二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

42 / 177
 今回も日常編です。日常編は次くらいまでは続きそうです


42 いざ海へ!ゾフィーと妹達

「これで十秒……次、だな」

 

 一人の女子を肩から下ろし、一息付くとまた新たな女子を慎吾は背に乗せた。ちなみに女子達の間では『慎吾に負担をかけぬように肩車時間は一人十秒まで』、『しがみつく為の頭や肩を除外しておさわりは基本的に厳禁』と、言った感じにいつの間にかしっかりとしたルールが決められていた

 

「向こうは無事でやっているだろうか……」

 

 特に疲れた様子は見えない様子で慎吾は首を僅かに動かして海へと向ける。慎吾の視線の先では、鈴と一夏が競うように波に揺られて浮かぶブイを目印にして競うように泳いでおり、更に良く見てみると現在は鈴が僅かに一夏をリードしていた

 

「全く……お二人とも……」

 

 そんな二人をセシリアもまたどこか不満げな目で見つめつつも、丁寧に自身の水着のズレを確かめていた

 

「確かにあれは気の毒だとは思うが……あの元気さは鈴の魅力だと思うぞ?」

 

 そんなセシリアをたしなめるような口調で、さほど疲労していなかったものの、皆に進められて小休憩に入った慎吾がそう言いながらセシリアの隣に立つ。

 

 そう、事が起こったのはつい数分前、ちょっとしたやり取りからセシリアに一夏がサンオイルを塗ることになったのだが(ちなみに、この事で自身も一夏にサンオイルを塗ってもらおうと再び騒ぎが起きそうになり、やはり繰り返しのように慎吾が代打を申し出たのだが、行列を潜り抜けて登場した清香の『大谷さん一人にそこまで迷惑をかける訳にはいかないでしょ?ある程度は自重しようよ』の一言である程度落ち着いた)、その事を当然ながら面白くは思わない鈴が一夏がセシリアにサンオイルを塗っている途中で茶々を入れ、はずみからセシリアの水着が肌から離れてしまい、一部始終を見ていた慎吾は慌てて視線を反らして目を硬く閉じる事になった。そうこうしている内に、鈴は一夏を連れて海へと逃走。そして今は、何故か二人で競争をしている。と、集まった女子達の協力もあって非常に素早く水着を着直したセシリアから改めて話を聞いた慎吾はたまらず苦笑した

 

「しかしなセシリア、繰り返し言うようだが……」

 

 少し怒り気味のセシリアを落ち着かせるべく、再び口を開こうとした慎吾だったが、突如その顔は険しい物へと変わり、その目は瞬きもせずにずっと一点を見つめていた

 

「……慎吾さん、どうかしまして?」

 

 そんな慎吾の様子を怪訝に感じ、セシリアが不思議そうに慎吾に尋ねながら、慎吾の視線の先を見つめ

 

「あれは……!?」

 

 それに気付いたセシリアの顔もまた驚愕に彩られる、慎吾が見つめていたのは先程まで鈴と一夏が泳いでいた場所。が、一夏の先を泳いでいた筈の鈴の姿は忽然と消え失せており一夏も泳ぎを止めている。そして鈴がいた場所には白く、荒い泡が漂っていた。

 

 そう、まるで何かが海中で激しくもがいたかのように

 

 

 

「…………くっ!!」

 

 そこまで確認した瞬間、慎吾は砂浜を陸上選手の如く激しく蹴り飛ばして全速力で走り出すと、勢いのまま海へと飛び込み、ダイナミックなクロールで一気に二人の元へと泳いでいく

 

「大丈夫か二人とも!?」

 

「慎吾さん!あ、はい、こっちは何とか大丈夫です」

 

 慎吾が二人の元へとたどり着くと、一夏は既に鈴を救助し終えたらしく背中に鈴を背負った状態で泳ぎながら慎吾へと返事を返した

 

「し、慎吾あんたも……けほっ……来たのね……」

 

「無理して返事は返さなくていい、今はまず呼吸を整えておくんだ」

 

 慎吾が現れたのに気が付くと一夏に背負われた状態のまま鈴が咳き込みながら返事を返した。溺れた直後なのか顔色が青白いのにも関わらず平静を装うような態度の鈴をそう言って諭した

 

「慎吾さん助けに来てくれたのは嬉しいですけど……ここは俺だけでも大丈夫です。戻ってください」

 

「そう言う訳にはも行かないさ、せめて浜辺までは私も同行しよう」

 

