二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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75話 慎吾の鍛練

「……と言うわけで私が試合に負け、今日から楯無会長が私と一夏を教えてくれる事になった。……本当に急な話ですまない、突然過ぎる話で憤りを感じるかも知れないが責任は私にあるんだ。そこだけはどうか理解して」

 

 翌日の放課後、箒にセシリア、鈴、シャルロットにラウラと慎吾と一夏、両名の呼び掛けにより全員が集合した第三アリーナで慎吾は最初に楯無に勝負を挑もうとしたのが一夏と言う事を除いて、包み隠さず一連の出来事を全員に話すと迷わず頭を下げた

 

「ま、まぁ……そこまで言われたのならば……」

 

「仕方ないわよねぇ……」

 

「……心から謝罪している方を許す事も、大切な心掛けですわ」

 

 そうやって真摯な態度で謝罪した慎吾を前に箒、鈴、セシリアは互いに顔を見合せながらも怒りを堪えて不問とする事を決めたようで、完全には言わないが、ある程度の納得を見せたような表情で肩の力を抜き、頷きながらそう答えた。一方で

 

「お兄ちゃんを近接格闘で正面から打ち負かすなんて……」

 

 

「昨日のおにーちゃんのあの疲労からして……相手は最低でも、こちらの想像を軽く越えるような強さを秘めてるのは確かだ。……気を付けろ、姉さん」

 

 慎吾を正面から打ち破った相手、と聞いた事でラウラとシャルロットは警戒するように、1m程の距離を置いて皆の前に並んで立つ慎吾と一夏

 

「あら、ふふふ……これから暫くは付き合う事になるんだから、そう邪険にしないで?」

 

 ほぼ間違いなく故意で、その間に挟まるような形で立つ楯無を強く警戒し、半ば『睨んでる』とも言えるような視線を向けるが、当の楯無はまるで気にした様子は無く、むしろリラックスした様子で二人に向かって微笑みながらそう言って見せるのであった

 

 

「シューター・フローによる円状制御飛翔

サークル・ロンド

……これを自在に使えれば戦術の幅が大きく広がる。だからこそ是非とも物にしたい……所だが……!」

 

 先程、楯無の指示により、手本のような形でシャルロットとセシリアが見せたシューター・フローと、サークル・ロンド。現在、その二つを慎吾はどうにか再現しようとゾフィーを展開させ、仮面の下で汗を流しながら奮闘していた

 

「……せやっ!」

 

 PICをマニュアル制御にしているため、円機動でアリーナの空を飛ぶ、ゾフィーの起動制御に気を配りつつ、アリーナ中央にある的となるバルーン目掛けて慎吾がゾフィーの左腕でスラッシュ光線を放つと、スラッシュ光線は見事に狙ったバルーンに直撃し、それを見ていた楯無は『やるね』と、小さく声をあげた

 

 そう、円機動をしつつ『スラッシュ光線』を放つ。単純にそれだけならば、慎吾は幾度かの練習でどうにかコツを掴み、多少の不安定さはあるものの、ある程度までは出来るようになってきていた

 

 しかし……

 

「Z光線っ……!」

 

 楯無の指示を飲み込み、複雑な機動を描きなつつ弾幕を回避した慎吾は再びバルーンに狙いを付けると、意を決して、ゾフィーの両手から雷のようにジグザグに波打ち、青白く輝くZ光線を放つ。その瞬間

 

「くっ……!」

 

 命中した瞬間、バルーンを跡形も無く砕くZ光線。その強力な破壊力の引き換えの代償に強力な反動が襲いかかると、それは慎吾の制御も降りきり、ゾフィーを周回している軌道からずらさせた

 

「ん~、改めて見ると、やっぱりZ光線といいM87といい、慎吾くんのゾフィーは『一発の威力が高過ぎる』のがネックなのね……」

 

 そんな慎吾の様子を見ながら楯無が少し、腕組みをしながら呟く

 

 そう、慎吾が手を焼かされていたのは自身のゾフィーの代名詞と言うべきZ光線とM87光線、二つの運用方法である

  

 現行のISと比べても破格の破壊力を持つその二つは、当然慎吾に帰ってくる反動が大きい為に今まで慎吾は使用する際には回避中でも踏ん張るためな『立ち止まって』使用していたのだが、この円状制御飛翔においては慎吾はその威力に振り回され、どうにも命中率が伸び悩んでいたのだ。

 

 しかしそれでも、慎吾は円状制御飛翔中にZ光線とM87光線を、親友たる光がくれた最高の切り札を諦めるつもりは端から無かった                     

 

「もう一度……もう一度だけ行かせてください楯無会長」

 

 精神集中から来る疲労で息を切らし始めながらも、慎吾はそう言うと再び円状飛翔を始めた

 

「はいはい、一度と言わず何度でもどうぞ?」

 

 そんな慎吾を楯無は励ます事も止める事も無く、ただ笑顔でそう答えると、再び飛翔を続ける慎吾へと指示を出していく

 

 どうやら慎吾が自身が納得出来るレベルでシューター・フローとサークル・ロンドを取得するにはもう少しの時間が必要とするようだった

 

 

「ふぅ……今日の訓練は私も、流石に疲れてしまったよ……」

 

 一夏と共に自室への帰路を歩く途中、タオルで額の汗を拭き取りつつ慎吾は少しため息をつきながら珍しくぼやくように一夏に告げた

 

「あれ……すっげえ難しいですよねぇ……俺、瞬時加速中に壁にぶつかっちゃうし……それ見てた、シャルが苦笑していたのもきつかったな……」

 

 その言葉に一夏も楯無の非常に理解しやすいが非常に厳しい指導と、訓練の中で見た気まずそうなシャルロットの苦笑を思いだし、疲労とは異なる冷や汗をしてそう答えると少し項垂れた

 

「と……そう言えば先程、私が飲み物を買いに言ってる間に虚先輩と話していたようだが、何を話していたんだ?」

 

 そうして一瞬、自然と沸いた重い空気を払おうと慎吾は咄嗟に話題を変え、歩きながら出来る限り自然な口調で一度にそう尋ねた

 

「えっ? あぁ、それはですね……」

 

 突然の問いかけに少し驚きながらもその問いに答えようとしながら一夏が慎吾と共用している自室の扉を開いた瞬間

 

「あら、二人ともおかえりなさい。もう少し遅かったら迎えに行こうと思ってたのよ?」

 

 

「「………………えっ?」」

 

  部屋の中で大胆に女体美を見せる裸エプロンと言う、予想する事すら受け付けないような姿をした楯無の姿を慎吾と一度は同時に目撃し、二人は呆然と口を開いた状態のままフリーズしてしまい、その衝撃は先程、薄ぼんやりと漂っていた重い空気を、流星の如く軽々と地平線の彼方へと吹き飛ばしてしまうには十二分であった




 今年もエイプリルフール、と言うのを活動報告にてしてみました。時間不足で昨年よりクオリティが落ちていますが、良ければ見てくれると嬉しいです

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