鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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銃をメインに使う魔法少女を夢想中

やっぱり「世界で最も高貴な銃」コルト・ピースメーカーか、実際撃ったことのあるスターム・ルガー・ブラックホーク30カービンか・・・・

それとも「ガスシールリボルバー」ナガン・リボルバーか・・・・・悩む


幻肢痛

織矢が頼んだコーヒーを飲みながら、石島美佐子は語り始めた

 

「私は小学生の頃から苛められていたんです・・・・・」

 

 

その日の天気は私の気分を表わすかのように灰色だった

父の転勤であすなろ市に引っ越しして以来、私は虐めれていた

 

 

「ねぇねぇ、何をしているの?ミサにも混ぜて」

 

「お前けーさつのこどもじゃねーか!教えたらとうせ言いつけるつもりだろ!」

 

 

小学生の未熟な精神では警察がどういった組織であるかそれを理解できない

ただ親が警察官であるだけで石島美佐子はいわれのないいじめを受けていた

 

 

「こら!貴方達!その子は関係ないでしょう!」

 

「うわぁ!牛女が現れた~逃げろ逃げろ~」

 

小学生にしては大柄な少女に追われ、美佐子を苛めていた少年たちは逃げて行った

 

「待ちなさい!」

 

「あ・・・あの・・・」

 

「えっと・・・石島美佐子さんだっけ。私は椎名レミ。レミって呼んでいいよ!」

 

「私もミサって呼んでくれないかな・・・・?」

 

彼女は美佐子の手を取って微笑んだ

この街に引っ越して以来、両親以外から微笑まれたのは美佐子にとって初めてだった

 

「よろしくね!ミサ!」

 

彼女「椎名レミ」は引っ越しして苛められていた私を助けてくれた

その時から美佐子とレミは友達になった

 

 

「椎名レミがいつも助けてくれました。頼りがいがあって優しくて・・・私にないものを幾つも持っていた。でも彼女は・・・」

 

 

美佐子とレミが中学校に上がった頃

前触れなくレミが倒れた

あれだけ元気だったレミが倒れるはずがない!

私はレミの見舞いに行って真実を知った

 

 

「白血病・・・・そんな・・・・」

 

「心配しないでミサ。先生も骨髄移植で治るって言ってくれているし」

 

 

でもいくら待っても彼女に適合するドナーは現れなかった

私は親を説き伏せて適合検査を受けた

結果は「不適合」

目の前が暗くなった

 

 

「レミは私をいつも助けてくれたのに!何で私は何もできないの!」

 

「しかたないよミサ。願ったとおりに全てが叶うなら全ての人間は不幸だよ」

 

痩せ衰えた身体で、レミは微笑んでくれた

その姿は痛々しくて・・・

 

「なんでレミはいつもそうなの!」

 

「諦めてるからかな・・・・私、小学生の頃から言われてたんだ。先天的な障害で長くは生きれないって」

 

「そんな・・・・・!」

 

「泣かないでミサ。・・・・・きっと奇跡は何処かにあるから」

 

そう・・・・確かに奇跡は起こった

彼女の数値が通常に戻った、彼女の白血病が完治したのだ

 

 

「その時は、無邪気にレミの全快を喜びました。その対価が何かを理解しないままに」

 

 

全快した彼女は学校に戻ってきた

でも、その時から彼女と私はすれ違い始めた

 

 

「ごめんミサ・・・今日は病院に検査で」

 

― 嘘・・・・おじさんもおばさんももう病院には行っていないって・・・・ ―

 

いつもの二人で歩いていた道は一人で歩くには広すぎて・・・・

悪いと思いながらも、私は彼女を尾けるようになりました

そして・・・・

 

「彼女の秘密を知ったんです」

 

 

彼女はその小さな掌に小さな宝石を乗せて、街の暗がりや事故現場を廻っていました

 

― 何をしているの? ―

 

美佐子の疑問を余所に彼女は歩き続ける

彼女の持つ宝石が一際輝き、レミの姿は暗がりに消えていきました

彼女の顔に浮かぶのは不安と決意

私はその暗がりに彼女の「秘密」が隠されていると確信しました

 

「私は意を決して、その暗がりに飛び込んだんです。そこに何が待ち構えているなんて考えもせずに・・・」

 

 

「何処なの・・・・・・・・?」

 

そこは別世界でした

 

赤茶けた空

 

えたいの知れない機械のスクラップ

 

そして白い巨人を切り裂く何か

 

灰色のショールを被り、白と黒のエプロンドレスを着た大柄の少女

 

紛れもない「椎名レミ」でした

 

「レミ!一体何なの!」

 

「ミサ!どうして此処に!」

 

彼女が私に声を掛けた瞬間でした

私の背後から何かが迫りくる風切り音が響きました

 

ヒュンヒュン!

