『楽しんでいただけていますか、罪深き時間遡行者・暁美ほむらとその仲間たち。もっとも傲慢なあなたのこと、私が何を言っているのかなど理解できないでしょうね』
空中に投影された大型スクリーンであの女、美国織莉子が人を食った調子で喋っている。単なるビデオメッセージに過ぎないが、沙々は神経が逆撫でされるのを感じた。傍らで一緒に見ているほむらや杏子の顔も引きつっている。
あれから沙々たちはほむらに導かれ、街はずれにある彼女の自宅へと場所を移した。傷の手当てを受けて身体は軽いが、気分は重い。魔女の事が頭を離れなかった。
通されたその広間は風変わりな空間だった。
真っ白な部屋に椅子が散在し、無数の空中スクリーンが方々に浮かんでいる。部屋の中央では巨大な振り子が時を刻むように、規則正しく左右に振れていた。
映像の中の織莉子は芝居がかった演説のように喋り続ける。
『私はあなたが犯してきた罪、そのすべてを知っています。知った以上、見て見ぬふりなど許されない。故に、私はあなたを裁きます。……明日の夜、我が美国家の別邸へ来ていただきます。仲間を連れてくるのも自由です。そこであなたは己の罪を思い知り、絶望のうちに死ぬのです。それでは、ごきげんよう』
織莉子が言いたいだけ言って映像は終わった。
続いて別のファイルが展開され、美国家別邸と思しき場所の地図が表示される。必要な情報なども添えられていた。
杏子が苛立たしげに言った。
「あの女、ふざけやがって……。おいほむら、奴はいったい何を企んでやがる? それに時間遡行者……ってなんなんだ」
「……話しても、信じてもらえないわ」
「今さらなに言ってやがる。こんなことになっちまったんだ、たいていの事は信じるさ」
ほむらはすぐには答えず、暗い顔のまま俯いていた。その表情からは強い逡巡がうかがえる。
沙々はほむらをじっと待った。この期に及んで嘘をつく必要も無い。ほむらが何か話したなら、きっとそれが真実なのだろう。
やがてほむらは深くため息をつき、沙々と杏子を見回した。そしてゆっくりと喋り始める。
「……私には、過去へ戻る能力がある。その力を使ってこの一ヶ月を何度も何度も繰り返してきた。大切な人を救うために」
「それってまどかさん……ですか?」
沙々の問いに、ほむらは黙って頷いた。
「私は何度も何度もあの子の死を見てきた。そしてそれと同じくらい、魔女に成り果てた姿も……」
「それで魔女の事を知っていたんですか」
「ええ。ソウルジェムは魔法少女そのもの。この宝石が穢れを溜め、濁りきった時に魔法少女は魔女として生まれ変わる……美樹さやかのようにね」
美樹さやか、そして魔女。駅での光景が沙々の脳裏によみがえる。あれが自分たちの最期でもあるというのだ。
「だからまどかを魔法少女にしてはいけない、そして彼女に生きてこの一ヶ月を乗り越えさせたい。それが私の願い、それだけが戦い続ける理由」
そこで話を区切ったほむらは、どこか不安そうに沙々と杏子を見比べている。
突飛な話だと沙々は思った。ほむらが信じてもらえないと言ったのも無理はない。
しかし、沙々は疑っていなかった。少なくとも、ほむらがまどかを本気で守ろうとしていることだけは事実だ。そして作り話ならもう少しマシな嘘をつくだろう。
やがて杏子が口を開いた。
「それで、あの織莉子ってのは何者なんだ?」
「美国織莉子……奴はある時間軸において突如として現れた。あいつは予知能力を持ち、魔女になったまどかが世界を滅ぼす未来を見たらしいわ……。それで、それだけの理由で奴はまどかを、まだ魔法少女にもなっていなかったあの子を殺したのよ……!」
ほむらの瞳が憎悪に燃えた。顔を歪めて歯を食いしばり、組んだ両手が震えるほど力がこもる。
「魔女が世界を滅ぼす……そんなことできるのか?」
