二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回、以前からモブとして出ていたオリジナルキャラクターを出しますが……残念ながらウルトラシリーズとは無関係なキャラクターですので、ご注意を


78話 学園祭開幕! ご奉仕喫茶の一幕

それから、正確には慎吾が一夏に同室の光との生活を話したあの日から、何故か以前にも増して楯無が思わせ振りな冗談っぽい行動を取るようになり、それが切っ掛けとなって波瀾が起きたのだが、それは予期せぬ形で一夏を疲弊させてしまった事に責任を感じた慎吾が積極的にフォローに動く事で消火にあたり、放課後には慎吾も一夏も一心不乱に楯無からの特別指導を受け続けていると、あっと言う間に一日一日が過ぎて行き、慎吾が気付いた時には既に学園祭当日となっていた

 

「どうだ一夏、君の調子は大丈夫か?」

 

 慎吾と一夏専用となる一組近くの小さな更衣室、そこで開演前に僅かに与えられた時間を出来る限り使い、もう滅多な事では袖を通す事は無いだろうと思っていた白い執事服に身を包んだ慎吾は全身が映る姿見の前で細かく身嗜みを整え、赤と銀のストライブ柄のネクタイを見映えよくなるように調整しつつ締め直しつつ、慎吾は一夏にそう問いかけた

 

「はは……何て言うか、皆のテンションにパワー負けしそうです。今も全然、落ち着けないし……」

 

 その問いかけに、慎吾とは対になるような黒の執事服に身を包んだ一夏は、椅子に腰掛けたまま苦笑しながら答える。そう言う一夏の体は本人の言う通り、落ち着かない様子で世話しなく動きまわり、一夏の抱えている不安を言葉にせずとも分かりやすい形で表していた

 

「そうだな……これだけの人数がいるのでは、無理もない……と、言うべきだろうな」

 

 その一夏に同調するように慎吾は苦笑すると、そっとカーテンで覆われた近くの窓を小さく開き、から廊下、一組教室の前の様子を伺った

 

「あの織斑くんと大谷さんがダブル執事で接客!? いくらなんでも一組サービスし過ぎでしょ!」

 

「それだけじゃないよ、執事の二人とはちょっとしたゲームも出来るだってさ! 勝ったら何とツーショットで記念写真!」

 

「ついに来た……入学以来、お菓子も大谷さんグッズも織斑くん裏グッズも買わずに我慢に我慢を続けて貯め続けていた貯金を解放するその時が!」

 

 まだオープンしていないのにも関わらず、一組の『ご奉仕喫茶』の廊下前には生徒達は異様な熱気に包まれており、気のせいか否か周囲の空気が揺らめいてさえ見えた

 

「この様子じゃ……お互い、今日は凄まじく苦労する事になりそうだな」

 

「ですね……頑張りましょう……慎吾さん」

 

 これから自分達に起こりうるであろう苦労の気配を感じ取った慎吾と一夏は顔を見合わせて苦笑すると、そっと、廊下にいる生徒達に気付かれない程度に小さく開けていた窓を閉じるのであった

 

 

「それでは……いってらっしゃいませ、お嬢様」

 

 会計を終えたのを確認すると、慎吾は客であった一人の女子生徒にそう言って丁寧にお辞儀をする。その動きには以前アルバイトをした経験がしっかりと生きており、全く事情を知らぬ者が見れば慎吾を本職の執事かと思ってしまいかねないような程に中々見事な物だった

 

「……は、はいっ! すぐ来ます!! また最後尾から並んで会いに来ますっ!!」

 

 そんな慎吾の動きに一瞬、見とれていた女子生徒は瞬時に顔を赤くすると、舌を噛んでしまいそうな勢いでそう言うと、顔に満面の笑みを浮かべながら廊下に出ると瞬間、火がついたかのような勢いで一組から伸びる『ご奉仕喫茶』の長い列の最後尾に向かって走り出した

 

