三日月は流離う   作:がんめんきょうき

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今更ですが、皆様明けましておめでとう御座います。
今年も宜しく御願い致します。



そして今回は少々詰め込み過ぎた感が否めない出来となってます。
更新の遅れを取り戻そうと少し気張ったらこんな結果に…。
どうか御了承下さい(汗


第四十六話 強欲と白雪と主人公と髭と三日月と…その他諸々

 蛸型の巨体が液状へと変化し、やがて霊子となって大気へ溶け込んで行く。

 そして残ったのは解放前の人型。だが其処にカプセル状の頭部は無く、その破片と中身である紅色の液体は宙に広く飛散していた。

 

 司令塔を失った身体は無抵抗のまま、重力に従い落下。

 外へと放り出された本体である二つの頭部だが、その軽量さ故か、遅れてその後を追う。

 

 帰刃形態が解けるという事は、即ちその破面がその状態を維持出来ぬ程に消耗したか、瀕死までに陥った状態を意味する。

 先程の状況を思い返せば、つまり今のアーロニーロは後者であると判断出来た。

 

 

「ォギャアアァアアアァァァ!!!」

 

 

 内一つである、両頬から上の顔半部を仮面の名残で覆った頭部が、耳を劈く様な悲鳴を上げる。

 やはり紅色の液体は生命維持に必要不可欠なものだったらしい。その声からは尋常ならざる苦しみが感じ取れた。

 

 

「嘘ダ!! コンナ事有リ得ナイ!! 何デ…何デェェェ!!」

 

 

 自身が敗北した事が信じられない、または死への恐怖故に錯乱しているのか。

 どちらにせよ、幾ら悲鳴を上げ様が現実は変わらない。

 だがその頭部は平常心を完全に失っており、壊れた玩具の如く只々叫び続けていた。

 

 

「苦シイ!! 苦シイヨ!! 助ケテ藍染様!! タスケ―――ッ!!!」

 

 

 外気に晒されるだけで生命が危ぶまれるのであれば、この落下し続けている現状は余計にそれを悪化させるという事。

 案の定、その頭部は最後までその言葉を言い切らぬ内に―――血と肉片を撒き散らしながら破裂、絶命した。

 

 残されたもう一つの頭部。右目以外を仮面の名残で覆ったそれは、横目でその末路を見遣ると、静かに呟いた。

 

 

「…無様だな」

 

 

 はっ、と最後に鼻で笑う。

 勝てた戦いだった。単純な戦闘能力を見ても、此方が全てを上回っていた。

 それでも自分は敗北を喫した。何故だ。

 ―――全ては油断と慢心。それ以外に無い。

 如何あっても自身の勝利は揺るがないとタカを括り、無駄に時間を掛けてルキアの処刑せんとしたその愚行。

 願わくば、あの時ニタニタと余裕綽々な表情を浮かべていたであろう、自身の顔を殴り飛ばしたい。今更ながらに、アーロニーロは思った。

 

 

「ウ…ギ…!!」

 

 

 後悔先に立たず。もはや己に待っているのは滅びの運命のみ。

 頭部の所々が膨れ出し、中身を圧迫して行く。

 如何やらもう一つの頭部と同様、風船の様に破裂しようとしているのだろう。

 その口から苦痛の声が漏れ出す。

 

 せめてもの悪足掻きとして、アーロニーロは第9十刃の役目として与えられた能力―――“認識同期(にんしきどうき)”を発動。自身の戦った敵の情報と映像を、瞬時に全ての同胞へと報せる。

 ―――今の内に喜べるだけ喜んでいろ。

 華々しい勝利を飾れて嬉しいだろう。だが快進撃は其処まで。続きはしないし、絶対にさせないと。

 この先に待つ十刃達は、皆自身を遥かに上回る実力者達。情報も流した事だし、もはや欠片の光明が差す事すら無い。

 

 薄れ行く意識の中、アーロニーロはほくそ笑んだ。

 そして十刃の中でいの一番に退場する羽目となった自分に対し、ある意味納得する。

 ―――全十刃中最弱としては相応しい終わりなのかもしれない。

 あのヤミーも、表向きには第10十刃だが、帰刃後はあのザエルアポロの後を継いた第0十刃となる。

 ならば必然的に十刃の中で最弱に位置するのはアーロニーロとなる。それは本人も自覚していた。

 喰虚の特性上、進化の可能性は誰よりも持ち合わせていたが。

 

 

「…精々足掻け。無駄に終わるだろうが…な…ッ!!!」

 

 

 吐き捨てると、遂にその頭部は弾け飛ぶ。

 この瞬間、アーロニーロ・アルルエリの死は確定した。

 

 頭部の無いアーロニーロの身体が地面へと落下する。

 それから一息遅れで、ルキアも着地した。

 少し離れへ突き刺さっていた捩花まで近寄り、その柄を握るや否や―――膝を折った。

 

 

「うっ…く…」

 

 

 流石に限界が来たのだ。

 元からボロボロの身体である。幾ら捩花の協力があったとは言え、これ程までに動けたのは奇跡に等しい。

 解放直後の霊力の上昇も、理屈は全く以て不明だ。

 だがルキアは前向きに捉える事にした。きっと自身に宿る海燕の心が力を貸してくれたのだろうと。

 

 

「…はははっ、安心しろ」

 

 

 その心の内を読んだのか、捩花から抗議の声が上がる。

 自分の事を忘れてもらっては困るぞと。

 ルキアは苦笑しながら、それを宥めた。

 

 

「鞘が…必要だな」

 

 

 鞘というものは本来、その刀に合わせて拵える為、他の刀を納めても合う事はほぼ無い。例え偶然刀身の長さ等が一致したとしても、上手く抜刀出来無かったりと、不具合が必ず起こる。

 今左腰に差しているのは袖白雪のもの。となればこの戦いの後、かの零番隊に所属している斬魄刀の創造主に、新たに捩花専用の鞘の製作を依頼せねばならない。

 

 厳密に言うと、鞘は残っている。だがそれのある場所は、志波家の屋敷の敷地内にある海燕の墓の中。

 ならば取りに行けば良いと思うだろうが、そうは問屋が卸さない。

 海燕の死後、消え掛けの状態である彼の遺体を直接其処まで届けたのはルキア本人。御蔭で彼女は海燕の家族に仇として認識されていた。

 だが今となってはその蟠りも解け、直接赦しの言葉も送られている。

 

 とは言え、唯一残った形見でもある鞘を譲って貰う様に頼むのは、余り気が進まない。

 捩花には申し訳無いが、暫くは抜き身のまま持ち歩く事になるだろう。

 内心で謝罪しつつ、ルキアは一旦捩花を始解状態から戻す。

 瀞霊廷を出発する前に用意していた道具の中から懐紙を取り出し、その刀身を軽く拭った。

 何時もならその後に丁字油を塗るのだが、残念ながら今は持ち合わせていない上、場所が場所だ。そんな悠長な真似は出来無い。

 これも我慢してもらう他無いだろう。

 

 

「む?」

 

 

 そう考えた時、徐にルキアは首を傾げた。

 己の内から聞こえた袖白雪の声に。

 

 ―――そんなに気を遣わなくて良いのに。

 些か拗ねた様にして呟かれたそれ。

 ルキアは袖白雪の性格を思い返すと、その態度に得心が行った。

 

 

「どうした、嫉妬しているのか?」

 

 

 基本的に優しく、心配性故に世話焼き。だが寂しがり屋な部分もある。

 そんな袖白雪が―――あの結果だ。

 アーロニーロの手で呆気無く消滅。それどころか突如として現れた別の斬魄刀に自身の立場を完全に奪われたかと思いきや、即興ながらもルキアとの絶妙なコンビネーションで見事勝利を捥ぎ取った。

