主役になれなかった者達の物語   作:沙希

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IS学園における体育館、アリーナの訓練機保管庫、校舎近くで爆破が起きた。それと同時にIS学園に『亡国企業』と名乗る二人のIS乗りが潜伏しており、行動を実行した。更にはIS学園の遥か上空には未確認のISが浮かんでおり、IS学園に向けて攻撃を開始。IS学園に訪れていた一般客や生徒達は上級生の指示に従って地下の避難所へと誘導され、他の上級生や教師陣は訓練機でのテロリストの対処へと向かうのであるがアリーナの訓練機保管庫が爆破され、訓練機は使い物にならない程、木端微塵になっていた。そのため、残されたのは専用機持ちのメンバーである。学園における例外を除いて対処できるのは織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識楯無の7人である。たかが3機のIS乗りを相手に数でも優っているのだから、直ぐに片付けられるだろうとだれもがそんな思いがあった。――――――――――――それが簡単にやれる相手なら。

 

 

 

 

空には白と赤の光が、黒のISへ突撃する。白は織斑一夏の専用機である白式。そして赤は篠ノ之箒の専用機である紅椿だ。亡国企業と呼ばれたテロリストに仲間と引き離されたが、織斑一夏と篠ノ之箒は二人でも十分だと確信していた。それは相棒である篠ノ之箒と紅椿への信頼である。二人で力を合わせれば、勝てると確信していたのだろう。だが、そんな思いはタダの思い込みだった。

 

「がっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

戦況は、圧倒的までに黒いIS、『Vendetta』と呼ばれるISが優勢だった。接近戦武装であるブレードと中距離と近距離武装のライフルが握られた手で切り払い、追い打ちをかける。織斑一夏に追撃を掛ける箒は隙を見て斬りかかるのだが最小限の動きで回避され、ライフルによる至近距離射撃を受ける。

 

「ぐっ、一夏っ!」

 

「分かってるっ!」

 

上手く連携を取り、完璧な隙を生んだ瞬間に吹き飛ばされた一夏が体制を立て直し襲い掛かる。しかし、それも全て読まれているかのごとくヴェンデッタはブレードを収納し、別の武器を取り出した。それは――――手榴弾だった。

 

 

ヴェンデッタは手榴弾を一夏の背後に投げ、ライフルで射撃。一夏は手榴弾に弾丸が直撃しない様にライフルから放たれた弾丸を斬り裂いた―――――――――が、真っ二つに斬り裂かれた弾丸はまるで計算されたかのように剣や白式の装甲を弾いて手榴弾に着弾した。ちょうど手榴弾は一夏と箒の間であり、効果範囲内。例え回避しても爆風を受けてしまう。

 

「ああああああああああああっ!」

 

「があああああああああああああああ!」

 

手榴弾の爆発に巻き込まれた二人は吹き飛ばされた。しかし、箒は兎も角として一夏が吹き飛ばされる方向は拙かった。何せ吹き飛ばされる方角はヴェンデッタの眼前。既にヴェンデッタは収納したブレードを具現して構えている。いまさら方向転換しても既に遅い。無理やりにでも回避しようと試みたが、既にブレードを一夏の脇腹へと襲い掛かっていた。

 

「があああああああああああああああ!?」

 

「一夏ああああああっ!くっ、おのれテロリスト風情―――――――」

 

既に、銃口は箒を捉えており、そしてヴェンデッタはトリガーを引いた。

銃口から放たれるビーム砲が箒へと襲い掛かる。

ビームの嵐が止むころには箒はそのまま吹き飛ばされていった。

しかし、意識が途絶えた訳でなく箒はすぐさま意識を保ち、態勢を立て直す。

吹き飛ばされた一夏も既に態勢を立て直して箒の隣にいた。

 

「大丈夫か、箒?」

 

「あぁ、大丈夫だ。しかし、エネルギーが」

 

