鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下


ノゾミ

 

チュン・・・チュン

 

「みんな起きて!!!朝だよ!」

 

私の朝は早い

実際、私には11人の姉達がいる

一番上の姉から一人一人起こして、そして身支度をするとなるとどうしても人より早く起きることになる

でもそれを苦痛と思うことはない

なぜならこれは失われた希望の世界

ここには私の望んだ世界がある

誰一人殺さず、殺されずに十二人の姉妹で助け合って生きていく世界

ここにはインキュベーターも、あの忌々しいプレイアデス聖団なんて連中もいないし、魔獣やそれを狩る魔法少女なんていないのだ

無論、私もこの世界では「魔法少女」ではない

12人姉妹の末っ子なだけの普通の少女だ

「姉達」も魔力を一切持たない普通の人間

人間としての「幸せな時間」

もう決して得ることのできない幸せ・・・・

 

 

「じゃあ、行ってくるね!!!」

 

私は制服に着替え、朝食を済ませるといつものように中学校へ向かう

「アンゼリカ・ベアーズ」の暗い倉庫に閉じ込められた時は、「人間」みたいに学校へ行くなんて考えてもみなかった

でも、こうして普通の少女として学校へ通ってみるとそれはそれで楽しかった

勉強も人によっては苦痛に感じるだろうが、そもそも学ぶ機会を与えられてこなかったジュニにとってはそれすらも人生を楽しむためのスパイスだった

ほんの少し魔法を使うことで、対価としてこの世界を与えてくれた「宇佐美真琴」には感謝してもしきれない

 

― 魔法少女 宇佐美真琴 ―

 

誰よりも聡明で、そして見たこともないほど強大な魔法を操る「救済者」のリーダーだ

彼女は絶望に沈む私をこの世界へと連れ出してくれた

それには感謝している

だが、正直彼女の説く「救世」に私は同意できなかった

それもそうだ

私には生んでくれて、愛してくれる「両親」なんていない

プレイアデス聖団連中の勝手な考えで生み出されて、そして「オリジナル」と違うという理由だけで廃棄された存在

確かに魔女化したら危険だと思うのはわかる

ならなんで計画を続行した?

もう一度ミチルに会いたい?

じゃあ、お前たちが「失敗作」と烙印を押した?

例えミチルと違っても私は私だ

私は耳のソウルジェムに触れた

この中に封じ込められているのは私の魂

私が私である理由だ

この身体は確かに紛い物

でもその魂は違う

プレイアデス聖団にとっては違ったようだが・・・

そのプレイアデス聖団も「運命」には逆らえなかった

奴らご自慢の浄化システムも不良品で結局は魔女化した

私達は狂気に駆られた連中の仲間の手で殺し合わされた

「13人目の姉妹」の手であの女が始末された時は私は手を叩いて喜んだ

復讐は為された

真琴が言う通り、未来に向かって生きる道を探した方が良いだろう

その方が確かに建設的だ

でも私はプレイアデス聖団も魔法少女も許せない

これは「復讐」

そもそも魔法がこの世界に無ければこんな思いをしないで済むからだ

だからこそ、私は真琴が言う「魔法少女」が生まれない世界を望む

いくら奴らが絶望してもインキュベーターは現れないし、魔法少女となれなければ後はただの少女だ

自殺でも他殺でも勝手にすればいい

でも魔法を否定するということは自分を否定することでもある

私の身体には血の代わりに魔力が巡っている

魔法少女が生まれないということは私の「死」を意味する

でも私は死を恐れない

元より、今の私がいるのは偶然

本当はあの日に姉妹と一緒に死んでいたハズだった

だからこそ私はこの世界に「復讐」をしてから死ぬ

その方法は既に決めている

この夢の世界で徐々に魔力の量を減らして、この世界で11人の姉と一緒に死ぬ

まるで薬物死刑のようだが、それよりも痛みはない

既に死を受け入れている

不意に、目の前の世界が停止した

 

~ ジュ二、こちらに来れるかしら? ~

 

クリスタル製のグラスがなるような凛とした声

真琴だ

 

~ うん・・大丈夫だよ ~

 

私はイヤリングに付けた鈴のようなイヤリングをソウルジェムへとコンバートさせる

黒々とした光が私の体を包む込み、そして魔法少女へと変身を終えた

 

 

ウィーーーン

 

カプセルの扉が開く

光を落された空間には同じ大きさのカプセルが数基置かれていた

私がカプセルから身を起こすと、一基のカプセルが目に入った

柔らかな紫の髪

そしてその女性的な肢体を包むドレス

 

ギリィッ!!

 

あの女だ!

あの女が狂ったせいで姉達は殺し合わされて・・・

 

ジリ・・・ジリ・・・・

 

私はゆっくりと「あの女」のカプセルに近づく

カプセルの上部にはあの女の魂であるソウルジェムが置かれている

砕いてやれば簡単に死ぬだろう

姉程の苦痛を与えられないのが残念だが多少は気が晴れる

後少し

後少しで手に届く・・・

 

「止めなさいジュ二」

 

振り向くと、真琴が立っていた

 

「この世界の彼女はあの世界での彼女とは違う、そう言ったはずよ?」

 

「・・・・・・・・」

 

その通りだ

この世界では私達はまだ生まれていないし、この少女も自分の意思で魔法少女になったわけではない

でも・・・・私は・・・

 

「貴方の気持ちは良くわかるわ。でも、今は大事な時よ・・・・」

 

「大事な時って・・・・」

 

「箱庭の魂の欠片が完成するわ。そうすればこの世界を魔獣とインキュベーターの手から救える」

 

 

 

 

 




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