二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「えっと……こっちかな?」
「お、おい、光太郎……そんなにあっさりと……!」
光太郎の意見を聞いて入った美術部のクラス、そこで岡本太郎よろしく『芸術は爆発だ』と言うテーマの元に何故か開催されていた爆弾解体ゲーム。
光太郎がメインとして参加し、慎吾が付き添い、確実にクリアに目掛けて進んでいたこのゲームであったが、最終フェイズである『爆弾の最終完全無力化』、赤と青の二本のケーブルを選んで切断し終了と言う段階で、どちらのケーブルを切断すべきなのかハッキリとした答えが分からず長考に入りかけていた慎吾に変わるように特に悩まず、光太郎がニッパー手に赤のケーブルを切断したのを見て慎吾は驚き、慌てて声をあげた
が、本来ならばゲームオーバー。つまりは爆弾の最終完全無力化失敗時に爆発代わりに鳴り響くと言われていたアラームはいつまでたっても鳴る様子は見せなず、それどころか爆弾は僅かに鳴っていた電子音も消えて静かになっていた。すなわち、それは
「おめでとう~無事、爆弾解体完了でーす! おおっと! って、えっ……しかも、これって解体完了までの時間が歴代最速タイム!? す、すごーいっ!」
「へへっ……ありがとうございます!」
と、その瞬間『美術部部長』と、言う腕章をつけた女子生徒が拍手をしながら二人を称えがら歩みより、それと同時に二人が爆発解体ゲームを開始した時から、たった今まで時間を計測していたストップウォッチで光太郎がゲームクリアまでかかった時間を見て、驚きに目を見開いていた
「(そう言えば思い返せば、光太郎……私が軽く爆弾解体の基本を教えただけで、すぐに実行していたし、おまけに、ほぼ完璧と言えるレベルでそれを成功していたな……と、なるとこの時間も必然と言えるか)」
「おっとと……今、賞品を持ってくるね……と」
と、そんな風に嬉しそうに成功を喜んでいる光太郎を慎吾が分析していると、腕章を付けた美術部部長が
一旦、部屋の奥へ引っ込むと何かが入ってるらしい小さな小箱を持って、にこにことした微笑みを浮かべながら光太郎の元へと歩み寄ると光太郎の目の前で少し勿体ぶった様子で箱を開く
「はい、これが……爆弾解体成功の賞品、美術部特製の金メダルでーす!」
楽しげな美術部部長の声と共に箱から現れたのは、『祝!爆弾解体成功!』と表面に刻まれた手のひらサイズ程の小さな金色のメダルであった。メダルはさほど大きくないものの表面には全く曇りが無く、電灯の光に照らされ慎吾の目から見ても、少しばかり高価な商品として店頭に出せそうだと思える程に完成度が高く感じれた
「うわぁ……この金メダル、とっても綺麗ですねぇ……」
美術部部長に箱からメダルを手渡されると光太郎は目を輝かせ、うっとりとしたようにメダルを手に取ってそう言う
「え、えへへっ、そう言って貰えると頑張って、作ったかいがあるかなぁ……嬉しい……かも」
すると、光太郎にメダル同様に一切の曇りの無い瞳で純粋に誉められたのが少し照れくさかったのか、美術部部長は少し頬を染めると恥ずかしそうに頭を掻きながらそう呟いた
「あっ、そ、そう言えば! 名前、教えてくれないかな!? 今からメダルに刻んであげるから! ね!?」
そんな恥ずかしさを、まるで誤魔化そうとでもするように慌てた口調で少々強引に笑顔を作りながら光太郎へと呼び掛ける
「……? あっ、はい、僕は……」
そんな美術部部長の態度を奇妙だとは感じたらしく一瞬、不思議そうな表情をした光太郎ではあったが、だからと言って特に疑いを持った様子もなく名前と、そして聞かれてはいなかった年齢までも付け足して名乗った
「いやいやいや……矢鱈に純粋だとは思っていたけど……しょ、しょう、小学生ーっっ!?」
瞬間、窓ガラスが大きく震え、そのまま割れてしまいそうな程の大きさで美術部部長の絶叫が室内一杯に響き渡るのであった
◇
「それにしても美術部の部長さん、様子がちょっとおかしいな……って、思ったんですけど、あれは一体、何だっんでしょうか? ねぇ、慎吾さん」
「そ、そうだな……何故だろうな……私にもよく分からないな……」
首を傾げながら問い掛けてくる光太郎にそう、曖昧な返事をしつつ、慎吾は頭の中で、美術部部長が慎吾自身や美術部部員達の呼び掛けによって落ち着きを取り戻したのを見て慎吾達が立ち去ろうとした瞬間、美術部部長が小さく、本当に消えてしまいそうな程の小声で呟いていた言葉
『えっと……あの子は小学生……でも私がときめいちゃったって事は私って、もしかして……うわわわ!』
それが果たして光太郎にも聞こえてしまっていたかどうかが気になって気が気では無く、慎吾にしては珍しくそわそわと忙しくなく所在無さげに体を動かしていた
「そうだなぁ……おまえは他の同じ年の子と比べても背が高いし、顔も本当の年齢から見ればほんの少しだけ大人びてる……それでお前を同年代と考えてしまったから美術部部長さんも驚いてしまったのだろう。私はそう思うぞ?」
と、そんな最中、困っていた慎吾に助け船を出すようにケンが非常に落ち着いた様子でそう光太郎に語りかけた
「ケンさん……」
「……しかし、だからと言って特段お前がそれを気にやむ必要は無い。あくまでお前はお前、それで光太郎と言う一人の人間なのだからな」
予想だにしなかったケンのフォローに驚いて慎吾が言葉を詰まらせていると、ケンはそう言って光太郎の頭を軽く撫でた
「うん……分かりました父さん!」
そんなケンに光太郎は頭を撫でられながらそう力強く答えて、むんと胸を張った
「(はは……やはり私では……まだまだ、この人にはかないそうになぁ……)」
そうして何事も無いかのように容易く、一瞬にして空気を変えてしまったケンを見て、苦笑しながら慎吾は内心でそう呟いた
今は遠く、先が見えない程に自分の遥か先を歩いている。ケンに、その大きな背中に、いつの日にか追い付けるように願いを込めて
流石の隊長でも、この方には全くかなわないだろうな、と思います。精神面でも先頭面でも