「俺もだ…………だけど政府から応援が来るんだ。それまで持ちこたえるぞ」

 

「分かっている」

 

アリーナの訓練機が使えない今、政府からIS部隊が到着するとのことである。

学園の方では残りの二人の相手をセシリア、シャルロット、ラウラ、楯無が相手しているのだが全く応答がない。戦闘中なのか、それとも既に戦闘が終了しているのか。

 

「おい!どうして学園に攻めてきたんだ!答えろ!」

 

「貴様等は何が目的だ!」

 

一夏と箒は、いまだ雑談しても攻めてこない黒いIS、ヴェンデッタを睨み付ける。二人は無人機なのではと疑っていた。鈴と一夏の試合の時に現れた無人機は、こうやって話し合っているにも関わらず攻撃してこなかったからそう思った理由でもある。しかし、二人のISには黒いISがヴェンデッタという今まで聞いたことのない名前が映し出されているため無人機の線は完全ではないにしろ消えた。それに校舎に潜入していたテロリスト二人がISを展開したと同時に空から現れたのだが人が乗っているのだと考察もできる。緊張が走っている中、何やら黒いISの前に投影ディスプレイが浮かんだ。

 

『おい、ヴェント。こっちは片付けたぞ』

 

『殲滅、終了。大したことなかった』

 

『しっかし、お前が考案した装備のお蔭であの餓鬼共、手も足もでなかったぞ。健気にもアイツら、『まだ……だあああ!』とか叫んで、おかしいったらありゃしねぇぜ』

 

「「なっ!?」」

 

一夏と箒は、絶句した。セシリア、シャルロット、ラウラ、楯無が相手していた二人のIS乗りから無慈悲にもセシリア達の敗北宣言が告げられたのだから。ガサツな口調で喋る女性から余裕の口調を聞きとる限り、セシリア達は二人に手も足も出なかったということなのだろうか。箒は虚言だと吐いてIS学園の方を振り向くが、セシリア達のIS反応が映し出されなかった。二人が不安な状況に陥っている、その時だった――――。

 

「オータム。今回の目的は殺す事じゃない。殺すなよ?」

 

「え?」

 

一夏は思わず、ヴェンデッタの方へと視線を向けた。

視線を向けた先にはディスプレイに向かって会話している少年の顔が、映った。

 

『わーってるよ。まぁ、こんな餓鬼共がいくら襲ってこようとも確かに殺す必要はねぇかもな。むしろこんな雑魚がこの世界に存在するって事を知らしめた方がおもしれぇな。おい、M!帰るぞ』

 

『黙れ、糞女。元々そのつもりだ』

 

『んだ、その態度っ!テメェ、帰ってから覚えてろ!』

 

そして投影ディスプレイがブツンと切られ、ヴェンデッタ、いや。

二人が知っている―――――――真月零が二人を見つめていた。

顔を覆っていたバイザーが取られており、素顔が晒された。

箒も一夏の視線に気づいて視線を追い、真月の顔を見た途端にギョッとした様に驚いた。

 

「なん、で………なんでお前がそこにいるんだよ……っ!真月!」

 

「なんだ、居ちゃ悪いのか?俺がテロリスト側に居て不都合な事でもあるのか?」

 

「そうじゃない!貴様、なぜテロリストに加担するのだ!貴様、自分が何をしているのか分かっているのか!?」

 

「は?分かってやってるんだ。そんな事も分からないのか?」

 

「「なっ!?」」

 

しれっと、『何言ってんだこのバカ?』と言わんばかりの表情でそう返した真月もとい、ヴェンに一夏と箒は絶句した。IS学園による襲撃、訓練機の破壊、器物破損。それだけでなく最悪一般人にまで危害が及ぶ攻撃や、ISを乗れる男がテロリストだったのだ。これだけやって何も御咎めがないと言うバカはいないだろう。それを踏まえて、やったとヴェンの口から出されたのだ。二人が茫然とヴェンを見つめていると、ヴェンが何かを確認した後に呆れた顔をして口を動かす。