 その光景を只々眺めて居た彼女の心中は如何程か。

 

 否、別に袖白雪もそれが悪い事だと言っている訳では無い。寧ろあの時取れた選択肢はそれ一つであったし、結果的にルキアが無事だったのだ。

 正に理想的な終わり。ベターどころかベストである。

 なのだが―――そう簡単に折り合いを付けられるものでも無いのも事実。

 浅打ちの頃から名を持つまで、それこそ長い年月を共に過ごして来たのだ。

 言うなれば今の袖白雪は、横から部外者に大事な者を掠め取られた様な、それに似た気分であった。

 

 

「そう膨れてくれるな。お前の斬魄刀(からだ)もその内戻るだろう。暫しの辛抱だ」

 

 

 メタスタシアは斬魄刀を消滅させると言っていたが、厳密に言うと違う。

 最終手段の“霊体融合”という技から連想出来るとは思うが、斬魄刀自体を霊子状に分解し、持ち主の魂魄に溶け込ませるのだ。

 でなければ、アーロニーロが捩花を使えた理由が説明出来無い。

 海燕の肉体を持つメタスタシアの魂魄自体に捩花の力が含まれており、それを喰らうと共に取り込んだと見るべきだろう。

 

 そして一度魂魄に溶け込んだ捩花を取り出せたという事は、消滅させるのは一時的なもの。

 時間が経てば再び斬魄刀は元通りになると考えられる。

 

 

「さて…早く井上の所まで向かわねば」

 

 

 何時までもモタモタしている訳にはいかない。

 依然として消耗は激しいままだが、最低限動けるまでには回復した。

 今頃皆も、其々に強敵を相手に奮闘しているのだろう。先程から激しく変動する複数の霊圧が、遠く離れた位置から感じ取れる。

 

 ルキアは最後にアーロニーロの遺体を一瞥すると、別方向へ駆け始めた。

 織姫の霊圧は、虚夜宮の中心部。

 回道で自身の怪我を治療しつつ、其処を目指す。

 

 

「―――まさかアーロニーロが敗れるとは…これが番狂わせというものですか」

 

「ッ!?」

 

 

 突如として背後から聞こえて来た声と、大きな霊圧に、ルキアはその足を止めた。

 咄嗟に振り返る。其処には後ろに腕を組みながらアーロニーロの遺体を見下ろす―――額から後頭部に掛けて棘の様なものが縦方向に並んで付いている、坊主頭の黒人風の男が居た。

 

 ―――こう間を置かずして、新手が来るとは。

 ルキアは歯噛みした。

 その全身から溢れ出している霊圧の量から、男が只の破面では無い事は明白。

 

 瀞霊廷に帰還する前、喜助から提供された情報を思い返す。

 もしこの男が十刃だとすれば、確実にアーロニーロよりも上の階級だろう。

 十番と六番、そして五番までの数字を持つ者は判明している。

 ならば可能性として濃厚なのは、この男の階級は八番か七番。

 五番があれ程の実力なのだ。この男からはそれ程圧倒的な力は感じられない。

 

 

「くっ!!」

 

 

 もはや形振り構ってはいられない。

 互いに刃を合わせながら、相手の性格や戦闘能力等を分析し、攻略法を見出すといった余裕は、今のルキアには無い。

 この男が構えを取る前に、不意討ちでも何でも良いから仕留めるべきだろう。

 

 動きを悟られぬ様に意識しながら、ルキアは捩花を後方へ引き絞り、投擲の構えを取った。

 霊圧の放出も極力抑えつつ、穂先へ水を集束させる。やがてそれは円錐状へと姿を変え、ルキアの周囲の大気を巻き込みながら高速回転を始めた。

 例えるのであれば、それはドリル。只管に敵を貫く事に特化したそれの殺傷能力は極めて高い。直撃せずとも、掠めただけでも相当なダメージを与えるだろう。

 

 無論、この技は咄嗟の思い付きであり、名は無い。

 先程アーロニーロを仕留めた投擲技の上位版と考えれば良い。

 仮定ではあるが、この男は彼より階級が上なのだ。流石にルキアも同じ技で仕留め切れるとは思えなかった為、少々工夫を凝らしたのだ。

 

 ―――頼む、決まってくれ。

 そう祈りながら、ルキアは男の頭部目掛け、渾身の力で捩花を投擲した。

 正真正銘、現状で持てる全ての余力を注ぎ込んだ一撃だ。これで決まらなければ敗北は必至であった。

 

 

「な…!?」

 

 

 その必死の思いが通じたのか。捩花の穂先は吸い込まれる様にして、男の頭蓋へと向って行く。

 直前に気付いたらしい。振り返ると同時に、その男の口から驚愕の声が漏れていた。

 

 実に呆気無く、穂先は男の頭部を貫き、水のドリルによって完全に粉砕される。

 血と肉片を撒き散らしながら弾け飛ぶ様は、まるで先程のアーロニーロの最期の焼き増しだった。

 

 

「やった…か…!!」

 

 

 全身をふら付かせながらも、ルキアは安堵する。

 そして同時に謝罪する。名も語らせぬ内に仕留める形となった、この男に対し。

 ―――それが不要であるとは思いもせずに。

 

 

「…え?」

 

 

 ふと、ルキアは違和感を感じた。自身の胸の中心部に。

 本来であれば無い筈の、冷たく硬質な異物が入り込んでいる様な。

 

 視線を下に移し―――絶句する。

 其処にあったのは、鮮血で紅く染まった刀身。

 

 

「―――その咄嗟の判断と実行力…確かにアーロニーロを斃しただけはある、と言うべきでしょうか」

 

 

 背後から発せられた、つい先程聞いたばかりの声。

 振り向いて確認したい所だったが、もはやルキアにはその力すら残っていなかった。

 

 

「ゴ…フ…」

 

「ですが残念。あの程度では、私に通用しません」

 

 

 揺れ始めるルキアの視界。その中には、アーロニーロの傍に立ち、頭部を弾けさせて絶命した筈の男の遺体は存在していなかった。

 

 やがてルキアの胸部より、その刀身が引き抜かれる。

 傷口からは鮮血が溢れ、口からも血を吐き出しながら、全身から崩れ落ちた。

 袖白雪と捩花、二人からの必死の呼び掛けが、そんなルキアの内で響き続けていた。

 

 

「…どうやら名乗る必要は無さそうですね」

 

 

 力無く倒れ伏すルキア。彼女を中心に、地面の砂には血の染みが広がって行く。

 それを見下ろしながら、男―――第7十刃、ゾマリ・ルルーは冷淡に言い放った。

 

 

「……ヒュー……ヒュー…」

 

「誇りなさい。下位とは言え、十刃の一人に勝利出来た事を」

 

 

 ゾマリは斬魄刀の血を払い、諭す様にして言う。

 そして虫の息であるルキア目掛け、更に構えを取った。

 狙うは首。何故なら敵の死を確定させるには、首を落とす以外に無いのだから。

 

 

「そしてさようなら…か弱き死神の娘よ」

 

 

 ―――藍染に歯向かう者は、誰一人として容赦しない。

 その理念を絶対とするゾマリの目に、迷いは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紆余曲折あったが、何とか戦いに勝利した一護。

 卍解する前に負った怪我もそれ程大事無く、このまま先に進んでも問題は無いと思われた。

 

