二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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106話 死霊の咆哮、怨念の怪光

「……くっ……このっ……!! 一夏を離せ!」

 

 息も出来ない程の緊張感に満ちたデスボーンへと変わったタイラントと睨み合い。それを先に破って動き出し、タイラントにアサルトカノンを向け、発砲したのはシャルロットだった

 

 見間違いようが無い程の決定打たりうる一撃を受けても立ち上がり、おぞましい姿へと変化したタイラントへと対するタイラントへの警戒、そして恐怖は勿論シャルロットの心にも存在していた。しかし、それよりもシャルロットの目に強く飛び込んでいたのは不意打ちで大地へと叩きつけられ、強烈なダメージで立ち上がれず苦しげにうめく一夏の姿。一夏を想う気持ちがタイラントに対して感じていた恐怖を吹き飛ばしたのであった

 

「嫁は返して貰うぞ……!」

 

「あまりしつこいのは例えジェントルマンでも、レディーでも見苦しいですわよっ!」

 

 それに一瞬遅れて、ラウラとセシリアもそれに続いてタイラントに向かってそれぞれ射撃を行い、三方向からこ銃撃が一斉にタイラントに迫る

 

「………!!」

 

 が、しかしタイラントは地上に静止していた状態からロケットの如く急激に浮上して加速すると、三人の銃撃をさながら小鳥やグライダーを思わせるような驚くほど軽やかに、まるで空中で踊るような動きで次々と回避し、結局、三人の銃撃はタイラントの装甲に僅かでも霞める事すら無かった

 

「奴め……更に速さが! と、なると……やはりあれが奴の第二形態の姿なのか?………いや、しかしあの姿はあまりにも……」

 

 元々優れていたタイラントの機動力が更に上昇し、その速さに目を見開き警戒する箒ではあったが、外見上はどう見てもパワーアップしたようにも見えない菅谷、『本当にアレがタイラントの第二形態の姿なのか?』と、小さな違和感を感じていた

 

「……どうやら箒の察してる通り、あの姿は第二形態移行とは微妙に異なるようだ……」

 

 と、そこで箒の疑問に答えるように楯無に支えながらタイラントの様子を観察し、データ採集を続けていた光が語る

 

「本来ならば第二形態移行……今の姿から判断して恐らくは更にボディを巨体にしてパワーが増大した形態へとなる筈だったのだろうが……私達の攻撃、特に白式の零落白夜の一撃が致命的となって、自慢のエネルギー補給器官の大部分をも失っていた奴は第二形態に変わる程のエネルギーが十分に確保出来なかったんだろう」

 

「その結果が、あのゾンビかRPGのスケルトンみたいな姿って訳ね……っ!」

 

 光の言葉に自身も回避を続けるタイラントに向かって銃撃を続けるシャルロットやセシリア達に続いて龍砲でタイラントを攻撃する。が、タイラントはそれでも尚、『容易い』とでも言うように縦横無尽に空中を舞い、四人の攻撃を避け続け、一向にただの一撃も命中する気配すら見せない

 

「エネルギーはまだ残ってる……ならば私も!」

 

「……! 待て箒! あぁ………確かに奴は朽ちた死体のゾンビ同然。無理矢理に第二形態擬きにした分、例え元がいかに燃費が優れた機体だとしても決して長くは持たず、徐々に自壊して放置していても朝焼けすら拝めない。だが、しかし……それが実に危険だ!」

 

 雲を相手にしているかの如くことごとく攻撃を回避するタイラントに苦戦する仲間達を助ける為、ひいては余程打ち所を悪くさせられたのか未だに起き上がれない一夏を助ける為に、箒は自身のエネルギー残量を確認すると光を楯無に任せてタイラントに向かって飛び出そうとした。が、それを光が素早く止めると自身でも信じられないようにそう語ると、咄嗟にタイラントに向かって攻撃を続ける四人に『警告』を送る

 

「気を付けろ皆! 奴め、全く自分への反動を省みないような無茶な一撃を仕掛けてくるつもりだぞ!!」

 

 

 光の叫びが、シャルロット達の耳に届き射撃が止まったその瞬間

 

『gigigi ……!!』

 

 タイラントの頭部が真っ白に白熱し、喉元が一瞬、爆発的に膨れ上がり

 

 

 

 直後、瞬間的に朝を通り越して夜から一気に昼間へと変わってしまったと思わせるような強烈な白い光を放つ熱線がタイラントの頭部から放たれ、射撃を中断して回避に移ろうとした四人に襲いかかった

 

「ちょっ……冗談でしょ!?」

 

「いくらなんでも、これでは……きゃあぁっ!?」

 

「しまっ……うわあぁぁっ!!」

 

「シャルロット!ぐっ……くうっっ!!」

 

 死にゆくはずの相手が放つ一撃とは信じられない、その悪夢としか思えない程の暴力と怨念の塊のような一撃に

 

 鈴はどうにかその威力を弱めようと光の渦に向かってありったけの龍砲を打ち込み

 セシリアは一時的に武装を解除して全神経を集中してブルー・ティアーズの最高速度で回避を試み

 シャルロットは一瞬遅れた回避を取り戻すように僅かでも披ダメージを押さえようとシールドを構え

 ラウラどうにか迫る一撃を回避するのと同時に直撃コースに取り残されたシャルロットを助けようと試みた。

 

 が、四人の努力も嘲笑うようにタイラントから放たれた白熱光は四機のISを霞めただけで軽々と吹き飛ばし、海面へと叩き落としてしまった

 

「みんなっ……!! お、おのれっ……!!」

 

 間一髪の所で光の一言で引き留められた事でタイラントの一撃を受けずに済んだ箒は、倒れていく仲間達を見て叫ぶ。迂闊に感情に任せて動いたら最後、未だにエネルギーの余波がくすぶるタイラントの一撃を受けてしまうと理解して以上、その場から動けず悔しげに叫ぶ事しか出来なかったのだ

 

「くっ……ナイトブレスさえ……ナイトブレスさえ使えれば俺も……!!」

 

「…………」

 

 自信が打ち立てた急ごしらえの作戦を信じて付いてきてくれた後輩達が傷付き、慎吾の他に新たに出来た自身の親友の箒が無念のあまり叫んでいる。そんな状況を変えたいが、しかし、その力が失われている光は仮面の向こうから痛いほど自身の腕の傷付いたナイトブレスを見詰めながら悔しさと苛立ち、そして無力感を隠せないように叫び、楯無はそんな光の心境を察しているのかただ黙ってタイラントを警戒しつつその体を支えていた

 

「(俺のナイトブレスは『老師』から授かった特別製……そう簡単には修理など出来ないと分かっているのだが……それでも……!!)」

 

『Guuu…………』

 

 心中でも激昂を押さえ切れずに吠える光、そんな光を含めた三人に狙いをつけるタイラント。その口元からは光の心中を表すように黙々と黒煙が騰がっていた




 今回、EXタイラントデスボーンがゲーム中で見せるあの必殺技を再現しようとした所……なぜか某怪獣王にも似た白熱光線(こちらは自爆覚悟ですが)に、なりました。流石にやり過ぎで、賛否は別れるかもしれません……

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