 

「あぁ、情けねぇな専用機持ちってのは。なぁ、そういうとこどうなのお二人さん?」

 

「なに?」

 

「一夏!もう奴の戯言は聞くなっ!奴はもう敵――――――――」

 

「あ、ウザいから退場しな腐れ掃除道具」

 

その瞬間、ヴェンはライフルを取り出し箒へと発砲。

不意打ちを食らった箒はヴェンの攻撃に反応が遅れるが、それでも回避する。

多少の攻撃くらいなら掠っても問題ないと判断しての回避だった。しかし、回避しようとしないも―――――――結果は同じだった。

 

 

発射された弾丸には、圧縮された核が詰まれており、弾丸が掠った瞬間に手榴弾とは比べ物にならない程の爆発が箒を襲った。声を上げることなく爆発に呑み込まれた箒はそのまま海面へと落下していく。紅椿のエネルギーが既に0となった。

 

「あっはっはっはっはっはっは!!きたねぇ花火だなオイ!まるでボロ雑巾、いや、ボロ箒だなありゃっ!」

 

「箒っぃいいいいいいいいい! テメェ、良くも箒をっ!」

 

「それより、行かなくていいのか? 海、よぉおおく。見てみ」

 

「っ!」

 

ヴェンの言葉に、一夏は箒が落ちようとしている海へ視線を向ける。

すると白式が海面に浮遊機雷が浮かんでいるのだ。

数は7つ、いつ仕掛けられたか分からないが一夏はそれどころではなかった。

 

 

箒は気絶しており、紅椿のエネルギーは0だ。いくら絶対防御が働くからといって直接爆破を受ければ死んでしまう。一夏はすぐさま箒の下へと飛んでいった。機雷に触れる寸前にキャッチし、すぐさま箒を安全な場所へと運び、寝かせる。箒を寝かせた一夏は再びヴェンを睨み付け、ヴェンの下へと飛んでいく。

 

「これで残りはお前一人って訳だ。はぁ、こんなのが専用機持ちだと思うと呆れを通り越して笑えてくるぜ。こんな奴らが国、人民を守ってると知ればさぞ失望もんだろうに」

 

「なんでだよ……………なんでこんなことをするんだよっ!答えろよ、真月!」

 

「はぁあ、察しの悪いバカだなお前は。テロリストだからに決まってるだろうが。ISが気に食わない。女尊男卑が気に食わない。いまの世界そのものが気に食わないなどなど思う奴らの集団。適当に何でも捉えろよ、織斑。それでもIS学園の生徒か?お前、今迄遊んでたわけ?はっは、それもそうだったな。何せ今の世界がどれほどヤバいって事すら理解しようともしないんだからな」

 

「世界が、ヤバいって………どういう意味だよそれは!」

 

一夏の問いにヴェンは更に笑みをもらし、『……あぁ、所詮はただの能無しか』とぼやいた。するとヴェンは何やら投影ディスプレイを操作した後、再び口を動かす。

 

「なぁ、織斑。お前は婦人参政権について、どう思う?」

 

ヴェンに質問された一夏は、質問に対しての意味が分からなかった。

なぜいま、そういう質問をしてきたのか一夏は分からなかったがヴェンの問いに対してどう答えるべきか悩んだ。婦人参政権という言葉は何となく覚えている単語なので、一夏とりあえずその場しのぎでありのままの答えを出した。

 

「女性にも、人権が認められただやつだよな?性別の違いなんて関係なく、人権が認められたことは良い事だと思う。それがなんだってんだ」

 

「そうだな。女なんぞは大昔から家と男の所有物、人間として格下みたいなもんだった。素晴らしい変化だと俺は思う。やばて男尊女卑は過去の物となり、誰もが平等になった。――――――――だが、いまの世界はなんだ?本当に平等なのか?」

