鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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遅れてすみません・・・・


絡まる

あすなろ市に面した見滝原の工場街

元々は工業都市である見滝原は工場街からの方が隣県へ行くには早い

そこには六人の少女達が集結した

年はまだ若いが、しかしその瞳はいくつもの死線を乗り越えた戦士のような鋭さをたたえていた

 

「さてと・・・私達は結界に包まれた後のあすなろ市に一度も入ったことがないんだけど、注意することはある?」

 

ダークグリーンの外套姿に変わった神那ニコが、傍らの豪華な白いドレスを纏った大柄な少女「美国織莉子」に話しかける

 

「そうね。この前皆に言ったようにあの結界内では強引に記憶が書き換えられてしまうわ。だから、いつも以上に強力な結界を張って箱庭からの干渉をシャットダウンする必要がある」

 

「わかってるさ。だから私達が手分けして手に入るかぎりのグリーフ・シードを手に入れてきたんだし」

 

六人の少女達は身体に密着したバックパックを撫でる

この中には方々で魔獣を狩って手に入れた大量のグリーフ・シードが入っている

この作戦の要は魔力の確保

彼ら自身の身を守るのには魔力が必要でありそれは同時に、囚われた仲間達を無事に脱出させるためにも必要となる

インキュベーターとジュウベェから得られた情報を総合するなら、プレアデス聖団とゆま、真の魔力はかなり減っているはずだ

そんな状態では満足に脱出できるとは思えない

可能な限りサポートするが、場合によっては囚われた皆に戦ってもらう場合もあり得る

魔法少女としての初陣を踏んだことも無い彼女たちに戦えと言うのは酷な話だが、しかし共倒れを避けるにはそれしかない

事を為す前に魔力を切らしてしまったら元も子もない

 

― 皆、欠けることなく見滝原へ帰還すること ―

 

無論、それには「離反」した巴マミも含まれている

当然の事ながら、血の気の多いキリカやあいりは反対した

相手の規模や能力を考えるに全員を奪還するのも非常に難しいのに、更にその奪還対象にマミを含めるにはリスクが大きい

彼女はゆまや真、プレアデス聖団のように敵に拉致されたわけではなく、自発的に彼女達の仲間になることを選んだ

つまりは、既にマミは敵の一員だ

杏子もそれは理解していた

しかし、ニコと織莉子は彼女も奪還対象とすることは変わらなかった

 

「おい!いくらなんでも安請け合いするんじゃねーよ!!」

 

杏子が怒りを現したのは理解できる

この二人の考えは余りにも軽はずみだ

「理想的」過ぎる

巴マミにあれだけ酷く裏切られたのだ

人の本質は変わらない

彼女のような人間はただ盲目的に自分を見てくれる人物、いわば「愛してくれる人間」を求め続けるだろう

そして無理矢理敵から引きはがしたとしても共倒れを起こしてもおかしくはない

しかし、ニコも織莉子も杏子の怒りには動じなかった

 

「いい杏子さん?私達は何もただ感傷で決めたわけではないわ」

 

織莉子が向き合う

 

「彼女の実力は貴方が良く知っているはずよ?ただ今の彼女は敵の一味。仲間なら心強い存在であるということは、同時に敵の仲間になったら厄介だということ・・・」

 

マギカ・カルテットで杏子はマミの弟子だった

故に、彼女の恐ろしさは良く知っている

 

「奪還の際に彼女が黙って私達を見過ごしてくれるなんてありえない。だからこそ彼女もこの街へ帰還させる。戦闘になるかもしれないけど、脱出している隙にマミから不意打ちされるよりもましよ」

 

「マミの奴を半殺しにでもするつもりなのか・・・・?」

 

「いいえ。私は彼女を無力化させるのよ」

 

「無力化?」

 

「それについては私から話すよ」

 

ニコが前に出る

 

「織莉子・・・・協力してくれないか?」

 

「ええ・・・」

 

ニコはその白い手を織莉子に翳す

 

「トッコ・デルマーレ・・」

 

微かにニコが呟いた瞬間だった

織莉子がその場に崩れ落ちた

 

「織莉子!!!」

 

キリカが慌てて助け起こそうするが、彼女の体に触れた途端その顔が青ざめた

 

「なんで・・・・・なんで息してないの・・・」

 

織莉子の身体は「完全」に機能を停止していた

 

「それはさっき私が彼女からソウルジェムを抜き取って無力化させたからだよ」

 

ニコの手の中には織莉子の白いソウルジェムが握られていた

数分後、再び息を吹き返した織莉子が杏子に話しかけた

 

「この方法を使えば少なくとも、無力化させるのに彼女を傷つける必要なんてないわ」

 

「ああ・・・」

 

杏子は織莉子に言葉少なにそう答えるしかできなかった

 

 

あの日、杏子も含めた皆がその無力化魔法を習得した

今回は奪還が目的で戦闘が主ではないが、しかしあいりやユウリの話では戦闘になるのはまず回避不能だろう

皆を拉致された手段から考えて敵ははなっから交渉を考えていない

だからこそどんなことがあっても大丈夫なように万全の準備を整えてきた

 

「時間は?」

 

「ジュウベェの記録ならそろそろだけど・・・・」

 

ニコが手に嵌めたGショックのマッドマンを見る

軍の正式採用された腕時計ではないが、もっとも軍人に愛され「コンバットカシオ」の呼び名もあるほどのものだ

「パネライ」はイタリア軍のフロッグマンが採用していたと声高に叫ぶが、実際今のイタリア軍のフロッグマンはGショックを採用しているのはあまり知られていない

 

パリン・・・

 

微かにそう聞こえた

そしてその音は

だんだんと大きくなっていき・・・

 

「離れろ皆!巻き込まれるぞ!!!!!」

 

ニコの言葉と同時に彼女達の目の前で「箱庭」が崩壊した

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ノブナガ・ザ・フール

本当に後三話で終わるんだろうか・・・

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