鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下

皆さんワニって食べたことありますか?
私はあります・・・・


手に入れられなかったモノ、手に入れたモノ

見滝原中学校

人気のない屋上の晩餐

無論、要らぬ「おせっかい」をするような人間が来ないように、高密度の結界を張っている

魔力を持たない人間にはいつもと変わらない見滝原中学校にしか見えないだろう

もっとも、中学校の屋上なんてそうそう意識見るような場所ではないから、例え結界を張っていなくとも邪魔されることなんてないだろうが・・・

 

 

視聴者が参加するテレビの料理番組に出ていたことのある「飛鳥ユウリ」の手による料理の数々は、どれもこれも中学生が作った料理には見えず、目の前の様々な料理はプロの料理人が手掛けたものであると言われれば、疑わずにそのまま信じてしまうほどの素晴らしい出来だった

 

「なぁ織莉子、このカレーみたいな料理は何なんだ?オクラが入っているけど・・・・」

 

キリカがスパイシーな香りを放つカレーに似た見たことのない料理を食べながら、傍らの織莉子に話しかける

 

「これはガンボという名前のアメリカ料理よ。どちらかというと、アメリカ南部ケイジャン地方で広く食べられている料理で、あまり日本では見かけないわね」

 

「へぇ~」

 

「これのガンボはチキンがメインだけど、地方によってはアリゲーターやリス、カエルを具材にすることもあるよ」

 

ユウリが料理の説明をする

あいりとキリカがぎょっとした顏でユウリを見る

食い意地の張っている二人であってもさすがにワニやリスやカエルと聞くと、例え入っていないとはいえ少し食欲が落ちる

 

「あら?アリゲーターのフリットなんてなかなかイケるわよ?」

 

「美国さんて・・・」

 

「織莉子って・・・」

 

「「意外とワイルド・・・・」」

 

あいりとキリカが見事なユニゾンを見せ、織莉子が品よく並べられた料理を食べている傍ら・・・・

 

「お代わり!!!!」

 

本日、四皿目のガンボを食べ終えた杏子がユウリにお代わりを頼んでた

 

「ホント、佐倉さんてへこたれないわね・・・・」

 

ユウリとあいりが呆れながら杏子に話しかける

 

「だってよ、こんなに美味しいものを目の前に置かれてくよくよなんかしてらんねぇよ!!!」

 

杏子はいい意味でも悪い意味でも自然体だ

天真爛漫で唯我独尊

悩むこともあるし苦しむこともある

でも、うれしかったことや楽しかったことがあれば、そんな絶望すら乗り越えることができる

彼女の意思の強さはこの場に集った少女達の中では一番だろう

だからこそ、「あの日」師匠である巴マミが裏切った事実があっても彼女のソウルジェムはグリーフシードを必要とするほどには濁らなかった

 

「ふふっ」

 

ニコが二人の様子を見ながら微笑んでいた

 

「何かおかしいのか?」

 

「いや・・・・佐倉さんを見ているとね・・・私は本当に、この世界に生まれてこれてよかったと思ったよ」

 

「例え、仮初の存在でも?」

 

織莉子がニコに問いかける

事前にニコ達を調べていたことは既に知られている

ニコが合成人間であることを下手に隠せば、それが不信につながる可能性もある

だからこそ、織莉子はここでその事実を公表した

 

「織莉子さん、私のこの身体は確かに人の血肉から生まれたモノではないわ。でも、私のこの心は人のものよ」

 

「ええ。絶望の未来を乗り越え希望の明日を掴もうとする、その思いは誰よりも気高いわ」

 

そう言うとニコと織莉子は一緒に微笑んだ

 

 

「さて、食事を終えたところで結論を聞かせてもらえないかな?」

 

食後のデザートのバナナサンデーを食べ終えたところでニコが織莉子に問いかけた

 

「貴方も酷い人ね。こんな美味しい料理を振る舞われた後で断れるわけがないじゃない?」

 

「私が酷い人間であることはよくわかっているよ。自分でも嫌になるほどにね・・・・・・」

 

ニコは静かに目を伏せた

その胸に去来するモノ

彼女が背負っている「ソレ」を織莉子は良くわかっていた

 

「自分を顧みれる人間はそうそういないわ・・・・」

 

引き剥がそうとしても「罪」は消えることはなく、死すら許されない

それは織莉子も同じだった

 

「おいおい!料理は確かに美味しかったけど、そんなに直ぐに決めていいのかよ?」

 

杏子が声をあげる

彼女の懸念ももっともだ

実際に彼女は裏切られている

かつては「師匠」と慕った巴マミが離反するようなことが起きている

信じたいという気持ちもあるが、しかし彼女の心のどこかに棘のような不信が突き刺さっていた

その気持ちを汲んだ織莉子が杏子に向き合った

 

「ならこう考えればいい。相手も取り返したいものがある、そして私達も取り返したいものがある」

 

「そりゃそうだけど・・・」

 

「私達はニコ達の邪魔をしないし、ニコ達も私達の邪魔をしない。お互い、それぞれがそれぞれの目的で行動する」

 

「じゃあ、協力する意味がないじゃねーか」

 

「違うわよ。お互いがお互いの目的を共有するならニアミスしてもお互いカチあって共倒れはしない。少なくとも、一組は本懐を遂げられるわ」

 

織莉子が一呼吸置く

 

「お互いの目的を知った上での共同行動、対する相手とすれば防衛に厄介な二面攻撃を強いることになる。かなり苦しいはずよ」

 

「仲間として認めると言うことなのか?」

 

「そう思ってもいいし、ただの同業者と思っていい・・・・それは貴方次第よ」

 

杏子は暫し黙る

 

「わかったよ・・・・。神那ニコ・・・さん、よろしくお願いします」

 

ぎこちないながらも杏子はニコに頭を下げた

 

「ニコでいいよ杏子さん」

 

ニコはそう言うと、右手を差し出した

 

 

 




はっきりいいます
叛逆の物語のBDは買いです

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