二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 プライベートで大幅に執筆速度が鈍る出来事が起きて、執筆が当初の予定より大幅に遅れてしまいました。何とか今年中にはもう一話くらいは更新しようとしますのでどうかよろしくお願いいたします


124話 痛撃

「うぐっっ……!!」

 

 防御し損ねた一撃を胸に受け、光は苦悶の悲鳴をあげると吹き飛ばされ、衝撃で背後にあった観客席の椅子数個と、コンクリートの床の表面を吹き飛ばし、煙を巻き上げながら静止した

 

「光ちゃん!!」

 

 肩を並べて戦っていたヒカリが吹き飛ばされた事により、ランスを構えていた楯無が警戒したまま一瞬、光へと視線を向ける

 

 

「だ、大丈夫だ会長……まだ俺は戦える……」

 

 そんな楯無に気づかい無用と言わんばかりに光は自身に折り重なったいくつかの椅子とコンクリート片を払いのけて立ち上がる。しかし、その胸のタイマーは既に赤色に変わって点滅しており、ヒカリに残されたエネルギーが枯渇し始めている事を示していた

 

「ね、これでよく分かったでしょ? 例えあなた達二人がかりでも私のISを突破できない。だからやめておきましょう?」

 

 そんな二人を前に、スコールは当初から放っていた余裕を崩す様子は無くあまつさえ二人を前に冗談のように手を広げてそう言う余裕すら見せていた。

 

 光と楯無がタッグを組んでスコールと対峙して数分、光、楯無共に未だにスコールが本気で攻撃を仕掛けて来てないのにも関わらずシールドエネルギーが枯渇し始めていた

 

「確かに戦闘での実力は認めよう……だが、その程度の事であまり此方を舐めてくれるなよ。亡国企業」

 

 現状はまさに何も分からぬ子供が見ても理解出来る程、圧倒的に慎吾と光が不利。しかし、それでもなお光はふらつき始めた足に気合いを入れてしっかりと屹立し直し、再び構えを取って戦闘続行の意思を見せた

 

「そうね……例え戦いにも……勝負にも。そのどちらでも勝てる手が見つからなければ戦わない。確かにそれは賢くて正しい選択なのかもしれない……」

 

 それに続くように楯無もまたヒカリの隣に並び立ち、静かに語る。いつの間にか楯無のミステリアス・レイディが纏っている水のヴェールは刃に変わっていた

 

「だけど私はIS学園生徒会長、更識楯無。ならばここで引くなんて振る舞いはあり得ない……!」

 

「……あぁ! その言葉に今ばかりは俺も乗らせてもらう!」

 

 覚悟を決めたようにそう宣言する楯無。それに光は力強く笑いながら賛同した

 

「はぁっ!」

 

 直後、掛け声と共に楯無は水のドリルを纏ったランスを構えてスコールに電光石火の如く突撃し、それと同時に光はナイトブレスを頭上にかかげると、残されたエネルギーを大胆に注ぎ込み、それに呼応してナイトブレスはそれに反応して青く光輝き始めた

 

「行くわよ光ちゃん!」

 

「あぁ、分かった会長。君に合わせる!!」

 

 その瞬間、スコールに向かって楯無が勢いを利用して高速でランスの三段突きを放ち、同時に三段突きかま放たれる際に生じた僅かな隙間を縫うように光はナイトシュートを発射した

 

 

 二人が同時に声をかけあった事でほぼ回避不可能と言える二条の攻撃ではあったがスコールはそれに全く動じず、ナイフを両手で数本を一気に掴み取るとそれを迫るランスと光線に向かって一気に投擲した

 

「そんなもの……!」

 

 複数本が一度に投擲されたと言うのにも関わらずナイフはその一本一本が鋭く早い。が、その飛ぶ軌道は甘く、楯無はそれを水の刃で切り裂こうとし

 

「いや……待て会長! 何か妙だ!」

 

 その瞬間、叫び声と共に光がそれを制止し、楯無を庇うようにナイフの前へと躍り出た

 

「光ちゃ……!」

 

 突如出てきた光に驚いた楯無が声を発したその瞬間、ヒカリに迫っていたナイフが一斉に大爆発を起こし、発生した爆風が楯無の盾がわりとヒカリを一気に飲み込まんとし

 

「はぁっ!!」

 

 その瞬間、ヒカリはナイトブレスからナイトビームブレードを出して絶妙のタイミングで爆風を切り裂き、自身やその背後にいる楯無に届く前に爆風を霧散させて無力化させた

 

「ぐっ…………!!」

 

 しかし、只でさえ戦闘でエネルギーを浪費していた上にからナイトシュート、ナイトビームブレードとエネルギーシールドを立て続けに消費した事で、ついにヒカリのエネルギーは底につき、光自身も肉体と精神の両方で立ち上がる事すら困難な程に疲弊してしまい、爆風を切り捨てた途端に光は糸が切れたように床に膝をついて倒れ、崩れ落ちた

 

「楯無会長……俺はいい……早く……奴を……!!」

 

