二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 平成最後の投稿となります~、どうにか間に合って良かったぁ……
 尚、今更になってしまいましたが、読んでくれた方を混乱させてしまう事もありますのではっきりと名言しますと、この作品でのベリアルことアリアはケンと同じ年のれっきとした女性です。
 理由は話の都合等、色々とあるのですが、やはり無駄に男性操縦者を増やして、話をややこしくするのを避ける。と、言うのが大きな者です。


153話 決死の猛攻、そして謎

「まずは、こいつを喰らいな!」

 

 戦闘が始まった瞬間、ベリアルはバトルナイザーを向けるとそこから次々と複数の光弾を発車し、離陸直後の三人を狙う

 

「はっ! でやぁっ! とおりゃあっ!!」

 

 が、しかし、不意打ちに等しいその先制攻撃を慎吾は予測していたのか掛け声と共に襲い来る光弾を空中にジグザグの飛行軌道を描くような鋭い動きで回避すると、光弾の発射を続けるベリアルを狙ってエネルギーの充填をそこそこにスピードを優先させてゾフィーの腕からスペシウムを放った

 

「まだまだぁっ!」

 

 更にそれだけではベリアルへの攻撃は終わらない。慎吾同様、無事に光弾をやり過ごしたシャルロットとラウラが慎吾がスペシウムを放つタイミングに合わせてそれぞれアサルトカノンとリボルバーカノンの砲撃を放ち、ゾフィーのスペシウムを中心にベリアルを挟み撃ちにするような形で補助に入る

 

「ふん……」

 

 だが、ベリアルは鼻で軽く笑うと右腕バトルナイザーを軽く横凪ぎに振るう事で軽々と弾き飛ばし、三方向からの攻撃はどれもが欠片さえベリアルを掠めずに霧散させれた

 

「はあっ!」

 

 その瞬間、バトルナイザーを振るった事で僅かにベリアルに生じた隙を狙って慎吾が瞬時加速を利用して一気に詰め寄るとすかさず右脚で空気を切り裂き、胴を狙って強烈な蹴りを放つ。が、その蹴りはベリアルが蹴りの軌道を読んで右に移動をする事で容易く空振りに終わり回避されてしまった

 

「中々、蹴りは様になってるじゃねぇか……だが、まだあま……!」

 

「甘いのはお前だ」

 

 その瞬間、突撃するゾフィーの背を盾にしてピッタリ密着して隠れていたラウラが飛び出し、ベリアルが言葉を言い終える前にプラズマ手刀で斬りかかった

 

「ちっ……!」

 

 自身の言葉を遮られた苛立ちからか、ラウラのプラズマ手刀がベリアルの頭部を掠める寸前、舌打ちしながら後方に飛び退く事でベリアルは攻撃をやり過ごすと、慎吾とラウラの二人を睨み付けながら手にしたバトルナイザーを構えた

 

「おっと、そう簡単には反撃には移らせないよ」

 

 すると、今度はステージでダンスの演者が入れ替わるように軽やかな動きで二人の間をすり抜けてシャルロットが姿を表すと同時に両手に構えたショットガンを連射し、複数の弾丸で息つく暇も与えずベリアルに更なる攻撃を仕掛けた

 

「ふっ……!」

 

 が、しかし、これもベリアルは寸前で反応し、拡散する弾丸を高い機体性能を生かし超高速で上昇する事で回避する

 

「とおぉっ!!」

 

 その瞬間、回避先で待ち構えていた慎吾が空中でゾフィーを唸らせて空中で一回転すると瞬時にその姿を第二形態であるゾフィースピリットに変化させ、そのままカウンターにも似た形でゾフィーに出せる最大限のパワーを込めた回し蹴りを硝煙の向こう側にいるベリアルに向けて叩き込んだ

 

 自身に技を教え、知能、実践経験、才能まで圧倒的実力差を持っていると慎吾自身が判断しているベリアル。それに対し慎吾が短い時間で取捨選択し、導き出した策はエネルギー消費と防御を限界まで無視し、三人がかりで最速の攻撃のラッシュを叩き込み続ける短期決着だった

 

 勿論『作戦』と、体を取っているものの、防御を捨てている故にほんの一手でも崩されるだけで、たちまちの内に窮地に立たされるような無謀極まり無い戦法だと言うことは当然ながら立案者当人である慎吾も、そして二人が構えてからベリアルが飛び立つ直前まで。と、言う余りにもの短い時間を利用してプライベート・チャネルを通じて慎吾から伝えられながらも、二人同時に即座に了承してついて来たラウラとシャルロットも当然、理解している

