二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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170話 運命の因果

 

 

『最後に話したのは……あの実験の前日か。お前には本当に私は期待していたのだがな……そうなった事は実に残念だ』

 

「……何の用だジイさん。態々、昔話したい為にこんな状況で俺様に通信した訳じゃねーだろ」

 

 突然、キングから送られて来た通信にベリアルは無愛想にそう返事を返すと素早く迎撃に出たモンスターズ達への指示は最低限に押さえつつ、自身の周囲に集中してセンサーを巡らせ丹念に索敵する

 

 誰もが叶わぬような圧倒的な力、IS『ベリアル』を手にした事で既にベリアルは自分こそが最強の存在だと確信していた。が、それでも尚、決してキングに、超人と表されるその存在に対して警戒を怠ると言う愚策は端から考えていなかったのだ

 

『……最後の警告だアリア。慎吾を解放して軍に投降しろ。今、投降するなら命の無事と最低限の自由は私が便宜しよう』

 

「…………フン。こんな状況だぞ? 本気で言っているのか? ジジイ」

 

 警戒している最中、キングからそんな言葉を告げられるとベリアルはわざとらしく鼻を鳴らし、心底呆れたようにそうキングへと告げた

 

「もう俺様は何があろうが止まらねぇぞ……。織斑千冬……ブリュンヒルデが現れるまで世界中のIS操縦者はプロアマ問わず、俺様に挑んだ挑まない関係無しにぶちのめして。その上でのこのこ現れた全力のブリュンヒルデを俺様が世界が見る前で捻り潰して、散々ブリュンヒルデを持ち上げていた篠ノ之束のプライドを叩き潰す。それが……俺様を舐めた報いだ!」

 

『俺様を舐めた報い……か。昔の君ならば手段や口調は乱暴でも確かに世界の人々の事を考えていたのだがな。……残念だ。アリア……いやベリアル』

 

 殆ど狂気に取り付かれたかのようなベリアルの発言にキングは通話口の向こうで深く、心底悲しそうにため息を吐く、数秒前までしっかりと彼女の真の名前であるアリアと呼んでいたのが『ベリアル』へと変わったのがキングからの決別の意志であると言うのがベリアルにも良く理解できた

 

「それでどうするつもりだジジイ。俺様とやり合うつもりか? まさか男で、しかも100歳を過ぎたくたばり損ないのお前が前線に出てやり合うつもりか?」

 

 そんなキングにあくまでベリアルは高圧的な態度を崩さぬまま、そう挑発して見せる

 

 そう、確かにベリアルはキングの超人としか言い様の無い力は身を持って理解していた。だがしかし、いくらベリアルのセンサーで調べても周囲数キロ以内には自身と人質に取った慎吾以外の人間やISの反応は無く、例えスナイパーライフルで狙撃しようが自身が駆るベリアルならばその場を動かずに対処できる自信があり、こうしてこの場、通信越しの会話の最中にキングに搦手はあれど自分を即座に行動不能にする手段は無い。そう、ベリアルは結論を立てていたのだ

 

 

『そうか……あくまで悔いるつもりは無いと言うのだなベリアルよ』

 

 ベリアルの返事を聞くとキングは最後通告のようにそう言い

 

『ならば、罪の報いを受けるがいい』

 

 次の瞬間、情けを捨てたような口調でそうベリアルに告げた瞬間、それが合図のようにベリアルの頭上に広がる夕焼けの空が雲すら殆ど無いのにも関わらず、雷が鳴るような不気味な唸りを上げる

 

「!!」

  

 

 ベリアルが素早く頭上を見上げれば、夕焼け空に浮かぶ宵の明星に並んでもう一つ、明るく輝く星がいつの間にか現れ、それがベリアルに向かって急速に降下し始めていた

 

「ふん……衛星軌道砲か……こんなものを仕掛けてたのは驚いたが……甘い!」

 

 ベリアルは上空から突然の攻撃の予兆に仮面の裏で一瞬、動揺したが直ぐにそれをせせら笑うと、すかさず瞬時加速を使用して一気に衛星軌道砲の範囲内から離れようと試みる。が

 