「まどかの魔女は強大な力を持っている、私もその光景を目の当たりにしたわ。だからあの子を魔女にしちゃいけない、魔法少女にしてはいけないのよ。……この時間軸の美国織莉子がどうしてまどかをすぐに殺さないのかはわからない、真意がどこにあるのかだって見当がつかないわ。だけど、私はあの子を絶対に救ってみせる」
ほむらは決然と言い切った。そして杏子を、沙々をじっと見つめる。彼女の瞳には強い意志の光が宿っていた。
その強さに、沙々は思わず目をそらしてしまう。
ほむらはそれに気付かなかったのかどうか、ゆっくり噛みしめるように言った。
「この共闘を組む時、私はその目的をワルプルギスの夜襲来まで生き延び、倒すためのものだと言った。それは今でも変わっていない、奴が見滝原に破壊をもたらすのは間違いないわ」
そこまで言ってから、ほむらの顔に再びわずかな迷いが浮かぶ。
何が言いたいのか、何を考えているのか。沙々にはおおよその察しがついた。
予想通りの言葉をほむらは口にした。
「……これはあなたたちには関係ない、本来私だけの問題。関わったところであなたたちに何のメリットも無いことも承知している。けれど承知の上で言うわ――まどかを、あの子を助けるため力を貸してほしい」
いつも落ち着き払い取り澄ましていたほむらが、今は必死な顔で小刻みに震えている。彼女がこれほど真摯に頼み事をする姿を、沙々は初めて見た。
それは杏子も同じようだった。少し驚いたような顔でほむらの顔をじっと見つめている。
やがて杏子が言った。いつものように明るく快活な声で。
「あの織莉子って女、放っておけば絶対あたしの邪魔にもなるだろうな。それに美樹さやか――あいつの浄化を邪魔しやがった借りも返さなくちゃならねえ」
「杏子、それじゃあ……!」
「いいよ、こうなったらとことん付き合ってやるさ」
「ありがとう、杏子」
強張っていたほむらの表情が和らぐ。心の底から安堵したような顔だ。ずっと心細く、無理をしていたのかもしれない。
しかしそんなほむらを前にしても、沙々は何も言えなかった。駅での戦いからずっと、今こうして話をしていた間も、魔女の事が頭から離れない。
戦いとなれば、従属させた魔女を使う局面も出てくるだろう。その力があるからこそ沙々は今日まで戦い、生き延びることができた。それは間違いない。
だが、と沙々は思った。
全てを知ってしまった以上、今までのように魔女を使えるだろうか。自らもやがては辿るであろう破滅の姿、己の末路そのものの怪物たちを道具にできるのか。その思いが頭から離れない。
魔女の心はおぞましい呪いそのもの、それを思い出し沙々は震え始めた。震えるだけで何も言うことができない。
ほむらはしばらく沙々をじっと見つめていたが、頭を振り言った。
「……無理強いはしない、それがあなたの選択なら私は責めたりしないわ。今後の事もある、二人とも今日は泊まっていくといい」
ほむらの声音は思いのほか穏やかだった。それでも沙々の心は晴れない。自分のソウルジェムを見つめ、魔女の事ばかり考え続けていた。
薄暗いレンガ造りの部屋にまどかは閉じ込められていた。壁に据え付けられた小さなオイルランプが、ぼんやりとした灯りで内部の構造を浮かび上がらせている。
唯一の出入り口は金属の檻になっていて、施錠されていた。元々は別の目的で使用されていた場所を牢に改造したように思われ、ほのかにアルコールの臭いがする。
檻の中で膝を抱え、まどかはずっとその姿勢のまま座っていた。どうしてこんな事になってしまったんだろう、と何度目か分からぬ問いを繰り返す。
わけのわからぬままこんなところに閉じ込められたこともそうだが、それ以上にさやかのことが頭から離れない。
