二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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58話 ひとまずの決着 愛しき故郷と慎吾の妹達

「すまない、予想していた以上に苦戦させられた……大丈夫か慎吾?」

 

 M87の放射が止まると、異次元空間から『ゾフィー』が飛び出し、『ゾフィー』は出てくるとのと同時に慎吾を心配して声をかけた。その体のあちこちには傷が残り、カラータイマーも赤く光って点滅し、『ゾフィー』が軽視出来ない程にダメージを受けているのが見て分かったが、それでもなお『ゾフィー』は自身より慎吾に気を使っていたのだ

 

「えぇ、私もベロクロンとの戦いで損害はありますが私自身は大丈夫です……ありがとう『ゾフィー』」

 

 そんな『ゾフィー』に慎吾は軽く手を動かして自身の無事を示し、心配をしてくれた事に礼を言った

 

「そうか、それは何よりだ。しかし……」

 

 そんな慎吾を見て安心した様子で『ゾフィー』はそう言う。と、その途中で何かを考え込むように腕を組んだ

 

「『ゾフィー』……何かあったのですか?」

 

「あぁ……慎吾、この事は君にも話しておく必要があるだろう」

 

 そんな『ゾフィー』を疑問に感じてそう話しかけると、『ゾフィー』は僅かに迷った様子を見せながらも静かに数分前、異次元空間で自身が体験した事を語り始めた

 

 

 

「ぎっ……やぁあああぁぁっ!!」

 

 ヤプールの怒濤の攻撃の一瞬の隙を狙って離れた『ゾフィー』のM87光線はヤプールの体を貫き、ヤプールは断末魔の悲鳴をあげた

 

「……ヤプールよ、これまでだ」

 

 それを見て勝負に決着が付いた事を確認するとゾフィーは構えを解き、直立すると落ち着いた様子でヤプールにそう宣告した

 

「ぐっ……確かに戦いは破れたが……今回の事件で、あの地球人がいた世界とこちらの世界には小さいが『繋がり』が生まれたはずだ……」

 

 と、致命傷を負って今にも息絶えそうな状態の中、ヤプールは何かを確信した様子でそうほくそ笑む 

 

「何だと……?」

 

「これから先、その小さな『繋がり』が、二つの世界をシンクロさせ片方の世界で起きた事と似た出来事が、もう片方でも起こるようになるだろう……」

 

 そのヤプールの不気味な言葉に思わず聞き返す『ゾフィー』。だが、その言葉が聞こえているのか、それとも深いダメージのもはや聞くことが出来なくなったのかは分からなかったが、ヤプールは『ゾフィー』の言葉を無視して笑いながら言葉を続ける

 

「くくっ……どちかに起こった出来事の影響で、あの地球人か、『ゾフィー』! 貴様が倒れて死ぬのを楽しみに待っているぞ! っ……ぐがぁっ……!」

 

 最後に高笑いしながら宣告するとヤプールは今度こそ息絶え、爆発と共に木っ端微塵に砕け散った

 

 

「なるほど、繋がり。ですか……」

 

 『ゾフィー』から話を聞き終えた慎吾は腕を組み、深く思案しながらそう呟く

 

「奴の言うことが真実であるなら、これから私、もしくは君の身に何が起こるのかは分からない。だがしかし、互いに注意を怠らずに警戒をする必要があるだろうな……」

 

「そうですね……事件は解決したようですが、全くもって厄介な置き土産が残ってしまいましたね」

 

「ふっ、確かにそうだな……」

 

 『ゾフィー』はそう言って信吾に注意を促し、慎吾はそれに頷きながら、そう言って深く溜め息を吐き、『ゾフィー』もそれに同意し、苦笑するようにそう言った

 

「……さて、互いに話は尽きないようが、そろそろ君は自分の世界に戻らねばなるまい」

 

 と、そこで『ゾフィー』は話を区切り、小惑星の表面に出来ている異次元空間の入り口を指した

 

「いるのだろう? その世界には君の『家族』になってくれた者達が……。この空間を通り抜ければ君の世界に帰れるはずだ。私がそこまで送り届けよう」

 

 そう言うと『ゾフィー』は確認するように、慎吾に向かって手を差しのばした

 

「えぇ、あなたと別れるのは寂しいですが……ここで、別れですね」

 

 慎吾がそれに答えて頷くと次の瞬間、『ゾフィー』が慎吾を庇うような形で二人は同時に異次元に飛び込み、怪しい光に満ちた異次元空間の光と『ゾフィー』の放つ目映いばかりの赤い二つの光が慎吾の視界一杯に広がると、気付かぬうちに慎吾はその意識を闇の中へと落としていった

 

 

 

「んん……」

 

 顔に降り注ぐ光を感じ取り慎吾が目を覚ますと、そこは神秘的な光に満ちた光の国では無く、慎吾がいくらか見慣れた場所であるIS学園保健室。そのベッドに慎吾は寝かされていた

 

「(そうか……帰ってこれたのか私は……異次元空間を抜ける途中で意識を無くしてしまうとは情けないが)」

 

 それほど長い間、離れていた訳では無いのに懐かしさを感じさせる地球の光景を眺めていると、ベッドのすぐ隣にいた二人が慎吾が意識を取り戻した事に気が付き、慌てて心配そうな顔を近付け、同時に話しかける

 

「あ、お兄ちゃん!? 意識が戻ったの!?」

 

「大丈夫か、何ともないか、おにーちゃん!?」

 

「あぁ……大丈夫さシャルロット、ラウラ。妹のお前達を残して、私は消えてしまったりはしないよ」

 

 慎吾は自身の妹達二人を安心させるように穏やかな口調でそう言うと、ベッドの上で起き上がりそっと両手で二人の頭を撫で始めた

 

「ん……心配したんだぞ、おにーちゃん」

 

 慎吾に頭を撫でられ、ラウラは少しくすぐったそうにしながらも嬉しそうにそれを受け入れながらそう言い、その隣で同じく慎吾に頭を撫でられ、満足そうに目を閉じていたシャルロットも呟く

 

「うん……僕も心配だったよ、一夏からトレーニング中にお兄ちゃんが倒れた。って聞いて……」

 

「(うん……?)」

 

 シャルロットの言葉を聞き、慎吾の眉が僅かに怪訝を感じて動く

 

 あの光に包まれて光の国へと行っていた自分は、その間、行方不明と扱われるのだろうと思っていた。だが、しかし自分が『トレーニング中に倒れた』と扱われているとは?

 

 そう疑問に感じながら慎吾がベッド横の時計付きの電子カレンダーを見た瞬間

 

「(んなっ……!?)」

 

 そこに表示されていた日付と時刻を見て、慎吾は驚愕に目を見開いた。

 

 自身が気絶していた時間を差し引いても、向こうには少なくも5時間以上は滞在していた筈だ。だが、しかしどうにも電子カレンダーと時計を見る限り、あの光に包まれてから30分も時間が過ぎていないのだ

 

「(やはり、相手は異世界。こちらの世界の常識がそう簡単に通用する物では無いのかもしれないな……)」

 

 シャルロットとラウラ、二人が満足するまで頭を撫でつつ、この話を千冬やヒカリにどう説明すべきか慎吾は悩み始めるのであった




 次回で『真・ゾフィーとの対面編』は終了です。そこから先は再びオリジナル編です。そこで、臨海学校編で回収出来なかった出来事を回収します

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