 そう言って帰そうとする一夏の言葉を押し退けて、慎吾は一夏と鈴から一定の距離を取って浜辺まで付き添って行った。その間、鈴と一夏の間でい会話が行われていたのだがそれは慎吾の耳には自身の泳ぐ音と、波の音に邪魔されてとどかなかった

 

 

「どうしたシャルロット……こんな所に引っ張って来て」

 

「ごめんねお兄ちゃん、ちょっと急用があって……ほら」

 

 浜辺へとたどり着き、鈴と一夏を見送っていた慎吾はシャルロットに手を引かれて浜辺に建てられていた休憩所の建物の影へと来ていた

 

「……もしかして、そこいるのはラウラ……か?」

 

 と、そこで慎吾は今一つ確証を持てないような様子でそう呟いた。それも当然、シャルロットに案内された建物の影にいたのは複数の白いバスタオルを巻き付けて頭の先から膝下までを多い尽くした奇妙な何かであり、それはさながら手を抜いたミイラのコスプレのようにも見えた

 

「その声は……おにーちゃんか」

 

 慎吾の声に白い何かが動いて反応すると顔部分にあった一枚のバスタオルが外れ、中から慎吾の予想していた通りラウラが姿を現した。そんなラウラの姿を見て少し呆れたようにため息を付きながらシャルロットは口を開いた

 

「ほら、ラウラ。お兄ちゃんが来てくれたんだから少し頑張ってみたら?」

 

「無ぅ……わ、分かった。おにーちゃんと……その……姉さんに頼まれたのならば仕方ない……」

 

 ラウラが心底、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながらそう言うとシャルロットは、ん、よろしい。と少し意地悪な笑顔をしながら満足そうにそう言い、慎吾はそんな二人を見ながら『本当の姉妹のようだ』と想い苦笑していた。

 

 シャルロットとラウラのこの姉妹のような関係はトーナメントが終わった時から続いており、どうやら自分が先に慎吾を兄と呼び始めた事、なおかつトーナメント優勝と言う実績を使ってやや強引気味にラウラを説得しシャルロットが長女、ラウラが次女と言う形で落ち着いたらしい。

 

「ええい!ど、どうだ、おにーちゃん、私の姿は?」

 

 と、そこで勇気を出したのかラウラは体に纏っていたバスタオルを一気に投げ捨て、自身の姿を慎吾と晒して見せた。

 

「……うむ、良く似合ってるぞラウラ。水着とそのヘアスタイルもお前に合って非常に可愛らしい……私はそう思うな」

 

 タオルを取ったラウラの姿を見た慎吾は全く迷いを見せない様子でそう答えた

 

「本当か、おにーちゃん!?」

 

 慎吾の言葉にたちまち表情を明るくして、アップテールに結んだ髪を揺らしながら心底嬉しそうにそう言うラウラ。その姿はラウラ現在着ているレースをふんだんにあしらった黒のビキニと非常に絵になっており、例えその構図が雑誌の表紙になっても誰一人疑問を持たないだろうと確信出来るほどの眩しさを持っていた

 

「あぁ、ちなみにラウラの髪は僕がセットしてあげたんだよ?」

 

「うむ……頑張ったなシャルロット」

 

 そう得意気に慎吾へと言うシャルロットの頭を慎吾は優し撫でた

 

「あっ…………」

 

 瞬間、シャルロットは魔法のように静かになり、じっとして慎吾に頭を撫でられ始めた

 

「ね、姉さんだけではずるいぞ! おにーちゃん、私もだ!」

 

「あぁ……分かったよラウラ」

 

 そんなシャルロットに少し嫉妬をしたのかラウラが恥ずかしさを捨てて慎吾の元へと駆け寄り、『さぁ撫でろ』と言わんばかりに慎吾に向かって頭を突きだし、慎吾は苦笑しながらラウラの頭を撫で始める。

 

 

 その後、慎吾が二人の頭を撫でていたのをクラスメイトに目撃され、どういう訳か『慎吾に頭を撫でて貰える権利』を賭けて、シャルロットとラウラをも巻き込んでさながらスポーツ漫画のごとき壮絶なビーチボール大会が日が沈むまで行われる事になり、その日の自由時間は旅館の従業員曰く今までに無い程の騒がしさとなり、千冬を多いに呆れさせるのであった




 ついに明確な姉妹判定を作って見ました。今回の話通りにウルトラ兄弟で例えるなら。シャルがウルトラマンのポジション。ラウラがセブンに近いポジションになるかもしれません。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。