「ふぅ……っ」

 

 そんな客を、しっかりとお辞儀して見送っていた慎吾は、姿が見えなくなると顔を上げ、小さくため息を付く。『ご奉仕喫茶』オープンから休むこと無く忙しく接客に働き続けていた慎吾は午前を過ぎて少し、疲労し始めていた

 

「うん、相変わらず見事な接客。流石は、私のおにーちゃんなだけはあるな」

 

 そんな慎吾を見て何故か妙に納得した様子の、どこか自慢気な表情で頷き、ラウラがそう言って話しかけてきた。当然のようにその姿は、この『ご奉仕喫茶』の発案者なだけあって、その姿は完璧に決まったメイド服姿だった

 

「はは……そうは言うがラウラ。これは私が父から教えられた礼儀作法やアルバイトで身に付けた物をどうにか形にしたもの。言うならば付け焼き刃にしか過ぎない。私は、そう誉めれるような物では無いと思うが?」

 

 そんなラウラの発言を慎吾はやんわりとした口調で否定し、小さく苦笑する

 

「なるほど、おにーちゃん自身は自分をそう考えているのだな……」

 

 慎吾の話をじっくりと聞くとラウラは、そう考えるように呟き

 

「だがしかし、たとえそうだとしても私は、おにーちゃんを素晴らしいと思うぞ!」

 

 次の瞬間、迷いを見せない滑らかな口調で自身たっぷりに慎吾にそう宣言して見せた。ご丁寧な事にその右手にはしっかりガッツポーズまで作っている

 

「はは……ありがとう。ラウラ」

 

 そんなラウラからの好意を慎吾は今度は素直に受け取り、純粋な感謝の気持ちを込めて微笑んだ

 

「あー……ごめん大谷さん、ボーデヴィッヒさん……今、一番テーブル入ったお客さんが大谷さんご指名なの!! 大谷さん行ってくれる?」

 

 と、そんな中、少し申し訳なさそうにしながらも慎吾とラウラの間に割って入る形で、店内で働いてる箒、セシリア、シャルロットそしてラウラを含めた接客班の一人、皆と揃いのメイド服にピンクのヘアゴムで小さく髪を結んだ一組のクラスメイト、金子(かねこ) 二宮(にく)が話しかけてきた

 

「……あぁ大丈夫、問題はないよ金子。丁度、話は終わった所さ。……行ってくれるよラウラ」

 

 意図せず会話を割って入ることになったことで少しだけ不安そうにしていた二宮を安心するようにそう言うとラウラに別れを告げ、慎吾は少し燕尾服の襟元を整えると一番テーブルに向かって軽やかに歩き出す

 

「やっぱ筋肉ある男は中身もイケメン……やっぱり筋肉は最高よね……」

 

 そんな慎吾の背後では二宮がうっとりとした表情で、口元にうっすら涎を浮かべていたのだが、それは余りにも小さな呟きだったのと店内の慌ただしさが相成って誰にも気付かれる事は無かった

 

 

 

 

「ふ、ふふふ……ここまで計画通り、後はバッチリ堪能するのみよ」

 

 そして、件の一番テーブルでは偶々気付いた隣のテーブルの客が驚く程の迫力を持ち、上品に化粧した顔で笑みを浮かべる一人の女性客、有無を言わせない勢いで休暇を取り、アウトラインにかなり近い方法でチケットを入手し、本日来日したばかりのナターシャ・ファイルスその人が、慎吾が来るの今か今かと待ちかまえていた

 

「久しぶりに会えるんだもん、楽しませて貰うわよ……?」

 

 そう言うとナターシャは、あの日、バスの中で自身が奪った唇の感触を思い出しながら、空に思い浮かべた慎吾に赤いルージュがひいた唇でキスをした




 以前からモブとして登場し、筋肉を絶賛する発言ばかりしていた一組の生徒、金子二宮さん。ちなみに好みのタイプはストリートファイターのザンギエフです

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