「う……お……っ……!? こいつは……!?」

 

 ベリアルが瞬時加速をしようとしたまさにその瞬間、事前に予知していたかのようなタイミングでレーザーで構成された光のネットが突如、空中からオーロラのように飛来すると、瞬きする程の短い時間で投網のようにベリアルに纏わり付くとその動きを拘束する。その瞬間、ベリアルの脳裏に甦って来たのはかつての記憶。

 

 そう、この光の網、キャプチャーネットをケンの案に乗る形で開発したのは他でもないアリアだった頃の自分に違いなかった

 

「チッ……! 衛星砲は2発撃ってたって事か! だがこんなものギガバトルナイザーで……!」

 

 舌打ちしながらも、すかさずベリアルは片手でギガバトルナイザーを構えるとロープを切断しようと切断力に優れたベリアルデスサイズを出そうとし

 

「ぐっがああぁぁぁあぁぁぁっ!?」

 

 その瞬間、またもや狙っていたようなタイミングで衛星軌道砲……雷にも似たエネルギー状の光線が避雷針のようにギガバトルナイザーに落ちる形で直撃すると、その衝撃とエネルギーでベリアルを勢いよく吹き飛ばした

 

 

「ハッ……!」

 

 一夏達に迫り来る数体よモンスターズの一体、一本角の竜にも似た一体に向かって一機のUシリーズのISが交差した赤と銀の腕から放たれた青白い光線『スペシウム光線』を放ち直撃した機体を粉々に吹き飛ばし、更にその周辺に集まっていた機体をも巻き添えにしていく

 

「ふっ……!」

 

 更にその近くではもう特に赤い塗装が目立つ一機のUシリーズが頭部に装備されていたブレードを投擲し、それをブーメランのように自在に操りながら目にも止まらぬ早さで次々とモンスターズを切り裂き、撃破していく

 

「はぁぁっ!」

 

「とぉっ!」

 

 それに負けじとばかりに別のUシリーズ二騎はそれぞれ一機はブレスレットを変形させたランスと蹴りで、もう一機は腕部分から発生させたレーザー状のブレードで切り裂きながら、モンスターズ達を蹴散らかしていく

 

 この状況下での惜しみ無いMー78社の誇るUシリーズの大量投入。それだけでも十分に驚愕すべき光景ではあったが、その場の注目を一番集めていたのは

 

「ストリウム……!」

 

 掛け声と共に一機に全身にエネルギーを全身させると逆L字型に組んだ腕から虹色状の光線を解き放ち、瞬時にモンスターズを殲滅していく頭部から伸びた一対の角が特徴的な赤いUシリーズだった。何故ならば纏っていたのが光を覗いたその場の全員の予想を越えた人物だったからだ

 

「なっ…………」

 

「うそでしょ…………?」

 

「このタイミングで……だと……!?」

 

 普段冷静なラウラでさえ一瞬、攻撃の手を止めるほどに動揺し、シャルロットや箒もまた呆然と戦いを繰り広げる一機のISを見上げていた

 

「一夏さん!そして皆さんもご無事ですか!? 遅れてすみません!」

 

 同じくあまりの衝撃に呆ける事しか出来なかった一夏に対し、手に短槍状の武器を手にしながら戦闘を繰り広げながら進撃を促すのは武骨な外見なUシリーズの機体とは大きくかけはなれた幼さが残る『少年』の声

 

「光太郎っ!? お前……光太郎なのか!?」

 

「はい一夏さん、僕です! ケンの子供の光太郎です! この機体は『タロウ』! お父さんとお母さんが作ってくれたUシリーズNo.6のISです!」

 

 そう、一夏の戸惑いが混じった問い掛けに元気よく答えたのは紛れもなく光太郎の声。そう、それはつまり

 

「あなた達の道をは僕達が……僕の駆るタロウを含んだゾフィーの兄弟機のUシリーズ五機が切り開きます!」

 

 ここにISに登場出来る三人目の男性が誕生した事を示していた




 と、言うわけで今の今まで暖めてきたとっておき。三人目の登場です。一応、以前に伏線的な物はありましたし、完全に唐突ではない……ようにはしました

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