鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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差しのべた手の先に

― 見滝原市 ―

 

日本の一地方都市でありながら、近年の再開発のおかげで県庁所在地以上に発展していた

その余波なのか、隣市であるあすなろ市も見滝原市に負けず劣らず発展している

実際、見滝原の中心部から歩いても行けるくらい「あすなろ市」は近い

しかし、今は何よりも「遠かった」

 

 

魔法少女のみに反応する大結界「箱庭」

外からの干渉を弾き、織莉子の固有魔法すら受け付けない

詳しい情報を得るには実際に侵入するより他はないのだ

幸い、真の父親である「宇佐美蓮助」から渡された「魂の欠片」のおかげで、箱庭からの侵食はシャットダウンできたことは僥倖だ

結界の構成や性質、そして敵の本拠地の情報・・・・・

箱庭への侵入では様々な情報が得られたが同時に失う物も多かった

 

― 「マギカ・カルテット」のリーダーだった巴マミの離反 ―

 

これは単純に戦力の減退に留まらず、想像以上の痛手だった

巴マミは残された者たちが考えるよりもずっと大きな存在だった

黄金を溶かして結晶化させたような金色の巻き毛

そして落ち着いたトパーズ色の瞳

女性的な豊かさを備えた肢体

そして深い知識とそれを生かすことのできる知性

無論、ユーモアも忘れない

まさに「完璧な存在」

彼女が芸能界でアイドルになっていないとすれば、世のスカウトマンの目は節穴と言わざるを得ない

「表」の彼女しか知らなければなぜだろうと皆首を傾げるが、彼女自身の「裏」の顔を知っている人間ならばそれに納得がいく

彼女は「魔法少女」

たった一つの願いを叶える代わりに、命果てるまで魔獣を狩りつづける存在

マミとて年ごろの夢見る少女だ

光り輝くスポットライトに照らされる、銀幕の向こうの華やかな世界に憧れないわけはない

でも彼女は人間を獲物にする「魔獣」を狩ることを優先した

それが悲惨な事故から唯一「助かった」彼女の使命と決意したのだ

だが・・・・・・・

心の弱さを微笑みで誤魔化しても、彼女はやはり「少女だった」

 

 

「そう・・・・」

 

見滝原中学校に巣食う非合法組織「男の娘向上委員会」

彼女達の行動指針は「男の娘への啓蒙活動」

常日頃から見滝原中学校を含め、近隣の中学校でお眼鏡に適う少年を探して拉致

そしてその少年が「最も美しくなる姿」、つまりは女装させてその姿を写真に撮る

どう考えても「変態」であり「犯罪」であるが、その活動から多くの階層からの情報を得ることができる

その組織を率いるのは目の前の少女

あの夜を境に行方不明になった暁美ほむらとも負けず劣らずの豪奢な黒髪を持つ少女、彼女の名前は三鐘葵

彼女自身は魔法少女ではないが、ある事件を切っ掛けに「巴マミ」の協力者としてマギカ・カルテットと関わっている

 

「なぁ、アンタに言ってもどうしようもないって判るけどよ・・・・アタシ達がマミを追い詰めちまったのか?」

 

目にも鮮やかな紅い髪をポニーテールに纏めた少女がぽつりぽつりと呟く

此処は「男の娘向上委員会」の本部、表向きは見滝原中学校の新聞部となっている

二人の少女の前には豪華なウェッジウッドのティーカップが置かれ、暖かな芳香を漂わせていた

 

「杏子・・・・そうかもね」

 

葵は静かに語りかけた

 

「私は魔法少女じゃないからマミがどう思っていたかなんてわからないわ。それこそ、魔法少女の事を知らない一般人と変わらない」

 

「そんなこと・・・って・・」

 

「貴方は私を買いかぶり過ぎよ。私がわかる事なんて限られている。所詮人間なんて契りを結んだ夫婦とて心の中まではわからない」

 

「・・・・・・・・・」

 

「でも・・・・彼女は悩んでいたわ。自分のこれからに・・・」

 

「これから?」

 

「彼女は使命に生きていた、それこそ女として男に身を委ねる悦びや幸せを犠牲にして。でも、そこに宇佐美真というイレギュラーが入ってきた」

 

真という名を聞き、杏子の顔が陰る

 

「真の事を知ってんだな・・・・」

 

杏子からの問いかけに葵は静かに頷いた

 

「言ってみるならマギカ・カルテットは女子だけの閉鎖された空間。そこに一時的に女性になれるとはいえ男性が入れば、いやがおうにも女は自分の性を意識せざるを得ない」

 

葵が一呼吸置く

 

「これは避けられない事よ。女は誰しもいずれは男を求める・・・マミが離反したとしても、それは雌としての性。誰の所為でもない」

 

ギュ

 

葵が皮張りの豪勢なソファーから立ち上がる

 

「紅茶が冷めてしまったから淹れなおすわ。何か落ち着くような・・・・そうミントティーの方がいいかしら?」

 

「正直アタシはマミみたいに詳しくないからな・・・何でもいい」

 

「わかったわ」

 

 

葵はミントティーを淹れながら、一人静かに思索する

あすなろ市を覆う大結界と巴マミの離反

魔法少女ならぬこの身を恨めしく思った

契約することのできる少女は限られている

私も魔法少女としてマミの隣にいれば運命は変わっていたのだろうか?

いや、変わらなかったのかもしれない

彼女は全てを背負いこんでしまう

遅かれ早かれ運命は決まっていたのだろう

ならば私は・・・・

 

「杏子さん・・・貴方に紹介したい人物がいるわ。・・・・・魔法少女よ」

 

「?!」

 

ベストを尽くすしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




スペース☆ダンディー 2期をやる予定か
楽しみだ

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