鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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今回はNGシーンはありません
理由は本編を読めばわかる?

ちなみに「タンガ」というのはまおゆうアニメ版で女騎士が着用していたようなパンツのことです
・・・結構履きやすいそうで


今はない面影

あすなろ市公会堂

いつもはサッカーの練習で稽古に遅れる牧カオルも今回の稽古に参加している

 

「たとえこの身が砕かれようとも公国は守る!!!」

 

短く切りそろえられたカオルの髪も合わさって、初々しい騎士を見事に演じきっていた

彼女の役は杏子演じる騎士率いる騎士団の団員で、彼女の目の前で惨たらしく死に「名誉の死」に疑問を持たせる役割だ

希望を語り、その空しさを体現する「道化」

非常に難しい役割だ

しかし、サッカー部員としてのキレのある殺陣はある意味本職といえる杏子のそれを凌いでいた

 

「すごいですね牧さん」

 

「私なんてただの付け焼刃さ。それよりも宇佐美くんの演技もなかなかだよ!本当に女の子みたいな仕草だし」

 

ギクッ!

 

「そんな・・・・浅海さん達の指導が良かったからですよ。ははは・・・」

 

「そんなことないさ。何と言うかな・・・・男性がいくら女装しても動きが男性的になるんだよ。でも君はそんなところがない」

 

カオルはじっと真の顔を見つめる

 

「・・・・実は女装趣味があったりして」

 

ギクゥ!!!!!

 

「ははっ!コイツにそんな度胸なんてないって!!!」

 

衣装を着けた杏子が真の頭を小突く

長い赤髪を巻き上げ、帽子の中に隠し短く切りそろえたウィグを付けた彼女はその勝気な顔も相まって少年のように見える

 

「コイツの父親は結構厳しくてね。そんなことをしたら地下のお仕置き部屋行きさ!」

 

~ 杏子さん恩に着ます ~

 

~ 後でバーガー奢れよな。意外と演技は腹が空くからな ~

 

~ いいですよ。僕も食べたかったし ~

 

「佐倉さん!カオルさん!スタンバってくれないか!」

 

「「はーい!!!」」

 

 

舞台裏、劇団の代表代理の浅海サキの隣に真が座る

 

「キミも佐倉さんも慣れてきたね」

 

「それは皆さんの演技指導が良かったからですよ」

 

サキが笑顔を見せる

 

「僕、劇団ってもっとギスギスしていると思っていました。けど・・・」

 

「けど?」

 

「皆さん、本当に仲が良くて本当の姉妹みたいですね」

 

「ああ。一応私が代表ってことになっているけど、本当はリーダーなんていないんだよ」

 

「リーダーがいない?」

 

「円卓の騎士って知っているかな?」

 

「アーサー王伝説の円卓の騎士ですか?」

 

「そうさ。僕らはみんながリーダーで、みんなが意思決定権を持っている。それはミチルが決めたことなんだ」

 

「ミチルさんって・・・脱退した主演女優ですか?」

 

「真君ももう仲間だし話していいかな・・・・」

 

サキは椅子にそのスレンダーな肢体を委ねた

 

「私と妹は事故に遭ってね・・・・お互い命に別状はなかったんだが、妹は声を失ってしまってね」

 

「事故の後遺症ですか」

 

「身体には異常は無かった。でも・・・・ショックだったんだろうね。精神的なショックから声を出すことができなくなったんだ」

 

真は声を掛けることができなかった

安易な同情は彼女を傷つける

だから、彼にできることは彼女の話を傾聴することのみだった

 

「妹は歌を歌うのが好きだったんだ。それができなかったらどうなる?荒れたさ、私も追い詰められていたんだろうね・・・妹の気持ちを理解することもできなかった」

 

サキは静かに目を閉じた

 

「そこにミチルが現れた。この写真を見てくれないか?」

 

先から渡された写真

そこにはサキと彼女によく似た少女、そして菱形の意匠を施したドレスを着た少女が映し出されていた

 

「コメディア・デラルテのアルレッキ―ナですね」

 

