ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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遅れて申し訳ない。


ところで、沖田のヒッティングマーチは何にしよう。なんかこう、イメージが湧かない。


応援歌とか何がいいのかな。



第29話 青道の柱

時間は遡り、大塚が稲実のエースにケンカを売られる前、もしくは売られている中、

 

 

「ほぇぇぇぇ!!! 野球道具って色々あるんっすね!!」

 

「覚えきれない――――」

馬鹿丸出しの二人の投手が、そんなことを言いながら、買いだしのメニューを見ながらそれぞれ感想を言う。

 

「けど、いつもお世話になる道具だし、OBたちからも送られるし、覚えて損はないよ。」

東条はそんな投手二人にレクチャーする。

 

「今までどうやって野球してきたんだよ、お前ら」

沖田があまりにも道具を知らなさすぎる二人に尋ねると、

 

「一応公式戦1回戦負け―――くそっ!! あの時のくそ野郎を思い出したら、頭に来る!!」

 

「壁投げ――――」ズーン

 

「うっ―――悪かった。そんな顔をしないでくれお願いします申し訳ありませんでした。」

 

なんとか、この空気の悪さを打開するために、沖田は必至に話題を探す。だが思い浮かばない。

 

「アタシに振られても――――」

幸子も幸子で言葉はそう言いつつも、必死に何かを考える。

 

「うん―――これは難しいね――――」

唯も、力に慣れなくてごめんね、と謝る。

 

ここで、東条が何とかこの空気を打開するために、

 

「ていうか、吉川さんは大塚のどこがいいのかな――――あっ」

 

盛大に地雷を踏んだ。

 

「~~~~~~~~!!!!!」

そして、暴露された吉川は、思いっきり赤面する。だが、耐性がついているのか、手に持った荷物に被害はない。

 

「―――――えっと、それはまさか俺とアイツのような――――はっ!!」

危うく沢村も、吉川に釣られて爆死しかけたが、何とかそれを阻止する。

 

「へぇ、沢村君も気になる子がいるんだ。」

 

「面白そうな話~~~」

 

「そうだ!!ちょっと聞かせてくれよ(ゴメン、沢村。俺の力の無さを許してくれ)」

東条は吉川の話から話題を逸らすために、沢村を生贄に捧げる。

 

「だぁぁぁ!!! 俺と若菜そんなんじゃない~~~~~!!! あっ!?」

そして、どんどん墓穴を掘る沢村。もはや様式美である。

 

「若菜ちゃんっていうんだ。その子。」

 

「沢村君も隅に置けないね~~~~」

マネージャー陣も、ちゃんと女の子に興味があるんだと安心した様子。

 

「リア充め。あんなくそ可愛い子と未だに遠距離恋愛とか、ふざけんなもげろ他の女の子を紹介してくださいお願いします」

そして沖田が呪詛のように非リア充への叫びを口にする。だが、誰も彼に反応しない。

 

「へぇ、なんだかロマンチック~~~~」

貴子も、そんな沢村の恋愛模様に加わる。

 

「だぁぁぁ!! 勘弁してください~~~~!!」

 

2年生マネージャー陣と、沖田に話に迫られる沢村を放置し、

 

「けど、大塚君は人気が出ると思うし、すぐに行動しないと。春乃ちゃんはとっても奥手だから心配なのよ。」

 

「た、貴子先輩。」

 

「貴女らしくしなさい。いつもいつも、自然体でいるの。大塚君もああ見えて鈍感だし、ストレートな子は好きかもしれないわね~~~」

 

「~~~~~~~~!!!!」

面倒を見ている可愛い後輩の姿に、何とか報われて欲しいなぁ、と思う貴子。そして、目の前で身悶えする吉川が可愛いなぁ、とも思う。

 

「―――――恋愛、ですか」

降谷は、恋愛話で色めき立つ彼ら、彼女らを見て、不思議に思う。

 

――――誰かに必死になる、それはどういう意味なんだろう。

 

「まあ、お前もいつか分かるさ」

金丸が、ポンポンと彼の左肩を叩く。

 

