― 共依存 ―
自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存する、その人間関係に囚われている状態を広義の意味で指す
一般的に「共依存」と言うと、ある種病的な人間関係などを指すことが多いが、実際は共依存者は「自己愛」・「自尊心」が低いため、相手から依存されることに無意識のうちに自己の存在価値を見出し、共依存関係を形成し続けることが多いと言われている
この共依存という言葉自体はアルコール依存症の患者とその介護をする家族の関係から生み出された用語であり、平たく言えば、「ある人間関係に囚われ、逃れられない状態にある者」といえる
「根が深いわね・・・・・」
御崎海香は静かに心理学の専門書を閉じた
彼女が居るのはあすなろ市に位置する中央図書館
隣県の見滝原市にある図書館ほどではないが、その規模は一地方都市とは思えないほどだ
此処は彼女自身の「夢の世界」
この世界では彼女は作家として成功していた
だから、この世界の中で好きなだけ情報を調べたとしても敵の目を引くことはない
作家が自作の為に様々な分野の書物を漁るのは当然
今、彼女が調べているのは「共依存」その実例と、それへの対応手段のことだ
「双子」の魔法少女「神那ニコ」と「聖カンナ」
かつて、海香が魔力もないただの一人の少女であった時に邂逅した魔法少女達だ
一見、彼女達は良く似た双子のようにも見えるが「そうじゃない」
魔法少女の持つ固有の力、「魔法」は願いに左右される
その場にある物質を別の物へと組み替える、まるで錬金術のような「再生成」の魔法を使用する「聖カンナ」
実際に見たことはないが土くれを金塊へ帰ることも可能なのだろう
彼女の「願い」は「もう一人の自分」を得る事
カンナの片割れである「神那ニコ」はそうして生まれた
つまりはカンナとニコには生物学的には全く関係はない
双子というよりもクローンと言った方が正しい
だが、なにもカンナは下賤な目的の為に彼女を得たわけではない
それを物語るのが片割れである神那ニコの持つ「接続」の魔法
実体のあるものや、魔力・魔法といった概念的なものですら接続できる
夜のあすなろ市で目撃した、カンナの作り出したミサイルに「接続」し縦横無人にそれを操って見せる二人の姿は忘れがたい
でも二人の願いは戦いに特化したモノでもない
ましてや下衆な思惑があったわけではなかった
カンナが「生み出したもの」をニコが「繫ぎ止める」
そう、彼女達はギャングに撃たれ瀕死の重傷を負った両親を助ける為に魔法少女になったのだ
カンナが弾丸と砕けた骨、流れ出た血を元の身体へと戻しその欠損した身体を修復した
そしてニコが消えつつある「両親」の魂をその身体に強制的に定着させる
インキュベーターとの契約ではどんな願いでも叶えられる
ではなぜカンナは「両親を助けて」と願わなかったのだろうか
魔法少女の願いは個々の因果によって、叶えられる範囲は変わってくる
契約の時点でインキュベーターはカンナに言ったそうだ
二人を同時に助けるのは無理だと
だから、カンナはニコを願い「二人分の魔法」で両親を救うことを選んだ
でも神は残酷だ
「彼女達」は十全を尽くした
千切れた血管も
押しつぶされた肉も
砕かれた骨も
全てカンナが修復した
そしてニコが二人の意識をギリギリのレベルではあるが引き留めた
でも結果は ― 決して目覚めることのない眠り ― 二人は両親を「植物人間」にしてしまっただけだった
二人はしかし、絶望しなかった
この世界にいる魔法少女の中には両親を目覚めさせることのできる魔法を得ている少女が必ずいるはず
彼女達はそう考え、二人っきりで旅をしながらこのあすなろ市にやってきた
そして彼女達はカオルと海香に出会った・・・・・・・
調べ事を終え、海香は身体を伸ばした
身体中からポキポキと言う音が聞こえるが不快感は感じない
寧ろ、この解放感は気持ちいいともいえた
~ 「閉鎖環境における心理変化」か・・・・・ ~
思えば、彼女達はすこし「歪」だった
二人一緒であれば、仲の良い双子にしか見えないが、その関係に入り込むものが居ればそれを排除する
実際彼女達の世界は「完結」していた
恐らく、学校で私に声を掛けたのは「何か」の情報を得る為だったのだろう
現に、彼女は私達から劇団「プレアデス聖団」についての情報を聞き出そうとしていた
特に「かずみ」のことを・・・・
私の知り合いには「かずみ」なんて名前の子は知らない
その事を教えたらニコは少し淋しげに笑った
~ でもなんであのとき「かずみ」なんて子のことを尋ねたんだろう・・・・ ~
海香の知っている範囲でかずみなんて子はプレアデス聖団にはいない
でもそれが特定の人物のあだ名、愛称だったら?
~ かずさみちる・・・かずみ! ~
― 和紗の「かず」とミチルの「み」で、「かずみ」 ―
・・・・・異常だ
なぜ「和紗ミチル」彼女がかつて劇団「プレアデス聖団」に所属していたことを、この街に来たばかりの「魔法少女」が知っている?
それにニコの態度も気になる
彼女は「私達」のことを良く知っているかのように見えた
無論、私もカオルもそれなりに有名だ
知っていてもおかしくはない
でも、ニコのそれはまるで「遠く離れた友人」に会ったかのようなそぶりだった
考えれば考えるほど「おかしな点」が見えてくる
そして・・・・・
~ 全てはかずみから始まった ~
かずみが魔法少女となり、プレアデス聖団から離れた
その頃といえば・・・
不意にパズルのピースが嵌った
「もしかしたら・・・・・・!」
彼女は何か自分達の知らない大きな力の存在を感じた
VIP速報SSに入れない・・・・
あっちでやっているスレはこの際無視してSSNOTEβで立て直そうかな
一応、安価ネタもできるし