 だが其処で一護は悪い癖である、甘さとも取れる優しさを発揮した。眼前で仰向けに倒れているドルドーニに対して。

 敵であるにも拘らず、此方に的確な忠告を与え、行動を窘めただけでなく、正々堂々とした勝負を仕掛けて来た生粋の武人。

 御蔭で自分が不要な意地を張っていた事を自覚出来たし、緩んでいた精神も引き締まった。更に自身の力に対する扱い方も再認識し、この先の戦いに活かせる様になった。

 

 この借りは返しても返し切れない。

 だからこそ、一護はこのままドルドーニを放置して先に進むのは憚られた。

 最後に与えた一撃も、致命傷までは至っていない筈である。

 だが重傷な事に変わりは無い。

 

 如何したものかと、一護は悩んだ。自身に回道は使えないし、怪我に使う薬といった物も何も持ち合わせていない。

 ―――この場にあいつが居てくれれば。

 思い浮かべたのは、冷静沈着に用意周到という言葉が最も似合うであろう男―――雨竜だ。

 戦闘時に用いる小道具から始まり、治療用具も一通り常備しているらしく、彼ならば応急処置程度は軽く熟せる筈だ。

 だがその性格上、一護の行動にまず反発するだろう。しかしドルドーニの善性を知れば、渋々ながら首を縦に振る可能性が高い。判り辛いが、雨竜も大概御人好しなのである。

 

 だがそんな悩みを解決したのは意外な人物。勝負が付いた瞬間、またしても一護の腹部に突進をかましたネルだった。

 話によると、彼女の唾液には微弱ながら治癒効果があるらしい。

 一護は少々迷ったが、結局ネルに治療を頼む事にした。

 その結果が―――今の状況だった。

 

 

「ええい! 止せと言っているだろうにお嬢ちゃん(べべ)!!」

 

「ふぁ? まだ治療は終わってないっスよ?」

 

 

 仰向けの体勢だった筈のドルドーニだが、現在は上体を起こし、右手を伸ばしてネルの頭を必死に押し返している。

 その様子からして、意外に元気そうだ。良く見ればその腹部の傷は出血が止まっており、それどころか塞がり掛けている。肩の傷も同様だ。

 

 経緯を最初から説明すると、まずネルは意識の無いドルドーニの全身に大量の唾液を吐き掛けた。

 極めて緩やかな速度ではあるが、徐々に傷が治って行く。

 一護は顔を引き攣らせ、内心ではやや感心しながらそれを眺める。自分に受けろと言われれば断固として拒否するであろう、その光景を。

 そしてある一定まで回復した途端、遂にドルドーニが意識を取り戻し―――幼女に唾液を掛けられているという、自身の置かれた異常な状況に気付いた。

 

 

「ただのヨダレであれば百歩譲って良しとしよう!! だが今お嬢ちゃんの出しているそれはヨダレでは無い!! ゲロだ!!」

 

 

 ドルドーニが先程からネルの治療を拒否しているのは言葉通りだった。

 通常、唾液の分泌速度と量には限度があり、重傷者を治療するには圧倒的に足りない。

 ネルの場合、通常では有り得ない量の唾液を現在進行形で出し続けている。だがドルドーニ程の怪我を治すにはそれでも不十分だった。

 

 其処でネルは切り札を切る。それは嘗て自身が独自に編み出した“唾液を効率的に出す方法”である。

 口の中に手を突っ込み、奥の口蓋垂(こうがいすい)を指でこねる事で、大量の唾液を吐き出すという、根本的に間違っている方法。

 一般常識で考えても即座に判るだろうが、まずそれで出るものは唾液では無く嘔吐物。液体だけで見ると胃液である。

 如何考えても治癒効果は無いだろう。逆に悪化しそうだ。

 実際、先程から酸味のある香りがドルドーニの周囲に漂っている事から、別な被害も発生していた。

 

 

「いいじゃねえか、実際には治ってんだしよ。ワガママ言うなってドン・カポーテ」

 

「ドルドーニだと言っているだろうに!! 何だその雄牛(トロ)と戦っていそうな名前は!?」

 

 

 一護は呆れ顔で言う。またしてもその名前を間違えながら。

 ドルドーニは残り少ない体力をネルを押し返す事に注ぎ込んでいる為、余裕は殆ど無い。にも拘わらず、根っからの芸人体質故か、一度も噛まずに見事なツッコみを返して見せた。

 

 

「…まあ大人しく治療されとけよ、ドン・ルーニ」

 

「掠ってる…様なそうで無い様な…ッ!!」

 

 

 実を言うとこの一護、多少長かったり言い難そうな名前は覚えられないという、面倒な病に罹っていたりする。

 現に此処に来るまでの道中、ドンドチャッカの名前を思い出せなかった場面もあった。

 それに加え、稀に知らない人物の名前を勝手に想像して呼ぶという、当人にとっては傍迷惑な癖まで持ち合わせている。

 この場合、後から正式に名乗り出ても手遅れ。被害者は一護と対面する度、毎度の様にツッコみを入れる羽目になる。

 

 現状に於いては、先にドルドーニが名乗ったにも拘らず、それを完全に覚え切れず―――その穴を勝手な想像で補完して出来上がったのが、ドン・パニーニという名前だった。

 一度強く根付いてしまえば、修正するのは難しい。つまりはそういう事である。

 

 

「とりあえず“ドン・”の部分から離れ―――いや待てお嬢ちゃんそれは拙いやめ…やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「オロロロロロロォォォ」

 

 

 一向に名前を間違い続ける一護に対し、何とか修正を試みるドルドーニ。たがそれは途中で止めざるを得ない状況へと陥った。

 何時の間にやらネルが再び自身の口の中に手を突っ込んでいたのだ。

 しかも様子がおかしい。その喉は異様なまでに膨張し、コポコポと得体の知れない音を発している。

 だが気付いた時には全ては遅く、無情にもその手が抜かれ―――遊撃の間全体にドルドーニの悲鳴が木霊した。

 

 場が静まったのはそれから数分後。

 完全ではないが、ドルドーニの腹部の傷は殆ど塞がっていた。

 その事から、如何やら唾液以外でも治癒効果はあったらしい。

 ―――相変わらず酸味のある香りが周囲を漂っているが、それについては触れないで置こう。

 

 

「…敵である吾輩を治療するとはな。紛れも無くこれは愚行だぞ坊や」

 

 

 再び仰向けとなった体勢で、ドルドーニは静かに一護を窘めた。

 一護はそれに対し、不貞腐れた様な表情を浮かべながら返す。

 

 

「…例え敵でも、俺は絶対に殺さねえ」

 

「不殺とは…何たる不相応な信念か。そういうものは吾輩を圧倒出来る様になってから語りたまえ」

 

「余計なお世話だ。負けた奴が今更ゴチャゴチャ言ってんじゃねえよ」

 

 

 そう言うと、一護は顔を逸らした。

 言われなくても解っていると言わんばかりの、実に若者らしい反応に、ドルドーニは苦笑した。

 

 殺し殺されが基本の戦場に於いて、不殺を貫くというのがどれ程困難な事か。

 敵を殺すのと、致命傷を避けた上で無力化する。其々に求められる実力は全く異なる。

 前者に必要な力が十とすれば、後者には二十から三十。つまり二倍から三倍は求められるのだ。

 

 普通なら窘めるべきなのだろうが、ドルドーニは不思議とその意欲が湧かなかった。

 代わりにその行く末を見てみたくなった。

 常に逆境に囚われながらも、決して折れる事無く乗り越えてきた一護。

 情報だけとは言え、そんな彼の強さを知るドルドーニは思った。

 

 

「甘いな、まるでチョコラテだ」

 

「………」

 

