二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 大変、遅れて申し訳ありません。これから隙を見つけて投稿して行きたいと思います。決してエタらせず完結をさせますのでどうかよろしくお願いいたします


165話 レイブラッド

「レイ……ブラッド……?」

 

 ケンの告げた言葉に会議室が一瞬にして緊張が走る中、一人、状況が理解できていない様子の一夏はケンが言ったその言葉を繰り返し呟き、首を傾げた

 

「君が知らないのも無理はない。代表候補生のような立場はともかく一般には秘匿扱いされている組織だからな」

 

 そんな一夏をケンは特に非難する様子は無くむしろ『事前に説明すべきだったな』と、軽く謝罪すらしてみせた

 

 

「レイブラッドはね一夏……組織の目的不明、首謀者不明、正確な構成員すらも不明な集団。確認された活動も神出鬼没に世界各地に構成員を名乗る人物が現れては街や施設で破壊活動を行う災害のようなテロリスト集団。……少なくとも僕達はそう説明されてるよ。逆に言えばそれしか知らないってことさえけど……」

 

 その代わりと言うようにシャルロットが口を開き、一度、ケンに『言っても大丈夫ですか?』と確認するように視線を向け無言での肯定が一夏に補足するように説明する

 

「ん? 待てよシャルロット。それって……」

 

 と、その言葉途中、違和感を感じた一夏が思わず片手を出して一端、話を遮ると自身の感じた疑問を呟こうとする

 

「あぁ、そうだ一夏くん。君が感じている通りこの話だけではレイブラッドと言うのは犯罪者達が勝手に名乗ってるだけの存在しない組織……犯罪者の戯れ言の一種のようにも聞こえるだろう。だがしかし……レイブラッドの一人だと名乗ったテロリスト達の中には共通する明確な特徴がいくつかあったのだ。その一つがこれだ」

 

 そこで再びケンが話を変わり、一夏に説明すると再び端末を操作しプロジェクターに映像を映しだす

 

 

 それは人種も年齢すらもバラバラと思える複数の人間の腕や胸、手の甲等、体の一部をファインダーの中心に収めた複数の写真であり、その写真全てに全く同じ形状の刺青で彫られたらしき紋章。あえて例えるならば青色のクワガタ虫のような昆虫の頭部と人間の頭部を継ぎ合わせたような姿をしていたが目の位置がクワガタ虫で言うところの大顎の中央部付近にあり、脳がどこにあるのか判断しにくい奇妙な形をしていた。

 

「……ご覧の通り『レイブラッド』を名乗った物達は全員が体に全く同じ色、形状の刺青が身体の何処かに刻まれていた。それに加えて……だ」

 

 そこまで説明するとケンは再び映像を切り替える。それは各国に現れたレイブラッドを名乗った者達によって破壊された道路にビルや店舗と言った町並み。そして傷付き、倒れる人々を撮らえた数枚の写真だった。が。それは写真のメインでは無い。真にカメラのファインダーが捉えた物は爬虫類や両生類等の生物の姿を模してはいるが何処か異形であり、全身が金属の機械で構成されたロボットであり、それはこの場に集う者達には見間違いがないものであった

 

「……! これって……確かIS学園にもいた……!」

 

「そうだ。これこそがレイブラッドを名乗る者達の共通する最たる特徴。実在、あるいは空想の生物をモチーフとした外見を持つ存在。見ての通りその外見が創作物における妖怪や幻獣、あるいは『怪獣』と呼ばれる存在に酷似した姿から事から我々はこの機体に『モンスターズ』と名付けた。これもまた極秘にされている為にISと直接的にかかわる一部の人間しか知らない事実だがな」

 

「怪獣……モンスターズ……」

 

 

 一夏はケンの言葉を反復するように繰り返す。一夏にとっては初めて聞くはずの単語なのに妙にその言葉こそが最も馴染むように感じる不可解な感覚だった。そうあれの呼び名は決して単なる戦闘ロボットと言った呼び名は合わない。『怪獣(モンスターズ)』こそがあれに最も相応しい。そんな名前だと頭ではなく感覚で感じるような気さえしていた

 

「レイブラッド達はこのモンスターズを脳波でコントロールし自身の手足の様に操る事が出来る。その戦闘能力は現れた個体によってまちまちだが……基本的にはISで十分対処できる程度以上の機体は現在のところ観測されていない。ここまでのデータは今回、学園で観測されたモンスターズ達も違いはない。ここからアリアは間違いなくレイブラッドの一人だと考えられる。……のだが今回のケースは妙な所がある」

 

 と、そこでケンはおもむろに腕を組むと深く思考するように視線をスクリーンに映るモンスターズへと向けた

 

「……レイブラッド達が操る事が出来るモンスターズは当人がどう努力しようが最大三体。それが逮捕したレイブラッドの構成員達から聞き出した確かな筋の情報だ」

 

 

「……何だと?」

 

 その一言を聞いた瞬間、それまで発言する事なく僅かな揺らぎも逃さぬとばかりに集中してケンの話に耳を傾けていた千冬が眉を潜めながら聞き返すとケンは瞳を閉じたまま静かに頷き肯定する

 

「……しかし知っての通り今回の事件で目撃された奴が操っていると思われるモンスターズは二十機以上。……例え常人より遥かに優れた身体能力を持つ彼女だとしても身体に何ら支障なくあの数を操つるのは異常としか言い様が無い。あの手にした未知の装備に何らかの秘密があると考えるべきだが……」

 

 

 そこまで言うと箒や千冬……つまりは一夏を除いたベリアルと交戦したメンバーに向かって視線を投げかけ

 

 

「光が戦闘の最中に送り届けてくれた映像とセンサーで感知した表面的なスペックデータだけでは何分、一撃で大半のISのシールドエネルギーを削り取ってしまう破壊力を秘めた装備と言う事しか分からないのが此方の現状だ。……だからこそ直接、奴と交戦した君達の目線から見て些細な事でも構わない、気付いた言ってみてくれ」

 

『………………』

 

 ケンのその言葉に一同は短い間『答えるべきか否か』と、相談するように顔を向き合わせ、会議室には暫し、しんとした沈黙が流れた。

 

「十分な論も証拠も無いゆえに………これは完全に戦いの中での私の直感になるが……」

 

 と、沈黙が数秒ほど過ぎた後、代表するようにラウラがケンに向かって口を開いた。その時だった

 

 

 

『…………ケンさん、奴のからくりならば解けましたよ』

 

 

 突如、レイブラッドに関する資料映像がテレビ通話映像へと切り替わり、腕には点滴の管だらけ全身はミイラの如く包帯にまみれ左目も眼帯で塞がり、立つことも不可能なのかベッドで寝転がった状態のままながらも力強くそう宣言する光の姿が映し出されたのだった


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