二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 ようやっと書き上げる事が出来ました……。中々、執筆の調子が上がらなくてすみません。ですが、必ず本作は完結させるつもりですので、終章の前半部分にまで入った本作ですがどうか最後までよろしくお願いいたします


156話 孤軍奮闘

「うっ……はぁはぁ……俺は……? あぁ、そうか……奴の一撃を受けて気絶していたのか……」

 

 重く、暗い泥のような眠りから意識を呼び覚ますと、光は損傷こそ大きいものの、まだ幾分かエネルギーが残されていたヒカリの両腕で、機体に覆い被さっていた、生身では到底動かせないような、いくつもの大きなコンクリートの欠片をどけ、自由を取り戻すと、よろよろとした動きながらも立ち上がり始める

 

「まだだ……うっ……まだ、こうして稼働させる事が出来る以上、まだエネルギーに余裕はあるはずだ……」

 

 光が立ち上がった瞬間、疲労かあるいは知らないうちに頭部に何らかのダメージを受けていたのか、目眩が襲いかかったが光はそれを自身のすぐ近くにある崩れかけた壁によりかかり、堪えるとヒカリに残されたエネルギーをチェックする。先程、バトルナイザーから放たれた電撃のせいでアーブギアは破損して砕け散り、ハイパーセンサーの機能も落ちてはいたが、そのお陰かヒカリ本体そのものは比較的守られており、ざっとではあるが3割程度のエネルギーが残されていた

 

「よし、これならまだ戦える! 」

 

 それを確認すると光は早速、まだ仲間達と合流しようと改めて周りを見渡し、自身が何処にいるのかを確認し始める。どうやら光が落下して破壊してしまい、今の今まで気絶していたのはアリーナ近くの小さな建物だったらしく、目を向ければ近くにはよく目立つ巨大なアリーナの壁がそびえ立っているのを直ぐに光は見つけ、それと同時に学校内での連絡用に使う電光掲示板を見つけ、そこに表示されていた時計で光は自身が数分程気絶していた事を知った

 

「ならば、すぐ近くに皆も戦っているはずだが、それにしてはこの静けさは……いや、そんなまさか……!」

 

 はやる気持ちを心の奥へと抑えつつ、光は周囲を警戒しながら一刻も早く仲間達と合流すべくと動き出す

 だがしかし、自身が気絶していたとは言え、数分前まで間違いなく激戦が行われていた筈にしてはあまりにも奇妙な静けさに、どうにも嫌な光は予感がしてならず、とても、体力を回復させるまで、その場に留まっている事が出来なかったのだ

 

「(まさか……! そんな筈は……!!)」

 

 そう、そんな風に心の中で必死に押さえようとしても、どうにも光は気持ちを押さえる事は出来ず、自然と足は徒歩から早足へと変わっていた

 

「慎……吾……」

 

 だからこそ、必然的に光はすぐに発見してしまった

 

 クレーターの中心で倒れたまま、目を閉じて口元から血を流し、ピクリとも動かない慎吾を

 

 そして、隠す気など端から無いのか、倒れた慎吾の腹の上に脚を乗せているベリアルを

 

「慎吾っ!!」

 

 それを理解した瞬間、光は迷わずベリアルに向かって走り出した。と、は言っても確かに激情の感情こそあったが、光は何も無策で突っ込んだ訳ではない。先程の戦いで『使い損ねた』取って置きがもう一つ、光に残されていたのだ

 

「うっ……おおおおぉぉっっ!!」

 

 攻撃範囲内にベリアルを捕らえると光は圧倒的な不利に立ち向かう自分を鼓舞させるかのように雄叫びをあげる。と、その瞬間ヒカリの腕部分が光が輝き途端、ヒカリの右腕に元から装着されているナイトブレスとは対称的な燃えるような赤に輝くブレス『メビウスブレス』が装着された

 

「(マックス! ゼノン……! 君達の善意を裏切るような真似をしてすまない! 弁解なら後でいくらでもしよう!)」

 

 光は心の中で自身がこの武装を秘密裏に得るため、騙してしまった友人達に謝罪しつつ、左腕に取り付けられたメビウスブレスを右腕のナイトブレスと合体される

 

「だから今は……! 再び、この力を存分に振るわせてくれ!」

 

 光がそう叫んだ瞬間、ヒカリのボディ全体は光に包まれ、その姿がタイラントとの戦闘でも見せた、ヒカリの装甲が一部変化し、金色のラインが入った限定的な形態『ヒカリブレイブ』へと変化した

 

「ハアッっ!!」

 

 掛け声と共にヒカリが二つのブレスが合体した事で、ナイトメビウスブレスと化したブレスを天空に翳すと、その瞬間、ブレスからは光輝く長剣『メビュームナイトブレード』が出現し、そのまま光は声を上げている故にとっくに此方の存在に気付いている筈なのに此方を見ようともしないベリアルに向かって居合い抜きのような形で一閃を繰り出す

 

「はっ…… 馬鹿かお前?」

 

 が、しかしベリアルは背後すら振り返らずその一閃を上空に飛翔する事で容易く回避すると、そのままアリーナの外壁に突き刺さった自身の獲物であるバトルナイザーを抜き取る

 

「俺様の足元にこいつがいる以上、お前は俺が避けた瞬間、刃が当たるような可能性がある方向からはまず俺に斬りかかれない……。 そして、それは……!」

 

 倒れたまま身動きすら取れない慎吾への興味はとっくに無くしているのかベリアルは一瞥すらせず、そう言うとバトルナイザーを両手で持ち、槍のように構える

 

「この一撃もお前は回避する訳にはいかねぇって事だ!!」

 

