二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 毎度の事ながら遅れてすいません。と、言うのもいまいちの執筆構想の不調と重なって最近、興味本意でFGOを初めてそれに時間を取られてしまいまして……


115話 食堂での一幕

「とにかく……お前達が一夏に対して抱いている真剣な想いは尊重する。そして、恋愛とは得てせずして盲目になってしまうのも私自身、経験は無い故に強くは言えないが……それでも、今回はその上で言わせてくれ。何事も焦りそうな時ほど冷静さを持つことが大事。私はそう思うぞ?」

 

「うっ……」

 

「お兄ちゃん……ごめんね」

 

「確かに……私とした事があの時は完全に冷静さを失っていた……」

 

「すまん、おにーちゃん……また迷惑をかけてしまったな……」

 

 駆け付けた慎吾と光が学食で、一夏を中心として起こっている騒ぎを止めるに奮闘して約5分。光の指示で一旦、一夏が皆が腰かけているテーブルから会話の内容が聞こえない程度の距離まで離れ、その上で額に汗が滲む程に熱心な慎吾の説得もあってどうにか落ち着きを取り戻した鈴、シャルロット、箒、ラウラは申し訳なさそうにそう慎吾に謝罪する。謝罪の言葉を口にはしてないセシリアも騒動の主な原因の一つとなってしまった自覚はあるのか、暗い顔で目と口を閉じて慎吾に向かってうつ向いていた

 

「うん、そうだ。そうして皆が心から『申し訳ない』と思ってくれているのならばこれ以上、私から言うことは無い。しかし……二度とするなとは言わないが出来る限り同じ事を繰り返さないよう注意してくれ。あぁ、時間をかけてしまったな……一夏も戻ってきてくれ」

 

 そんな皆の様子を見ると慎吾は感じていた疲労をぐっと心の奥底に押し込めると優しく笑いかけると、手で合図を送りって少し離れたテーブルで腰かけている一夏を呼び戻し、それと共に一夏の見守り役として同じ席に座り、マイペースに朝食を取っていた光も帰ってきた

 

「えっと……もう俺、戻っても大丈夫なんですか? 慎吾さん」

 

「あぁ……悪いな一夏。どうしても私が今回の事で個人的に君を除く皆に言っておきたい事があったんだ。もし、それで仲間外れにされたと感じたなら謝罪しよう」

 

 戻ってきた一夏に慎吾はそう言って軽く頭を下げると空いていた椅子を引き、そこに一夏を座らせる。その間に自然な動きで光は慎吾の隣の席に腰掛けた

 

「いやいや、俺は別に仲間外れにされたとか、そんな事は思ってませんて。ただ……」

 

 慎吾に進められるがまま、椅子へと腰掛けた一夏ではあったがやはり、自身でも慎吾や他のメンバーが数分かけて話し合っていた事が多少なりとも気にはなっていたのか慎吾に問おうとし

 

「……一夏、それに皆も本当に悪いが質問やこれ以上の論議は後にした方がいいようだ。……少なくとも私達全員が速やかに朝食を終えて学食を出るまでは」

 

 が、突如、慎吾は一夏が言葉がまだ途中なのも気にかけず、手の平を出し早口かつ小声でそう言って強引にその会話を遮った

 

「えっ、ちょっ、急にどうしたんです慎吾さん?」

 

 そんな基本的に平常時では落落ち着いており穏やかな慎吾がとった些か乱暴な行動にも見える慎吾の行為に思わず一夏は思わず直球で問いかけ、黙っていた箒達も思わず慎吾に視線を集中させる

 

「……皆、落ち着いて振り替えって自分の後ろを見てみろ」

 

 その問いかけに、慎吾は先程と同じくこのテーブルに集まっているメンバーにだけ聞こえるような小声でそう告げる

 

「後ろ……?」

 

 慎吾の言葉を聞いた六人はタイミングを合わせたように一斉に首を動かして背後を振り返り

 

 次の瞬間、全員がまたもや動きをシンクロさせて、その目を見開いた

 

