。大体弾痕か風穴隠すために貼ってあるぞ?」

 

「いきなり床が抜けても・・・おかしくないね・・・」

「それに九狂先輩って・・・確か神には死神にも嫌われてるくらい運が無いって言うし・・・」

「この人の周りには常に厄介事や面倒事が付いて回るって噂もあるよね・・・」

「そんな人なら床崩れに巻き込まれても・・・」

「むしろ巻き込まれない方がおかしいかな・・・」

 

散々な言われようだが今はありがたい援護射撃だ・・・もう一押しか・・・

「まさか床崩れに巻き込まれるなんて・・・ホント俺不幸だわ。まあ、後輩つーか親友の妹助けられただけでも良しとするか・・・」

そう白々しく話すがその目はかなめにこう語っていた。

 

「演技ってのはこうやるんだよダイコン」と

 

「九狂先輩・・・かなめちゃんを庇って・・・」

「やっぱりやるときはやるって噂本当だったんだ・・・」

「あのっ、かなめちゃんを助けてくれて本当にありがとうございます」

女生徒たちは氷牙に感謝するがかなめはそれを聞いて内心で歯噛みをした。

床が抜けた!?バカ言え!!お前が抜いたんだろ!!ヒルダの真似をして・・・床を素粒子分解して脆くしてわざと崩れさせたんだ!!

だがそれを今から言っても到底こいつらには理解なんて出来ないだろう。たとえ嘘泣きして「わざと吹っ飛ばしたんだ!」と訴えても「違うよ、九狂先輩はかなめちゃんを助けようとして突き飛ばしたんだよ」と擁護するだろうし。一から説明しても「床を電気で素粒子分解してわざと崩した?かなめちゃん何言ってるの?ショックで夢と現実が混ざっちゃった?」と同情を込めた目で見られるのがオチだ。そんなこと言うくらいなら確かに「老朽化した床が突然崩れた」と言った方が信じられるし・・・あたしを吹っ飛ばした大義名分も立つ。

そしてもう女子たちの間ではそれが事実として固まってしまった。一度事実として固まってしまったものを覆すのは至難の業だ・・・完全にやられた・・・

 

 

「あー、いいよ。それよりもさ。咄嗟とはいえ思い切り突き飛ばしちまったから念のためかなめを救護科連れて行ってやってくれないか?俺はここの後始末しておくから」

「え?は、はい!わかりました!!」

「大丈夫かなめちゃん?立てる?」

「すぐ救護科連れて行ってあげるからね 」

そう言って女子たちは有無を言わさずかなめを抱え

かなめも抵抗しても意味が無いとわかっているのか俺とあかりを睨むとそのまま連れていかれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてかなめたちが見えなくなると

「どんな事にも抜け道はあるもんだ。俺に小細工が通用すると思うな」

と吐き捨てた。

「あの・・・九狂先輩?どうしてドアの向こうに人が来てるって分かったんですか?」

「は?何言ってんだよ?あんな人数で気配も消さずに固まって来ればドア越しでも一発で分かるじゃねえか」

「そうですか・・・」

 

あかりはもう突っ込まない事にした・・・

『こいつに常識を求めるのはやめなさい。疲れるだけよ・・・』

アリア先輩に九狂先輩について聞くと必ず言っていた言葉・・・実際に関わってみると本当によくわかる・・・

いつか教えてもらったようにあるがままを受け入れよう・・・本当にこの人に常識を求めると疲れるだけだ・・・

 

「さて、じゃあ俺達もさっさとここから逃げるぞ」

「え?」

「当たり前だろ。こんなところにいつまでもいたら面倒事にしかならん。逃げるが勝ちだ」

氷牙はあかりを肩に担ぐと

「え?え?」

「黙ってろ。舌噛むぞ」

そう言ってフェンスを軽く飛び越えると屋上から飛び降りた

 

「え!?えええええええええええええええ!!!???」

「黙れっつってんだろ!耳元で叫ぶな!!」

「だ、だって屋上から飛び降りてああああああああああ!!!地面がすぐそこまでええええええええ!!!!!」

あかりは悲鳴を上げ続ける。意外と声量あるようでうるさい・・・

「だから黙れ!!舌噛むぞ!!てかうるせえんだよ!!!!」

「む、無理ですぅぅぅ!!!これは受け入れられませぎゅっ!!?」

そして地面に着地と同時にあかりは思いっきり舌をかんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あかり?大丈夫か?」

「ふ、ふぁらいふぁいれふ・・・(ま、まだ痛いです・・・)」

涙目で途中コンビニで買ってきたアイスキャンデーで舌を冷やしながらそう舌足らずな声で返事をした。

何せ屋根から屋根に飛び移ったり飛び降りたりする度に叫び声を上げるのだから当然着地するたびに舌を噛む。途中からうっとおしかったのでネクタイを口に突っ込んで黙らせたがそれでも何度も噛んで舌は傷だらけだろうな・・・