 

「危ないミサ!!!!!」

 

レミがミサを跳ね飛ばす

 

ズギュウゥゥゥゥゥゥ!

 

「グハァ!」

 

それは彼女と戦っていた「白い巨人」から放たれた針のような触手

それに貫かれた彼女の身体は支えを失ったマリオネットのように、力なくその場に崩れ落ちた

 

「レミ!レミ!しっかりして!」

 

答えはなく暖かったレミの身体は冷たくなりつつあった

 

「ミサ・・・」

 

冷たい、何者かの手が私を抱きしめた

顔を上げると「死んだ」はずのレミが私を抱きしめていました

 

 

なんで血まみれで微笑むの?

 

 

なんで冷たい手で私を抱きしめるの?

 

 

そんな・・・そんな!

 

 

「嫌・・・・嫌ァァァァァ!!!!!!!」

 

私は無意識に彼女を突き離しました

 

 

「私は・・・命を張って助けてくれた彼女を拒否してしまったんです」

 

 

その後私は何処をどう帰ったのか家に居ました

その手に握っていたのが・・・

 

「その重さの無いナイフです」

 

 

数日後、椎名レミは「失踪」した

 

「私が警察に入ったのは彼女を探したい、いや彼女に謝りたかった。それだけです・・・・・」

 

そこには「警察官」石島美佐子は既になく、疲れ果てた一人の女が居るだけだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NGシーン

 

― 「魔法少女」暁美ほむら ―

 

彼女は此処、見滝原で一人暮らしをしている

彼女の両親は健在ではあるが、しかし彼女の医療費の工面などで共働きであり結果として一人暮らしを続けている

しかし、彼女は寂しさを誰かに打ち明けることはない

たった一人の「親友」を絶望から救うために、何度も世界線を乗り越えた彼女にとっては両親に対する感情は無きに等しい

なぜならば、今の自分は「過去の自分」と同じであると言い切れないのだ

 

もしかしたら自分は自分であると思い込んでいるだけで、本当はこの世界の自分を殺して成り代わっているのでは?

 

― 過去のデータが意識を浸食して、そうだと思い込んでいるだけの狂人かもしれないわ ―

 

あの夜、織莉子との出会いがほむらの脳裏に浮かぶ

 

 

暗い空間

一人の少女が泣いていた

 

「どうしたの?なぜ泣いているの?」

 

彼女は「他人事」とは思えず、無意識に声を掛けていた

 

「大切なものを取られたの・・・・・」

 

ほむらが少女から距離を取ろうとする

なぜそうせねばならないか、理由はわからない

しかし、彼女が足を動かそうとしても指一本も動かせなかった

 

「・・・・返してよ」

 

少女が振り向いた

 

赤いメガネ

黒髪の三つ編み

それは・・・・

 

― 捨てたはずの「自分」だった ―

 

 

「あれ?暁美先輩、どうしたんです?」

 

「真さんごきげんよう」

 

真の目の前には赤いメガネをつけ、漆黒の髪を三つ編みにした「暁美ほむら」がいた

 

「どうかしら?」

 

「どうって・・・・・よく似合いますよ」

 

「・・・・・まだ世界の認識が切り替わっていないようね」

 

「世界線?」

 

「強いていうなら奪われたものを取り返したってところかしらね」

 

真に微笑む彼女の笑顔

その笑顔は真の記憶にないものだった

まるで「中身」だけが入れ替わったかのように・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あれ?いつものNGシーンと違う?

白状します
これは実は最終章のボツシーン、正真正銘のNGシーンだったりします。
「他世界線からの精神侵略」をネタにしていたんですが、収集つかなくなってボツった
まだまだ修行が足りんな・・・・

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