二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 ちょっとモチベーションが保てない事がありまして遅れてしまいました。

 そしてー今まで告げてはいませんでしたが実の所、本作は現在、最終章の『前編』くらいの所にまで入っており、このベリアル編を持ちまして一応は本作を完結と言う予定で行かせていただきます。必ず、完結をさせますので、至らない所も多くありますでしょうが、どうかもう暫く本作にお付き合いいただけると嬉しいです


157  ウルトラダイナマイト 発動

「ぐっ……うっ……」

 

「慎吾!? 大丈夫か慎吾ッッ!!」

 

 炎を纏っていたゾフィーが突如して上がった慎吾の苦悶の声と共に実験場の倒れた瞬間、光はすかさず実験中止の合図を出すや否や、椅子を蹴り飛ばして実験場に向かって走り出すと、ゾフィーの展開が解除されて生身になった慎吾の元へと走り出した

 

「だ、大丈夫だ光……少々火傷はしたようだが、私の体に問題はない……平気だ」

 

 幸いな事に当の慎吾はと言うと実験場に備え付けられた消化装置が上手く作動してくれたらしく、少しだけふらつきながらも自力で立ち上がり、駆け寄ってくる光とM-78社の研究員達に無事を伝えるようにゆっくりと手を振って見せる。が、目に見える破壊後として、最後の砦として熱から慎吾の体を守りきったのか慎吾が纏っていた実験用のISスーツはボロボロに焼け焦げて穴が開き、結果として慎吾は殆ど全裸に近い悲惨な姿ではあったが

 

「……お前がそう言っても、『はい、そうですか』は行かない。お前自身が気付いて無いだけで体内に損傷があるかも知れない。そもそも火傷はしているのだろう? だったら、今は何も言わず大人しく検査と治療を受けろ」

 

 駆け寄った事で親友の一先ずの無事に光は僅かに安堵の表情を浮かべる。が、直ぐ様その表情を険しい物へと変えると、躊躇わず慎吾の元に近より肩を貸しながら駆け付けた医療チームが用意していた担架に慎吾を寝かせる

 

「はは……それはそうだ……だがな光……」

 

 そんな光に慎吾は特に否定する事も無く従い、抵抗くる事も無く担架に乗せられて運ばれていく。が、その直前でふと寝たまま首を動かし、光へと視線を向ける

 

「……あぁ、分かっている。実験の為に出力を大幅に落としてコレだ。危険すぎて今の俺達の手にはとても追えないよ」

 

 光はその言葉に、振り返る事も無く実験場の一角、先程までゾフィーが倒れていた箇所を見つめながらそう呟く

 

 幾重にも重なった頑丈な装甲で設計され、仮にゾフィーやヒカリが機体に秘めた火力を存分に発揮しても『ある程度は』持ちこたえられる筈の実験場の床と壁は、僅か十秒程の実験で水飴の如くドロドロに融解し、熱気を放っていたのだ

 

 それを見ながら光は自身が愛用している端末を操作して、Uシリーズに装備する筈だった新武装『ウルトラダイナマイト』のプログラムに二重三重にもなる厳重なロックをかけて端末の奥底へと封じ込め、慎吾自身は本人の申告通りの軽症でゾフィーの損傷も軽度のものではあったが、ケンも交えた会議の結果その危険性故に『ウルトラダイナマイト』のプログラムは何か革新的な物が見つからぬ限り封印される事が決定された

 

 それがM-78社が偶然、謎の不明機を発見する数ヶ月前の出来事だった

 

 

「うっ……ああっ!! あぐうっ……!!」

 

 そして現在、覚悟を決めて自らが封印をした『ウルトラダイナマイト』のプログラムを発動させ、実行に光は苦痛に呻いていた

 

 熱い熱いアツいあつい熱いアツい熱イアツい熱いっ……!!

 

 やかましいくらいの危険を知らせるエラーコードが鳴り響き、体が骨ごと燃え尽きてしまいそうな程の高熱に包まれ、熱と痛みで視界がすらまともに見えない中、それでも光は両腕の力を振り絞り、しっかりとベリアルを拘束して離そうとはしなかった

 

「(この『ウルトラダイナマイトtypeプロト』を実行した場合……成功率は30%ほど。発動後の俺の生存確率は約50%……! 無茶に無茶を重ねているのにこれほど『数値が高くなっている』なら試す価値は十分にある!)」

 

 光の頭に思い返すのは事前に対不明機を考え、最後の手段として『ウルトラダイナマイト』のシミュレートして割り出したデータ。常識で考えれば成功しようとも半分の確率で命を落とすと言う凄まじく危険な値ではあったが、光は目の前のベリアルを戦いの中で『それくらいしないと倒せない』相手だと確信していた

 

 故に、光は地獄の業火と意識を手放してしまいそうな程の苦痛に耐え、ベリアルを拘束し続ける

 

「雑魚が……! うっとうしいぞ!!」

 

 が、当然ベリアルが大人しく拘束されている筈もない。その体がヒカリから燃え移った火で燃えだしながらも、躊躇い無くヒカリを蹴り飛ばし拘束を振りほどかんと暴れ始める

 

「がはっ……!」

 

 ベリアルの蹴りが直撃し、只でさえ瀕死の体に鞭を打って無理矢理動かしていた光の体は痙攣と共に大きく震え、意識が揺さぶられる事で光は危うくベリアルの拘束を危うく僅かでも緩めそうになってしまう

 

「(まずい……ウルトラダイナマイトが真の発動に至るには後『5秒』は必要だ! し、しかし、今の俺では……!)」

 