「なんだか楽しそう。けど――――」

 

―――なんか気に入らない

 

そして冒頭に戻り、少し時間が経過して―――――

 

 

「吉川さん? 荷物が重そうだから持つよ」

 

「う、うん。ありがとう――――」

顔を赤くして、もじもじする吉川に、若干の違和感を覚えた大塚。

 

――――まあ、今は夏だからね―――っていうのは、理由ではないね―――

 

案外わかっていた大塚。自分が近づくと、不自然な行動がやや多くなる事が解っていた。自意識過剰ではないが、相当自分は意識されていることが分かる。

 

―――けど、惚れられるようなことをした覚えはないよ。むしろ、避けられるようなことをした覚えはある。

 

しかし肝心の詰めの甘さが残る模様。大塚はなぜ自分に惚れているのかを解らない。

 

思春期の恋愛は、複雑ではあるが、案外単純でもあるのだ。

 

「リア充爆発しろ~~~~~~」

青道高校へと戻る際、沢村と大塚は、沖田から呪詛の言葉を吐かれ続けることになる。

 

「お、沖田!? なんかすごい顔になってる!!」

 

「沖田はこういうところが残念だよね~~~~」

沢村と大塚はそんなことを言う。そして大塚は思いついたように、

 

「梅本先輩。沖田の隣が空いていますよ。」

幸子に話を振る。

 

「残念なイケメンは願い下げね」

 

沖田「」

沖田のハートに110000のダメージ。沖田は轟沈した。

 

「容赦のない言葉!! でも、言いたいことは言ってくれました!!」

唯はそんな幸子に同調する。そして白くなった沖田は荷物を運ぶ機械と化し、二人の命令を聞くマシーンになっていた。というより、意識はあるのだろうか。

 

「―――――」ぼんっ

 

「あらあら。ホント可愛いなぁ、もう……」

そして突然吉川が暴発し、貴子が介抱するという流れが出来つつある今、

 

 

「恋愛って、大変そう」

 

「まあ、お前も解る時が来るさ(ホント、こいつは馬鹿な女に騙されなきゃいいが)」

金丸は、そんないい意味でも悪い意味でも無垢な降谷を少し心配する。

 

「ハァ、恋愛かぁ―――実現しそうもないから虚しいなぁ―――」

東条は生粋のドルオタでもあるので、ただただ嘆いていた。

 

そして全員が荷物を倉庫に運んでいる最中、沖田と大塚が先に「もう戻っていいわよ、沢村君と降谷君には私がレクチャーするから」と貴子に言われ戻るのだが

 

「大丈夫か、沖田」

ようやく意識がはっきりした沖田に声をかける大塚。

 

「すまん。ハァ―――羨ましい。」

 

「けど、そういう余裕が出来てよかった。1年前はホント、どうなるかと思ったけど。」

もうすぐ1年前になるのだろうか。あの時沖田が大塚に出会わなければ、彼は野球をやめていたかもしれないのだ。

 

あんな風に、余裕のなくなった沖田は、もう見たくないなぁと思う大塚。

 

「それだけ、俺も吹っ切れたのかな」

沖田は感慨深そうに自身の変化を口にする。

 

「お前のおかげだ、栄治。けど、今度可愛い子を紹介してくれ、お願いします。あ、でもまじめな子がいいなぁ」

 

「うん、キミにとってはよかったけど、俺にとっては少し良くなかったような―――というか、沖田君って女好きなんだね。最初にそれをまじめな子に伝えておくよ」

 

「大塚ァァァァっ!!!!!」

 

 

 

 

そして最後の試合、修北戦。序盤から青道打線は相手投手を打ち崩し、大量リードを奪うと、先発丹波も打たせて取る投球で球数の少ないここまでの試合運び。

 

4回を投げ、被安打3、四死球ゼロの投球。大塚程圧倒的な投球ではないが、それでも安定している。

 

下級生たちが帰ってきたときにはすでに試合が始まっていた。倉持も、沖田に負けじと劣らずヒットを量産。ショートのポジションを譲る気はないようだ。

 