「よく知っているね。ミチルはボランティアで病院を回っていたんだ。最初は嫌がっていた妹も彼女の声を使わない滑稽劇に引き込まれていって・・・・奇跡が起きた」

 

 

一年前

あすなろ市中央病院

 

病院の待合室

とてもじゃないが演劇のできる環境ではない

セットすらない舞台に一人の少女が現れた

少女は一言も話さない

だが、彼女の動きが全てを物語っていた

 

一人の少女が幸せを求め旅をする

最初にであったのはやせぎすのアルレッキ―ノ

愛はあるがあるが余りに馬鹿な彼に嫌気がさした彼女はアルレッキーノの元から去る

 

二人目に出会ったのは学者のドットーレ

愛を囁き学があって彼女の知らない事を教えてくれた

しかし、働いてもすぐに金を本に変えてしまう彼に嫌気がさした彼女はまたドットーレの元から去る

 

三人目に出会ったのは金持ちのパンタローネ

金も学も愛もある生活

これぞ幸せだと彼女は感じたが、彼に捨てられるのが怖くなった

怖くなった彼女はパンタローネを殺そうとする

しかし、彼女が殺そうする前にパンタローネは心臓発作を起こして死んでしまう

それを召使のスカパンが見てしまう

そしてアルレッキーナが殺したと勘違いする

 

逃げるアルレッキーナ

追う警察官のカピターノ

ああ、こんなはずじゃなかった

彼女が全てをやり直したいと願う

 

粗末なベットで目を覚ます彼女

旅立つ前の家

そして、捨てたはずのアルレッキーノ

物語は彼女がアルレッキ―ノを抱きしめて終わる

 

サキが隣を見ると妹が笑っていた

声を出して

鈴を鳴らすような声

もう聞くことができないと思っていた妹の笑い声

それはまさに「奇跡」だった

 

「そして、私はミチルと出会ってこの劇団を一緒に作ったんだ」

 

「妹さんは今?」

 

「今は無事に退院して学校にも通っているよ。あの事故のこともウソみたいに笑っていてね・・・・」

 

浅海サキの心のうちに触れ、真に一つの決意が生まれる

 

「僕・・・その和紗ミチルさんの代わりには成れないかもしれません。でも・・・・!」

 

真はサキの手を握る

 

「きっとこの公演をミチルさんも見に来てくれます!だから僕も頑張ります」

 

「ありがとう・・・・マミが言うとおり君はいい子だな」

 

サキが真の手を握り返す

 

「・・・・・一回で手放すなんて惜しいな」

 

サキが獲物を見つけた猛禽類のような瞳で真を見つめる

 

「ちょ・・今回だけですよ!!」

 

「わかっているよ冗談冗談。でも慌てるキミもかわいいよ・・・」

 

サキが身を寄せてくる

 

~ ひぃぃぃぃぃぃ!!!!!!この人も杏子さんの同類なのぉぉぉぉぉぉ!!!! ~

 

「サキちゃんの妹降臨!!!満を持して!!!!」

 

「みらいさん!」

 

サキと真の間に桃色の髪の少女が間を割って現れた

 

「ま・こ・とちゃん?なぁにボクのサキに迫っているのかな?」

 

みらいの顔は笑顔であるが、そこに見えない「何か」が蠢く

 

「ぼ・・・僕はそんなことなんて・・・・」

 

「真ちゃん・・・これなんだ?」

 

みらいの手にあるのは見ているこっちが恥ずかしくなりそうなくらい布の少ないTバックのショーツ

所謂「タンガ」が握られていた

 

「みらい・・・やっぱり真ちゃんの演技には恥じらいがないと思うの・・・・だ・か・ら」

 

みらいに壁際に追い詰められる真

既に詰んでいる

 

「うふふふふふふふふ」

 

「のぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

彼がこの罰ゲームTバックを履くことになったのか?それは定かではない・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本編にあるとおりサキの妹は生存しています
ただ姉のサキはミチルがいなくなったおかげで、若干ビッチ気味に・・・・

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