二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 あけましておめでとうございます
 スランプに悩み、キャラクターの口調とかに大分悩まされながらの更新です。ここからオリジナルの過去を膨らませ、この物語のベリアルがどうしてああなったのかを明かして行きます。


161話 明かされる過去 前編

 シャルロットからの提案により一旦の休息と治療を挟んでから一夏達が訪れたMー78社は間違いなくベリアルの影響であろう、入り口から既に喧騒に満ち、何人もの社員が緊迫した様子で話し合ったり、慌ただしく何処かへと資料を運んでいたりしていた

 

「IS学園の方々ですね? どうぞこちらに。主任は既に二階会議室にて待機しています!」

 

 そんな中でも一夏達がたどり着いた途端、直ぐ様『ゼノン』と名乗った一人の社員が案内を買ってでて、緊張した表情ながらも真っ直ぐに一夏達を先導し、会議室魔で小走りで案内してみせた

 

「……待っていたよ。一夏君、箒君。そしてラウラちゃんにシャルロットちゃん達代表候補生の諸君。席は準備してあるから遠慮なく座ってくれ」

 

 案内された会議室の扉が開くと、白い電灯の光が照らす会議室内にはケン一人しかおらず、一夏達に気が付くとプロジェクターのスクリーンを背にして椅子に腰かけていたケンは立ち上がり、会議室に入ってきた人物、一人一人に視線を向ける。そして……

 

「織斑先生もぶしつけな申し出にも関わらず、一方的な申し出を引き受けてくれた事に深く感謝する」

 

「…………」

 

 そう、一夏達に続いて最後に会議室に入ってきたのは千冬であり、千冬はケンの言葉に何も答えることは無く、睨み付けるような視線を一瞬、向けただけで無言で会議室の扉を扉を閉じると、指し示された席へと着いた

 

「さて……彼女について話すと言ったからには分かりやすい資料と共に説明して行きたいと思うのだが、これはどうしても完全に客観的とは行かずに私の主観も混じってしまうが……構わないだろうか?」

 

 一夏、箒、鈴、シャルロット、ラウラ、そして千冬が指定された席についたのを確認すると、ケンはそう問いかける。その言葉に同意……とは若干異なるのだろうが誰も特段と異論の言葉を挟むことは無く、無言でケンの言葉の続きを促す

 

「……分かった。それでは早速始めるとしよう」

 

 それを理解したケンは、手にした端末を操作し背後のプロジェクターに一つの静止画を投影する。

 

 写し出されたのはMー78社、正面門前で撮られたものらしくこちらに向かって歯を見せ、笑顔で視線を向ける二人の人間の姿があった

 

 その内、一人は白衣を着ており今より少しばかり若い外見のケン。そして、その隣に立ちISスーツを着た色黒の肌に黒髪の女性は見間違いようも無く……

 

「これが私の知る限り彼女が私達が知る彼女だった最後の写真。君達にはベリアルと名乗った者だよ。……念を押して交戦した君達に聞くが彼女がIS学園を襲撃した不明のIS同乗者で間違いないかい?」

 

「馬鹿な、これがベリアルだと……!?」

 

「全然雰囲気違うじゃないの……」

 

 ケンから見せられた写真を目にするとラウラと鈴は愕然とした様子で口を開き、唖然とする。

 

 無理もない、写真に映るベリアルは強気なつり目や体格こそIS学園で激突したベリアルそのものの特徴だったがその笑顔は男勝りで荒々しくはあるがどこか爽やかさがあり、そこに獰猛さや危険性は殆んど感じない

 

「彼女が変わってしまった切っ掛けは……」  

 

 ケンはそこまで言った所で口をつむぎ、何かを堪えるように拳を握る。が、ついに迷いを振り切るように再び口を開いた

 

「やはり……白騎士事件からと言うことになるだろう」

 

「…………!」

 

 ケンのその一言はしんと静まりきった会議室に一夏の驚愕の吐息を伴い、波紋を打つようにゆっくりと広がっていった

 

 

