鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

25 / 322
寒い・・・・布団という名の理想郷へ戻ろう


道化師のワルツ

数日前

見滝原の歓楽街

場末のゲームセンター

そこに佐倉杏子と宇佐美真は居た

 

軽やかな曲に合わせて踊る真

それをポッキー片手に杏子が激を飛ばす

 

「おい真!少しリズムに遅れてるぞ!」

 

「そんなこと言ったって、僕は初めてなんだから!」

 

「相手はそうはいってくれないぜ!これも修行修行!」

 

杏子がバケツマスク団の魔の手から真を助けて以来、こうして一緒に行動することが多くなった

とはいえ・・・

 

「ううっ!なんで変身してこんなことを・・・」

 

「だって真は男の子だろ?もし変身解除しても女の子のまま、なんてなったら服はどうすんだ?」

 

「だったら何でランジェリーショップに連れてくるの~!」

 

「これは平常心を鍛える修行なんだぜ?もしうっかり心を乱したら・・・・・ワカルヨネ?」

 

真の脳裏に女性用下着を着用したままで変身解除してしまった自分の姿が過る

 

「死ぬ・・・死んでしまう!」

 

「わかったら平常心を維持しろよ。次この下着な」

 

「ちょっと佐倉先輩!これ前が透けてて・・・・」

 

「真、ちょっと声が低くなってるぞ」

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!」

 

・・・修行の効果はあった

以前は変身状態 ― 女性化 ― するためには魔法少女に変身してからではないとできなかったが、真の血と涙の滲む特訓で時間制限はあるが魔法少女に変身しなくても行えるようになった

これは魔獣を探索するのに、自らの姿を隠すのに役に立った

おまけにバケツマスク団その他から目をつけられなくて済む

 

~ 多分これにも佐倉先輩なりの修行があるんだろう。うんきっとそうだ! ~

 

真は割り切ることにした

 

 

「そうそう!やればできるじゃん」

 

ランク最上位を更新したところで今回の「修行」は終わった

 

「でも何の意味が・・・・」

 

杏子が真に向き合う

 

「決まっているだろ!」

 

真が固唾を飲む

 

「面白いから!」

 

「・・・・僕は電池のいらないおもちゃなんですね」

 

「冗談冗談!変身なしでこれだけ動けたら、あの変態集団に襲われても逃げられるだろ?」

 

「確かに」

 

変態集団 ― 見滝原の美少女を守る会 ―

 

あの後もたびたび真にちょっかいを掛けてくる

 

「でも、あれって僕よりも佐倉先輩が目的でしょ?」

 

「あはは。何時ものハンバーガー屋に行こうか真!」

 

「そこでなんで誤魔化すんですか!おまけにまた僕のおごりですか?」

 

「いいのかな~変態に童貞奪われれる寸前に助けたのは誰かな~」

 

「うううっ!この悪魔!」

 

~ 離しやがれ!~

 

~ 返してください・・・それは・・・ ~

 

ガスッ!ガスッ!

 

路地裏から何か・・・言い争う声が聞こえる

 

「佐倉先輩」

 

「・・・・真。前回の修行は完璧か?」

 

前回の修行とは

 

「際どい水着を着ての商店街疾走」

 

どう考えてもイジメにしか見えないが、これには認識阻害魔法の訓練という意味があった。

魔法少女の存在は秘匿されなければならない

そのための認識阻害魔法だ

これはごく薄く対象を結界でくるむことであり、対象を他人が見ても誰もそれとはわからない

修行で真はスリングショット、つまりはブラジル水着を装着したが、この認識阻害魔法をかけた彼は誰も真とも、いや人間とすら認識されない

 

 

真は入念に自分に認識阻害魔法をかける

全身が白い靄に包まれる

 

「なかなか様になっているじゃないか!」

 

「あの時は社会的生命がかかっていたからね・・・・」

 

「物覚えのいい舎弟で助かるよ」

 

魔法少女の敵は何も魔獣だけではない

時には理不尽な暴力に遭っている一般人を助けることもある

その時は後々を考えて認識阻害魔法が必要不可欠だ

 

「覚悟はいいか?」

 

