二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回の後書きは新装備の一部説明を着けました


88話 奇跡! 白い閃光

「(油……断した……! 奴の言う通り私は相手の動きの一部分を見ただけで見くびってしまっていた……!)」

 

 真っ赤な炎に包まれ、焼かれながら力無く落下していくゾフィーと共に慎吾は浮遊感と容赦なく全身を襲う激痛を噛みしめながは、自身の甘さが招いた失態を激しく後悔していた

 

「ぐぅ……」

 

 もはや枯渇寸前のシールドエネルギーと強烈な痛みにより霞がかかった意識ではゾフィーを飛ばせる事すら叶わず、ゾフィーは重量に従って地面へと墜落し、そこで立ち上がった多量の土でゾフィーの体を包んでいた炎はようやく立ち消えた

 

「うっ……うわぁ……」

 

 炎自体は消えたものの、いまだに大量の白煙をあげるゾフィーを疲労と痛みに倒れそうな体に鞭打ち、両手を支えに使ってどうにか立ち上がろうとする慎吾。その体で戦闘できる限界が近付いてる事を示すように胸ではカラータイマーが激しく鳴り響きながら激しく点滅していた

 

「くっ……ははっ、ざまぁ……ねぇなぁ!」

 

 そうしてどうにか起き上がろうとしている慎吾目掛け、歩みよってきたバードは容赦無くバードンの足でゾフィーを救い上げるように蹴りをゾフィーの腹部分に叩き込んだ

 

「ぐはぁ……っ!」

 

 当然、起き上がろうとするのにも苦労していた慎吾がその一撃に反応出来る筈も無く、慎吾の吐き出すような苦悶の悲鳴と共に空中へと吹き飛ばされたゾフィーは仰向けの形で再び地面に叩きつけられた

 

「さっきの戦いかたと言い、ちっとはやるようだが……残念、亡国機業のこのバード様に挑むにはちっと甘かったようだなぁ……!」

 

「がっ……! ぐぅっ……!!」

 

 そう嘲笑いながらバードは倒れたまま起き上がる事が出来ないゾフィーを幾度も踏みつけて追い討ちを放って行く、慎吾はそんな連撃にマトモに抵抗する事も出来ずそうして苦しげに呻く事しか出来なかった

 

「ふぅ……まぁ、お遊びはここまでにしておいて、いよいよこいつでとどめを刺してやるとするか……!」

 

 そうやって、ひとしきり抵抗が出来ない慎吾をいたぶった事で満足したらしくバードは倒れたままのゾフィーのタイマー目掛けて右腕のパイルバンカーの先端を突きつけた

 

「あばよ、このパイルバンカーが打ち込まれる前に、最後の言葉を考えておくんだなぁっ! ギャハハハッッ!!」

 

 勝利を確信したバードが慎吾を見下ろしながら嘲笑い、いよいよゾフィー目掛けてパイルバンカーを打ち込もうと身構えた

 

「(くっ……こ、ここまでなのか……!?)」

 

 その一撃はどうあっても回避しなければならない、それは理解してるのだが、必死に足掻いてもエネルギーが足りず、自らに突き付けられたパイルバンカーを動かす事が出来ない。そんな絶望的な状況に慎吾が思わず諦めかけた時であった

 

「そうはさせんぞ……!」

 

 聞いただけで、心底安心できる力強い声とまばゆいばかりの白い閃光が瞬くように三度、慎吾の眼前一杯に広がった

 

 

 

 

「うっ……わぁあああああぁああぁぁっ!! な、なんだ!? なんなんだよこりゃあっ!? 見えねえっ! あたしの目が見えねぇっ!!」

 

 白い閃光が直撃した瞬間、バードはとどめを刺すのも忘れて悲鳴をあげると両手で自身の目を押さえながら狂ったような勢いで地面を転がりだした

 

「安心しろ、今の光で間違っても失明するようなダメージは負わせて無い。緊急事態故に一時的に、視界は奪わさて貰ったがな……」

 

 もがくバードに冷静に告げながら声の主は、恐らく先程の白い閃光を放ったと思われる装置。クリスタルで出来たアレイにも似たそれを本来の肩から手先の上から装着したであろう、Uシリーズの腕部に良く似た銀色の機械の腕で油断無く構えながら静かに歩いて慎吾の前に姿を表した