 頭がぼやけてしっかり思考できない、体に鉄の塊がくっついてるかのように重くて動かせない、それどころか目が接着されてしまったように開かずに暗闇しか見えない

 

 唯一、感じるのは風の吹くまま、波に任せて海上を漂うような浮動感と、青空に浮かぶ太陽の光を縁側で浴びているかのような優しい暖かさ

 

 

『…。………。』

 

 と、その暗闇の中、周囲の空間が奇妙に蠢くとやがて幻覚のように一つの景色と複数の話声を周囲に動画の再生ボタンを押したかのように周囲に流し始めた

 

『……見えるかい慎吾? あれが全く新しいエネルギー機関、その名もプラズマスパーク。あれは私だけじゃない、ケンやアリア。そしてここにいる多くの研究員やスタッフが力を合わせて漸く作り上げる事が出来たんだ』

 

『君達、新しい時代の子供達には是非ともこれを見てほしかった。……とは言ってもこれが人類に希望か、あるいは絶望をもたらすのかはまだ分からないのだけどもね』

 

『だからこそ……作った責任として俺達が悪用されないよう、しっかり管理しないとな。これが本当に役に立つ時はもう少し未来だろうしな』 

 

「…………!」

 

 

 三人の話し声と共に見える暗闇の中で映く輝く青白い美しい光、そしてその光を囲む複数の大人とその大人に寄り添う子供達の影。そこで漸く慎吾は気が付いた。これは……目の前で繰り広げられているこの光景は紛れもなく幼いころの自分が体験した記憶だと。ならば……この声の主は……

 

『……慎吾。我が息子よ。お前が成長する未来の先に何が待っているかは今の私には分からない。しかし……どうかこの光の如く、希望が溢れた物で合ってほしい。そう私は願おう』

 

『……そうだな。私も生まれてくる子供やケン……そこして集まった子供達が安心して暮らせる平和な世界の為にまだまだ奮闘せねばな』

 

『はん……慎吾。俺はお前の親父やケンとは違うから言ってやる。てめぇは確かに才能はあるがまだまだ甘ちゃん。修行が足りなさすぎるんだよ。そこでぼさっとプラズマスパーク光に見とれてる光ともども俺が厳しく鍛えてやるから覚悟しておけよ』

 

「父さん……ケンさん………アリアさん…………」

 

 

 自身の父親と恩人達の名前を呟く慎吾ではあったが。そこで急に見えていた映像は消え失せ、慎吾の精神世界は再び闇へと飲まれていく

 

「何故だ……何故あなたが……アリアさん……!」

 

 全てが闇に飲まれて消え失せる寸前に放たれた慎吾の慟哭の声は誰にも聞かれる事は無く消えていった

 

 

「……と、言う訳で私達はエネルギーの平和利用を考えて開発を続けていた訳だが……。ようやく微かながら目処が見え始めた……。そんな段階に突入した日だったよ。白騎士事件の日は……」

 

『なっ…………』

 

 会議室ではケンからの話が続いていた。が、誰もが絶句して言葉を発する事が出来ずにいた。

 

 何故ならば、流石に何もかもを包み隠さず……とは行かないがケンは特に躊躇せず一夏達に『Mー75社はまだ何処にも公表してない新たなエネルギー源となる物質を開発し、保管している』と言う事実を語って見せたのだ

。どう考えてもあり得ない程の情報提供にしか見えなかった

 

「……何のつもりだ」

 

 と、そんな中、恐らくこの会議室でケンについで冷静であった千冬がケンを見据え鋭い瞳で一言、しかし誤魔化しを許さないような圧を込めて問いただす

 

「こうして我が社の機密を伝えたのは、これから私が彼女の秘密について話すべき内容に大きく関わるからだよ。そう、私がアリアにしてしまった『罪』にもな」

 

 対するケンは千冬の目を反らさず、しっかりと見据えて答える。その目には確かな悲しみが浮かんでいた。そしてケンは重い口を開いて言葉を続ける

 

「私は……親友である彼女を間際で見殺しにしてしまったんだ」


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