二人目の男子はIS学園No.1(最強とは言ってない)   作:塩ようかん

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 更新が遅れてしまいました……そして、あの子が登場です。そして、アレの出番も近いです


10話 中国代表候補生とゾフィー

「(偉そうな事を言っておきながらクラス代表戦の結果は全敗。私もまだ未熟者だな……)」

 

 クラス代表戦が終わり、セシリアの辞退により一夏がクラス代表に決まってしばらくが過ぎ四月は下旬。千冬が担当する実技授業中、ふと試合を振り返り慎吾は不甲斐ない結果に改めて頭をこっそりと頭を抱えた。

 

「大谷、織斑、オルコット、お前達が試しに飛んでみろ」

 

 と、そこで千冬に呼ばれた為、慎吾は慌てて思考を停止させ前に出ると、直ぐ様、待機状態のゾフィーを構える。

 

「(ゾフィー!)」

 

 慎吾がそう強く念じた瞬間、赤い波状の光に慎吾の体が包まれると一瞬のうちに全身装甲のIS、ゾフィーは展開され慎吾の体を包んでいた。そのスピーディな動作におお、と回りからは小さく歓声があがる。ゾフィーの装備を終えた慎吾が首を動かして回りを見てみると、既にセシリアと一夏も展開を終え地面から数10cmの所で浮遊していた。

 

「よし、飛べ」

 

 三人がISを展開し終えたのを確認すると千冬がそう言い、腕を動かして合図をした。

 

「ふっ……!」

 

 合図を見た瞬間、慎吾は掛け声と共に凄まじい勢いで垂直に上昇する。その後に若干遅れてセシリア、そしてセシリアからかなり遅れて一夏が続く。

 

「何をしている、スペック上の出力ではゾフィーとでもそれほどの差はつかないはずだぞ」

 

 その現状を見かねて、千冬が若干呆れた様子で通信越しに一夏に注意する。

 

「一夏、うまくイメージがつかめてないようだな」

 

 一夏の飛ぶ様子を見ながら慎吾は振り返り、そう通信で話しかける。

 

「そ、そう言われてもまだ空を飛ぶ感覚がつかめなくて………どう飛んでるかもまだ今一……」

 

「所詮イメージの話ですから、一夏さんがやりやすい方法模索する方が良いんですが……困りましたわね」

 

 慌てて慎吾にそう言う一夏に続き、セシリアもどうしたものか、といった感じの様子で言葉を続ける。

 

「説明は私とセシリアが大まかにはしたが……あれはあくまで分かりやすくした基礎的なものだからなぁ」

 

「あぁ、あの時の慎吾さんの説明はお見事でしたわね、私は慎吾さんの補佐をしただけですもの」

 

 腕を組み考え込む慎吾に、純粋に敬意を持ってる様子でセシリアが誉める。

 

 クラス代表戦終了後、改めてセシリアは一夏と慎吾に謝罪すると、積極的に一夏のコーチを手伝いだした。代表候補生であるセシリアが加わった事で一夏のISの知識と技術はさらに底上げされ、気付けば一夏と慎吾はセシリアとも互いに名で呼び会うようになった。それに答えてセシリアもまた慎吾を実の兄のように親しくある程度の敬意を持って、そして一夏には最初の態度とは正反対のように親身に接しながらも、隠せないほどの好意を向けていた。

 

「そうだ、私よりは代表候補生であるセシリアが教えた方が何かと都合が良いだろう。次はお前がメインで放課後の鍛練をしてみてはどうだ?」

 

「そ、そうですわね!それはいい考えですわ!」

 

 慎吾からの思わぬアシストにセシリアはアイコンタクトで慎吾に礼を述べつつ、すかさず賛同した。

 そう、慎吾はセシリアが一夏に向けている好意に気付き、密かにサポートを入れるようにしていた。最も、最近になって箒が一夏に向ける好意にも気付いてしまったが為にどちらかを贔屓する訳にも行かなくなり慎吾の悩みの種の1つになってしまったのだが。

 

「一夏っ!いつまでそこにいるつもりだっ!!」

 

 と、そこで堪えきれなくなったのか真耶からインカムをひったくった箒が大声で怒鳴る。が、直後に箒の背後に移動していた千冬に出席簿で殴られインカムを取り返された。

 

「うわぁ……ハイパーセンサーの補正で超、痛そうなのがハッキリと……」

 

 頭を押さえて痛みに悶える箒の様子を見ながら冷や汗を流して一夏が言う。

 

「箒さん……」

 

「出来る限りあれは受けたくは無いな……」

 

 同じくそんな箒の様子を見ていたセシリアは思わず同情し、慎吾は冷や汗を流して引きつった笑みを浮かべていた。

 

「大谷、織斑、オルコット、順番に急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

 と、そこで千冬の通信で指示が入ると瞬時に漂っていた妙な空気は消え去り、まずセシリアが軽く二人に挨拶すると真っ先に地上へと向かいだし、難なく完全停止もクリアした。

 

「さすがだなセシリア……では、次は私が行くとするか」

 

 それを確認すると慎吾が身構え、一気に地上へと向かう。慎吾が集中しながら降下を続けるとやがて地上が間近に迫り、慎吾はゾフィーのスピードを緩めて千冬の指示通りに千冬から10㎝以内で停止しようとする。

 

「とっ……!?」

 

 が、若干スピードを緩めるタイミングが遅かったのかゾフィーはスピードはかなり緩んでるものの足が地面にぶつかり、足元から小さな土煙をあげた。

 

