鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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皆様!あけましておめでとうございます!!!

というわけで、元旦に投下いたします

今回のゲストキャラはまどぽのあの人です


贖罪

 

「アタシがこの石っころだっていうのか!!!!!」

 

オイルとガソリンの臭いに包まれたガレージで赤毛の少女が叫ぶ

それを白い何かが表情を変えずに聞いていた

少女の服は所々引き裂かれ、大量の血液が付着していた

しかし、不思議なことに怪我らしい怪我は見られなかった

 

「君たち魔法少女にとって、元の身体なんていうのは、外付けのハードウェアでしかないんだ。だから君が電車に轢かれようとした少女の代わりに轢かれても死ぬことはなかっただろう?」

 

少女「牧香苗」は先ほど一人の少女を助けた

しかし、回避は間に合わず彼女は少女の代わりに電車に轢かれた

冷たい車輪に引き裂かれる身体

噴水のように吹き出す血潮

だが彼女は死ぬことがなかった

気が付くと、彼女はズタズタに引き裂かれた服を着てはいたが怪我一つなく、線路の傍らで目を覚ました

 

「ちょっと君のソウルジェムを借りるね」

 

「白魔」インキュベーターが前足で彼女の赤みがかった琥珀色のソウルジェムに触れる

 

「がぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!!」

 

少女の身体を痛みが走る

 

「どうだい。これが本来の痛みだよ。動けやしないだろう?」

 

尚も白魔が彼女の心を抉るような言葉を紡ごうとした時だ

 

フィィィィィィィ!

 

グチャァァァ!

 

何処からか現れた黄金色の円盤が、罪人の首を刈り取るギロチンのようにインキュベーターの首を切断した

 

「危ないところだったね」

 

突如現れた白いドレスを着た少女が香苗に微笑んだ

 

 

「もう・・・・どうでもいいよ。どうせゾンビなんだから」

 

白い少女 美国織莉子はインキュベーターから取り戻したソウルジェムを彼女に手渡す

しかし、香苗の瞳に織莉子もそしてソウルジェムも写っていなかった

 

「そうね・・・・あなたにとってはどうでもいいことかもしれない。でもあなたはまだ魔法少女であり、その手で救える命もある」

 

「どうでもいいって言っているでしょ!!!!!」

 

少女が声を荒げる

しかし、織莉子は動じない

 

「・・・・・あなたは魔法少女であることを友人に話さなかった?彼らがソウルジェムの秘密を話したのはあなたが用済みになったからよ、口封じも兼ねてね。つまり貴方の代わりが見つかったってこと・・・」

 

香苗の瞳に光がさす

 

「私・・・・あの娘に・・・・魔法少女になったら何でも願いが叶うっていっちゃった・・・どうしよう!」

 

「今ならまだ間に合う。あなたはそのための力が備わっているのだから」

 

織莉子が香苗と目を合わせる

 

「立ち上がりなさい!自由の魔法少女 牧香苗!」

 

 

昼間なのにカーテンで仕切られた部屋

そこでインキュベーターと向かい合う、黒髪の少女

 

「本当に契約をするんだね?」

 

感情の籠らない声でインキュベーターが囁く

 

「それでカナが助かるなら」

 

耳に当たる部分についた触手が彼女の胸に近づく

彼女の身体に触れようとした瞬間だった

 

ギュオォォォォォォォォォォォ!

 

ギュチャァァァ!

 

突如現れたバイクがインキュベーターの身体を押しつぶした

 

「間に合った!!!!」

 

香苗がゴーグルを外し、バイクから降りて黒髪の少女を抱きしめた

 

「よかった・・・本当によかったぁぁぁぁぁ!」

 

香苗の瞳から涙が迸った

 

「酷いなぁ・・・・僕は彼女と契約したいだけなのに」

 

ミンチになった自らの身体を、何時の間にか現れたもう一体の「インキュベーター」が食べ始める

 

「ヒィッ!自分を食べてる・・・・・!」

 

少女の驚愕を余所に香苗はキュウベェを見据える

そこに先ほどまでの全てに絶望した姿はない

 

「お前のことは織莉子さんが教えてくれたよ。かずえ、あなたがアタシを人間に戻すためにこの悪魔と契約しようとしていることを」

 

「そうだよ!私はカナを元に戻してもらおうと・・・」

 

「いいんだよ・・・かずえ。あんたは自分の人生を生きて・・・」

 

そういうと香苗は泣きそうな顔の少女「一宮かずえ」を抱きしめた

 

「契約に関してはキミには関係ないだろ?」

 

「自ら」を食べ終えたインキュベーターがかずえの前に現れた

 

「かずえ・・・・この悪魔は本当にアタシを人間に戻せるって言っていたのか?」

 

香苗はかずえの瞳を見る

 

「願いは可能な限り叶えられるって・・・」

 

「なぁインキュベーター。本当に可能なのか?一度焼かれた肉を元に戻すってことは」

 

「それは因果律の逆転でできるかどうかは本人次第さ。できなくても願いは可能な限り・・・・」

 

白魔は言葉を継げなかった

彼の首と胴は離れ離れになっていたからだ

 

「・・・・・騙したのね・・・願いは何でも叶えると言ったくせに!」

 

そこには折れたカッターナイフを握りしめた一人の少女がただ立ちすくんでいた

 

 

「破滅の未来は回避したか・・・・」

ビルの屋上

一人の少女が眼下の光の渦を見ながら呟いた

 

彼女、美国織莉子の幻視した未来では、「自由の魔法少女」牧香苗は人間に戻った

しかし、それはあくまで仮初

ソウルジェムは彼女の身体に戻ったが、その魂はソウルジェムに囚われたままだった

つまりは彼女は「変身できない魔法少女」になってしまったのだ

そしてそれを知った「献身の魔法少女」一宮かずえは限界まで戦い続けて戦死

絶望した香苗は自ら命を絶った・・・・・

 

「そろそろ出てきたらどうかしら?」

 

闇が人の形を取り、それが声を放った

 

「・・・・いつから気づいていたの?」

 

黒の少女「暁美ほむら」がその姿を現した

 

「その手にあるスタームルガー22オートにテフロンコーティングされた特殊弾を装填して、その銃口をアタシに向けた時から」

 

「油断ならないわね」

 

ほむらが苦虫を噛み砕いたような表情を浮かべる

 

「貴方が知りたかったのは私があの時の私かどうか?でしょう」

 

「・・・・・ええ」

 

「まどかを殺したのは確かに私。でもそれは別の私であり今の私でもある」

 

「貴方・・・・まどかのことを知っているの!!」

 

「長い話になるわ。それでもよくって?」

 

織莉子は話し始めた

因果に縛られ、永遠の囚人となった顛末を・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足説明おば・・・・

・「自由の魔法少女」牧香苗 バイク+男前な姐さん=どう見ても「自由の魔女」ギーゼラーですありがとうございました

・テフロンコーティングされた特殊弾 商品名「KTW」映画リーサルウェポンでは「コップキラー」と呼ばれてましたね。実際、22LRのKTWはクラス3の防弾チョッキを貫通できたりします

・スタームルガー22オート アメリカ海兵隊の特殊作戦ユニットでも使用されている名器。精度も高く、これのサイレンサーバージョンでは殆ど咳する程度の発射音にまで軽減されている。

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