鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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「希望」の先にあるもの

イドの闇

二人の少女がそれぞれの魂に刃を突き付けていた

橙色の髪の少女 ― 牧カオル ― がレモン色の髪の少女 ― 聖カンナ ― の首筋、正確には彼女の首筋に位置する水色のソウルジェムに手甲から伸ばした鋭いスパイクを当て、カンナもカオルの足に付けられたソウルジェムに手を伸ばしている

お互い、仲間からの救援が求められない以上、この奇妙な膠着状態は続くしかない

魔法少女は魔力さえあれば「飢える」ことも「疲労」することもない

加えてソウルジェムさえ無事であれば「死ぬ」ことさえないのだ

指一本動かせない状況

できることと言えば、相手の顔を睨みつけることか、悪態をつくしかない

しかし、それが続いたのはホンの数時間だけだった

ネタがなくなるとお互い黙るしかない

イドの闇には時間というものがない

沈黙は二人に考える時間を与えていた

そしてそのことが二人にある種の連帯感を生んでいた

 

 

カンナが何よりも知りたいこと

それはなぜ牧カオルが「魔法少女」となったのかだ

彼女はまだカンナがニコと一緒に希望に縋り付いて行動していた時に、海香と一緒に二人が魔獣を討伐する様子を見学していた

その時は相方の御崎海香とは対照的にカオルはカンナとニコ、いや正確には「魔法少女」という存在にその敵意を向けてきた

まぁ、どういう理由か詳しくは判らなかったが、彼女達は魔法少女の存在についてかなり詳しく知っていた

特に、あの「キュウベェ」が教える事のないソウルジェムに隠された「真実」についても

恐らく、多くの魔法少女が契約した時点では知るはずのないこと

それは「ソウルジェム」は魔力の源であると同時に結晶化された対象の「魂」であること、そしてそれを失ったら死ぬしかない事を・・・・

しかしだとしたら、彼女達は「キュウベェ」とは接触していないことになる

キュウベェがわざわざ契約前に契約の妨げになるようなことは決して言わない

とすれば、彼女達の裏に「魔法少女」がいると見て間違いない

カンナとニコが注意深く情報を聞き出してみるとその目立てに間違いないことが分かった

事実、海香とカオルとプレアデス聖団の皆がその真実を知ったのは隣の見滝原市から来た二人の魔法少女「マコト」と「キョウコ」からだそうだ

そしてその内の一人「マコト」が彼らの目の前でソウルジェムの秘密を暴露した

「マコト」が自分のソウルジェムを「キョウコ」に渡して、「ソウルジェム」が身体から離れすぎるとどうなるのかを「実演」したそうだ

結果は・・・・・「魔法少女」とはなんであるか、それを目に見える形で知ることになった

ショックだったそうだ

それもそうだ

目の前で人が「死んだのだ」

今の世の中、人の死はありふれたものではない

それもさっきまで、元気に話していた人間がだ

冷静でいられるはずはない

おまけに、その後何の前触れもなく復活したとあれば、それが彼女達にどれだけ強い印象を残すだろうか?

 

「化け物」

 

「ゾンビ」

 

「肉人形」

 

「魔法少女」の身体を形容する言葉は無数にある

実際、魔法少女の真実を知られて家族も親友も失った魔法少女も数多くいる

もう私達は「人間」じゃない

人間らしい生活なんて望まないし、望めないのだ

ただただ「生きる為」に魔獣を狩る人生

それでも十年以上長生きする魔法少女はいない

魔法少女になった時点で既に「終わっている」

残り少ない「余生」を少しでも伸ばす為だけの日々しかない

それを知っているはずの彼女はなぜ魔法少女になった?

 

「・・・・何で貴方は魔法少女になったの?」

 

「それがお前とどう関係がある?」

 

カオルの声が微かに震えた

 

「私の持っている情報と引き換えよ。それと・・・・何を勘違いしているかわからないが私はアイツらと契約して能力を使っただけ。アンタを魔法少女にした覚えなんてないわ」

 

「口ではどうとでも言えるだろ!」

 

「なら交渉決裂ね。それって・・・・アンタは私が何を言っても信じないって事でしょ?」

 

「くっ・・・・・!」

 

「それとも拷問でもするのかしら?魔法少女の身体のタフさは知っていると思うけど?」

 

「糞ッ!!!!!!!!」

 

ギリッ

 

カオルが歯ぎしりする

 

「・・・・引き換えの情報は?」

 

カオルには海香のような文才もなければ、サキのような交渉能力は無い

付け加えるなら里見やみらいのような可愛げも無かった

 

「ふ~~~~んいいの~~~~?」

 

小馬鹿にするようなカンナの言葉を黙殺する

 

「・・・お前の条件は?」

 

「アンタの仲間の情報、じゃなくてアンタが魔法少女になった理由かな」

 

「・・・・・・わからない」

 

「はぁ~?アンタもキュウベェと契約したんだろ」

 

「ああ、それは間違いない。でも私にはその記憶がなんだ・・・・」

 

カオルは自分が「魔法少女」になった時の事情を話した

魔獣とも違う化け物に襲われて、気がついたら魔法少女になったこと

そして・・・・・

 

「アンタが魔法少女の力で化け物を倒したら人間が倒れていた?」

 

「そうだ」

 

― あり得ない ―

 

カンナは無言でカオルのソウルジェムから手を離した

 

「・・・・もっと話して」

 

静かにカンナはカオルに語りかけた

ギリギリとカンナの中で何かが軋みはじめた

 




黒ウサPの「サンキュー・ロック」
最高だね

ホント、有線のK-Poopよりニコニコ動画でも流してやろうか

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