 その瞬間、ベリアルは流星のような勢いで上空から一気に加速し、流星のような勢いで光に向かって力任せの鋭い突きを放つ

 

「ぐっ……!」

 

 その突き自体は光には決して見切れないものでは無い。だがしかし、ベリアルの言う通り避ければ倒れている生身の慎吾に命中してしまう。それ故に光は危険だと理解していてもガードを固めてメビュームナイトブレードで受けるしか無く、刃にベリアルのバトルナイザーが命中した瞬間、光は苦悶の声を漏らすと、尚、有り余る衝撃でズルズルと徐々に後方へと引き摺られていく

 

「うおらぁっ!」

 

 そんな光に向かってベリアルは一瞬でバトルナイザーを引っ込めるのと同時に体を素早く反転させ、まだ動けぬ光の空いた左脇腹を目掛けて右脚で強烈な回し蹴りを叩き込んだ

 

「ぐわっ! ぐぅっ……があぁ……」

 

 ベリアルの蹴りがヒカリの装甲に炸裂した瞬間、ヒカリはたまらず蹴りの勢いのまま吹き飛ばされると、アリーナの外壁へと激突すると外壁にクレーターを作る程の衝撃に悶え、苦しみの声をあげる

 

「くらえっ!」

 

 更にベリアルの攻撃は終わらない、素早く着地するとバトルナイザーを振りかざし、バトルナイザーから先ほど見せた電撃を放出し、光を狙う

 

「……っ!」

 

 放たれた電撃に痛みで揺らぐ視界の中、光は無理矢理意識を覚醒させると、体を傾けると渾身の力を込めて右脚で地を蹴り飛ばすと直撃寸前、転がるような動きでバトルナイザーから放たれた電撃を回避した。と、その瞬間、光の真後ろのアリーナ外壁に電撃が命中し、爆炎と一瞬のうちに共に既に出来ていたクレーター部分から外壁を更に広く深く広げ、まるでトンネルのような大穴を作り上げた

 

「ハハッ! さっきの勢いはどうしたぁ!? 早く避けねぇとまだ追撃が来るぜ!!」

 

 そんな光を嘲笑うようにベリアルはバトルナイザーを構えると起き上がる寸前の光を狙って突撃し、次々と攻撃を放つ

 

「くっ……!!」 

 

 その攻撃をどうにか、タイミング良く光の刃をぶつける事で、どうにか直撃の軌道を防ぎ続ける。が、一歩、また一歩と、ベリアルのバトルナイザーが振り下ろされる度に光は移動できないまま、出来た穴の奥へと押し込まれて行き、つい十秒程前に先制して光が奇襲をかけたのにも関わらず状況は既に光が防戦一方の形へと変化してしまっていた

 

「(まだだ……っ! まだ、もう少し……!!)」 

 

 だがしかし、その状況の中でも光は諦める事は無い。死ぬものぐらいの気迫でベリアルのバトルナイザーの速さに追い付き、隙あらば一撃を浴びせそうと食らい付きさえしていたのだ

 

「そんな……生ぬるい攻撃が効くかぁ!!」

 

 がしかし、ベリアルはそれを羽虫でも払うように軽々と捻り潰し、反撃として光が僅かに見せたベリアルの隙を狙って放った光の刃を正面から叩き折る

 

「……なっ!? ぐうっ……!?」

 

 通常時のヒカリが使うナイトビームブレードよりも遥かに強度が増している筈のメビュームナイトブレイドが叩き折られ、光が思わず驚愕の声をあげた瞬間、ベリアルの蹴りがヒカリの鳩尾部分に叩きこまれ、光は再びトンネルの奥へと叩き込まれる。と、その瞬間、ベリアルが攻撃する度に深くなっていたトンネルはついに外壁を突き抜け、ヒカリはシールドが張られていなかったアリーナ内に乱雑に投げ出され、勢いのまま土煙を上げて倒れた

 

「(ま、まさか本来の第二形態とは異なる姿とは言え……強化形態のヒカリブレイブでもここまで歯が立たないとは……)」

 

 アリーナの大地に倒れた光は、もがきながらも両手両足に力を入れて必死に立ち上がろうと両手で立ち上がろうと試みるが、限界までたまった疲労とダメージは光の想像を越えて容赦なく体を蝕んでおり、同時にブレイブと変わったヒカリも見るからにボロボロで僅かに残っていたシールドエネルギーは枯渇寸前。その結果として崩れるようにように再び地面に倒れる事しか出来なかった

 

「はっ……最後のあがきも、これで無駄……つまんねぇ……!」

 

 そんな光を鼻で笑うとベリアルは悠然と一歩、また一歩と余裕たっぷりに歩いて倒れたままのヒカリに近寄る。最早、万策尽きたように見える光には興味が既に無いらしく、それはただ楽しみも何も無く、とどめを刺すと言う『作業』をせんとする一つの動きであった。そう

、だからこそ

 

「やっと……捕まえたぞ……っ!」

 

 倒れているヒカリの元まで後、数歩と言う時になって突如、弾かれたように飛び上がり、光が組み付いてきた時にもベリアルはまるで動揺しなかった

 

「……無駄だってんのがわかんねーのか? お前に残されたエネルギーじゃあもぅ……」

 

 と、そこまで言いかけた所で、ベリアルはヒカリの姿がヒカリブレイブから通常形態に変わり、再び左腕にナイトブレスが装着されている事に気が付く

 

 

「『ウルトラダイナマイト。typeプロト』発動ッッ!!」

 

 その瞬間、覚悟を決めた少女の叫び声と、火山火口の如き深紅の爆炎がアリーナに顕現した


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