 

「ケン……さん……っ!?」

 

 地面に倒れていた慎吾はその姿を、懐かしくも自身が最も頼りにしている人物を見た瞬間に、先程までの疲労や痛みも忘れて両手を使って起き上がり、ケンへと視線を返した

 

「何、君と一夏君が唐突に消えたのに不自然とただならぬ危険を感じていてな……気がかりになって思わず後を付いて来たんだよ。しかし、念のためにいくつか装備を整えていたら少々時間はかかってしまっていたがな」

 

 

 生身なのにも関わらずアレイに酷似した装備を手にしたまま、空いている手で起き上がろうとゾフィーを助けながら、ケンは実に何気ない様子でそう慎吾に向けて言葉を続けていく。

 IS同士の戦闘にほぼ生身で突入すると言うあまりにも桁外れの行動をしているのにも関わらず、普段と全く変わらない落ち着いた態度のケンに慎吾が圧倒されて何もすることが出来ず、ただ呆然とした様子で地面の上に棒立ちしながら眺めていた

 

「光太郎の事も心配は無い。ここに来る前に頼れる人物に暫く預かってもらっている……だから、慎吾」 

 

 

 と、そこでケンは一旦、語るのを止め、慎吾の方を再び見ながら静かに告げる

 

「これを纏い、決して諦めずに君が奴を打ち倒すのだ!」

 

「…………これは!?」

 

 ケンの言葉に反応して慎吾がゾフィーをチェックしてみると、いつの間にか新たな装備がゾフィーにインストールされていた。しかも驚くべき事に先程まで枯渇寸前だったシールドエネルギーまでもが完全にまでとは言わないが回復しており、タイマーの点滅も穏やかなものへと変わっていた

 

「私が製作した物だが、これはウルトラアレイと言ってな、今は生身の私でも使用出来るように多少出力を押さえている上に試作型ではあるが、先程のように強い光で相手への牽制、他のISへの装備の受け渡し、そしてシールドエネルギーの回復を可能にするのだ……と」

 

 そこでケンは少し、申し訳なさそうに慎吾に向かって苦笑して見せる

 

「そうだ、これを作る際、参考の為に君からウルトラコンバータを借り受けていたのだったな……すまない、今回の新装備はその詫びの駄賃とでも思って遠慮無く使ってくれ」

 

 優しげな笑みを浮かべながらそうケンは慎吾に告げた。と、その時

 

「うっ……て、てめぇ……このクソ野郎がっ!」

 

 今の今まで強烈な光で一時的に視界を奪われた事でもがき苦しんでいたバードは立ち上がり、まだ完全に視力は回復していないのか目を細めながらも怒りに満ちた様子で立ち上がりながらケンを睨み付けた

 

「生身の分際でこのバード様をコケにしやがって! 殺す! 丸焼きにしてから全身穴だけらにしてぶっ殺してやるよおっ!!」

 

 バードは怒りのまま、左腕を向けると、そのまま無防備なケン目掛けて超高熱の火炎を発射した。が

 

「……それは簡単には行かないぞ?」

 

 放たれた一撃はケンに激突するより早く、ケンと炎の間に素早く入り込んだ何かが炎を軽々と弾き飛ばし一塊だった炎は散らされ無数の小さな火の粉へと変わり、飛び散った火の粉は風に吹かれて自然に消えていった

 

「んなっ……!? 馬鹿な! ありえねぇっ……!!」

 

 建物の外壁を破壊し、ゾフィーにも大ダメージを与えた自慢の一撃が塞がれた事でバードは目を見開く。丁度その時、未だ残る火の粉を振り払い炎を退けた者がその正体を表し、ケンはあくまで冷静にバードに告げる

 

「何故なら、それより先に彼が君の相手をするからだ」

 

 それは鮮やかな赤の表示と銀色の裏地、チェーンで繋がれた襟元が特徴的な新装備『ブラザーズマント』をその身に纏ったスピリットゾフィーの姿だった




 ウルトラアレイ
 ケンが主体、ヒカリが補佐に回って製作した攻守を兼ね備えたUシリーズ新装備。……では、あるのだが、あまりにも独創性が強くて扱いづらく、マニュアル操作以外では殆どその力を発揮出来ない欠陥があった為にケンの所有する試作一機を残して量産は見送られた

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