 限界近くにまで傷付き、上手く力が入らない体を地面を引きずり無理矢理動かしながらも、光は掠れるような声で楯無にそう進言した

 

「いえ……駄目ね……今ので逃げられたわ……追跡も間に合いそうにないわね……」

 

「……そうか」

 

 が、しかし、楯無は既にハイパーセンサーでナイトシュートとナイトビームブレードの刃の範囲から離れていたナイフとが激突した事で発生した濃い黒煙に紛れて逃げ出すスコールの姿を既に見つけており、珍しく心底悔しそうに歯噛みしながそう言い、光も悔しさを隠せない様子で小さく呟いた

 

「しかし……偉そうに啖呵を切っておきながら、自力で立ち上がる事も出来ない程のダメージ……か。俺も格好がつかないな……これは……」

 

「私もお互い様……かしらね?」

 

 戦闘により乱雑に荒れた観客席内で互いに満身創痍に近く、満足に動くことも出来ない中、楯無と光はそうして顔を見合わせながら苦笑いを浮かべる事しか出来なかった

 

 

 併走しながらゼフィルスとの激闘を続ける慎吾は、猛攻を掻い潜つ、セシリアのBTライフルの射撃と合わせ、一瞬の隙を見て体を捻らせながら急接近すると勢いよく回転し、右足で鋭く回し蹴りを放つ 

 

「……」

 

「ぐあっ!?」

 

 しかし、空気を切り裂くかのような轟音を立てて放たれた蹴りは予めその攻撃タイミング、更には軌道や打ち込む箇所さえも読まれていたかのごとくゼフィルスに回避され、逆にカウンターとなる形でゾフィーの胸部に連続射撃が叩き込まれると慎吾は悲鳴と共に吹き飛ばされ、咄嗟にセシリアが動いて慎吾を空中で受け止める事でどうにか墜落を免れる程の手痛いダメージを受けた

 

「慎吾さん、お怪我は!?」

 

「すまない……大丈夫だセシリア。だが……くっ……やはり恐ろしく手強い……!」

 

 会場を離れ、市街地上空でセシリアと組んで戦闘を続けている慎吾ではあったがゼフィルスの圧倒的な戦闘技術が二人を寄せ付けず、確実に慎吾達はゼフィルスに押し切られつつあった

 

「このままでは、例え援軍が来るとしてもそう長くは持たず……」

 

 戦闘をしつつ、脳を最大限活動させて作戦を練るものの、防戦一方へと追い込まれて行く現状への解決策をどうして発見する事が出来ず慎吾は銀仮面の下で額に汗を浮かべ焦燥を隠せない様子で呟く

 

「……ええ、二人共々やられてしまいますわね……ですが……決してそうはさせません」

 

「……セシリア?」

 

 セシリアがそう言った瞬間、思わず慎吾はゼフィルスに向けていた視線を外すと、振り返ってセシリアの顔を見つめる。

 

「慎吾さん、申し訳ありませんが援護をお願いします!」

 

「……セシリア!? 無茶をするな!」

 

 その瞬間、セシリアは手に格闘ブレード『インターセプター』を呼び出すと、背後から呼び掛ける慎吾の制止も聞こえてないかのような勢いでゼフィルスに向かって突撃して行き、それを見た遊ぶかのように余裕を持ってナイフを呼び出し、たちまちのうちに鋭い金属と激しい火花が弾け飛ぶ格闘戦が行われた

 

「仕方ない……持ちこたえてくれよセシリア……!」

 

 それを確認した慎吾は、もはや制止は間に合わぬと判断して素早く構えると高速で移動を続けながらスラッシュ光線をゼフィルスに向かって放ち、セシリアを援護する体制に入った

 

「(今のセシリアは……こんな状況とは言え自分の本来の戦闘スタイルを見失っている……何とかしなければならないが……奴の隙を見つけられない……!)」

 

 現状打破とセシリアの為にもゼフィルスを一刻も早く撃退すべく慎吾は何とかM87を放つ隙が無いものかと探るが、先程アリーナでM87を放った際に受けたその威力を警戒しているのかゼフィルスは慎吾が僅かでもM87を放つ為のチャージする素振りを見せればセシリアの対処をしつつ即座に待避や慎吾への妨害を行い、決してM87を放たせようとはせず、格闘戦を仕掛けていたセシリアも苦戦しブレードを弾かれ、無慈悲な連続射撃を全身に受けてしまう

 

「まだ……ですわ……!」

 

 そんな状況の中、ゼフィルスに追い込まれたセシリアが自身の最後の切り札、セシリアのブルー・ティアーズに今現在装備されているレース用の高速機動パッケージ『ストライク・ガンナー』その仕様の際に大前提として決してやってはならないと言われている禁止動作ブルー・ティアーズ・フルバースト。即ち閉じられている砲口から発射し、パーツを吹き飛ばす事によって可能とする四門同時発射を行い 

 

 直後、ザクリと言うゼフィルスの銃剣の刃が肉を貫く鈍い音が響いた


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