鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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願いと「呪い」

 

~ いつかは来るとわかっていたけど、こう来たか・・・・ ~

 

愛華は真琴ほどではないにしろ、巴マミがどういう人物かはだんだんと理解できるようになってきた

自分の未来の為に仲間を裏切ったとはいえ、彼女の心はかつての仲間たちと世の平和にある

単純に裏切ったわけではない

もしも

もしもだが、彼女自身が私達に幻滅したのなら、容易く彼女は私達を見限るだろう

 

~ ただの利益優先の裏切りなら物に酔わせれば簡単にカタがつくけど、信念とかそういうのはやっかいだね・・・・・ ~

 

愛華は下手に話をごまかすよりも、マミの話をしっかりと聞くことを選んだ

 

「話なら此処で聞くよ。巴マミ」

 

そう言うと愛華はマミ向き合った

 

ガシュッ!

 

「?!」

 

咄嗟にマミが変身し身構える

彼女の固有武器である「マスケット銃」はその手にないが、何かが起きても何時でも戦闘に移れるスタイルだ

 

「立ち話もなんだから椅子を出しただけなんだけど?」

 

「・・・・!」

 

愛華の言葉に嘘はなかった

そこには床からせり出した簡易な椅子が鎮座していた

冷静沈着な「はず」の巴マミにしては珍しいミス

マミは自らの顔が恥ずかしさの余り赤く染まるのを感じていた

 

「あの・・あ・・」

 

「気にすることはないわ。少なくとも私は攻撃は受けてはいないわ」

 

狼狽するマミとは対照的に愛華は落ち着いていた

 

「巴さんは飲み物は?」

 

愛華がクラシカルな意匠を凝らした冷蔵庫から缶入りのジュースを二つ取り出す

 

「・・・・・・・何でもいい・・・です」

 

「ハハッ!まだ気にしているのかい?そういう時は・・・・コレ!」

 

マミの目の前に一つの缶を置く

 

「甘いミックスジュースを飲むのが一番!!」

 

「・・・何で?」

 

「ウチの家訓だよ!甘いジュースをゆっくり飲んでいる間に大概の問題ゴトは解決してるって!!」

 

全く根拠のない家訓だが、落ち着いて物事を考える時間は何事にも必要だ

そういう意味ではこの家訓は正しいといえる

 

「愛華さんはこの浄化装置を作ったんでしょ?」

 

マミの視線の先にはソウルジェム浄化装置「グロッケ」があった

 

「ん?ああ・・・確かにそうだね、それは間違いないさ。私の最高傑作だよ」

 

「愛華さんはこれを量産して外の魔法少女達に渡そうと思わないの?」

 

「・・・・・・・・・」

 

マミが愛華を見つめる

確かにこの浄化装置が量産され誰でも使用できるのであれば、少なくとも魔力枯渇で死ぬことになる魔法少女はいなくなる

そうすれば、仲間や家族を失わずに済む人々は山のようにいるだろう

しかし、愛華は首を横に振った

 

「率直に言うとそれは全く無理だね。この装置は便宜上、浄化装置と名乗っているけどソウルジェムの時間を停滞フィールド内で巻き戻しているだけだよ。だから、根本的な解決手段にはならない」

 

「でも!改良すれば・・・・」

 

「それに、装置の要である魂の欠片は数が限られている。私達が恩恵にあずかれるのも、かつていたっていう巻き戻しの魔法少女の持っていた魔法を不完全にコピーしたグロッケがあるからだよ?」

 

「・・・・・・・」

 

ソウルジェム浄化装置「グロッケ」

その根本はあの日に真琴がマミに見せた「手品」と同じ

単純に言えば「時間の巻き戻し」

つまりはソウルジェムを穢れの溜まっていなかった時間まで巻き戻すだけだ

所詮は対処療法に過ぎない

永久機関ではない

作動させるのには魔力がある程度必要だ

では魔獣を狩ることのできないあすなろ市ではどうやって魔力を得ているのか?

それは「魂の欠片」を使用している

救済者の皆は予めそれぞれ魔力を蓄積させていた

それを燃料してグロッケは作動している

 

「それに、これが機能できるのはこのあすなろ市が魔獣の脅威にさらされていないからともいえる。魔獣が出なければ、よっぽどのことが無い限り魔法少女になる必要なんてないしね。それに巴さんには悪いけど、外の世界にこれが持ち出されたら、魔獣討伐よりも自分の要求を満たすことを大切に思う魔法少女だっている・・・」

 

「そんな・・・・」

 

「人間が皆聖人君主だったら魔獣なんてものは生まれないし、理不尽な犯罪や事故に巻き込まれる人間もいない・・・・」

 

愛華が目を閉じた

その胸に去来するのは優しい家族の笑顔

家族がいて、私がいる

ずっと変わらない幸せ

でもそれはあの日、理不尽にも振り下ろされた凶刃で終わりを迎えた

犯人は逃走し、後には血まみれの・・・・・・

彼女は呪った

死刑になりたいという理由で罪を犯した殺人鬼を

警察に捕まりのうのうと暮らしている殺人鬼を

そんな彼女の目の前に悪魔は現れた

答えは出ていた

 

― 犯人とその家族への「呪い」が「成就」すること ―

 

願いは聞き届けられた・・・・

 

「ごめんなさい・・・・」

 

「いや。巴さんの考えは正しいよ。ただただ恩恵を享受するのではなく、それをいかにより多くの人と共有できるのか、それを思うだけでも貴方は私達の仲間である資格がある」

 

~ 本当は私なんかが貴方のような人間と一緒にいてはいけない・・・・ ~

 

この血に塗れた手で人は救えない

それを為して称賛されるのはきっとマミと真琴の二人だ

その場に罪人である自分がいてはいけないのだ・・・

 

 

 




そういえば最近、やたらと放火事件が多くない?
神社とか寺とか・・・・・・
犯人に仏罰が下れよホント

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