二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 今回、少々短めです


102話 病室、暗雲と儚き希望

「会議で決めた作戦予定通りに事が動いているのなら丁度、今頃、タイラントに先陣をきって箒、次いでシャルロットやラウラ達が接敵して交戦を始めた……と言う頃合いか」

 

 夕方から夜へと変わり始め、病室を照らす蛍光灯の光の明るさを強く感じ始めた頃、ベッドの上では仰向けの状態のまま首を動かしてベッド横のデスクに取り付けられたデジタル表記の時計を眺めつつ慎吾が一人、静かに呟いていた

 

「タイラントに狙われているシャルロットやラウラ達専用機持ちのが自ら打ち倒すべく出て、光もそれを助けるために傷付いた体のまま行った。織斑先生も非常事態に備えてMー78社の研究所に出向いている……そうして皆が、懸命に努力している中私はこうして寝ているしか無いとは……」

 

 自身が置かれている状況を振り返った慎吾は悔しげに自身の腕に装着されている待機状態のゾフィーを見つめた

 

 第二形態であるスピリットゾフィーになっていたお陰でゾフィー本体のダメージは総合から見れば銀の福音との戦いで負ったものより軽傷ではあった。

 が、しかしそれはあくまで総合面から見た話であり、タイラントとの戦いで負ったゾフィーの右腕部分の損傷は大きく、ゾフィーは最大の必殺技たるM87光線、更にスピリットゾフィーの仕様が不可能と言う状況に追い込まれてしまっていた。

 

 不幸中の幸いか左腕も全損、と、はまでにはなっておらず現にスペシウムやウルトラスラッシュならば現在のゾフィーでも使う事は可能ではあったが、Z光線やM87光線と行った特に強力な威力の装備を使う事が出来ない事、そして慎吾自身の体の負傷の大きさが原因で今回のタイラント撃滅作戦に慎吾は外され、こうして一人、病室のベッドでマリに指示された通りに安静にしているのであった

 

「ゾフィーの破損も、この怪我も私のミスが招いた出来事。仕方無い……が、やはり皆が戦っていると言うのに何も出来ないと言うのは悔しいものだな……」

 

 そこまで言って慎吾は改めて自身の無力を味わい、思わず悔しさに小さく歯噛みした。が、しかし、今、無理矢理ゾフィーを展開させて遅れて出た所で、主力のM87光線やZ光線を失い、なおかつ本体の装甲にも不安が残り、第二形態にもなれない自分がタイラントとの戦闘で皆の足を引っ張ってしまうのでは……と、言う憂慮の方が大きかった為に慎吾は強い無念を感じながらもベッドから起き上がろうとはしなかった

 

 そうして慎吾が手の打ちようの無い現実を前に諦めかけた瞬間だった

 

「ん……? これは、私の着信音か……」

 

 突如、病室に警戒なリズムを刻んだ電子音声が鳴り響き、思わず音の聞こえた方向へと視線を向けた慎吾はそれがベッド横のデスクに置かれた自身の携帯端末から鳴っている事に気付くと、ベッドに寝たまま手を伸ばして携帯端末を手に取る。どうやら電子メールが届いたようであった

 

「差出人は……ケンさん?……」

 

 画面に表示されたメールの差出人の名前を見て、慎吾は仰向けのまま不思議そうにそう呟いた

 

 ケンは激務である仕事の合間をぬって自身がこの病院に搬送された時に真っ先に駆け付け、既に自分と光の奮闘を評価し、同時に力強い励ましの言葉をくれていた。そんなケンが今、自分に一体何の連絡なのだろうか?

 

「……!?」

 

 直感的ではあるが徐々に嫌な予感を感じ始めていた慎吾は、メールの件名である『タイラントの一件に関する緊急』と言う文字を見た瞬間、目を見開きすぐにメールを開くとその内容を確認した

 

「……こ、これは……! この情報を何としてもタイラントと戦っている皆に……光達に伝えなくては!!」

 

 そこに書かれていたのは、たった今、Mー78社独自の捜査で判明したタイラントが未だに密かに隠し持っている『ある機能について』の恐るべき情報。そしてタイラントのジャミングの影響か光に連絡が取れないと言う事が書かれた文面を目にした瞬間、慎吾はみるみるうちに顔を青ざめ、たまらずベッドから飛び起きると患者用のスリッパを履きながら立ち上がった

 

 このタイラントの機能を交戦中のメンバーが知らず、完全に不意打ちの形でぶつけられたら致命的な一撃を誰かが受けてしまう。そう確信していたからこそ、慎吾は例え今の自分がタイラントに挑んでも勝ち目は無いことを、ケンに勝るとも劣らない程に尊敬し感謝しているマリの言うことに逆らうことになろうとも、動かずにはいられなかった

 

「……っう! ……ひとまず病院の外に出てゾフィーを展開させるまでは移動に杖が必要だな……」

 

 が、そう心では既に決めているものの、やはりタイラントから負わされたダメージは予想を越えて大きく

、立ち上がるのと同時に容赦なく体に襲いかかる激痛に思わず慎吾は顔をしかめて片手で壁に手をついた

 

「うん……?」

 

 壁に自重を預けながら慎吾が杖を探して病室内を見渡していると、再び慎吾が手にしていた携帯端末が鳴り響き、再びケンの元からもう一通のメールが届いた事を知らせた。

 

「『責任の強い君の事だ、例え負傷した今でもあのまま黙っててはいないだろう』……はは、やはり、私の行動する事などケンさんにはお見通しか……」

 

 届いたメールを開いた瞬間、自分が行動しようとしていた事、そのタイミングまでケンに完全に予測されていた事を知り、たまらず慎吾は苦笑した。が

 

「『そこで君に僅かながら私も助力しよう』……?」

 

 メールの続きの文面を見た瞬間、慎吾は思わず引き付けられるように壁に手をかけたまま、ケンから届いたメールを読み始めた




 何度もすみません。今月一杯までアンケートの解答をお待ちしております。しつこく感じられるかもしれませんが、どうかご協力をお願いします。

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