駅に現れたあの魔女は本当にさやかだったのか、そしてそうだとしたらあの後どうなってしまったのか。あの場にはほむらたちがいた。彼女たちは目の前の魔女にどう対処しただろうか。
石の廊下に固い足音が響く。こちらへ近づいているようだった。まどかは顔を上げ、そっと息を飲む。
やがて、扉の向こうに織莉子が現れた。今はゆったりした部屋着姿で、ランプの灯りに揺れる瞳はまどかを冷ややかに見つめている。
まどかは立ち上がり、檻まで駆け寄って声を上げた。
「織莉子ちゃん、どうしてこんな事をするの!? それに、さやかちゃんはどうなったの!」
「美樹さやかだったものなら、とっくに殺されてしまったでしょうね。あなたもよく知る暁美ほむらの手によって」
「ほむらちゃんが……!?」
「要らぬ希望は抱かぬことです。あれは必要だと思えば平気でどんな事でもする、そういう人間ですよ」
「そんな……」
さやかの死をはっきり告げられ、自分の中で何かが崩れるのをまどかは感じた。脚が萎え、その場でへたり込んでしまう。
しかもその死は、ほむらの手によるものだという。見知った者たち同士の殺し合いに胸の奥が痛んだ。
それでもまどかは顔を上げ、精一杯の気力を振り絞って織莉子を睨みつけた。
「私を、どうするつもりなの?」
「そんなに怖い顔をしないでください。私はあなたに知ってほしいだけですよ、真実を」
「真実……?」
「鹿目まどか、あなたは魔女の真実を知りました。しかしそれで全てではない。……今こそお見せしましょう、あなたを取り巻く恐ろしい運命を」
そこまで言い終えて、織莉子の双眸が真紅に光った。
耳鳴りのような雑音がする。光とノイズが同調し、広がり、それはまどかの目と耳に飛び込んできた。視界が光で塗り潰され何も見えなくなる。
「なにこれ……!?」
まどかは思わず悲鳴を上げた。やがて視力が回復してくるが、その目に映るのは薄暗い地下牢ではなかった。
何もかも破壊し尽くされた荒野。地上から舞い上がった粉塵に陽の光は遮られ、黄砂に見舞われた日よりも空は褐色に濁っている。墓標のように立ち並ぶビルの残骸により、かろうじてここに都市があった事がうかがい知れた。
人や動物の姿は見当たらず、荒れ果てた大地と廃墟がどこまでも広がり、吹き荒ぶ風の音だけが寒々しく響いた。
終末の光景を目の当たりにし、まどかは慄然としていた。映画のワンシーンのようだが、まるで自分がそこに立っているような、不快なまでのリアリティがある。
一際、破壊の激しい台地の上にそれはいた。
そびえ立つ山のような黒い影が、不気味に蠢いている。そこから伸びる無数の黒い根が地に突き刺さり、規則的に脈動を繰り返していた。
「あれはなんなの!?」
『魔女です。この星の全てを破壊し、吸い尽くし、滅びをもたらす最悪の魔女です』
たまらず叫んだまどかに、織莉子の声が聞こえてくる。鼓膜を通したものではなく、意識に直接響いてくるような声だった。
『魔法少女はやがて魔女となる、それはあなたも知っての通りです。そして今、目の前にいるあれこそが、魔法少女となったあなたが最後に迎える結末なのですよ』
「嘘……」
信じがたい話にまどかは絶句した。魔女となった自分が世界を滅ぼす、悪い冗談としか思えない話である。
しかし目の前に広がる光景には、寒気のするような説得力がある。
荒れた大地、暗い空、破壊された文明の痕跡、そして天に届くような巨大な魔女。吹き荒れる風のすえた臭いや靴の裏で感じる地面の感触も含めて、今いる滅びの世界が絵空事とは思えなかった。
やがて視界が揺らぎ、カメラを切り替えるように景色が変わった。
やはり荒れ果てた世界だが、先程までに比べると都市がその原型をとどめている。そこは嵐の夜の見滝原市街だった。
吹き荒ぶ風雨と暗雲。それらを背にして、巨大な怪物が笑いながら浮かんでいた。回り続ける歯車の下に、ドレスを着せた人形のような姿が見える。
