鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下します


夜の踊り子

美国邸

その食卓を囲むのは少年と少女の二人っきりだった

 

「広くなったね・・・・」

 

「ああ・・・」

 

帰省していた美国家長女「美国織莉子」が朝早く、この見滝原から離れると真とゆまは再び二人っきりの生活に戻っていた

美国家の次女であるゆまにとって織莉子は姉としても、そして美国家の当主代行としても最高の人物で尊敬にあたる人物だ

しかも彼女は名家の子女であることを全く鼻にかけていない

それどころか、強制されることなく自ら進んで社会奉仕活動に参加する人物だ

 

― ノブレス・オブリージュ ―

 

それを名家の子女であることに対して奢りなく、自然体として行える彼女は光り輝いて見えた

でも・・・・・

いやだからこそ、ゆまは彼女を苦手としていた

彼女の姉である「美国織莉子」は「綺麗」過ぎる

だからこそ、ゆまは自分の浅ましさをいやがおうにも直視しなければならない

子供の時を思い出すといい

幼稚園の先生は「人を色眼鏡で見てはいけません」と必ず言う

しかし、世界はこんな甘い言葉だけではできてはいない

どうしても「ゆま」を「織莉子の妹」として大人も子供も見てしまう

悪意のあるなしに限らずだ

ゆまの年齢で、過剰な期待を持つことは彼女の在り方、可能性を縛り付けてしまう

理由のない焦りは彼女を押しつぶそうとしていた

自分は自分だ

姉さんとは違う

声なき叫びは止まらず、ゆまを追い詰める

 

「自由に生きたい」

 

それはゆまの心からの願いだった

助けて欲しいんじゃない

ただただ「自分」を見てほしい

それを受け入れてくれる存在は一人しか知らなかった

彼女のとって二人っきりの「家」は外での「仮面」を外して、ゆまが年相応に振る舞える唯一の場所だ

そして、仮面をつけない素のままの彼女を受け入れてくれる兄「美国真」の存在が彼女を救ってくれた

父親も姉もいない、たった二人しかいない生活

事情を知らない、うわべしか見ない大人達は二人っきりの生活を見て、「寂しいでしょ」だの何だの言ってくるが、常に姉の幻影が付きまとう外の世界の方がゆまにとって寂しかった

たった一人でもいい、ちゃんと向かい合ってくれることがどれだけ救われるか、それを知っているだけでも「この世界」の彼女はまだ救われている

その笑顔を見るゆまの兄「美国真」いや、「宇佐美真」の心中は複雑だ

 

~ ・・・・ゆまちゃん ~

 

何度もゆまの夢に侵入し、彼女の夢にでてくる「美国真」を演じていてわかったことがある

それは彼女が常に強い劣等感を抱いているということだった

彼女 ― 千歳ゆま ― は織莉子の手によって、魔法少女であることと虐待を受けていた記憶を改竄されている

それは何も彼女を害するためのものではない

ゆまがその魔力の暴走で実の両親を自殺に追い込んだことを忘れさせるためだ

そうでもしなければ彼女はその罪に喰われる

彼女の記憶を操作した美国織莉子は考えた

そして彼女を「美国家」に迎え入れた

彼女に与えられるべき「幸福」を与える為に・・・・

織莉子もその父、美国久臣も彼女を実の娘のように接している

でも、ゆまも薄々気付いている

自分が織莉子と違う「存在」であることに

だからこそ、この「夢の牢獄」では血を分けた本当の「姉妹」であることを望んだ

それでも隠された彼女の寂しさを癒すことはできなかった

寧ろより鮮明になったともいえた

「夢の牢獄」は対象が望む世界を現出させる

そしてそれには対象の願いが強く反映されている

だが、忘れてはいけないのは「願い」とは翻って考えるのなら「悩み」や「苦しみ」と表裏一体

「夢の牢獄」では対象の感じている悩みも色濃く反映されるのだ

皮肉な話だ

織莉子はゆまがゆまらしく幸福に生きれるように記憶を改竄し、魔法少女の運命から解き放ち美国家に引き取った

でも当のゆま自身は織莉子と自分が違うことに思い悩んでいた

 

~ ままならないな・・・・ ~

 

「罪人」はおらず「断罪」されるものは誰もいない

皆が皆「幸福」を得ようとした結果だ

織莉子は魔法少女となり、殺意なく両親を殺してしまったゆまを助け

久臣はゆまの歩んできた道に心痛め、実の子のように愛を注いだ

しかし、ゆまは自分の記憶にできた穴と織莉子と違うことを知り思い悩んでいる

だからこそ、彼女を救う

救わねばならないのだ

例えこの「夢の牢獄」から脱出しても「人生」は続く

織莉子もゆまも、そして真も「魔法少女」という現実と向かい合わなければならない時期にきている

 

コンコン!

 

装飾の施された扉を叩く音が真の部屋に響く

今、この家にいるのは二人

ノックしたのはゆましかいない

 

「入ってもいいよゆま」

 

カチャ・・・・

 

「えへへ・・・」

 

ゆまがはにかんだ笑みを浮かべて立っていた

 

「こんな夜にどうしたんだいゆま?」

 

「いや・・・その・・・・」

 

「一人で眠るのが寂しいとかかい?」

 

「・・・・うん。真お兄ちゃん・・・一緒に寝ていい?」

 

真は静かにキングサイズのベットを空けた

小柄なゆまがそこに納まると寒くない様に毛布を掛けてやる

 

 

「・・・・・ごめんね、ゆまちゃん」

 

真は寝入ったゆまの手を握った

 

「接続」

 

小さくそう呟いた瞬間、真も目を閉じた

 

 

 

 

 




ダンガンロンパリロードを貸した友人曰く、「スーダン2の黒幕であるkmkrの目的がわからない」
これほどわかりやすい答えもないと思うが・・・・
この作品を読んでてくれるので考察をば


・未来機関三人組はkmkrの名前は知っていても正体は知らない
 最後の学級裁判で15mバストに教えられるまで日向創がkmkrであることを知らなかった

・彼女を利用するとは?
 まんま「希望の踏み台」にすること
 チャプター0でkmkrが狛枝に「あなたの才能も持っている」と言っている
 狛枝の才能が「対価を払った上での幸福」なのなら、「彼女」はまさに「希望の踏み台」に相応しい存在
 くわえて、狛枝型の「幸福」は自分じゃコントロールは不可能な全くのスタンドアローン状態
 新世界プログラムで上書きされても、「幸福」は作用し続けることが予想できる
 つまりは完全に身の安全が保障されている

・kmkrの目的は?
 消え去った元の人格の再取得
 実際に新世界プログラムは全くのゼロの状態で「日向創」を再現している
 人格のないkmkrが人格を再現するのは恐らく不可能
 だからこそ、新世界プログラムに入り、人格を再現し正体を隠し監視の目をくらます為に「15mバスト」のウィルスを打ち込んだと仮定できる

とりあえずファンミーティングに参加します
 
  
  

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