二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
慎吾が専用機『ゾフィー』を貰ってから数ヵ月後、つつがなく試験をクリアした慎吾は無事にIS学園へと入学した。
だが、入学式を終えてSHを待つ今現在、慎吾自身の心境は穏やかなものでは無かった。
「(……さすがに年下の、それもクラスメイトが女の子ばかりのこの状況は……私と同世代の男なら喜ぶ奴も大勢いるのだろうが、私個人としては落ち着けないなぁ………)」
慎吾は参考書を復習がてら軽く読んで学習していたのだが、周りの空気と視線に耐え兼ね思わず顔を上げて苦笑いをした。
と、そこで顔を上げた慎吾の視界の端に少女ばかりの一組の中で唯一の例外である自分と同じ男子。さらに正確に言えば初の男性操縦者、織斑一夏の姿が目に入った。どうやら慎吾と同じく彼もまたこの状況に息苦しさを感じているらしく、よく見てみるとうっすら顔は青ざめ、額には脂汗が浮かんでいる。
「(織斑一夏……だったか。彼も私と同じく落ち着けないようだな。なんとか力を貸したいとは思うが………私自身がこんな状態ではな。すまない)」
慎吾は親近感を感じたもう一人の男子である一夏を助けようと考えては見たものの、友好的な打開策は浮かばず心の中で頭を下げた。と、その時、教室の扉が開くと一人の小柄な女性教師が入ってきた。
教壇に立った小柄な副担任の女性教師『山田真耶』はゆったりとした早さで名乗ると、クラスの皆に自己紹介をするように促す。
「えっと……次は、大谷君お願いしますねっ」
「……っ、はい、先生」
自己紹介は所謂あいうえお順で始めていた為に、すぐに慎吾の順番になり。一生懸命な様子で慎吾に順番を伝えてくる真耶に、若干、吹き出しそうになるのを堪えながら慎吾は返事をして席から立ち上がった。
「私の名前は大谷慎吾、世間では二人目の男子とも言われているな。私が高校一年の時にISを動かせると判明したのでこのクラスの皆よりは僅かばかり年上だが、ISの知識についてはゼロから始まったばかりだ。どうか皆、よろしく頼む」
慎吾の自己紹介が終わると拍手が鳴り響き、信吾はそれに対して軽く会釈すると再び席についた。と、ふと信吾は再び視界に恐らくは次に自己紹介をするであろう、相変わらず緊張しきった様子の一夏を捉えた。
「(織斑一夏……女性ばかりのこの学園ならば恐らく在学中は長い時間を彼と行動する事になるだろう。関係を円滑にする為にも建前でもいいから彼の事を知れると良いのだが……)」
慎吾がそんな事を考えながら、クラスの女子生徒と共に一夏の自己紹介を待っていると、一夏は誤解によるトラブルに巻き込まれながらも何とか名乗り、そして
「………以上です」
尻切れトンボもまだマシと言った感じに異様に短い形で自己紹介は終わり、女子の何人かはずっこけてさえいる。
「(おいおい、それはないだろう……まぁ、だが)」
そんな事を重いながら慎吾はそんな様子がおかしくて小さく声に出さぬように笑う。
「(少なくとも悪人では無さそうだな……)」
と、内心で密かに一夏に対する評価を上げていたのであった。
その後、クラスの主担任であり一夏の姉でもある織斑千冬に一夏の良く言えば漫才を思わせるやりとりに今度こそ慎吾は耐えきれずに声に出して大笑いをしてしまったのだがそれは女子生徒の黄色い声援に書き消され誰にも気付かれる事は無かった。
更新頑張ります