まどかにもそれが魔女だと理解できた。そしてそんな魔女に立ち向かう、小さな人影が見える。
「あれは……ほむらちゃん!?」
『その通り、彼女は大魔女ワルプルギスの夜にたった一人で挑んでいるのです。……あなたを守る、ただそのためだけに』
「私の、ため……?」
嵐の中、ほむらは戦っていた。あんなに必死な形相のほむらを、まどかは見たことがない。
無数の銃砲が火を噴く。本来なら部隊単位で運用するようなミサイルなども次々と発射され、その火力の全てがあの魔女に叩きこまれている。
『しかし、あれは一人で倒せるような魔女ではないのです。ごらんなさい』
「ほむらちゃん……!」
攻撃の全てを凌ぎ切り、黒煙の中から現れた魔女はなおも笑い声を上げている。
風が吹き荒れ、奇怪な黒い人影がほむらに襲い掛かる。気を取られたほむらめがけ、倒壊したビルの残骸が降り注いだ。
傷つき倒れたほむらの顔が苦痛に歪む。顔も体も血まみれだった。
万策尽きたかに見えた時、ほむらが不可解な動きを見せた。左腕の盾に手を伸ばし、何かを回すような仕草をする。
次の瞬間、ほむらはその場から消えてなくなってしまった。まるで初めからそこにいなかったかのようで、コンクリートに染み込んだ血液だけが唯一の痕跡である。
「ほむらちゃんは……今のはいったい……」
再び場面が切り替わる。
視界に広がるのはどこまでも荒れ果て、滅びた世界。暗く濁った空の下、天を目指すように巨大な影が立ち上っている。まどかの魔女だ。
瓦礫の上に立ち尽くし、それを見つめる者がいた。その顔には深い悔恨が刻まれている。今にも泣きそうなその少女は、やはりほむらだった。
魔女と化したまどかをしばし見つめた後、先程と同じように、左手の盾に手を伸ばした。すぐにその姿がかき消される。
「ねえ、ほむらちゃんは何をしたの!?」
『彼女には魔法少女の契約によって得た時間遡行の力、過去へと渡る能力があります。あなたが死に、あるいは魔女に成り果てるたびに、彼女は同じ一ヶ月を何度も何度も繰り返してきました――それこそ数えきれない程に』
「ほむらちゃんが……。それは私のため、なの?」
『ええ、そもそも暁美ほむらが契約したのはあなたのためです。あなたが人間として生きる未来を勝ち取る、ただそれだけのために何度もこの一ヶ月を繰り返し、たった一人で戦っているのです』
「ほむらちゃん……」
織莉子から明かされたほむらの秘密に、まどかは言葉を失った。
ほむらがこれほどの決意を固めた『鹿目まどか』との出会い、それはどんなものだったのか。ほむらの孤独な戦いを思うと胸が締め付けられた。
しばしの間があって、再び織莉子の声が流れ込んでくる。
『私は未来予知の力を持っています。数多の未来を見通すうちにこの力は磨かれ、より強大になり、様々なことができるようになりました。今、こうしてあなたとビジョンを共有していることもそのうちの一つです。しかし、それだけではありません』
「それで、何が言いたいの……?」
『その前にこちらから質問です。暁美ほむらはあなたの破滅を見届けるたびに過去へ戻り、何度もやり直してきました。……それでは彼女がその日まで過ごしてきた世界はどうなると思いますか? たとえばこの世界――あなたが魔女となり、暁美ほむらが過去へと戻った後の世界です』
「どうって……なかったことになるんじゃないの?」
まどかには他に答えが思い浮かばなかった。だからこそほむらはやり直しているのではないのか。
『そうですね、暁美ほむらの主観ではそうなるでしょう。では今見ているこの世界はいったいなんなのでしょうか。暁美ほむらが過去へ渡った後でも存在しているではありませんか』
「あっ……」
