二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 皆様……長くお待たせしまして本当に申し訳ございません。逆流性食道炎で体調を崩したりプライベートに大きな変化があって長らく更新が出来ませんでした。来年こそは順調に更新できるように努力させていただきます……


160話 残された鍵と因縁

 「そん……なっ……」

 

 事の始終を聞き終えた一夏はその内容のあまりの衝撃に膝から崩れ落ちる

 

「当然、各国が逃走したベリアルの追跡を開始したわ。でも、結果は追跡に関わった各国チーム、その全てが全滅。……現在でも奴の行方はまるで分からないわ。もちろん慎吾の行方も……」

 

 そんな一夏に向かい、悔しさを堪えきれない様子で唇を噛みしめながら鈴が告げる。そんな鈴を呆然とした様子で見ながら一夏は自身の心に大きな喪失感が生まれている事に気づいた

 

 大きなトラブルに幾度となく見舞われながらも送ってきた学園生活。一夏にとって、それを支えてくれたのは間違いなく仲間逹であり慎吾

 

 慎吾と言う規格外の三人目の男子がいてくれたからこそ、多少は学校の女子生徒からの視線は分散されたし、そして何より動揺する自分に嫌な顔一つせずに手を差し伸べ、僅かしか年齢が変わらぬと言うように大人じみた精神を持ち、それでいて決して威張らず自分や箒やセシリア逹と共に当然のように肩を並べて敵と戦ってくれていた。だからこそ、一夏は当然のように慎吾に実の兄に対する物のような深い信頼を感じていたのだ

 

「う……あっ……!!」

 

 だからこそ、慎吾が拐われ、一筋の光をも見えぬこの現状に心が押し潰されそうになるのは当然の結論。気付いた時には一夏の口から押さえ込めない嗚咽が零れ始めていた

 

「…………っ!」

 

 そして、何時もは強気な鈴もまた、自身の体で嫌と言うほど味わったベリアルの異様なまでの実力を体験した以上、このかつてない窮地を前にして悔しさに唇を噛み締めた一夏にかける言葉を見つける事が出来ず、立ち尽くすしか無い

 

「お、兄様……」

 

「お兄ちゃん……!! ううっ……!」

 

「くそっ!! くそおおおぉぉっっ!!」

 

 そして、今この状況で一番絶望していたのは、助けられて以来慎吾を特に慕い、実の兄妹と変わらない程に信頼しあっていたセシリア、シャルロット、ラウラの三人であり、ベリアルが学園を去りその際に繰り出した正体不明のロボット達をも残存した教師陣達がとっくの昔に殲滅し終わった今になっても、深い悲しみによる慟哭の叫びを続けていた

 

 しかし、だから言って誰もこの場にはそんな一同にあの時の慎吾のように『立ち上がれ!』と、鼓舞出来る者はいない。だからこそ一夏達は

 

『えっ……?』

 

 突然、それも全く同じタイミングでその場にいた全員のISに短いメッセージが届けられた瞬間、誰もが驚愕の声をあげた

 

「い、一体誰が……?」

 

 そして、一番最初に驚愕による緊張から逃れた一夏が、どうにか体を動かして謎のメッセージを開こうとし……

 

「んなっ!?」

 

 再び驚愕して、声をあげ今度はあまりの衝撃に尻餅までついてしまった

 

「ど、どうしたの一夏!? って、えっ……!?」

 

 そんな一夏のただならぬ一夏の様子にシャルロットは何があったのかと自身もまたメッセージを覗き込み、直ぐ様限界まで目を見開いて驚愕する

 

「おい、どうした!? 一夏! シャルロット!

何が書いてあった!?」

 

「いったい何が……んなっ!?」

 

 その二人の激変の理由が先程のメッセージにあると違いないそう考えたラウラやセシリアと言った残りの面子も一斉にメッセージを開き、共に愕然とした。そう、何故ならそのメッセージを送り主は

 

「慎吾さん……!? な、なんで……」

 

 そう、それは間違いなく敗北し、侵入者と交戦するも敗れ、連れ拐われてしまい行方不明となっている筈の慎吾からの物であった

 

「だけど……なんだこれ?」

 

 この緊急事態の最中に届いたメッセージ。それは間違いなく大きな手がかりになると期待していた。だがしかし、そこに書かれていたいたのは英語と数字が降り混じった数行の羅列のみでそれ以外は何も書かれていない

 

「これは……経緯度か……。 と、するとこれが指しているのは……」

 

 そんな中、一早く、その数字の意味に気が付いたのはラウラであり、素早くその数列が指し示す座標を読み取ろうとしていた

 

「って事は……これ……!」

 

「お兄ちゃんからのSOSのメッセージ……!?」

 

 ラウラが切っ掛けとした事で慎吾のメッセージの意図に、集まったメンバーは栓を切ったかのように直ぐに気が付き、鈴とシャルロットが心底驚いた様子で呟く

 

「慎吾さん……!」

 

 気がついたら一夏は叫んでいた。あの慎吾が助けを求めている。それも他ならぬ自分達に向けて、だ。ならば相手があの時対峙したT型より遥かに危険な相手だろうと、やる事など端から決まっていた

 

「……行こう。慎吾さんを助ける為に!」

 

 そう緊張感に満ちた表情で額には汗を滲ませながらも一夏は宣言する。

 

「そうか……私が何か言わずとも折れないでいてくれたか。それは心強い」

 

 その時だ、突如としてその場にいたメンバーとは全く違う声、何処か安堵したような優しい男性の声が一夏の背中に向かってかけられる。一夏にはその特徴的な人を安心させる声は確かに聞き覚えのあるものだった

 

「あなたは……」

 

「だが、まずは謝っておこう。本当にすまない……諸君。君達は私達の因縁に巻き込まれて(・・・・・・)てしまったんだ」

 

 一夏が振り向くと声の主は心底申し訳なさそうに呆然としている一夏達に向かって頭を下げる

 

「今回、学園を襲撃したアリア……いや今はベリアルを名乗っている彼女は……私のかつての親友(とも)だった人物であり……慎吾に武を教えた師の一人だ」

 

『っっ!?』

 

 ケンの言葉にその場にいた一夏や箒達……つまりは慎吾、限定と一定以上の付き合いをしていた全員が目を限界まで見開く

 

 当然だった。ケンの言葉は倒すべき宿敵であったベリアルの正体が慎吾の身内であると言ってる他ならなかったからだ

 

「慎吾と絆を結んだ君達にこそ……この緊急事態だからこそ伝えよう。私達とベリアルの過去とその因縁を……」

 

 そう語るケンの口調は言葉では言い表せない程の深い憂いを帯び、口に出さずともケンが抱える深い悲しみが色濃く表れていた


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