鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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さて明日からまた憂鬱な一週間が始まる・・・


彼女の在り方

あすなろ市立中央中学校

 

「また明日ね」

 

「すみれぇ~サッカーの練習ばかりだと青春がすぐ終わっちゃうぞ~」

 

「ははっ!アタシはサッカーで天下を取るのだ~」

 

クラスメイト達が年相応な会話を楽しむ中、銀髪の少女が遠ざかってゆく無比の親友の後姿を見つめていた

その瞳に浮かぶのは燃えたぎるような情念

あたしはこんなにもユウリのことを思っているのに何で・・・何でアイツのことばっかり!

 

 

― あのスライス秋山を超える料理の師匠を見つけたんだ! ―

 

 

― イチゴリゾットが得意な人でね。厳しい人だけど、しっかりと教えてくれるしサイコーの師匠だよ!! ―

 

嘘!

 

― 今度、教えてもらった料理を作ってあげるね、あいり ―

 

嘘だ!!

 

ユウリ・・・アタシのユウリはアイツのことを知らない

アイツが!

アイツの仲間がどんな風に貴方を「料理」したのか、ユウリは知らない

だから、アイツを倒す

アタシがユウリを守るんだ!

 

 

「昔の」アタシはただ、アイツらを倒すためだけに魔法少女になった

でも「今は」死んだはずのユウリもいる

だから自分の魔法をじっくりと研究する余裕があった

無論、アイツに知られないように「魔獣」とやらを倒して、少々形の違うグリーフシードを集める

実験には大量の魔力が必要、そのためのグリーフシードだ

 

 

放課後

私はうらびれた個人経営のスーパーにいた

かつての私にとって無くてはならない相棒を得るためだ

 

ウィーン・・・・ガチッ・・・・ウィーン

 

動きの悪い自動ドア

藻が付着して、新鮮さよりも不潔さを際立たせる生簀

 

「ジョンナムスタイル!!」 

 

「アルかニダ!」

 

そして、何処の国の言葉かわからない言語で堂々と話をするバイトのレジ係

これでいい

これでこそ最高の相棒を作れる

私は精肉コーナーに足をむけた

手の先にあるもの

それは黒ずみ、賞味期限ぎりぎりの牛肉

 

『最高級日本産牛肉』

 

どこをどう見ても最高級とも日本産ともみえない

このような店ではありがちな成形肉、屑肉を接着剤で繋ぎ合わせたものではないのか?微量の魔力を指先から放ち精査する

誰もそれに気づいた者はいない

強いて言うなら、精肉コーナーの店員が「そんなものを買うのか?」という目で彼女を見ているくらいだ

 

― これくらいでいいだろう・・・ ―

 

とても精肉ともいえないくらい、恐ろしく鮮度は悪いが成形肉ではないようだ

彼女はソレをレジに持っていく

 

「サムゲタン!」

 

「サモハンキンポー!!!!」

 

相変わらずレジ係は何処の国かわからない言語で会話していたので、隣のおばさんのレジを使った

 

 

人気のない工場街

空に浮かぶ太陽が琥珀色に変わる中、以前の彼女と同じくアジトにしていた廃ビルに入る

 

「さてショータイムだ!!!!!」

 

少女「杏里あいり」はオレンジ色のソウルジェムを掲げた

赤紫色の光が彼女の肢体を包み込むと、それはボディースーツへと変わっていく

最後に少女の細い手が宙をクルリと円を描くとそれは三角帽へと変わり、銀髪のショートヘアにちょこんと乗った

 

「さてと・・・今日は期限切れの牛肉を使ったコルノ・フォルテでござい!」

 

サーカスのピエロのように少しおどけながら口上をあげる

彼女は肉をトレイから取り出すと、地面に置いた

そしてその瞬間、三角形の魔法陣が広がる

 

「イル・トリアングロ!!!」

 

三角形の中心の肉塊が高熱で溶けると同時に、ぶつぶつと沸き立ち増殖を始めた

そしてそれは徐々に形をとった

 

「ブモォォォォォ!!!!!」

 

黒い牡牛が魔法陣の中心で鳴き声を上げた

 

 

彼女が白魔に願ったこと、それは「ユウリになること」

それは叶えられた

彼女の固有魔法はまずユウリに関する記憶を読み取り、彼女を土台として「ユウリ」を再現した

つまり彼女の固有魔法は「対象物の情報を読み取り、魔力を使ってそれを再現する」事なのだ

今しがた、彼女は牛肉から牡牛を再現させた

自分の忠実な相棒として・・・

 

「さてと・・・・今宵のメインデッシュはマギカ・アラビアータかな?アハッアハハハハ!!!!!!」

 

舌なめずりしながら、魔法少女あいりは哄笑をあげる

点滅するネオンに浮かぶ彼女のシルエットは酷く歪んでいた

まるで絵本に出てくる悪い魔女のように・・・・

 

 

 

 

 

NGシーン

 

「あいりと!」

 

「ユウリの!」

 

「「よく分かる!直感料理教室!」」

 

 

「まずうらびれたスーパーで期限切れの牛肉を買ってきましょう」

 

「選ぶ基準は?」

 

「そこは直感で!」

 

○ 負のオーラが溜まっているスーパーへ行きましょう。

  負のオーラが濃ければ濃いほど、強力な使い魔となります

 

 

「さて、此方にその期限切れの牛肉があります」

 

「もはや腐敗寸前ですね」

 

「それををば・・・・・・イル!トリアングロ!!!」

 

シュボボボボボボ・・・・・・

 

「あいりさん、加熱の基準は?」

 

「直感で!」

 

○ 固有魔法で対象から情報を取り出します

  あとは魔力で対象の姿を固定する

 

「これで使い魔の完成です!!」

 

ブモォォォォォォォォォ!!!!

 

「これは生きのいい魔牛ですね」

 

「魔力の塊なので空も飛べます」

 

 

 

「次回はみらい先生による愛の裁縫教室 使い魔編をお送りします」

 

 

 

  

 

 

 

 




「アタシをユウリにして」って願いでなぜ牛?という疑問に自分なりに答えを出してみた

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