二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

39 / 177
 言い訳がましいと思われるでしょうが、私はかっこいい隊長を書きたいのです。書きたいと思っているのですが、日常パートだと何故か隊長をこんな役割にさせてしまうのです……


39話 ショッピングモールとゾフィーの災難

「ううむ、ここのショッピングモールは本当に広い……これは冗談でも無く油断をすれば迷子になりそうだ」

 

 休日の日曜日、七月の頭に迫っている郊外学習、いわゆる三日間の臨海学校に備えて荷物を揃えていた慎吾は昔、使用していた水着のサイズが合わなくなっていた事に気が付き、一人駅前のショッピングモール、『レゾナンス』に訪れ、そこで慎吾は非常に交通アクセスに優れ、食事、衣服、レジャー等の店舗が充実した作りとなっているレゾナンスのその内部のあまりの広さに圧倒されて思わず感嘆のため息を付いた。

 

「……いつまでもここにいても仕方ない。ひとまず行くとしよう」

 

 落ち着いた所で慎吾は先程見た案内板の表示に従い、男女用共にスポーツ水着の品揃えバッチリと看板文句のある店がある二階のショッピングモールへと向かって歩き出した。

 

「ヒカリも来てくれれば助かったのだが……」  

 

 エスカレータに乗った慎吾は少し残念そうにそう呟くと、昨夜、携帯端末に届いたヒカリからの電子メールに再び目を通した。

 

『誘ってくれたのは嬉しいが元々立て込んでいた案件の期限が早められた為に行けそうに無い。すまない慎吾』

 

 メールの内容こそ簡潔ながらも、ヒカリがしっかりと自分の事を考えてくれている事が伝わっているメールにふっ、と慎吾は笑みを浮かべながら取り出したメール確認の為に取り出した端末をしまいうと。エスカレータを降り、二階へと足を踏み入れた。

 

「さて、目的の店はこっちだな」

 

 既に店内の見取り図を頭に入れておいた慎吾は、休日故に数多くフロア中を歩き回る客の人々に当たらないように注意しながら、真っ直ぐに目的の店へと向かって歩いていく。

 

「おや、あれは……?」

 

 と、そこで迷わず歩いていた慎吾は視界の先に何故かそれぞれ壁にぴったりと張り付き、夢中で何かを観察している見知った後ろ姿の三人組を見つけた慎吾は進む道を変え、三人組がいる場所、女性水着売り場の近くへと向かって歩き、ある程度近付くと背後から三人に向かってそっと声をかけた。

 

「鈴、セシリア、ラウラも一体そんな所に隠れて何をやっているんだ?」

 

「「うひゃうっ!?」」

 

「おぉ、誰かと思えば、おにーちゃんではないか」

 

 突然、慎吾から声をかけられた事で狼狽して思わず背をびくりと動かして奇声をあげる鈴とセシリア。そして、それとは対称的にラウラは慎吾の姿を見ると嬉しそうに慎吾の元に近寄ってきた。

 

「……!! あんたに対する文句は後でたっぷり言うから今は隠れなさいっ!」

 

 そんな中、鈴が出来うる限り押さえた様子の声で河辺近くの物陰に隠れながら三人に指示を出す。その声にはっとしたようにセシリアとラウラが動き、慎吾も現状を把握できないながらも指示に従い、自身も近くの物陰に身を隠そうとしたが高い身長が災いして上手く身を潜める事が出来ず、結果的に慎吾は一人、『頭隠して尻隠さず』の形になった。

 

「……それで、一体三人は何をしてたんだ?」

 

 咄嗟に物陰に隠れるなどと言う普通では無い行動から大体は察していたが、一応確認の為に慎吾は出来うる限り自身の体を物陰に収めようとしながら小声で鈴に尋ねた

 

「あれよ、あれ……」

 

 慎吾の問いに鈴はしっかりと身を隠しつつ、険しい顔のまま指で壁の向こう側を指差しながらそう言った。

 

「あぁ、やはりか……むむ?」

 

 鈴の指差した先、女性水着売り場、案の定そこにいたのはシャルロットと一夏。と、そのまま観察しているとシャルロットが水着を片手に一夏と何かを話したかと思えば何とシャルロットが手を引き、一夏と共に試着室へと入っていってしまった。その衝撃的な光景に、黙って見ていた慎吾はたまらず声をあげた。

 

「あいつ……」

 

「待て、流石に今回ばかりは気持ちが理解できるが…………落ち着くんだ鈴」

 

 その光景をしっかりと見ていた鈴は、誰にだって分かるような明らかな怒りに満ちた目で一夏とシャルロットが入った試着室を睨み付けて身構える。今にも飛び出し、試着室の一夏に向かって飛び蹴りでもしそうな鈴の様子を見た慎吾は思わず身を隠すのも止めて鈴を止めに入った。

 

「そうです、まず落ち着くべきですわ鈴さん」

 

「セシリア……」

 

 と、そんな慎吾の背後からセシリアの声が聞こえ、その落ち着いた様子の声に慎吾は安堵し共に鈴に冷静さを取り戻させるのに協力して貰おうと振り返り

 

「無用な接近は控え、遠距離から確実に狙うべきですわよ?」

 

「セシリアァァッ!?」

 

 見た目は笑顔、しかしその目元は全く笑わず部分展開させたブルー・ティアーズにスターライトmkⅢを手にしたセシリアを見て悲鳴のような声をあげた

 

「くっ、仕方ない……ラウラ、手伝ってくれ!」 

 

 新たにセシリアの前に立ち塞がって止めつつ、鈴の動きも見逃さないように注意しながら慎吾は奥の手とばかりにラウラを呼ぶ

 

「……いない!?」

 

 が、先程まで確かにラウラがいた筈の場所からは忽然とラウラの姿が消え失せており、周囲にも全く見当たらない

 

「くっ……」

 

 ラウラからの救援を諦めた慎吾は何とか自分だけの力で二人を落ち着かせようとした時だった。

 

「オルコットに凰、大谷、お前達、そこで何をしている」

 

「「お、織斑先生!?」」

 

 突如、姿を表した千冬に鈴とセシリアは同時に驚愕して勢い良く振り返った

 

「あっ」

 

「「あっ」」

 

 と、その勢いで慎吾は二人分の振り返る力で大きく体勢を崩し、そこに更にスターライトmkⅢが激突して慎吾は空中へと吹き飛ばされ、慎吾、続いて鈴とセシリアの声が重なる

 

 そして

 

 ドンガラガッシャーン!!

 

「うわぁぁぁぁ!!人が飛んできた!?」

 

 何の因果か慎吾が吹き飛ばされた先、隣の店舗はあイメージチェンジの為にペンキで店の壁を塗り替えており改装中。そこに慎吾は飛ばされた勢いのまま突っ込み、ゾフィーを展開させる間もなく頭から塗装に使っていたペンキ液が入った缶の中身をしたたかに浴びた

 

「(あぁ……どうして私はこんな目にばかり……)」

 

 目の前に転がる『ブロンズ風カラーペンキ、HP社製』と書かれたペンキの缶を見ながら、頭から足先までブロンズ色に染まった慎吾は、ペンキまみれの顔で泣き笑いのような顔を浮かべてがっくりと崩れ落ちたのであった




 お気づきの方もいるかもしれませんが

 HP社=ヒットポリト社

 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。