 ガード無しの状態でウルトラダイナマイトが前段階として発する超高熱を正面から受けながらも怯まず、暴れ続けるベリアルに、見る間のうちに最後の力を込めて奮闘するヒカリの努力も空しく、確実に拘束は緩み始め、ベリアルはがっしりと掴んだ筈のヒカリの両腕から逃れようとしていたのだ

 

「(ぐっ……発動まで残り2秒……! 最早手はないのか……!?)」

 

 僅か5秒、日常ならば意識する事すら無く過ぎていくような短い時間ではあったが、今の光にとってはその5秒はあまりにも絶望的に長すぎる時間だった

 

「オラァッ……!!」

 

「ぐあぁっ!!」

 

 

 そして、ベリアルの蹴りがアッパーカットのような形で容赦なくヒカリの顔面を捕らえ、衝撃で脳が揺さぶられて光の視界が盛大に揺らぐその最中

 

 彼女はベリアルの背中部、先程の慎吾達との共闘ではまるで気が付かなかったが、機体パーツどうしを繋ぐ僅かな隙間の間に確かに『澄んだ輝きを放つ物体』を見た。つまり、それはそれほど小さく巧妙に仕込まれたものでありー

 

「あ……?」

 

 その瞬間、背中に殺気を感じ、ベリアルはあと一歩で光の拘束を解けるというのにも関わらず、鍛え上げた戦士の性ゆえか、思わず攻撃を中断し、殺気がした方角、ピットへと視線を向ける

 

「はぁ……はぁ……」

 

 歩くのもやっとであるかのような荒い呼吸と青ざめたのを通り越してもはや白くなり始めてる顔。アリーナの壁を支えにやっと立っていると言うボロボロ。そんな姿を晒しながらも確かにそこにいたのは、慎吾達より一早く遭遇し、敗北して倒れた筈の楯無の姿だった

 

「オイオイ……はっ、倒れてりゃ良いものをわざわざ、やられにでも来たか? 流石に分かるだろう? 今のお前じゃ……俺様にまともに攻撃する事も出来ないってなぁ!」

 

 そんな楯無を見た瞬間、ベリアルは背を丸めて嘲笑すると、もはや警戒する必要も無いとばかりに再び光に意識を向けると、笑ったまま光の拘束から抜け出して見せ、そのまま光は炎に包まれたまま力なく大地に倒れてしまう

 

「……カチン…っ」

 

 と、その瞬間、楯無は『うまくいった』と言わんばかりにベリアルに向かってスイッチを押すような構えを取ると微笑み、そのまま指を押した

 

「んなっ……!?」 

 

 その瞬間、ベリアルの背中で突如、爆発が巻き起こり、予想打にしなかった一撃にベリアルは勢いのまま大きく前方へと体勢を崩す

 

 それこそが楯無が最後の抵抗として敗れる寸前にごく僅かながら損害を受けていたベリアルの背中に仕込んだ『アクア・クリスタル』によるものだった。だがしかし、あまりに急ぞなえの物だった故か、その威力はとてもベリアルを倒すには至らない。

 

だが

 

「うっ……おおおおおおおっっ!!」

 

 それは炎に包まれながらも光が残る最後の力を振り絞りベリアルに再び掴みかかる為には十分すぎるアシストだった

 

「ちっ……!!」

 

 そして、ベリアルが己の不覚に舌うちしながら反応しようとしたまさにその時、先ほどまで光が待ちに待った『五秒』が訪れ……

 

 

 瞬間、ヒカリの全身から放たれた爆炎と衝撃波が瞬きするよりも速く広大なアリーナの中に広がり、それはさながら小型の核弾頭のように全てを紅蓮に覆い尽くしていった

 

 

 

 

「う……」

 

 アリーナ内に立ち込めていた爆炎が収まり、辺りに黒煙が燻り、空気が歪む程の熱気が立ち込める中、光は静かに意識を取り戻す。ウルトラダイナマイトのあまりの破壊力は発動した瞬間、光の意識すら奪い取っていたのだ。

 

 全身が動きすらままならない程に激しく痛み、視界が激しくぐらつき、目眩も酷い、自分が何処にいるのかさえ分からない。そんな、最悪のコンディションの中で光が無意識に自身の顔を触ると鼻、口、目、更には耳からまで顔中の穴からどくどくと血が流れ続けているのに気がついた

 

「う……あ……う……」

 

 全身を襲う絶え間ない激痛に加え、出血によるショックの為か意識が徐々に薄れ、瞼を開いている事さえ辛く感じる中、力を振り絞って上半身を起こし、奇跡的に作動したヒカリのハイパーセンサーが無事な様子の楯無の反応を捕らえ、内心でほっと胸を撫で下ろす

 

 咄嗟の行動ではあったが光はどうにかウルトラダイナマイトのエネルギーを自身の前方に超巨大な半円を描くようにして全て前方に飛ばし、自身の背後にいた楯無を守る事に成功していた。そのため、ウルトラダイナマイトを放ち終えた今現在のアリーナは片側だけがほぼ無傷で、反対側が衝撃と熱でボロボロ。と、綺麗に半分だけが半壊していると言う言葉遊びのような奇妙な姿へとなっていた

 

「うぐっ……!!」

 

 とは言え、たたでさえ疲労とダメージが蓄積された体に無理を重ねた光の体へのダメージは大きい。楯無の無事を確認した途端、光は支える糸が切れてしまったかのように崩れ、仰向けの形で地面に力なく倒れると、そのまま目をつむり、意識を手放してゆき

 

 

 

「なるほど……確かに危なかったなぁ、今のは。喜べ、『大したものだ』と、くらいは言ってやろう。だが! 一手を誤ったな!!」

 

 

 直後、そんなベリアルの声が聞こえた瞬間、頭から冷水をぶっかけられたように強制的に光の意識は覚醒させられた

 


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