「その甘さが何処まで通用するか実に見ものよ」

 

 

 ―――ぬかしてろ。

 一護からの反応は無し。だがその態度には出ていた。

 

 皮肉を口にするまでに回復したドルドーニに、もはや用は済んだと判断したのだろう。

 一護は立ち上がり、近くのネルを呼ぶと、即座に踵を返す。

 その先は出口。虚夜宮内部の中心へと向かう道へと。

 

 

「おっと、一つ聞かせてくれ坊や」

 

「…んだよ」

 

 

 直後、ドルドーニは上体だけを起こすと、その背中を呼び止めた。

 至極面倒臭そうに、一護は振り向く。

 下らない内容なら無視するぞと、その表情で語りながら。

 

 

「十人居る十刃の内、最も強い者は誰だと考えている?」

 

「…は? そりゃ一番目に決まってんだろ」

 

 

 ―――何を馬鹿な事を聞いているのか。

 一護は困惑した。

 そんな彼を尻目に、ドルドーニは笑みを浮かべながら言葉を繋ぐ。

 

 

「残念だが…それはハズレだよ」

 

「なっ!? そいつはどういう意味だよ!!」

 

 

 一護は問い返した。

 その顔には明らかに動揺と焦燥が浮かんでいる。

 

 

「吾輩からしてみれば…十刃最強を名乗るに相応しい者は一番でも、ましてや二番でもない」

 

 

 ドルドーニは感慨深く語る。そして思い出す。あの夜に直接対面して感じた、夢や希望なぞ欠片も存在しない、圧倒的な力に押し潰される絶望感を。

 無論、藍染程かと問われれば返答に困る。確かにカリスマ性は劣っているのは事実。だが少なくともその実力については、彼の足元にも及ばないという事は無さそうに思えた。

 だがあくまでこれは直感。だがドルドーニにとっての十刃最強は、只一人だけだった

 

 

「…一体誰なんだ、それは?」

 

「坊やも知って居る筈だ。巨大な得物を携え、眼帯を付けた長身の破面の事を」

 

「―――ッ!!」

 

 

 その者の特徴を聞いた一護は、それに心当りしかなかった。

 正にその者こそ、虚圏侵入前に喜助から念入りに説明を受けた、最も注意すべき破面の内の一人だったのだから。

 

 

「階級は第5十刃、名はノイトラ・ジルガ。吾輩の知る限り、最も十刃最強に相応しい男だ」

 

 

 そう語るドルドーニの表情は、何処か誇らしげに見えた。

 

 直後、一護の傍に居たネルが唸り始めた。

 見れば両手で少し頭を抱えている。

 

 

「ど、どうしたネル?」

 

「う~…なんか少し頭が痛いっス」

 

 

 一護が心配そうに声を掛ける。

 だがそれ程酷くは無かったらしい。

 数秒後、ネルは何でも無いと言って笑みを浮かべると、一護の頭部に飛び付いた。

 

 

「…そろそろ行きたまえ。追手が掛からん内にな」

 

「…わかってるよ。じゃあな」

 

 

 ネルを安定した体勢で頭に乗せると、一護は駆け出した。

 その顔はまだ何かを言いたげだったが、如何やら吞み込んだらしい。

 

 二人の後ろ姿が、出口の奥へと消える。

 それを見送ったドルドーニは一旦目を閉じると、深い溜息を吐いた。

 

 

「…何とも、先が思い遣られる坊やだ」

 

 

 最後に急かす様な事を言ったのには理由がある。

 一護を死なせたくは無かったからだ。

 全力を出した自分を打ち破り、それで且つ無限の可能性を持つあの英雄の卵が、簡単に潰れる様を見たくは無いと。

 

 

「―――随分とボロボロじゃねぇか、ドルドーニ」

 

 

 そしてそれを齎すであろう存在が、間も無く此処に現れるであろう事も、ドルドーニは察していた。

 

 

「…面目無い」

 

 

 音も無く自身の近くに降り立ったノイトラの第一声に、ドルドーニは苦笑を浮かべながら答えた。

 ―――此処まで近付かれて初めて察せる程とは。

 正直、今の今までノイトラの接近に気付いていなかった。

 移動中は霊圧を極限まで抑えていたのだろうと推測出来るが、明らかに以前よりもその隠密性が上がっている。

 進化が止まらないノイトラに、ドルドーニは恐怖を通り越して呆れしか感じなかった。

 

 

「謝罪させてくれ。少し口を滑らせてしまった」

 

「…黒崎一護にか」

 

「これでも口は堅い方だと思っていたのだが、な…」

 

 

 懺悔する様にしてそう零すドルドーニの姿に、ノイトラは暫しの間考える素振りを見せる。

 もしや自分の情報を暴露したりしていないだろうか―――等といった動揺は一切無い。

 寧ろ純粋に何を話したのか、その内容が気になっていた。

 

 虚夜宮内の情報か。破面達の互いの関係か。それとも織姫の居場所か。

 考えれば幾らでも候補は浮上する。

 それに付き合いが長い分、ドルドーニはノイトラにとっては余り広められたくない情報も持って居る。

 

 

「別に構いやしねぇよ」

 

 

 だがノイトラは気にしない事にした。

 ドルドーニへの信頼故に。

 流石に彼とて、仲間を不利に持ち込む様な真似はしないだろうと。

 例え情報を漏らされていたとしても、一護ならば問題は無い。これが喜助であれば何かしら対策を取ったりするとは思うが。

 

 少し前までのノイトラは、これ程までに他者を信用する事は無かった。

 味方は己自身のみだと勝手に自己完結し、常に周囲を疑って掛かる。そんな愚かしい生き方を本気でしていた。

 己の身に降り掛かった、憑依という通常では有り得ない事象。そしてその結果で置かれた環境が、ノイトラをそうさせたのかもしれない。ある意味致し方無いだろう。

 

 だがそれはもう止めにした。

 自身がこの世界に於ける未来を知っている事を遠回しの形で告白し、それを全面的に信じてもらえたその瞬間から。

 それはつい最近の出来事だ。そしてその相手は二人。

 以前より生き残る為の計画立てをしていたセフィーロと、何故か後で加わったロカである。

 

 チルッチは別だ。一応計画には巻き込んではいるが、詳細までは話していない。

 身近に存在していながら、肝心な部分で仲間外れにする。中々に酷い気もするが、勿論理由はある。

 それはチルッチ以外にも言える事だが―――この世界の住人は皆、結構なレベルで口が軽いからだ。敵に対しては更に顕著となる。

 セフィーロとロカに話したのは、彼女達がそれに当て嵌まらなかったからに過ぎない。前者はノイトラと似通った感性を持っており、後者は極めて寡黙且つややコミュ障故に心配無いと。

 

 

「…そうか。して、敗者たる吾輩を如何する。始末するかね?」

 

 

 淡泊な反応に拍子抜けしつつ、ドルドーニは更に問い掛けた。

 その顔には挑発的な笑みが浮かんでいる。

 態度は勿論だが、内容からして、明らかに心にも無い事を言っているのが丸判りである。

 

 

「ンな事するか。オラ、馬鹿言ってないで立てよ」

 

 

 ノイトラはそれを軽く流すと、右腕を下に伸ばした。

 その予想通りな反応に苦笑しつつ、ドルドーニはそれを掴み取ると、支えにして一気に立ち上がる。

 流石に帰刃までとはいかないが、普通に戦闘自体は出来そうな回復振りだ。

 史実の様に此処で葬討部隊と対峙したとしても、一進一退の激闘を繰り広げそうな程に。

 

 

「ガンテンバインも負けたみてぇだし、途中で拾ってく」

 