「はい・・・」

 

意を決して二人は路地裏に飛び込んだ

 

 

「これは・・・」

 

路地裏は酷い有様だった

虎柄のジャンパーを着た、スキンヘッドの男が札束を数える

その傍らには札束を入れたいたであろうバックが転がる

そして・・・・

 

暗がりの中、地面に倒れ伏す少年の姿

 

灰色の髪

女性にも見える肢体

 

「恭介・・・さん・・・・」

 

およそこのような場所には似つかわしくないであろう、上条恭介がそこにいた

男に酷い暴行を受けたのだろう

辺りに彼が吐いた血反吐が散乱していた

 

「残念だったな坊主。うちの知り合いから連絡あってさ、中坊が大金持ち歩いていたら駄目だろ?」

 

男が嘲る

 

「返して・・・ください・・・・それはさやかを・・・探してもらうために・・・・」

 

尚も縋る恭介の手を男が踏みつける

 

「わからないのかな~ぼく~?これはもう俺のモノなの。これくらい用意できるなら女なんてどんなヤツでもヤれるだろ?」

 

「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

恭介がなけなしの力を振り絞って男を睨みつけた

 

「教育が必要かな~」

 

男がニヤニヤと笑みを浮かべる

しかし、その瞬間!

 

「死にさらせ!外道が!」

 

杏子の本気の一撃を受けて男が壁にめり込んだ

その拍子に男の懐から札束が空を舞う

それを這いずりながら恭介は拾っていた

その姿を杏子は冷ややかに見つめる

 

「・・・・真、恭介を見てやってくれ。アタシはこの馬鹿の記憶を弄ってくる」

 

「ああ・・・はい」

 

いつも笑みを浮かべている杏子が無表情に男を見つめていた

彼女の胸に去来するもの

それを知る程、彼はまだ彼女のことを知らない

 

シュォォォォォ!!!!

 

真が自分のソウルジェムを取り出し、魔力を使って恭介を介抱する

 

「・・・・ありがとう」

 

そう言うと、恭介は気を失った

 

 

 

「そんなになるまで探すなら・・・・なんでさやかの想いに気付いてやれなかったんだよ・・・・」

 

杏子の呟きは夜の闇に包まれ、消えていった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

NGシーン

 

佐倉杏子とその妹、ももは母親と一緒に見滝原で生活をしている

遠い親戚と言えども、叔母は二人に実の肉親以上の愛情を注いでくれた

なぜ居候しているのか?それは彼女の父親が何をトチ狂ったのか、全世界修行の旅に出ているからだ

ただ・・・

 

「叔母さん!昨日も朝帰りなんて。杏子とももに悪い影響が・・・・」

 

ガウン姿の「青年」が物憂げにグラスを傾けていた

 

「酒飲んで、お嬢ちゃんと一緒にアフターするのも仕事のうちなんだがな」

 

「でも教育上・・・・」

 

青年が人差し指を杏子の母親に当てる

 

「そういえば俺が中学生の頃に告白したのは誰だっけかな?」

 

「それは言わない約束でしょ!」

 

「悪りぃ悪りぃ」

 

 

彼、「一二三 美緒」は「女性」だ

しかし幼少の時から男装に目覚め、いまではレズ専用のデートクラブを経営している

義理堅く、宗教家と結婚したため一族から白眼視されている杏子の母親を居候させているのも彼女の一存だったりしている

 

 

「まこと~ちょっといいかな?」

 

「何です?佐倉先輩」

 

「今日の修行なんだが・・・・・・」

 

血は水より濃い

佐倉杏子が危険な道に進みつつあるのは必然だったりする

 

 

 

 

 

 

 

 

 




オリキャラまた出しちゃった・・・
実際、宗教家と結婚しちゃったらかなり肩身が狭いだろうってことで、設定したキャラ


一二三 美緒
杏子とももの叔母にあたる人物
レズ専用のデートクラブを経営している
仕事はかなりボーダーだが、本人は義理人情を大切にしている
特に二人の甥っ子には実の娘以上の愛情を注いでいる


杏子の母親は昔、彼女に告白しているらしく、今もからかわれている

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。