 そこにいたのは、一体いつ学食に来ていたのか普段から着用しているオーダーメイドなのか体にピッタリと合った漆黒のスーツに身を包み腕を組んでこちらをじっと観察している千冬の姿であり、しかも六人が目を見開いて驚愕した瞬間、千冬は腕組みを止めてゆっくりと慎吾達が集まっているテーブルへと歩みよってきた為に六人は弾かれるように正面に向き直ると、誰一人雑談すること無く残った朝食をかっこみ始めた

 

「(私としたことが……シャルロット達を説得するのに集中しすぎて時間の事をすっかり忘れていた……良く見れば朝食を取っている人数も減っている……予想していたより時間を使ってしまったようだな……)」

 

 一夏達に習って慎吾もまた急ぎ足気味で朝食を食べ進めながら、学食内全体を見渡すのと同時に時計を見て自身の迂闊さを内心で悔やんだ

 

「何やら随分と急いで朝食を取ってている所で悪いが……少し話を聞いてもいいか大谷?」

 

 と、そうして慎吾が休む事無く口へと動かす手を急がせていた、その時。慎吾達のテーブルにたどり着いた千冬があくまで表面的にはごく普通に話しかけているように、しかし暗に『拒否権は無い』と告げているような語調と視線を向けながら慎吾にそう問いかける

 

「ええ、構いませんよ織斑先生。丁度今、朝食は終えましたので」

 

 千冬の言葉を受けた慎吾は千冬の姿を見た時点で予め予測していたのか、あまり動揺するような様子を見せずに朝食のサンドイッチの最後の人切れを飲み込み。そう

 

「そうか、ならば手短に言おう。実は先程、この学食から出てきた一部の生徒が騒いでいてな。何でも、ほんの少し前まで、また織斑絡みで大騒ぎが起きていたらしいのだが……それについて何かは知らないか大谷?」

 

 慎吾が了承の答えを出すと千冬は即座に慎吾に問いただし、その瞬間、無言で朝食を取っていた今回の騒動の中心核、セシリアと一夏、二人の体がピクリと震え、千冬の目はあくまで口元を紙ナプキンで拭き取る慎吾を中心に見据えながらも決してそれを見逃してはいなかった

 

「ええ、確かに『ここで騒ぎがあった』確かにそれは事実です織斑先生。ですが……既にその件については話し合う事で平和的に解決しましたし。騒動の原因は個人のプライベートに関わる事ですので申し訳ないですが、例え織斑先生と言えども私は言う事は出来ません」

 

 そして、それに気付いていながらも尚、慎吾は態度を崩すことは無く、あくまで冷静にそう『嘘は無い』報告を千冬にし、顔に笑顔を浮かべるとごく自然な動きで千冬が向けてくる視線に自分の視線を合わせた

 

「……ふん、今回はお前の話を一応、信じておこう」

 

 二人の間に緊迫した一瞬の沈黙が流れた後、千冬は大きくため息を吐いた後にそう言うと背中を見せ、慎吾達のいるテーブルから立ち去っていった

 

「……ふぅ。よく慎吾さん千冬ね……織斑先生相手にもあそこまで落ち着いていられますね」

 

 千冬が完全に離れていったのを確認すると一夏は安堵のため息をついて、最後まで顔色一つ変える事無く対応した慎吾に感嘆してそう言った

 

「はは……そう見えたか?」

 

 一夏の言葉に慎吾はそう笑って答えたが、一夏は気付かない。強く握られた慎吾の手には緊張により涌き出てきた汗が滲んでいたのを。去り際に千冬がこっそりと声を発せずに口だけを動かして『二度は無いぞ』と慎吾に告げていた事を

 

「(全く……入学試験の時から知ってはいたが……ケンさん達に並ぶくらい凄まじい人だな……)」

 

 改めなくとも分かる千冬の凄さを身をもって朝から味わい、それを思い出した慎吾の胸は再び緊張で一回、強く鳴るのであった


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