鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下します


無垢なる日々

「いつかは今になる、か・・・・」

 

真の脳裏にサキの言葉が響いていた

 

いつもの変わらぬ日常

表の世界、「夢の牢獄」の中で真が一人ごちた

彼の言葉に気付くものは誰も居ない

それもそのはずだ

真の目の前にはメカニカルな意匠に彩られた巨大な書架

その書架に目いっぱい押し込まれているのは、電子書籍が普通の時代に似つかわしくない、職人の手による皮張りの重厚な書物だった

今、真がいるのは見滝原にある中央図書館

その哲学書を収めた棚に彼はいた

一見すると、難しいことしか記されていないと思えがちだが、実際のところ哲学書はそう難しいものではない

 

「嘘ばかり吐くと誰も信用してくれないようになる。ではどうやったら、その失った名誉と信頼、友情を再び取り戻せるか?」

 

誰もが悩み、苦しむ人生の命題

哲学とは、そういった人生に有りがちな悩みや苦しみを解決する方法や、人生をよりよく生きる方法を追究する学問だ

よく難解であると言われる「フッサール」や「ニーチェ」などもその本質は同じ

ニーチェの「超人」という思想も、分かりやすく言うならば

 

「人生に悩むことの本質は叶えられない欲望を抱き苦しむことにある。されど、それに敗北するのではなく、自分自身を砕けない鉄の意思を持つ超人と呼ばれる存在へと昇華させることで、人生の苦しみを乗り越える事ができる」

 

と簡単にその思想を言い換えることができる

今、真は悩みを抱えている

真やプレアデス聖団の皆と同じく、「夢の牢獄」に繋がれた二人の少女 ― 美国ゆまと聖カンナ ― 

特に美国ゆまは自分が「魔法少女」であることを知らない

それは何も敵の意図でそうされたわけではない

彼女にその処置を行ったのは、彼女の書類上の姉に当る人物である「美国織莉子」だった

織莉子は何もゆまを害する為にそのようなことをしたわけではない

記憶の消去、その処置は彼女を守る為だ

ゆまは何も知らずに、インキュベーターの言うままに契約して魔法少女になった

そして・・・・・・

彼女はその強大な力を理解する前にそれを「行使」した

心無い両親はゆまが生まれてから、彼女が魔法少女になるまで虐待を続けてきた

そして彼らはそのツケを支払うことになった

ゆまの最初の犠牲者は彼女の両親

今までゆまが受けてきた痛みや苦しみを受けた両親は自殺した

このままではゆまは彼女のしたことを知り、自滅する

織莉子はゆまを守る為に彼女から「魔法」に関わる事柄すべてを消去した

 

パサッ

 

真が白い紙を広げる

それに無造作に円とそれに矢印を書き込んでいく

見た目は落書きしているようにしか見えないが、これもれっきとした瞑想法だ

一つの事柄を記入し、考えられうる結果を書き加える

そしてその結果を先ほどのように円で囲み、さらに考え得る結果を記入する

それを繰り返す

思考を目で見える形にすることで問題の再確認と、それに関する問題解決手段を一目で行うことができる

 

~ それに・・・・・ ~

 

真がそっと周りを見る

カウンターには40代くらいの受付係

真のいる哲学書棚には彼しかいないが、その反対側の心理学書棚には眼鏡を掛けた神経質そうな少年が居た

普通の人間がこれだけの物証だけで「監視されている」と言い出すなら、然るべきカウンセリングが必要だが真の置かれている事情を勘案するならばそうとはいえない

この表の世界は、敵の「魔法」によるもの

つまりは目の前の人間はゲームで言うところのNPCだ

できるだけ人目を引くような行動は慎む方が利口な考えだ

その点、真のしている作業は傍から見れば小説のプロットを考えているようにしか見えない

敵に知られることもなく、思考に没頭できる

 

「現時点で取れる手段は・・・・」

 

 

今までと同じく単純にゆまちゃんを起こす

 

 

織莉子さんが施した記憶改変がどれくらいのレベルかによる

記憶を取り戻す際に、ゆまちゃんに施されたプロテクトが外れてしまう恐れがある

 

 

ゆまちゃんを目覚めさせず、そのまま放置する 

 

 

プレアデス聖団及び真が同時に変身し、世界を維持できない程の「負荷」を掛けることのより「夢の牢獄」を破壊する

そこまでは真達の計画通りだ

プレアデス聖団から得た断片的な情報と、「さやか」からの情報を精査すると敵は真達全員を一律に管理している

ならば、それを超えた負荷を掛ければ敵が処理できるキャパシティーをたやすく超えてしまうはずだ

そうすれば自ずと世界は「崩壊」する

ただ・・・・・

これにはゆまちゃんや聖カンナと名乗った魔法少女も同時に行う必要がある

恐らく、二人を欠いた状態でも十分な負荷を与えることができるだろう

しかしヘタをすればゆまちゃんにも過負荷を掛けてしまう可能性がある

これは一か八かの賭け

皆でこの「夢の牢獄」から抜け出す

 

― たった皆を助ける為にたった一人を犠牲にする ―

 

それも「正義」だ

真もそれを非難することはない

だが、今の真は魔法少女だ

魂を対価にして条理を覆すのが魔法少女という存在

彼も奇跡を願った魔法少女

全員助ける

それこそが真の正義だ

あの日

魔獣から助けてくれた「ヒーロー」

今、あのヒーローはいない

だから真は「正義」を掲げる

あの日の願いを否定したくないから・・・・

 




世界征服
悪くはないんだけど、どうせまた型月作品とクロスするんだろうな
いい加減、割り切ってモノつくりしないと「魔法使いの夜」みたいに失敗するよ?

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