激戦区外野手は、伊佐敷、白洲以外はほぼ固定されていない。坂井、門田、東条の3人が最後のイスを争う。

 

そして内野手は二塁と一塁は固定されている。残るは三塁手と遊撃手。

 

増子が不調というわけではない。全国クラスに変化球を軸にする投手が多く、相性が悪いのだ。ここにきて、内野全てを守れる沖田のユーティリティーさが、倉持と沖田の併用というプランすら浮上している。

 

長打力のある沖田と、走力と守備が持ち味の倉持。打率もそこそこいいので、倉持をスタメンに起用したい。ただ、増子の長打も捨てきれない。

 

故に、結城と小湊以外は安泰ではないのだ。それはベンチ組にも希望があるという事。

 

スコアボードは酷いことになっており、完全に相手を圧倒している先輩方。

 

「宮内先輩から見て、丹波先輩のフォークはどういう感触ですか?」

ブルペンで待機している宮内先輩に話しかける大塚。

 

「ふぅぅ!! シンカー気味に鋭く落ちる変化だな。お前が課題に挙げていた、チェックゾーンの問題もだいぶ修正できた。」

大きく息を吸い、大塚に現状を伝える宮内。

 

「シンカーもあんなことにならないし、お前には感謝することしかないな」

川上がそんな二人の横にひょっこり顔を出す。

 

 

「あんなこと?」

大塚は、川上の含みのある言い方にキョトンとする。

 

「い、いや。なんでもないんだ。(言えない。1イニングで3四死球とか、言えない!)」

 

「けど、降谷がチェンジアップを覚えたいらしいし、まだまだ忙しそうだけど」

大塚は降谷に、

 

「なんでスローボールを投げる必要があるの?」

と、質問されたのだ。

 

「それはまあ、緩急かな。いくら早いストレートでも、それだけなら対応されるし、その速球をより速く見せたりする技術も必要。」

 

「――――――」じ――――

実際、あの時相手の反応を見ようとただ投げただけなのだ。降谷はただチェンジアップがどういったものかを考えずに投げていたのだ。だから、同じ投手で知識のある大塚に教えを求めていた。

 

「うっ、まあ。その他にもあって、チェンジアップの抜く感覚は、やっぱりリリースの感覚を養うし、今後変化球を他にも覚えると思うから、その感覚を養う事も出来るしね。」

 

だが、大塚も解説モードに熱が入り――――

 

「そもそも打撃っていうのは、ポイントと、タイミングと、スイング軌道の3大要素が基本なんだけど、これがとても繊細なんだ。」

 

「――――――――――――――」じ――――――

 

「打撃はこのどれかが欠けてしまった場合、十全に機能しない。スイング軌道が安定しなければ、ポイントをそもそも安定させられないし、ボールに当てる事すら困難。ポイントがずれたら、ボールに力を伝えることが出来ない。野手組の東条君は、この事をよく理解していると思う。」

 

横にいた東条に声をかける大塚。

 

「ああ。このポイントがしっかりしないと、強い打球を打てないんだよな」

 

「後、最後のタイミング。ポイントとバット軌道が安定しても、そのボールのタイミングを掴まなければ、この二つの工程が台無しになるんだ。ここを俺は以前、フォームチェンジで狂わせて、打者を打ち取っていたんだけどね」

 

「難しい。」

降谷が唸るようにつぶやく。

 

「出来るだけ噛み砕いて説明したつもりなんだけどね……まあ、とにかく、チェンジアップはそのタイミングを狂わせることが出来て、相手にスイングをさせない、よりストレートの威力を上げる適切なボールでもある。勿論合わせられたらスタンドインされる可能性もあるリスキーなボールだけどね」

 

「うーん。で、さっき聞きたいことがあったんだけど」

降谷がチェンジアップについて思案している中、突然話題を変える降谷。

 

「吉川さんが、大塚を意識しているのはどういう――――」

 

「この場は任せたよ、東条君。」

 

「お、おう」

振られた東条は、恋愛とは何なのかを骨の髄まで尋ねられ、くたくたになった模様。

 