 

 そこまでのリスクを背負うとしても尚、慎吾がこの方法を選んだ理由。それは偏にベリアルに此方の手の内、そして戦闘スタイルを見切られる事を防ぐ為だった

 

 慎吾が唯一、現時点でベリアルと互角に張り合えると考えているのはベリアルが慎吾の前に姿を見せなかった十年近くの空白期間だった。ベリアルが十年の間に実力がいかに変わったかは不明だが、それはベリアルも同じ条件だと慎吾は踏んでおり、そこがベリアルを打倒出来る可能性がある唯一のポイントだと考えていた。だからこそ、慎吾としてはリスクを背負うとしてもベリアルに手を見切られ対処されるより前に何としても打倒する以外に手は無かったのだ

 

「(怯むとまではいかなくても、この一撃で多少はダメージが入っていてくれば反撃の目が……!)」

 

 流石にベリアルでも回避は不可能だったらしく蹴りを放った脚に確かな手応えを感じながら慎吾は祈るような気持ちで硝煙の向こうを睨み付けた。と、その瞬間、煙が晴れ

 

「なるほど、なるほど……防御を捨ててのフルパワーでの短期決戦か……悪くねぇ選択だぜ慎吾。だがな……」

 

「なっ……!?」

 

 嘲笑い明らかにダメージが無いベリアルと、その右掌にしっかりと受け止められたゾフィーの右脚を見た瞬間、慎吾は思わず声をあげ現状を一瞬、忘れてしまう程に愕然とさせられた

 

「(第二形態になって更にパワーが増したゾフィースピリットの全開の一撃を受け止めた!? それも片手で!? 馬鹿な、いくらアリアさんでも無茶苦茶が過ぎる!!)」

 

 ベリアル自身の技能に機体性能を加えて考慮したとしても、あまりにも常識離れした事をして見せたベリアルに慎吾は蹴りを放った体勢のまま一瞬硬直し、思考を巡らせながら再びゾフィーの右脚を受け止めているベリアルの右掌に二度目の視線を向ける

 

「たが悲しい事にそいつを選ぶにはちと、実力不足だったなぁ!!」

 

 直後、ベリアルは掴んでいたゾフィーの右脚を離すと急激に身を翻し、蹴りの体勢のまま固まっていた慎吾に狙いを付ける

 

「くっ……!!」

 

 そのスピードから、もはや回避は間に合わないと判断した慎吾は咄嗟に胸の前で両腕を交差させしっかりとガードを取るのと同時に、勢いよく背後に飛び退き、ベリアルから距離を取る

 

「うおらぁあっ!!」

 

 その瞬間、慎吾に向かって上から振り下ろすような強烈な回し蹴りが襲いかかり、そのタイミングをどうにか見切る事に成功した慎吾はベリアルから退きつつ交差させた両腕で迫り来るベリアルの左脚を受け止めた

 

「がっ……はっ……」

 

 が、受け止めたベリアルの脚は容易くガードを固めた慎吾の両腕を弾き飛ばすと、その勢いが殆ど衰えさせないまま無防備になってしまったゾフィーの胸へと炸裂し、慎吾を悶絶しながら大きく吹き飛ばした

 

「お兄ちゃんっ!?」

 

「おにーちゃん! くそっ……!」

 

「(やはり……だ。先程から思考の隅で考えてはいたが今、確信した! このあまりにも常識を越え、尚且つ無尽蔵に続くかのようなパワー……単純な技術や機体性能なんかじゃない……あの機体、ベリアルには何らかのトリックが存在している!!)」

 

 ベリアルに吹き飛ばされた慎吾の身を案じるシャルロットとラウラの声が響き、受けた蹴りの衝撃と激痛で視界が歪み目眩がするのを堪えながら、慎吾は意識の中で一つ、そう確信していた

 

「よくも、おにーちゃんを!」

 

 慎吾が吹き飛ばされた瞬間、いち早く動いたのは慎吾の最も近くにいたラウラであり、慎吾と入れ替わりになるようにプラズマ手刀で無造作にラウラに向かって背中を見せるベリアルに高速で切りかかった

 