『……強化された私の予知能力は、暁美ほむらによって産み落とされた異なる時間軸――無数に存在する平行世界の出来事をも見通せるようになりました』
「それじゃあ、今見ているのは……」
『ええ、ここは暁美ほむらに見捨てられた数多くの世界の一つ。彼女がやり直すたびに破滅を迎える世界が増えていくのです。……ここまで言えばもうわかりますね?』
まどかにも織莉子が言おうとすることは想像できた。だがその内容の恐ろしさ故に、口に出すことがはばかられた。
しかし織莉子は喋り続けた。意識に直接響くので耳をふさぐこともできない。
『暁美ほむらは鹿目まどか――そう、あなたのためだけに数多くの平行世界を生み出し、同じ数だけ破滅させました。決して交わらぬ世界ですが現実には違いありません。そこに生きる人々は我々と同じ、血の通った本物の人間なのです。彼女は無関係の人間を何度も何度も巻き込み続け、屍の山を築いているのですよ』
「そんな……」
予想していた内容ではあるが、改めて口にされるとその重みが現実のものとなってまどかに伸し掛かる。
他人事だとしても恐ろしいのに、こんな出来事が自分に関わりのあるところで起きているのだ。自分の存在が多くの人間を死に追いやる理由になっている。
もう一度、滅びゆく世界を見つめた。
巨大な黒い魔女――つまり自分の末路たる姿が、大地に根を突き刺しそびえ立っている。不気味に脈動するその管は、まるでこの星の命を吸い上げているかのようだった。
悪夢のような光景だった。しかもこんな結末を迎えた世界は一つや二つではないという。その恐ろしさに、まどかはただ震えることしかできなかった。
気が付けば元の薄暗い地下牢だった。ひどい環境だが、それでも滅亡した世界と比べれば天国のように思える。
まどかは汗まみれになっていた。下着までぐっしょりと濡れている。そう長い時間ではなかったはずなのに疲労が激しかった。
檻の外から織莉子がこちらを見つめている。
多くの滅びを見てきたその瞳には、自分もまた罪人として映っているのではないか。そう思うとまどかは織莉子を直視できなかった。
しかし織莉子は優しく、慰めるように言った。
「怖かったのですね、無理もありません」
「織莉子ちゃん、私は……」
「わかっています、あなたが悪いわけではない。あなたを救おうとする暁美ほむらにも悪意など無いでしょう、ただ彼女は知らないだけなのです」
自分もほむらも悪いわけではない。その言葉でまどかは救われたような気持ちになった。自分や友人が罪を犯すなど、まどかにはとても耐えられそうにない。
織莉子は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「手荒な事をしてしまって申し訳なく思います。しかし、これも暁美ほむらにこれ以上の罪を重ねさせないためなのです。放っておけば彼女によって破滅する世界は増え続けるでしょう。知ってしまった以上、平行世界といえど見て見ぬふりなどできません。まどかさん、あなたの協力が必要なのです」
「でも、私にできることなんて……」
「いいえ、あなたにしかできないことなのです。これは暁美ほむらのためでもあるのです、どうか力を貸してください」
「ほむらちゃんの、ために……」
その名を口にして、まどかは改めてほむらを思った。ずっと彼女が何を考えているのか理解できなかったが、今ならわかる。
織莉子が話したとおりであるならば、気が遠くなるほど同じ一ヶ月を繰り返してきたことになる。傷つき、誰にも理解されない旅路がどれほどつらいものなのか、まどかには想像もつかなかった。
それでもほむらは諦めず戦い続けてきた。その全てはまどかのためだという。
しかし、そのために多くの犠牲が出ている。自分をこれほどまでに思ってくれるほむらに、これ以上の罪を重ねさせたくなかった。
まどかは決意した。