 

そして、降谷の質問を回避した大塚は、何やら、あちらで沢村が大声を出していたので何となく忍び寄るのだった。

 

 

その問題の沢村だが―――――

 

 

「…………こりゃあ、エースは丹波先輩で決まりかな………」

沖田はこの5回の投球を見て、穴がないのを感じ、丹波が一番を手に取るのだと悟った。

 

「なっ!! けど、栄治の方が凄い投球をしていただろ!? なんで!?」

沢村は、その前の試合で圧巻の投球の大塚がエースナンバーではないことに、違和感を覚える。自分は今年、エースではないが、それでも確実に格上と感じる大塚が、もらえないのはおかしいと反論する。

 

「大塚と丹波先輩。二人とも結果を出したとき、チームの事を考えれば、3年間投げてきた丹波先輩が来るのは順当だ」

沖田としては、それが恐らく順当で、チームの雰囲気も崩れない最善の方法だと考えていた。丹波投手の投球に、今のところ穴がない。

 

 

「だね。それに、青道への思いで負けたくはないけど、丹波さんはそれと同等の想いを、俺よりも長く持っているから。」

大塚はやや苦笑いしながら、丹波が背負ってきたものを沢村に説明する。

 

しかし彼の手は固くに握られていた。

 

――――悔しいなぁ

 

けど、そういう流れは必要だ。チームにも。

 

 

 

マウンドにいる丹波と目が合う大塚。

 

――――ナイスピッチ、丹波先輩。

 

――――ふん…………

 

そして6回には、いつもブルペンの横で見ていたあの決め球の威力を見せつけられる。

 

「ストライィィクっ!! バッターアウトっ!!」

 

初球からフォークボール。シンカー気味に鋭く落ちるその変化球の前に、タイミングを狂わされ、最後は高めの真直ぐで空振りを奪われる。

 

次の打者も、フォークを意識してか、低めのストレートに手が出せず、見逃し三振。

 

この回は3者連続三振に切って取る。

 

「ふしッ!!!!」

 

そして6回にも追加点。これ以上ない得点に、これでもう丹波が失点することはないだろう。

 

「…………」

 

―――あんな姿を見せられたら悔しいけど、認めるしかないですね………

 

7回、先頭打者の坂井がランナーに、白洲が送りバントで一死二塁のチャンス。そこへ、9番の丹波が向かう。

 

「打っていけよ、丹波!!」

 

「まあ、投球の事を考えて、三振だと助かるんだけど…………」

 

「おら、御幸ぃぃ!! テンション下げるようなこと言うなぁ!!」

 

―――俺なら、ああいうムードは出せたかな?

 

大塚はこの絶好の場面で打つ気満々の丹波を見てそう思った。今の自分がそれを為せないのが解ってしまった。

 

ゾクッ、

 

「!?」

その時どうしようもないほどの震えが、そして悪寒が、大塚を襲った。

 

―――な、なんだ………これ……………

 

丹波がバッターボックスへと向かう。いつもの何気ない動作に、自分が先程感じた感覚が何なのかを、理解できない。

 

――――…………丹波先輩………?

 

修北の投手は打ち込まれ、最早息絶え絶え。気力だけで投げているようなものだ。だが、その目の色の闘志は、色褪せていない。

 

「どうしたんだよ、大塚? そんな青い顔をして」

沖田がそんな調子の悪そうにしている大塚を気遣う。だが、大塚はこの打席に目が集中していた。

 

 

 

そしてそれは一瞬の出来事だった。

 

 

 

投手の初球がすっぽ抜けた。いや、正確に言えば水気を含んだ手が滑ったと形容するべきか。

 

 

そのすっぽ抜けたボールは、

 

 

グシャッ!!!!!

 

 

丹波の顔面を直撃した。

 

 




ああぁ・・・・・原作よりもはるかにいいメンタルを持っているのに・・・・・結構、本作中でも丹波株は上がっているのに。頑張る丹波さんを描くのは楽しいと感じていたけど、


丹波先輩、ここで無念のリタイヤ。

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