「はっ、遅ぇぞガキ!」

 

 しかし、その手刀を余裕を持って見切ったベリアルは体をその場で一回転するように反らす事で避け、すかさず接近したラウラに向かって腕を交差させるようにベリアルのクロー状の右手を突き刺そうとするかのように襲いかかった

 

「ちぃ……っ!!」

 

 ラウラを持ってしても『目にも止まらぬ』としか言い様が無い速度と技のキレ、しかしながらラウラは命中する直前でAICを発動させて迫るベリアルの右腕を止めることに成功した

 

「がふっ……!?」

 

 しかし、その直後ラウラは嗚咽を上げるとその身を『く』の字に仰け反らせ、なおも収まらぬ衝撃がレーゲンを大きくベリアルから吹き飛ばさせる

 

「ん? 一撃で落とすつもりだったが……AICで少しは威力が落ちたか……」

 

 一方で平然とベリアルは始めに腕を捕らえたAICが身体へと移る直前に更なる急接近をしてラウラに向けて打ち込んだ膝と、悶絶するラウラを見ながら若干不思議そうにそう呟く

 

「ラウラ!? このおっ!!」

 

 その瞬間、今度は入れ替わるように右手にショットガン、左手にマシンガンを構えたシャルロットが飛び出しベリアルに向かって即座に大量の弾丸をばら蒔いた

 

「ふん……お前はこれでも食らっておけ!」

 

 その大量の弾丸をベリアルはバトルナイザーを振り回し、まるで羽虫でも払うかの如く打ち落とすとそのままバトルナイザーのリーチを利用してシャルロットに向かって突きを放った

 

「くっ……うっわああっっ!!」

 

 『アレの直撃を食らうのは不味い』短い時間ながらもベリアルとの戦いを経てそれを嫌と言う程に理解できていたシャルロットは『高速切替』で物理シールドを念を入れて五枚重ねて呼び出し防ごうとしたが、まるで瓦割りでもしているかの如く、ベリアルのバトルナイザーはシールドを軽々と砕き、そのままリヴァイヴに直撃すると悲鳴と共にシャルロットを突き飛ばした

 

「はん……思ってたよりは、楽しめたが……これで終わりだ」

 

 どうにか地面への激突を避け浮上は続けているものの、肩で息をしておりダメージの大きさが隠せていない慎吾

 その側に寄り添いながらも苦しげに咳き込み、口元から吐血した一筋の血液を足らしながらベリアルを睨み付けるラウラ

 機体から紫電を走らせバトルナイザーの直撃を受けた胸部を抑え、青ざめた顔で苦し気に呻くシャルロット

 

 そんな満身創痍の三人を見下ろし、嘲笑いながらベリアルは腰を落とし静かにバトルナイザーを構える。戦いを終わらせる事になる決定打の一撃を放つつもりだったのだ

 

「慎吾……ケンはお前の将来に強く期待していたそうだがな……残念な事にこの俺様と戦うには三人がかりでもまだまだ早かったなぁ!! ハッハッハッ……!」

 

「い……つ……」

 

 バトルナイザーから形成された鎌状のエネルギーの刃と、嘲笑うベリアルの声を聞きながら慎吾は荒い呼吸で今にも掠れきってしまいそうな小さな声で呟く。状況から見れば、それは諦めの境地からなる辞世の一言にしか聞こえず、事実ベリアルも笑いながらそう確信していた

 

 そう

 

 

「いつ……私達が三人で戦うと思っていた!? 『ベリアル』!!」

 

 息を一気に吸い込み、慎吾がゾフィーの輝く目でベリアルを睨み付けるまでは

 

「おおおおおおっっ!!」

 

「たあああああっっ!!」

 

「何ぃっ……!?」

 

 瞬間、掛け声と共に太陽を背にバトルナイザーを構えたベリアルの背後から蒼と紅、二機の機体が襲いかかりベリアルはそれに咄嗟に反応したもののバトルナイザーに形成されていた鎌状のエネルギーの刃は砕けちるのと同時に爆発し、その衝撃でベリアルは大きく仰け反った

 

「すまない、遅くなったな慎吾。皆」

 

「皆、まだ戦えるか?」

 

 ベリアルを前に油断なくそれぞれの獲物()を構えながら、蒼と紅のIS、ヒカリと紅椿を展開させた光と箒の二人はそう慎吾たちに尋ねた


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