 

 そんなドルドーニの状態を確認した後、ノイトラはそれ以上の手を貸す事無く、そそくさと移動し始める。

 怪我人に対して実に冷たい態度である。

 だが現状に於いては正解だった。

 元よりドルドーニは自分自身が弱っている時、余り他者の手を借りる事を良しとしない。あくまで自力で立ち上がらんと奮起し、その上で不可能だった場合、初めて助力を乞う。

 そしてノイトラは既にドルドーニの状態を確認済みである。

 なので余り気を遣う必要は無いと判断したのだ。

 

 以前から考えている事だが、十刃としての立場もある。

 格下に対し、余り下に出る様な事をしている姿を外部に晒すのは宜しく無い。

 他の破面にこれを見られれば、確実に舐められるし、最悪は利用される。

 

 

「そしたら纏めて治療室で―――ッ!!?」

 

 

 次の瞬間、ノイトラは言葉を途中で切る。

 その顔は驚愕の色に染まっていた。

 

 次々と脳内に浮かび上がって来る映像。

 それは誰かの視点だった。

 対峙するのは、三又の槍を構えるルキア。

 この時点で既に、ノイトラは凄まじく混乱していた。

 

 ―――何故に捩花。袖白雪何処行った。

 同時に気付く。これはアーロニーロの“認識同期”だと。

 焦っていたのか、それとも余裕が無かったのか。それ等の映像は断片的で、しかも内容は後半戦。それに至った肝心な経緯である序盤がすっかり欠けている。

 

 取り敢えず現時点で判断出来るのは、如何いった訳かルキアは袖白雪が使えなくなり、代わりにアーロニーロの持つ捩花を奪って使用したという事。

 必死に情報を整理して行くノイトラへ、不足していた情報と共に、決着の場面の映像が届いた。

 

 

「…勝ったのかよ、オイ」

 

 

 まさかまさかの、ルキア快勝である。ノイトラは唖然とした。

 史実では相討ちに終わった筈である。なのにこれは如何いった訳なのか。

 序盤までは通常通りの劣勢なのだが、その後の展開が正に劇的の一言。

 絶体絶命の窮地から、予想の斜め上を行く形で新たな力を得て、逆に敵を圧倒する。

 

 ―――これではまるで主人公の様ではないか。

 だが其処でノイトラは思い出す。

 確かルキアは一護に次ぐもう一人の主人公であり、場合によっては補正が働いても何らおかしく無いではないかと。

 

 

「これは…何とも予想外な…!!」

 

 

 同じく情報を受け取ったのだろう、ドルドーニの驚愕する声で正気に戻ったノイトラは、探査神経を発動する。

 集中させるのは、勿論第9十刃の拠点周辺。

 すると如何だ。華々しい逆転勝利を飾った筈のルキアの霊圧は、この戦いで消耗したのか、一気に下降していた。

 そんな彼女に高速で接近する―――ゾマリの霊圧が感じ取れる。

 

 ノイトラは状況を理解すると同時に焦り始めた。

 このままでは確実にルキアが殺されてしまうと。

 

 ゾマリは戦いに対し、極めて厳しい考えを持っている。

 敵が如何に瀕死状態であろうと、止めを刺す事に躊躇いは無い。これが信仰して已まない藍染に歯向かう者であれば尚の事。

 

 だが今のノイトラには何も手出しは出来無い。

 出来るのは、只ルキアの無事を祈るだけ。

 

 

「ぬ、大丈夫かね?」

 

「…ああ」

 

 

 仲間を失った事で動揺したとでも思われたのか。立ち止まったノイトラへ、ドルドーニが気遣う様にして声を掛ける。

 無表情を保ちながら、ノイトラは冷静に返す。

 

 ―――早く来いお義兄ちゃん。最愛の義妹の窮地だぞ。

 内心でそう祈りながら、ノイトラはドルドーニを引き連れ、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 織姫は自身に宛がわれた宮にて、部屋の中心に敷かれたカーペットの上に座り込み、窓の外を眺め続けていた。

 だが彼女は何処と無く居心地が悪そうな表情を浮かべており、しかもその身体は先程から頻りに身動ぎしている。

 そして時折視線がある一定の方向をチラチラと覗き見ている。

 

 それを辿ってみると、壁に背中を預けた体勢で静かに佇むウルキオラの姿があった。

 相変わらず両手を袴の側面へと突っ込み、その無機質な表情からは何を考えているのか全く読み取れない。

 

 

「…何だ」

 

「な、なんでも無いです…」

 

 

 視線が煩わしかったのか、ウルキオラが問い掛ける。

 まさか気付かれているとは思いもしていなかった織姫は、咄嗟に誤魔化した。

 そしてウルキオラに聞こえない様、小声で呟いた。

 

 

「た、助けてノイトラく~ん…」

 

 

 織姫が真っ先に思い浮かべたのは、ウルキオラと同様に自身の世話役を任されているもう一人の人物。

 見た目とは裏腹に、此方を見下す事無く普通に接し、さり気無く親切を働いてくれる不良系男子。

 正確に言うとノイトラは圧倒的に年上の為、男子という認識は間違いである。

 だが其処は流石の織姫。彼女は何の躊躇いも無く、自身より二つ三つ上の者に対する接し方をしていた。

 妙に畏まられるよりは楽だとして、当人が特に何も言わなかったのもそれを定着させる要因となっていたのだが。

 

 

「うう~…」

 

「…何を唸っている」

 

 

 実はウルキオラが此処に居る理由。それは織姫の護衛の為だ。

 最たるものは、今彼女に最も敵意を抱いているであろう―――ロリ・アイヴァーンか。

 一応ノイトラが直接注意したという事は聞いていた。だが本当にそれが効くか如何かは定かでは無いとも、最後に付け加えられている。

 

 勿論、ウルキオラは藍染にその事を進言した。場合によっては葬討部隊に粛清してもらわねばならないのでは、と。

 だがそれに対する返答は予想に反したもの。

 ロリ本人には特に何もせず、暫くは織姫の周囲を警戒する程度に留めてほしいと、そう指示が出されたのだ。

 

 今に始まった事では無いが、理解が及ばなかった。

 織姫の能力は、藍染の目的を達成させる為には必要不可欠な要素の筈。なのに何故その様な淡泊な対応を取るのかと。

 

 ―――何を馬鹿な事を。

 だがウルキオラはそんな自身を叱責した。

 藍染に対し、その様な考えを抱く事自体が烏滸がましい。己は只、彼の命令を忠実に熟せば良いと。

 

 

「何も無いなら黙れ鬱陶しい」

 

「ご、ゴメンなさい」

 

 

 原因は貴方なんですが―――等と抗議出来る筈も無く、織姫は再び沈黙の支配する息の詰まる様な空間へとその身を置く事となった。

 

 ―――何でも良いから、如何かこの状況を打破出来るものを。

 織姫がそう願った時だった。

 

 

「え…これって…!?」

 

「何…!?」

 

 

 二人は全くの同時に声を上げた。

 言わずもがな、理由はアーロニーロの“認識同期”である。

 

 直後、織姫は喜色満面の笑みを浮かべた。

 脳内に映像が浮かんだのかは不明だが、そんな事など気にならなかった。

 大切な仲間の一人が、強大な敵を見事打ち破ったのだ。喜ばない筈が無い。

 

 

「朽木さん…良かったぁ…!!」

 

 

 今にも飛び跳ねそうな雰囲気を見せる織姫を余所に、ウルキオラは未だに驚愕していた。

 情報では、朽木ルキアの実力は上位席官クラス。大目に見積もっても副隊長に匹敵するか否かといった感じだ。

 間違ってもアーロニーロに勝利出来るとは思えない。

 