 

「だから黙ってろって言っただろ・・・あんな叫び声上げてりゃ着地のショックで舌噛むなんて考えりゃわかるだろ・・・」

「ふ、ふふぁいわはいれふらはい!!はんはひょうひょうへふぁふぇうふぁっへひふほうはふひゃふぇふほ!!(む、無茶言わないでください!!あんな状況で叫ぶなって言う方が無茶ですよ!!)」

「そうか?凜香はしがみついてくるけど静かにしてるし、レキなんてそこから悪戯で俺の首甘噛みしてくるぞ?着地寸前でもお構いなしだからあの余裕っぷりにはほんと恐れ入るよ」

「・・・ふぉんふぉふぁひふぁへんふぁひほひっへはほほはほふははっへひはふ・・・(・・・ほんとアリア先輩の言ってたことがよくわかってきます・・・)」

 

そう呆れながらもやがて痛みが引いてきたと同時にあかりはハッとしてアイスキャンデーを吐き出して立ち上がると

「そうだ!!志乃ちゃんやライカが危ない!!早く助けないと!!」

と銃を取ろうとするも・・・無い

 

「あ、あれ?」

「落ち着けよ。てか銃ならさっきかなめに取られただろ?アホかお前は」

「ど、どうしよ・・・あ!!九狂先輩!!お願いです!!力を・・・いえ!!銃だけもでいいです!!貸してください!!」

「だから落ち着けよ。それにお前の友達なら大丈夫だ」

「え?」

氷牙は立ちあがると

「ほら行くぞ」

「行く?どこにですか?」

「秋葉原だ。今頃友達の一人が拗ねて秋葉原のゲーセン徘徊してる頃だろ?」

「え?あの・・・もしかしてライカの事ですか?ひょっとして力を貸してくれるんですか!?」

「ま、そうなるのかな?あんなうだうだ悩んでる輩を見てるともどかしいから今からちょっと焚き付けてやる」

そう言うとあかりは神妙な顔で俺を見てやがて問いかけてきた

「あの・・・一つ質問してもいいですか?」

「何だ?」

「九狂先輩・・・どうしてあたし達の為にそこまでしてくれるんですか?」

「・・・そうだな・・・それには理由はいくつかあるな。二割、三割、五割どれから聞きたい?」

「じゃあ・・・二割から」

「二割は、借りがあるから。過程はどうあれあかりにはあの時、俺の失くし物を見つけてくれた借りがある。俺にとってあの借りはいくら返しても返し足りないほどの借りだ」

「三割は?」

「三割は、面白くないから。あかりがこの先その力をどうやって武偵として振るっていくのか見てみたいんだ。だからこんな中途半端で潰れてもらっちゃ面白くない」

「それじゃあ最後・・・半分、五割を占める理由はなんですか?」

「五割は・・・困るからだよ」

「困る?」

「ああ困る。このまま放っておいたらやがては2派に分かれて武力抗争になる。そうなったら・・・」

「・・・そうなったら?」

「間違いなくこっちにまで飛び火が来る。そうしたら俺も参戦して三つ巴戦の大戦争だ。そこからは手加減も降伏も和平も無い!!二度と戦う気が無くなるまで全部徹底的に潰してやるまで止まらなくなっちまうからな!!!!」

 

「―――ッ!!!」

それを聞いて本能が告げている・・・この男は本気だ!!こいつとは戦うな!!こいつを怒らせるな!!こいつに関わるな!!と・・・

味方の内は頼もしいことこの上ないが・・・もし対立すれば・・・考えただけでも恐ろしい・・・だがそれ以上に・・・羨ましい・・・

「九狂先輩が羨ましいです・・・私にも先輩みたいにもっと力があれば・・・」

全てを覆すほどの圧倒的な力、それが自分にもあればどんなによかったか・・・

 

「そうか?俺から言わせれば俺はあかりが羨ましいよ。それこそ・・・嫉妬するほどにな・・・」

「え?私が?でも私にそんな羨ましがる力なんて・・・」

「力じゃねえよ。力とはまた別の・・・俺には無い何かだよ」

「何か?何ですか?」

「それは・・・教えてやらん。ほら行くぞ」

そう言うと氷牙は秋葉原へ向けて歩き出して行き

「え?ええー!?気になりますよー!!なんなんですかー!?」

あかりもその後を追った。

 

 

 

 

 

因みにあかりが吐き出して捨てていった食いかけのアイスキャンディーはその後黒装束を着た二人組が回収していったそうだが・・・まあ関係のない話だろう・・・

 

 

 


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