 

「っ、それは…………」

 

「ISの登場により女が男を格下同然の扱いをし始めた。意味のない暴力、意味のない暴言、意味のない濡れ衣が飛び交い、それが子供まで影響してきた。なぁ、織斑。ニュースでは平穏無事な日常風景、ちょっとした事件や事故程度の報道しか流れてないがな女どもは都合の悪い部分だけを省いて映しているだけに過ぎないのは知っていたか?日本、そして世界では非道な事が行われている事を、知っていたか?」

 

「それって、どういうことだよ…………」

 

一夏はヴェンの会話を何時しか聞き入っていた。

ヴェンの言葉の節々から重みと、怒りと憎しみに似た雰囲気を感じたからだ。

 

「IS登場により、ここ十数年における自殺する件数は数千、数万、数十万と後が断たない。更には男でもISに乗せられる様にと人体実験を行うためにストリートチルドレン、孤児の幼子を浚いっての人体実験による死亡件数は数百万人を突破した。それだけではない。職場や環境、政治に関わることもそうだ。男と一緒の職場が嫌だからという理由で男を放り出し、職を失う男性労働者の数は数十万。悪質なパワーハラスメントにより自殺する者達もいる。なぁ、織斑。お前、自分が恵まれてるって分かっているか?」

 

「………………」

 

「ただ顔がいい、織斑千冬の弟だから優遇されて女どもからキャーキャー黄色い声を上げられてさぞ幸せだろうな、えぇ?同じ男なはずなのに、どうしてここまで対応の差が違うのか、疑問に思うんだよ俺はさぁ。なぁ、織斑一夏君。いままでの生活の空気はさぞ美味しかったか?知らない所では誰もが苦しんでいるのに、自分だけ違う対応されて幸せだっただろ?なぁ、なんか言ってみろよ」

 

戯言だ!と言えば、それで済むだろう。しかし、本当に戯言なのかと一夏の頭の中にその言葉がよぎった。自分の知らない所では、ヴェンの言ったような状況が起こっていたとするならば今の自分の待遇はさぞ優遇されているのではないだろうか。

 

「だ、だけどもしお前の言っていることが本当だとして、その話がなんの意味があるんだよ!」

 

「はぁ?分からないかな?つまりは―――――――――お前、男共から反感買って何時しか立場危うくなるって言ってんだよ」

 

「!?」

 

「最初は顔が良い、織斑千冬の弟だからってポテンシャルはまだ良かっただろうさ。だがお前はISを動かせた。そして専用機を与えられることになった。本来専用機持ちと国家代表は自分の国を守る義務を押し付けられる。たかがスポーツやデータだけでの理由で渡されるわけがない。そして今!こんな風にIS学園を襲撃され、剰えたかが三機のテロリストに6人で挑んでも勝てなかった。一人は国家代表、二人は第4世代の持ち主、そして残りは代表候補の専用機持ちだってのに手も足も出ずにこの有様だ。なぁ、織斑一夏。これで『分かりせん』とか言わせないぞ」

 

「………………」

 

一夏はヴェンの言葉に押し黙り、考えていた。専用機持ち、そして国家代表やその候補はデータ取りや操縦者の能力が高いから持たされるのではない。国を守るための守護者としての役割もあるため、渡されるのだ。そして現在、その専用機持ち達が3人のテロリスト相手に傷一つ付けらず、敗北確定の状況になってしまっているのを誰もが知れば、女や男関係なく専用機持ちに反感を覚え、暴動が起きるだろう。

つまり、国を守れない専用機持ちは―――――専用機を持つ資格はない。

そんな奴らに国を守らせるなど、言語道断だと声が上がるだろう。

 

「暗部の更識家、専用機持ちの数名、第四世代持ちのお前と篠ノ之がいるにも関わらずテロリストに侵入を許し、挙句の果てには訓練機は粉みじんにされ、専用機持ちの殆どは再起不能となり、挙句には学園が崩壊寸前で残された希望はお前だけだ。はっはっはっは、なぁ織斑一夏。楽しい学園生活の中で、こんな事態に陥る事は予想外だっただろ?」

