二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない) 作:塩ようかん
「ぐっ……!」
「はっはっはっ、戻って治療を終えるなり威勢よく俺様に向かってきたと思えばそのザマか。無様だなぁ……エム。いや、そんなかわいい実力じゃあ……マ・ド・カちゃん。って言った方がいいかぁ? ん?」
明かりもない部屋で部分展開していたISを解除すると『協力者』は余裕綽々と言った様子で残虐な笑みを浮かべると、足元で力無く倒れているエム、マドカを嘲笑った
「きっ、さまあ……っ!!」
協力者によって無惨にプライドを踏みにじられたマドカは怒りと屈辱の声をあげながらも手にはしっかりとナイフを握りしめ、そのまま協力者に飛びかかりニタニタと笑みを浮かべる協力者の首をはね落とさんと床でもがくがそれを協力者によって負わされた体の内部ダメージと疲労、そして肝心のゼフィルスさえも協力者の反撃によって瞬時にシールドエネルギーが尽きてしまっていると言う現状が阻み、結果的にエムは協力者に向かって片膝を着いたまま怒りに満ちた形相で睨み付ける事しか叶わず、それを見た協力者はいっそ腹でも抱えだしそうな程に声をあげて笑いだした
「悪いけど今日の所は、そこまでにしておいてくれないかしら? 協力者さん?」
と、そんな協力者を世間話でもするかのように落ち着いた、しかし欠片も油断はしていないと感じさせる口調で一人の人物が止めに入った
「ふん、スコールか……見ての通り今は取り込みの真っ最中。部屋に入る前にノックくらいしたらどうなんだ?」
「あら、私が止めなかったらエムはますます、あなたに痛め付けられてたでしょう? だからもう一度言うわ、そこで手を止めておいてね? 協力者さん」
そう言いながらスコールは一見すればいつもと変わらないような笑顔でそう協力者に微笑みを向ける。それは頭に血がのぼっていたとは言え本気になっていたエムを余裕たっぷりに打ち倒した協力者。その相手をいざと言うときは自身一人でも十分に行う事が可能だと理解出来た上での判断の上での余裕であり、ISを展開させずともスコールの実力がいかに優れているのか証明になっていた
「はっ……だったら次からはエムに『自分と相手の実力差は見切れないと早死にする』ってしっかりと教えておいてやるんだな……出ないと……」
スコールの言葉に協力者は以外な事に素直にそれに従い、相も変わらず人を小馬鹿にしているかの顔を浮かべながらもマドカから離れ、スコールと入れ替わりになるように部屋から出ていき
「次は本当に俺様に殺されちまうかもな……マ・ド・カちゃん?」
ドアを閉じる寸前、笑い堪えられないと言った様子で協力者はそういい、事実、ドアが閉じた途端にドア越しに協力者の笑い声が協力者がドアから一定以上の距離を取るまで響き渡り続けていた
「一度ならず二度までもこの私を……ぐっ! くううっっ!!」
自らが奇襲の形で仕掛けた再戦にも関わらず、前回と殆んど変わらないような屈辱的な敗北。執拗に蹴られ、踏みつけられ、仕舞いには唾さえかけられたかの如く傷つけられたプライドをどこにも晴らす事が出来ずマドカは血が出そうな程に歯を食い縛りながら、八つ当たりでもするかのように床に倒れたまま両手で床に拳とナイフを激しく打ち付けながら怒りを堪えられないくぐもった怒声を発した
「無意味に床を傷付けるのは止めて欲しいのだけど……はぁ……この様子じゃ、そもそも耳にも入ってなさそうね……」
怒りを抑えきれずに暴れるマドカを見ながらスコールは大きなため息を吐き出す
これから自分と話が出来るようになるまでどの程度の時間を必要とするのだろうか。それに近いうちに協力者には直接、文句を言う必要がありそうだ。
「はぁ……」
内心でそんな事を考えながらスコールは再び大きなため息をつくのであった
◇
「……すまない。私は今日、光と少し用事があるんだ。今日の昼食は同行できないんだ」
そう食堂へと続く廊下で慎吾は困ったような笑みを浮かべながら、シャルロットが代表として立案し、話しかけた妹達からの昼食の誘いを断った。
ちなみに余談ではあるが、紆余曲折とすったもんだの末に現状維持の形で未だにシャルロットが長女のポジションを確保しており、セシリアも完全には納得してはいないようだが何とか三女というポジションを受け入れてはいた
「……光さんと用事。……あぁ、今度の全学年合同マッチのタッグマッチについて? もしかして、お兄ちゃんは光さんと組むの?」
慎吾の言葉に一瞬、シャルロットは思案するように沈黙したが直ぐに合点が言ったかのようにそう慎吾に問いかける
と、言うのも先日のキャノンボール・ファスト開催中に発生した亡国機業の襲撃事件を踏まえて、各専用機持ち達の各種レベルアップを目的とした全学年合同タッグマッチが行われると言う事が話が、まさに今朝のSHRで伝えられており、そんな状況で普段は一夏達を含めた同学年の仲間達と食事を取っている慎吾が急に光と二人だけで行動するならば、慎吾と光が新型武装の開発をしている事を知らないシャルロットが二人がタッグマッチについて動き始めんとしているのだと判断するのは至極当然の事であった
「あぁ……そうだな。私は今回のタッグマッチを光と組んで出場しようと考えている。今回はその調整の一環……と、言う感じだな」
そんなシャルロットの問いに慎吾は何か考えがあるのか、あえてこの場では真実を語らず、しかし元から機会があれば光に頼む予定であった事を伝えた
「そう言う訳だ。早速で悪いが慎吾は借りていくぞ。これから立案する作戦は流石に教える事は出来ないからな」
「あっ……はい、い、いってらっしゃいお兄ちゃん……」
と、そこにまるで最初からそれを待っていたかのように廊下の曲がり角から光が姿を表し、ごく自然な動きで慎吾の腕を掴むとそのまま引っ張っていき、そのあまりにも急な流れにシャルロットは戸惑いがちに慎吾を見送る事しか出来なかった
「光……タッグマッチの件だが、お前はいいのか? 私が今さっき勝手に決めた事なのだが……」
ある程度廊下を進み、シャルロットの姿が見えなくなると光の腕から解放された慎吾は確認するように隣を歩く光にそう話しかけた
「その質問に関しては逆に聞くが慎吾、何故、俺が拒む必要があると思う?」
そんな問いかけに光は当然の事を聞かれたかのように怪訝な顔をしながら答えた
「まずゾフィーとヒカリは装備や能力共に機体同士の相性が良い。更に俺達もタッグを組んだ経験が一度や二度ではなく相手の癖や特徴も分かってるレベルだ。これなら既に俺やお前が誰かから誘いを受けて引き受けていない限りは、唐突な話とは言え断る理由など無いだろう?」
それに、と、そこまで言った所で光は語るのを止めて慎吾に視線を向けた
「折角のタッグマッチだ。俺としてはT型との戦闘でお前とタッグを組んでも尚、押し負けたのは相当悔しくてな。今回はそのリベンジ……のような心持ちでもあるんだ。俺とお前、Mー78社のUシリーズ二機の真の力はあんなものでは終わらないさ……!」
「光……あぁ、勝とう! 私とお前ならば必ず出来るはずだ!」
そう、強い決意を決意を込められた光の言葉を受けた慎吾はタッグマッチでの勝利を誓い、そう力強く返事を返すのだった