「すいません織斑先生、速度計算をミスしました」

 

「よし、分かっているのならば次までに直しておけ大谷。いいな?」

 

 頭を下げて謝罪する慎吾に、千冬は一瞥すると意義を言わせない様子でそう告げる。

 

「はい、分かりました織斑先生」

 

 慎吾もまたそれに応じ、続いて一夏が急降下してきたのだが慎吾よりさらに酷い失敗をし……地面に激突してクレーターを作り上げた。

 

「かなりの勢いで激突したが……大丈夫か一夏?」

 

 クレーターの縁に立ち、慎吾は中心で倒れている一夏を見下ろす形で話しかける。

 

「はは……な、何とか……」

 

 周囲の女子生徒のくすくす笑いを受けながら、恥ずかしそうにしながら一夏は白式を上昇させて地面から離れた。

 

「全く……情けないぞ一夏。昨日、私達が教えただろう」

 

「仕方ないさ箒、一夏自身がイメージに慣れるまでは私達がサポートしながら待とう」

 

 いつの間にか慎吾の隣に来ていた箒が一夏を睨み付け、そう責め立てる。が、即座に箒の前に慎吾が立ち、宥めるかのようにそう言う。

 

「し、しかし………」

 

 多少うろたえながらも、箒が慎吾に反論しようとする。

 

「大丈夫ですか一夏さん?」 

 

 と、その時、二人のすぐ側を通りすぎてセシリアが一夏に話しかける。

 

「……っ!」

 

 それを見た瞬間、箒は慌ててセシリアに負けじと一夏へと向かい、瞬時に女の戦いが始まる。その様子をため息を付きながら慎吾は見送り、せめてもの助けとして授業終了後に一夏が課せられるであろう穴を埋める作業を手伝う決断をした。

 

 

「すいません慎吾さん……今日は穴埋めを手伝って貰っちゃっただけじゃ無く、訓練まで……」

 

「何、気にすることはない」

 

 時刻は過ぎて夜、一夏と慎吾は日課にしていた訓練を終え寮への帰宅道を並んで歩いていた。最も慎吾は本日、最後の訓練である学園一周のランニングが残っているのだが

 

「さて、今日の訓練では飛行訓練を中心に、後半は一夏の近接戦闘の参考に私と箒の模擬戦を見てもらった訳だが……何かつかめたか?」

 

 慎吾が本日の訓練を改めて振り返り、一夏に改めて訪ねた。

 

「えっと……飛行は何となくは……模擬戦は何か慎吾さんも箒も早すぎて……あんまり……」

 

 一夏はそれに恥ずかしそうに頭を掻きながら答える。そんな一夏を見ながら慎吾は穏やかに笑い

 

「何、何となくでさえ形をつかめればそれに越した事は無い。これからどんどん成長していこうじゃあないかお互いに……な」

 

「そうですね……」

 

 一夏はそう自身無さげに呟きながら慎吾と別れて寮へ向かい、慎吾はさっそく学園一周のランニングをすべく走り出した。

 

「ん……あれは……?」

 

 慎吾が走り出してすぐ、慎吾は学園の正面ゲート近くで、ボストンバッグを持った小柄な少女を見つけた。少女は片手に乱雑に扱ったのかくしゃくしゃになった一切れ紙を持ち、何やら周囲を見渡していた。

 

「ぶしつけで悪いが……いいか?」

 

 そんな少女が気になった慎吾は走るのを止め、警戒させないように正面からある程度の距離を保って話しかける。

 

「あ、丁度良かった、あんた校舎一階総合事務所受付ってどこだか知らない?」

 

 突如現れた慎吾に少女は一瞬、驚いたような顔をするが小さく、ついてるっ!と、口にするとすぐに嬉しそうに慎吾に話しかけた。

 

「それならばすぐ近くだ、案内しよう」

 

 その少女の純粋な態度に慎吾は断る理由も無く、本日のトレーニングを中止し、少女を案内することになった。

 

 

「なるほど………凰は中国代表候補生なんだな」

 

「そう言う事。……にしてもいきなり二人目の男子に会えるなんて驚きだわ。あと、名前でいいわよ慎吾」

 

 向かう途中、互いに自己紹介を終えた慎吾と少女、凰 鈴音は会話をしつつ歩き、互いに名前で呼ぶことを許可していた。

 

「うむ、ここが総合事務受付だな」

 

「ん、案内してくれてありがとね慎吾」

 

 二人の会話は予想以上に弾み、予想よりずっと早く総合事務受付に付いた二人は別れ、鈴は軽く慎吾に礼を言う。

 

「なぁに……礼はいらないさ。まぁ……ただ」

 

 と、そこで慎吾は不適な笑みを浮かべて鈴を見る

 

「中国代表候補生のお前とその専用IS、落ち着いてからでも構わないから是非、手合わせ願いたい物だがな……」

 

「……強いわよあたしは?」

 

 鈴もそれに負けじと挑戦的な笑みを浮かべて返す。

 

「あぁ、その時を楽しみにしていよう……」

 

 慎吾はそう返すと、静かに背を向け立ち去る。慎吾と鈴の試合、それが叶う前に一つ大きな騒動が起こることは学園内に予想できる者はいなかった。




 タイトルに出ておきながら鈴の出番が少ないのが何とも……そして未だに、のほほんさんが慎吾に付けるあだ名を考え虫です

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