 ふと、再び視線を織姫へ戻す。

 彼女は何か祈るようにして、両手を胸の中心部に置いていた。

 

 その様子を見ながら、ウルキオラは考える。

 ―――これも全て、この女の仲間を信じる心が齎した奇跡だとでも言うのか。

 以前であれば馬鹿馬鹿しいと切り捨てていただろうが、今のウルキオラはそれが出来なかった。

 

 ルキア以外に意識を向けてみると、一護を含めた二名は其々十刃落ちに勝利しており、それは妥当な結果でもある。

 戦闘続行しているのは残り二名。部外者も何名が混ざっている様だが、それは余り気にしなくとも良いだろう。

 

 

「だが…奴等の快進撃も其処までだろう」

 

「え…?」

 

 

 ウルキオラの呟きに、織姫は振り返った。

 

 

「ノイトラが動いている。この時点で既に結果は見えた」

 

「…ノイトラ君が?」

 

 

 織姫はイマイチ理解が及ばなかった。だから如何したというのかと。

 この時、彼女は失念していた。

 温厚な振る舞いをするノイトラと接し過ぎた余り、彼本来の立場とその実力の高さを。

 

 

「…まだ解らんか。奴等如きではノイトラの相手にならんと言っている」

 

「っ…!」

 

「無論、あの黒崎一護でさえもな…」

 

 

 呆れを含んだ様に、ウルキオラは補足する。

 織姫はやっと其処で思い出した。虚夜宮に連れて来られる前に幾らか知った、ノイトラの強さを。

 

 

「で…でも…」

 

 

 確かに彼が本気になれば、一護達の勝機は限り無く薄くなるだろう。

 だが織姫は密かに期待を抱いていた。

 あれ程優しい人なら、もしかすれば一護達を蹴散らした後でも、殺さずに見逃してくれるのではと。

 ―――だがその甘い考えは直後に吹き飛ばされる。

 

 

「温情を期待している様なら止めて置け」

 

「…え?」

 

 

 自身の考えを読まれた事に、織姫は動揺する。

 その反応から、ウルキオラは予想が当たっていた事を悟った。

 同時に納得する。確かに最近のノイトラの態度を見れば、そう期待してしまっても致し方無いだろうと。

 だが所詮それは仲間内に限定しての話。織姫に親身に接しているのは、彼女が正式に虚夜宮の一員となったが故であり、当然一護達はその範囲に含まれる筈が無い。

 

 

「ノイトラが軟化した態度を見せているのは、貴様が同胞だからに過ぎん」

 

 

 一護達が虚夜宮に侵入した時点で、ノイトラが独自に動き始めたのは察知していた。

 だからこそ、態々自分が現場に赴く必要は無いと、ウルキオラは判断した。

 ―――正直言うと、一護については直接相手をしたいという思いもあったが。

 

 

「しかも奴は戦闘狂の気質もある。例え奴等が奮闘を見せても、逆効果にしかならんだろう」

 

 

 階級は中堅でありながら、未解放の時点で自身が危機感を抱く程の実力。もしノイトラが野心家であれば、数字一つ違いの自分は下剋上を警戒すべきなのかもしれない。

 だが彼の態度を見る限り、その心配は杞憂だと悟った。

 自らの責務を十二分に理解し、任務は忠実に熟し、例え相性が悪い仲間でも確り面倒を見る。

 味方として考えると、これ程頼りになる者は居ないだろう。

 

 肝心のNo.1であるスタークは、実力はある癖にやる気は皆無。

 バラガンは自らを王だと公言し、何かと皮肉る様な言動を取ったり等、咋に藍染への敵対心を隠していない。

 比較的忠誠心が高いハリベルについては余り問題無い。だがその反面、仲間や自らの従属官を捨て駒の様に扱われればどんな行動に出るか判らない危険性を孕んでいる。

 上位十刃勢がこれである。これでは余計にノイトラの真面目振りが貴重に思えるのも頷ける。

 ウルキオラは意外と不安定な十刃達の内情を再認識した。

 

 

「そんな…こと―――」

 

「無いとは言い切れまい。少なくとも、ノイトラとは俺の方が付き合いが長い。あいつの思考回路と行動理念は大凡把握している」

 

 

 ―――気丈なだけで無く、案外強情らしい。

 未だに反論の意志を見せる織姫に、ウルキオラは小さく溜息を吐いた。

 

 

「それとも仲間達がノイトラに勝利するなどという、ありもしない未来を信じていると? 貴様等御得意の…心の繋がりやら、絆の強さでか?」

 

「…ッ!!」

 

「随分と甘く見られたものだ。そんな不明瞭なもので戦いに勝てるのなら、今貴様が此処に居る事は無かっただろうに」

 

 

 ―――下らない。

 直接口には出していないが、織姫には口外にそう言っている様に感じた。

 

 自分達が何より大切に、そして信じているものを馬鹿にされれば如何なるか。取り敢えず想像に難くない。

 案の定、織姫の表情に怒気が浮かぶ。

 だが所詮はそれだけだ。力の無い者が感情的になったところで何も変わりはしない。

 

 

「…ほう?」

 

 

 それでも織姫は怯む事無く、発言者を睨み付けた。

 ウルキオラはその胆力にやや感心しつつ、更に言葉を繋がんと口を開き掛け―――突如響いた扉を数回叩く音によって止められた。

 

 

「失礼致します。ウルキオラ・シファー様は居られますでしょうか」

 

「…何用だ」

 

 

 扉越しに聞こえて来たのは、織姫の宮を担当している―――口元以外を全て仮面で覆い隠した雑務係の男の破面―――ファエナ・ボンドの声。

 御蔭ですっかり会話が途切れてしまったが、特に気にも留めた様子も無く、ウルキオラは返事を返す。

 

 

「藍染様が御呼びです。至急、自室まで来てもらいたいとの事」

 

「…直ぐに向かう」

 

 

 状況的に見て、今織姫の傍から離れるのは拙い。

 だが藍染からの召集である。如何にか極力短時間で済ませる様に尽力するしか無いだろう。

 

 ウルキオラは未だに鋭い視線を向けて来る織姫に背を向け、部屋を出る。

 そしてふと気になった事を、ファエナへと問い掛けた。

 

 

「俺以外に召集を受けた者は?」

 

「コヨーテ・スターク様です」

 

「…何だと?」

 

 

 特に緊迫しているとも言えないが、この現状で上位十刃の二名を―――しかも片方はNo.1を集める。

 ウルキオラは疑問を抱いた。

 藍染の真意が読めないのは今に始まった事では無いが、今回は行動が咋過ぎる。

 通常であれば、何人にも悟られぬ様に手回しを行い、気付くのは何時も全てが終わった後。

 

 

「…何か問題でも?」

 

「いや、気にするな。一先ず貴様は俺が戻るまで、この宮の周辺を警戒していろ」

 

「は、はぁ…承知致しました…」

 

 

 そう言い残し、ウルキオラは早足でその場を去る。

 残されたファエナは暫しの間首を傾げていたが、取り敢えず命令に従って周囲を巡回し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真面目に宮の周辺の通路を巡回し続けるファエナ。

 その手には緊急事態を知らせる為の携帯型スイッチが握られており、異常があれば直ぐに周囲へ知らせる事が出来る状態にある。

 それはそうだ。例え巡回中に敵と遭遇したとしても、戦闘力の無い雑務係の破面が如何こう出来る筈も無いのだから。

 

