二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 分量を少し増やしてから、時間がかかるように……次回はもう少し早めに投稿します


25話 授業開始とゾフィーの兄力

「見事……と、しか言いようがないな」

 

 先程開始された、ラファール・リヴァイブに乗る真耶にタッグで挑む鈴とセシリアの戦闘実演はたった今、終了し千冬の指示で解説をしていたシャルルの話をしっかりと聞いておきながらも行われる実演をコンマ一秒も見逃さなかった慎吾は思わず感嘆の声を上げた。

 

 単純に結果を言ってしまえば『圧倒』、相手が二人と言う不利な状況にも関わらず。真耶はそれを技量を持って軽々とひっくり返してしまったのだ。

 

「さて……これで諸君にもIS学園教員の実力は理解出来ただろう?以後は敬意を持って接するといい」

 

 戦闘でかける言葉が無いほどにやられ、立ち上がれず座り込んだまま肩で息をしている鈴とオルコットにクラスの同情の視線が集まる中、千冬は手を軽く叩いて意識を切り替えるようにそう言った。

 

「では今から実習を行う。実習は専用機持ちの大谷、織斑、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰をグループリーダとする六つのグループに分けて行う。では、分かれろ」

 

 千冬がそう言い終わるや否や、一斉に女子達は動き出し瞬時にして慎吾、一夏、シャルルの元に人だかりを作った。

 

「大谷さん、分からない所があったら教えてください!」

 

「もう一回、あの技を見せて!」

 

「そ、その筋肉に触らせて下さいっ!」

 

「は、ははは………皆、少し落ち着いてはくれないか?」

 

 予想はしていたものの、想像を越えるほどの女子達からのコールに慎吾は手をこまねいて誤魔化すように苦笑するしか無く、慎吾が隣を見てみると慎吾より若干多い人だかりに囲まれている一夏とシャルルも同じく困ったように顔を見合わせていた。

 

「何をやってる馬鹿共が!出席番号順に調整して各グループに入れ!………仮にでも、次にもたついた奴がいたら、そいつにはISを背負ってグラウンド百周させるぞ?」

 

 状況を見かねた千冬が脅すかのようにそう言うと蜘蛛の子を散らすように女子達は移動し、あっという間に人数調整もバッチリな六つのグループが完成した。

 

「(好き好んでISを背負ってグラウンドを百周するなどど、思う人間はいないだろうから当然と言えば当然なんだがな……)」

 

 その冗談のようなスムーズな動きを見た慎吾は静かに笑うのであった。

 

 

「それでは準備も終えた所で、出席番号順に始めるとしよう。最初は……相川(あいかわ)だな?」

 

「はいはいはーい!出席番号一番!相川清香(きよか)!部活はハンドボール部!趣味はスポーツ観戦とジョキングです!よろしくお願いしまーすっ!!」

 

 訓練機、『打鉄』を受け取り慎吾が実習を始めると早速、出席番号一番の生徒、清香が片手を上げ小さく跳ねながら慎吾に少々やり過ぎな程に元気よく返事を返した。

 

「うむ、元気が良いな。今日の実習も頑張ってくれ」

 

「あっ……」

 

 そんな清香を慎吾は評価し優しく微笑むと、そっとその肩に手を置く。置かれた清香は一瞬、先程の元気が消え、恥ずかしそうに頬を染めて呟いた。

 

「あっ……いいなぁ……」

 

「わ、私も気合い付けにお願いします!」

 

「応援の言葉もよろしくお願いします!」

 

 と、そんな清香を見ていた慎吾のグループの他の女子達は争わんばかりに慎吾の前に隊列のように肩を並べる。

 

「あっ、あぁ……分かった」

 

 その動作に少し押されながらも慎吾は答え、一人一人に『頑張れよ』や『大丈夫だからな』などと言った言葉をかけながら肩を優しく叩いて回った。

 

「くぅーっ!大谷さんの優しさが染みるっ!」

 

「私の胸に込み上げるこの熱いもの……これがっ!これがお兄ちゃん力なのかぁっ!?」

 

「よ、喜んでくれたのならば何よりだ」

 

 信吾に肩を叩かれた女子達は次々と心底満足そうにそう言い、慎吾はそんなオーバーリアクション気味な女子達の反応に冷や汗を浮かべながらも笑顔を返した。

 

『あぁっ!?』

 

 と、そんな慎吾の背後から幾重にも重なった羨ましげな声が響く。

 

 慎吾が声のした方向に振り返って見ると、そこでは腕組して面白く無さそうに一夏を睨む箒を除く一夏のグループ全員とシャルルのグループのこれまた全員がそれぞれの前に一列に並び、ダンスにでも誘うかのようにお辞儀の体勢で右手を差し出し、顔だけはしっかりと慎吾達を見ていた。

 

「ど、どうしよう……」

 

「私も織斑くんに肩を……いやでも……うぅん……」

 

「これは悩み所だわ……」

 

 慎吾達のやり取りを見ていたメンバーは、自分もまた一夏やシャルルに肩を叩いて貰おうかと悩み、体制を迷うように動かす。

 

「ほぅ………悩んでるようだな諸君……」

 

『いったあぁぁぁっっ!?』

 

 と、その瞬間、嫌に低い千冬の声が悩んでいたシャルル班のメンバーが同時に悲鳴を上げた。

 

「私は教師だ、諸君らがそんなにも実習授業で悩んでいるのならば私自ら見てやらないといかんな。そうだろう?」

 

 悶絶するシャルル班の女子達を見ながら優しげな口調でそう言う千冬。その口元には微笑みすら浮かべており、千冬の美貌もあってそれはさながら女神の微笑みのようでもあったが。その微塵も笑ってはいない目を見たものは『鬼神あるいは夜叉の笑顔』と答えただろう。

 

「あ、いや……その……」

 

「も、問題は自力で解決した方がいいかなぁ~何て……」

 

 そんな千冬に恐怖しながらも勇気ある二人が何とか迫り来る災難から逃れようと言うが。

 

「何、遠慮することは無いんだぞ?」

 

『はい……』

 

 再び千冬の目が全く笑ってはいない微笑みを受けて反撃する力が無くなり、例えるならば死んだ魚のような目で力無く首を縦に降った。

 

「……さて、改めて自己紹介も済ませた事だし私達も張り切ってとするか」

 

 そこまで見た慎吾は再び振り返り、班の全員に向かって短く確認するように言う。

 

『は、はいっ!』

 

 そんな慎吾の声に自分達もシャルルの班の二の舞にはならないとばかりに背筋を伸ばして真面目な態度で返事を返す。

 

「(シャルル班のメンバー……挫けないでくれよ………)」

 

 背後から時折、聞こえてくる悲鳴を耳にしてシャルル班の無事を祈りながら慎吾は訓練を始めたのであった




 個人的に歴代ウルトラシリーズを見てみると隊長の所謂、兄力はある方だと個人的には思います。
 セブンの兄らしさには流石に負けるとは思いますが……

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