二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「えと、大谷…さん、ちょっといい……ですか?」
一時間目の授業が終了後、予習をしていた慎吾に多少、挙動不審な動きで近付いて来た一夏が若干緊張した様子で慎吾に話しかけてきた。
「あぁ、なんだ織斑?」
慎吾は一夏の声を聞くと予習していた手を止め、顔を上げて視線を合わせた。
「えーっと、俺達二人だけの男子じゃないですか、だから大谷さんと仲良くなりたいなっ……て」
そう言う一夏に、慎吾はふっと優しげに笑いかけな
「はは、そんなかしこまった態度を取る必要は無い。もちろんだよ織斑、世界でISを使えるただ二人が同じクラスに揃ったんだ。是非仲良くしようでは無いか」
「本当ですか!?良かったぁ……じゃあ、早速何ですがね……」
慎吾の言葉に安心した様子の一夏が、何か言おうとした瞬間だった。
「すまない………ちょっといいか?」
突如、慎吾と一夏を様子見で牽制しあっていた女子の中から一人、黒髪をポニーテールに白いリボンで結んだ女子生徒が話しかけて来た。
「……箒?」
「ふむ、織斑の知り合いか?」
驚いたように名を呟く一夏に慎吾が訪ねる。
「あ、はい、こいつは篠ノ之箒って言って……俺のファースト幼馴染みなんです。会うのは久しぶりなんですけど……」
「なるほど幼馴染みか」
それを聞いた慎吾は軽く頷き、箒に向けていた視線をちらりと動かして教室に取り付けられた時計に向けると一夏に言う。
「まだ時間は十分ある。私とは次の休み時間にでも話せばいいから、久しぶりにあった幼馴染みと話をしてくるといい」
「えっ、でも………」
「大丈夫、私の事なら気にするな」
だめ押しのように言う慎吾に、吹っ切れたのか一夏は箒と共に人にあまり聞かれたくは無いのか、廊下へと出ていく。と、扉を開き教室から出ようとした一夏
に慎吾が声をかけた
「そうだ織斑、最後に一つ、私の事は大谷でなく気軽に慎吾と呼んでくれて構わないぞ」
「分かった慎吾さん!じゃあ俺も一夏でお願いします!」
「とっ………あぁ、分かった一夏」
元気良く返事を返す一夏に、一瞬慎吾は驚きで膠着したもののすぐに返事を返すと二人が出ていくのを見送り、再び予習を始めたのであった。
◇
「大丈夫、私も共に学びつつ教えよう。なに、まだまだ皆に追い付けるさ」
「慎吾さん………なんかすいません」
優しく励ます慎吾に申し訳なさそうに頭を下げながら一夏に言う。慎吾は予習の旅に読んでいた百科事典と見間違う程の参考書を片手に机の側に立ち丁寧に説明しながら自分も予習と復習と言う形で学びつつ一夏に教え、一夏はそれを聞きながら椅子に座ってノートを取っていた。
「しかし………電話帳と間違えて参考書を捨ててしまうとは………はははっ、今朝のSHと言い一夏は面白いな」
「ちょっ!?今それを掘り返さないでくださいよ!!」
話している途中で先程の授業での光景を思い出し、軽く失笑した慎吾に一夏は慌てたように言う。
「はは、すまない。その詫びも兼ねて私がしばらく出来る範囲で力になろう」
「………お願いしますよ」
軽くじっとりとした目で睨む一夏を軽く受け流しつつ、再び二人の学習が始まろうとしていた時だった。
「ちょっとよろしくて?」
突如、二人に美しい金髪に澄んだ青い瞳を持つ一人の女子が話しかけて来た。
「…………構わないぞイギリスの代表候補生、セシリア・オルコット。基本は教え終えたしな」
呆然としたままの一夏に変わりに慎吾が参考書を畳んで机に置きながら女子生徒、セシリアに返事を返す。
「あら、私の事をちゃんと知ってますのね。それ相応の態度と言うものを分かっているようで何よりですわ」
「我がクラスただ一人の代表候補生だしな。チェックはしていたさ」
慎吾の言葉が気に入った自信たっぷりに言うセシリアに慎吾は特に態度を変えずに返事を返す。と、おずおずと言った感じで手を挙げる
「あのさ、さっきから聞こうと思ったんだど…………代表候補生って、何?」
瞬間、聞き耳を立てていたらしい女子生徒が数人ほどすっころび、慎吾は顔を押さえてがっくりと肩を落とした。
「一夏……代表候補生についてはついさっき教えたぞ……」
「うえぇっ!?」
ポツリと呟く慎吾に一夏は慌てた様子で自分が書き込んでいたノートに視線を移し、次の瞬間、顔は一瞬で青ざめた。
「ご、ごめんなさいっ!!」
「い、いいんだ……私の教えが悪かったのもあるだろうしな………ゆっくりと行こう……ゆっくりと……」
凄い勢いで頭を下げる一夏に慎吾は頭を抱えながらも何とか返事を返し、そのままセシリアの方をゆっくりと向き
「すまないセシリア・オルコット、急に時間が必要になった…。話は次の休み時間にしてくれないか?な?」
「わ、分かりましたわ!下々の者の要求に応えてるのも貴族の務めですし、ええ!そうですとも!」
全体から負のオーラを出している慎吾に圧されたのか、セシリアは背一杯の強がりを言いつつ足早に立ち去って行き、後には慎吾と一夏だけが残された。
「すいません……ほんとスイマセン、慎吾さん」
「いいんだ、一夏……いいんだ……」
気まずい雰囲気と申し訳なさの二つの効果があってかその後、一夏は次の授業開始まで高い集中力を発揮して背一杯勉強を続けたと言う。
慎吾の口調をゾフィー兄さんに似せようと努力していますが……難しい