 そしてファエナの懐には、織姫の居る部屋の扉の鍵が仕舞われている。他に所持している者は世話役であるノイトラとウルキオラのみだ。

 ちなみにあの扉は外側のみからしか鍵を開けられず、破壊する以外に織姫の脱走は不可能な仕様となっている。

 

 

「…ウルキオラ様も、中々に困った御方だ」

 

 

 ―――こんな時、ノイトラが居てくれれば心強いのだが。

 ファエナは仮面の下で緊張した面持ちを浮かべる。

 彼もノイトラの変化を知る一人であり、織姫の宮の担当となってからは余計にその優しさに触れる機会が増えた。

 

 侵入者が居るこの状況を考慮すると、下手すればこの命令は無茶振りにも等しいものにも思える。

 正直、恐怖心を抱かずにはいられなかった。

 

 だが直後に考え直す。

 ノイトラは十刃の中でも多忙だ。只でさえ普段から御世話になっているのに、そんな人に一々頼ってばかりでは申し訳無いと。

 

 

「甘えてばかりはいられないな…よし!」

 

 

 ファエナは気合いを入れると、先程よりは軽い足取りで巡回を再開した。

 

 通路の曲がり角へ消えると、密かにそれを陰で覗いていた者がその姿を現した。

 

 

「…行ったみたいね」

 

「ちょっとロリ! だから止めようって!!」

 

 

 その正体はロリ。先程からずっと、ファエナが立ち去るのを今か今かと待ち構えていたのだ。

 次に戻って来るまでには未だ時間がある。そう判断した彼女は、通路の曲がり角から一歩踏み出す。

 

 後ろから慌てて声を掛けるのは、相棒のメノリ。

 彼女はロリの右腕を掴み、先に進むのを制止せんとしている。

 

 

「うるさいわねッ! バレるでしょうが!!」

 

「そう言うくらいなら初めからしなければ良いじゃん!! 何でそこまでするの!?」

 

 

 ロリの目的―――それは報復だ。

 あの愛しの藍染に気に掛けられているにも拘らず、それをさも当然と言わんばかりに、能天気に過ごしている織姫への。

 

 当然だが、所詮それは嫉妬から来る歪んだ視点からの印象であり、真実は大きく異なる。

 織姫自身は藍染に気に掛けられているという実感は無く、寧ろ対面するだけで恐怖しか覚えていない。普段の態度が能天気に見えるのも、第5十刃グループが気さくに接する事が出来る様に尽力した影響で、精神的に安定していた為だ。

 感情的になるが余り、視野が狭まっているロリにはそれが判らない。

 

 

「気に食わないのよ…あの女が! あんただってそうでしょメノリ!?」

 

「それは…」

 

「人間のクセに…なんなのよあの態度!! ムカつく!!」

 

 

 突如として問われたメノリは、思わず口籠った。

 彼女は確かにロリと同様、藍染へ思慕の念を抱いている。

 ならばほぼ間違い無く、ロリの考えに肯定を示すだろう。

 

 以前までは―――の話だが。

 実を言えば、その想いは今や殆ど薄れていた。口籠ったのはその為である。

 目が覚めたと言い換えても良い。

 噂や見た目とは裏腹に、本人は全くの人格者という、ノイトラの見せた衝撃的ギャップに見事その心を打ち抜かれて。

 どちらかと言えばそれによって生まれた感情は、異性に惚れた腫れたと言うより、家族に向ける親愛に近い。

 

 メノリにとって藍染は、所謂アイドルの様な存在だった。

 決して手の届かぬ場所に居ると理解していながら、なまじ直接会う機会がある故に―――つい欲が出た。

 只単にロリはそれを拗らせたに過ぎない。

 ノイトラの後を付いて回る様になり、ロリや藍染と少し距離を置いた結果、メノリはそれが理解出来た。

 

 

「まあ…噂だとあのグリムジョーの左腕を再生させたのはあの女らしいし、その能力は確かに本物なんでしょうね」

 

「…そうだね」

 

「きっと藍染様はその治癒能力を求めたのよ」

 

 

 いきなりトーンを下げて語り始めるロリ。

 メノリはそれに相槌を打ちながら、その態度に妙な寒気を感じていた。

 

 

「…でもそんなにスゴい能力だったら―――流石に自分自身の傷も治せないって事は…ないわよね?」

 

「っ!?」

 

 

 ロリはそう言うと、その目に狂気を宿しながら、口元に笑みを浮かべた。

 彼女の言いたい事はこうだ。

 それ程の治癒能力を持っているなら、此方が幾ら暴行を加えて傷を付けたとしても、本人に直接治させれば良い。そうすれば証拠も隠滅出来るし、後は徹底的に脅しを掛ければ藍染にもバレる事は無いと。

 

 極めて穴だらけな、そんな計画。

 だが今のロリであれば、もしかすると成功する可能性があった。

 ブレーキが無くとも、構わずアクセルを全開にして突き進む。そんな狂気を持つ者と対峙すれば、大抵の者は反射的に怯む。

 ―――この者なら、何を遣ってもおかしく無い。

 例え立場的に周囲から守護を受けている者でも、まずその様な印象を抱く事だろう。

 そして散々痛め付けられ様が、脅しに屈し、告げ口する勇気も失せる。

 

 

「安心しなさい。恐ければあたし一人でやるから。あんたは別に帰ってて良いわよ」

 

「―――やだ」

 

「…は?」

 

 

 想定外の返答に、ロリは素っ頓狂な声を漏らした。

 そんな彼女の顔を、メノリは真正面から見詰める。

 

 

「藍染様を甘く見過ぎだよ。そうやって隠したとしても、きっとあの方は全てを見通してる」

 

 

 その頭に浮かぶのは、ロリが暴挙に出た場合を想定してノイトラが与えてくれたアドバイス。

 何故止めねばならないのか。一体どんな結果を齎すのか。思い付く限りの可能性を全て、真剣な表情で伝えられたのを覚えている。

 

 藍染が態々指示を出してまで確保させた織姫を、至極自分勝手な理由で害する。謂わば藍染の所有物を傷付ける事と同等。

 当然、その罪は極めて重いだろう。それこそ、只単に御叱りを受けるだけでは済まない。

 処刑を宣告されても何らおかしくは無いと、ノイトラは説明した。

 

 ―――そんな最悪の未来は、何としても回避しなければ。

 ロリの右腕を掴む手に力を籠めながら、メノリは更に言葉を繋ぐ。

 

 

「あの女を庇って言ってる訳じゃない。私は…ロリの事が心配なの」

 

「……メノリ…」

 

 

 その鬼気迫る表情に、ロリは正気を取り戻した。

 確かにそうだ。自分は何を思い上がっていたのだと。

 考え直してみると、この襲撃計画は藍染を下に見ている様にも取れる。一介の破面でも簡単に欺ける程度の男として扱っているかの様に。

 

 それは実に愚かしく、決してあってはならない考えである。

 ―――何時の間にか自分は、頭の中で藍染の事を都合の良い男として作り変えていたのか。

 今更ながらに自覚したロリは、その顔を青ざめた。

 

 

「私が言いたいのは、これだけ…」

 

「う…ぅ…」

 

 

 ―――もう十分だろう。

 ロリの反応からそう考えたメノリは、その拘束していた右腕を解放すると、優しく微笑んだ。

 

 

「信じてるから、ロリ」

 

 

 それだけ言うと、メノリはその場で踵を返した。

 寂しさを紛らわさんが為に、自分の意志を捻じ曲げてまでロリに付き纏っていた面影は何処にも見られない。

 其処には完全に自立した、一人前の女の姿があった。

 