 

「ぐっ………………くそがああああああああああああああああ!!」

 

声を張り上げ、一夏はヴェンに突撃を掛けた。雪羅をクローモードに変え、雪片を握りしめヴェンに攻撃を仕掛けた。しかし、易々と回避されライフルの雨とブレードの連撃を受ける。しかし、雪羅でシールドを張って防ぎ、猛攻撃を仕掛ける。

 

「なんでだよ!なんで、なんで!!」

 

「あぁ、うるせぇなマジで。何をそこまでキレる。知ろうともしないお前の原因だろ?知っていればもう少し強くなろうと想えただろうに。こんな事態にはならなかっただろうに」

 

「黙れぇぇぇええええええええ!!」

 

「はっはっはっは!まるどただ正論言われてキレたクソガキじゃねぇか!ほれほれ、どうしたどうした?そんな掠りもしねぇ攻撃で勝てると思ってんのか?」

 

まるで子供をからかう様に煽り文句を放ちながら回避するヴェン。

次第に一夏の動きにキレがなくなってきており、息が上がり始めていた。

そして一夏は疲れたのか、動きが止まると同時に攻撃もやむ。

 

「……………なんでよ」

 

「あん?」

 

「なんでなんだよ!…………俺たちは、クラスメイトだろ!?俺や、俺達は同じ学園の仲間じゃねぇのか!なんでなんだよ、真月っ!」

 

「………………………」

 

「俺、お前のこと全然知らないけど良い奴じゃねぇのかよ!鈴とあんなに楽しそうに会話して、恋人みたいに仲良しな奴が悪い奴なわけがねぇだろ!初めて俺と会話したときも、全然そんな素振りは見せなかったじゃねぇか!なぁ、真月!嘘って言ってくれよ!」

 

一夏は精いっぱい声を張り上げ、ヴェンに訴えかけた。

会話の数は両手で数えるほどしか会話していないが、一夏の目にはヴェン、真月がテロ行為を行うような人間ではないと見えていた。少し付き合いが悪くて、人見知りな奴だけど友達になれたらいいな、いや、これから仲良くなれたらいいなとも思っていた。

 

「…………まさか、織斑。お前、俺を友達とでも思っていたのか?」

 

「そうだよ!だから、だから今からでも遅くない!真月、戻って来い!!」

 

「……………………」

 

一夏がそう言って手を差し伸べる。

差し伸べられた手をヴェンはジッと見詰めていた。いまだクラスメイトである人間がテロリストなんかじゃないと信じる一夏に、ヴェンは―――――――――

 

「ぐっ……があああああああああああああああああああ!?」

 

「し、真月!?」

 

「ぐあぁぁぁっ………くそっ………でて、でてくる、なっ!!」

 

「お、おい真月!?急にどうしたんだよ!?」

 

「おり、むら……っ。…………たすけて、くれ…………たすけ………」

 

急にヴェンが苦しみだしたため、一夏は焦っていた。

ヴェンの額から汗が大量に滲み出ており、苦しそうに顔を歪ませるその光景は演技ではないのか?と誰もが疑う光景だった。一夏は苦しみだしているヴェンに何のためらいもなく、ヴェンの下へと飛んでいく。

 

「真月、しっかりしろ!」

 

「おり、むら?………っ、俺は………俺はなんてことを!」

 

そういってヴェンは両手で顔を覆った。

身体が震え、やってはいけないことをやってしまったように震える子供の様に。

今迄と雰囲気が違うと感じた一夏は真月自身の本心がこんな事をしたくなかったと感じ、優しく背中をさすり、問いかける。

 

「っ、真月!お前、元の真月に戻ったのかっ!」

 