 残されたロリ。その頭の中では、先程からとある言葉が休み無く反響し続けていた。

 ―――信じてる。

 只その一言が、途轍も無く重く感じた。

 

 

「…なによ。べつに…あんたなんかに…」

 

 

 ロリは顔を俯かせながら、絞り出す様にして言う。

 ―――信じて貰わなくても構わない。

 だが最後に出る筈の言葉が、如何しても口に出せなかった。

 言ってしまえば、自分の中で何かが失われてしまう。そんな気がして。

 

 大虚時代から、ロリとメノリと何時も一緒だった。

 破面となって以降は、その刺々しい態度のせいで、ロリの周囲には誰も近寄らず、気が付けば雑務係の破面達の中では完全に孤立していた。

 だがメノリだけは違った。これまでと変わらず、何時も何時もベタベタと付き纏い続けた。

 ロリが此方が下らない癇癪で罵倒したり、殴り飛ばしても、諦める事無く。

 

 

「―――ああ、そっか…」

 

 

 ロリは其処で初めて気付く。

 自分が最近苛立っていた理由は、織姫に対してだけでは無い。

 何時も傍に居てくれた、唯一無二の存在であるメノリが居ないからだったのだと。

 

 ―――何と間抜けなのだろう。

 苦笑しながら、内心で自分自身を軽く扱き下ろす。

 

 

「信じてる、ね…」

 

 

 何と無しに、ロリはその言葉を直接口に出した。

 すると次の瞬間―――その顔が真っ赤に沸騰した。

 

 

「んなっ…なんでここであいつの事が思い浮かぶのよ!!?」

 

 

 忘れたい過去の一つとなっている―――以前ノイトラと二人きりで行った遣り取りを、ロリは思い出してしまったのだ。

 しかもそれだけでは無い。

 問題なのはその中で放たれた、ロリにとっては全く初体験で、ある意味ナンパとも取れる言葉。

 ―――お前は良い女だ。

 今度はそれが頭の中で反響し始める。

 

 

「…あぁあああぁぁぁァァもう!!」

 

 

 次々と湧き上がる感情が制御を失い、混沌の極みへと陥る脳内。

 遂に我慢の限界だったのか、ロリは突如として叫び声を上げた。

 

 御蔭で些か落ち着きを取り戻せたのか、その声を切ると、彼女は身体の向きを反転。

 メノリが去って行った方向へと走り始めた。

 

 

「ちょっと付き合いなさいメノリ!!」

 

「へ…うわっ!!?」

 

 

 案の定、そう時間も経たぬ内にメノリへ追い付く。

 するとロリはそれを横から追い越す様にして動き―――その途中でメノリの腕を掴んで引っ張り始めた。

 

 

「ろ、ロリ…?」

 

「鍛錬するわよ鍛錬! なんか無性に身体を動かしたい気分なの!!」

 

「えええ!? 今からぁ!!?」

 

「イヤとは言わせないわよ!! ほら、シャキッとしなさい!!」

 

 

 成すがままのメノリだったが、色々と吹っ切れたらしいロリの様子に、思わず笑みが浮かんだ。

 ―――良かった。

 自分の言いたい事を受け止めてくれたのだろう。

 助言をくれたノイトラに感謝の念を抱きつつ、メノリはロリに合わせて駆け始めた。

 

 二人が走り去った後、別方向の通路から新たに人影が現れた。

 その影は一旦立ち止まると、何かを警戒しているのか、頻りに周囲を見渡す。

 

 

「…そっちか」

 

 

 何も問題が無い事を確認したのだろう。

 その影はロリ達が去って行った方向とは逆の―――織姫の部屋へと向かって歩を進める。

 とはいえ、未だに警戒心を捨てていないのか。やや急ぎ足ながらも、音を立てない様に気を配りながら。

 

 

「待ってやがれ黒崎、てめえを殺すのはこの俺だ…!!」

 

 

 全身から殺意を滲み出させながら、その影―――グリムジョーは口元を吊上げた。

 

 

 




ルキアピンチ!!ゾマリてめええええ!!
ちゃっかりベリたんにチクるドン・パニーニさん。
相変わらず影の薄い主人公。
お姫ちんと虚無さんのトーク。
ロリ、友情再確認。
何か企む豹王さん。

的な話でした。





※多いので部分部分カット。それでも長くなったので注意。

          ↓

超展開及び捏造設定纏め
①強欲さんの頭部の中の液体は、生命維持に必須。出ると死ぬ。
・原作でも触れられてませんが、片言喋りの頭の最期を見るに、多分そうかなと。
・破裂して死ぬ部分についても、死亡直後のコマは“見せられないよ!!”的な感じで隠れて判らなかったので、勝手に解釈。
・もしかすると只単に血を噴き出して死ぬのかもしれませんが、それではインパクトが足りない気もしたので。
②強欲さんは自分が十刃最弱だと知ってる。
・第一期勢の一人なので、多分知ってるかと思い、捏造。
・それでも腐る事が無かったのは、無限に進化する可能性があった御蔭。
③海燕の遺体について。
・メタスタシアは肉体ごと虚圏に還ったらしいですが…海燕の遺体をルキアが志波家まで引き摺って運んでた事から、消えるまでにタイムラグがあったのかと。
・そして肉体が消えれば、残るは斬魄刀の鞘のみ…の筈。
・あと思ったんですが、墓に埋められた後に海燕が消えたとすれば、志波家の二人が凄く可哀相。これは絶対に知らない方が良いですわ。
④袖白雪の性格とか。
・取り敢えずこんな性格してて、ルキアと仲良しなら良いな~とか思って捏造。完全に私の願望丸出しですはい。
・今の袖白雪の気分を言い換えると、ルキアを捩花にN〇Rされた気分(笑
・尚、私はアニメのオリジナルストーリーは本編とは関係無いものだと考えてます。なので参考にしたのは姿形だけです。
⑤斬魄刀消滅の能力について。
・記述の通り。
・実は結構あやふやだったり(笑
⑥最速(笑)さん「それは残像だ」
・実体のある残像とか卑怯だと思う。
⑦治癒効果あるのは唾液だけじゃない。
・ゲロ被って大丈夫なら、多分そうなのかなと。
・幼女に涎をかけられるオッサン……文章だけ見るとアカンですね(笑
⑧ベリたんの病気。
・名付けるなら、ネームレス症候群?
・そして最大の被害者はイモ山さん。
⑨ネル、頭痛が痛い。
・気にしない気にしない。
⑩ちゃっかりバラしてる主人公。
・「実はこの世界は〇〇〇という創作物なんだよ!!」「な、なんだってー!?」では無いのであしからず。
⑪BLEACH界の住人は口が軽い。
・説明不要。
・ある意味御約束な要素なので、あまりツッコんではいけない。
⑫虚無さん、お姫ちんに対してさり気に自慢。
・〇〇の事は、お前より俺の方が良く知ってるんだぞ的な。
⑬無意味に名前ありのモブキャラ。
・付けた理由は、単に文章が書き易いからです(笑
・雑務係に相応しい名前にした心算。
⑭藍染様、暗躍する。
・動いてるのは判るけど、何が目的なのか全く以て不明な感じは正にラスボス。
・陛下みたくトンデモチート能力出すのも有りだけど…やっぱり前者のほうがボスっぽく感じる。
⑮メノリがんばる。そしてロリ気付く。
・普段ビクビクしてる様な子がやる気を出すと、凄く効果的。
・断じて百合フラグでは無い。
・そしてやっぱりチョロリン。
⑯コソコソ豹王さん。
・一体何を企んでるんでしょうね(ハナホジ





後から気付く、文字数20000字。
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