「ごめん………織斑っ。…………俺、俺はなんていう事をっ………」

 

「いいや、お前が戻っただけでも十分だ。本当はお前自身、こんなことやりたくなかったんだろ?誰かに脅されて、誰かにそう強制されたせいなんだろ?大丈夫。きっと千冬姉や他の先生たちにも事情を話せば、分かってもらえるっ!」

 

「織斑っ………許すって言うのか?………あんなことした、俺をっ!」

 

「あぁ、勿論だ。だから、ほら、一緒に戻ろう」

 

IS学園に、と言って一夏は背を向ける。

多くの被害が出たけれど、クラスメイト一人を救う事が出来た。

きっとヴェンの事情を聞けば、ああなった理由も分かるはず。

と、一夏はそう思っていた矢先だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ~~んちゃって☆」

 

「があああああああああああああ!?」

 

背後から攻撃を受けた。

攻撃を受けたと同時にエネルギーが一桁になり、そのまま海へと落下していく。

しかし、意識を何とか保ち、背後の方を振り向くとライフルを構えたヴェンがニタニタと笑いながら一夏を見つめていた。

 

「ど、どうし、て…………しん、げつっ………正気に………戻ったんじゃっ!」

 

「正気ぃぃ?俺は何時だって正気だよ、バカがぁ」

 

そして再び、トリガーを引いた。

レーザーの雨が一夏を襲い、一夏はそのまま地上へと落下していった。

絶対防御のお蔭で外傷は少なく、ギリギリ意識を保てる気力が残っていた。

地に落とされた一夏は視界が眩む中で真月の居る空を見つめ、手を伸ばす。

ヴェンは一夏の声が聞こえる距離まで降下し、武器を収納した。

 

「真月っ…………お前、なんでっ…………」

 

「はっはっはっは!まさかあんな演技に引っかかってくれるとは思ってもみなかったよ!学校のクラスメイト?鈴と仲が良かったから良い奴?ぶあっはっはっはっはっはっはっはっは!とんだ大間抜けだよ!これだけの事をされて、それでも俺を友達呼ばわりするなんてとんだバカ野郎だわっ!あぁ、なら俺はこう言ってやった方がいいかな?――――――――楽しかったぜぇぇ!!お前との、友 情 ご っ こおおおお!あははははははははははははっ!」

 

「っ~~~~~」

 

一夏は口惜しさのあまりに唇を噛みしめ、ヴェンを睨み付ける。

しかし、一夏の睨みなどヴェンにとっては赤子のまなざし。

専用機も真面に扱えない弱者風情でしかないのだ。

一夏の睨み付けが鬱陶しくなったのか、ヴェンは勢いよく一夏の顔を踏みつけた。

 

 

顔を踏みつけられた一夏は脚を退かすと気絶しており、目を開ける事は無かった。

これで例外を除き、全ての専用機持ちが再起不能となってしまった。

亡国企業である二人は既にセンサーでは反応しない場所へと向かっており、残されたヴェンはIS学園上空へと飛んでいき、上空からIS学園を眺める。

その顔はさっきまでの歪んだ笑みとは異なり、少しだけ悲壮感を漂わせていた。そして自ら纏うISの手を見つめ、悲壮感から怒りに似た雰囲気を露わにして睨み付ける。

 

「こんなIS(ガラクタ)のせいで、こんな事にはならなかっただろうに――――――――――なぁ、鈴。そう思うだろ?」

 

 

 

 

 

「そうね。確かに、IS(こんなもの)が無かった方が良かったかもしれないわね」

 

 

 

 

 

ヴェンが背後を振り返りながら、居ないはずの少女に問いかけた。すると背後には中国第三世代IS『甲龍』を纏った凰鈴音が双天牙月を手にして浮いていた。

 

 




みんな大好き、真ゲsもとい真月の登場(白目)。
かなり支離滅裂、意味不明な事を言っている気がしますがご了承ください。

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