鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下


怯え

浅海サキにとって宇佐美真という存在は大きいものだった

たった一時の感情で後先考えずに魔法少女という「人外」になろうとした愚かな自分を諫める、その為だけにその身を犠牲にし、「彼」 ― 魔法少女形態をとっていたからあの時は彼女と言うべきなのだろうが ― に「化け物」と言い放った里見に怒りを見せることもなかった

彼の相棒である「佐倉杏子」が激昂しても、彼はそれを諫めた

彼を「化け物」と罵り、杏子につるし上げられた里見に怒りを見せることも、彼女を責めることもしなかった

杏子と真が見滝原へ帰っても、魔法少女の契約に悩む私の相談にものってくれ、敵の姦計によって「魔法少女」にされた私達をこうして助けてくれている

サキは真のことをワーグナーの歌劇に出てくるような正義の騎士、そのままの完璧な存在と思っていた

でも・・・

 

「・・・・・・・・・・・」

 

サキは真を見る

その表情には影がさし、いつも見せてくれるような凛々しさはなかった

 

「・・・・・話してくれないか」

 

サキは静かに真に語りかけた

真は顔をあげると、静かに話し始めた

ゆまという少女の歩んできた、その運命を・・・・・・

 

 

「・・・そんな事があったのか・・」

 

聖カンナと同じく、イドの闇の最奥で見つかった少女「美国ゆま」

彼女は生まれてからずっと実の両親から虐待を受け続けていた

それに目を付けた「インキュベーター」と呼ばれる存在と契約して魔法少女になった

サキの記憶の中にはそのインキュベーターと呼ばれる存在と契約した記憶はないが、あの日魔法少女に初めて変身した時にいた白いウサギのような生き物がそうなのだろう

まぁ、すぐに見えなくなったが・・・・

ゆまは「自分の痛みを誰かに背負ってもらいたい」、その願いで契約した

契約は無事に成し遂げられ、ゆまは魔法少女となった

しかし、生まれたての魔法少女は不安定な存在だ

固有の魔法がなんなのか知らず、魔力が暴走することもある

結果、両親はゆまが「生まれてから、今まで受けた苦痛」全てを背負わされて自殺した

つまりはゆまが「両親」を殺したのだ

幸い、彼女がそれに気づく前に真の友人である、「美国織莉子」の手でその記憶を封印、改竄を受けてそのまま美国家に引き取られた

そして、彼女は自分が魔法少女であることを知らずに「千歳ゆま」ではなく、「美国ゆま」として幸せに今まで生きてきた

 

「サキさん・・・僕は怖いんです。もし、記憶を取り戻させたら同時にゆまちゃんがあの忌まわしい記憶を思い出したらと思うと・・・・」

 

真と「さやか」が夢の牢獄から私達を目覚めさせた方法、それは私達に記憶を取り戻させることだった

彼が語ったことには、その「美国織莉子」がゆまちゃんの記憶を改竄してその精神を安定させている

下手に記憶を取り戻したら、そのプロテクトも一緒に解除してしまう可能性もある

そうしたら・・・・・その先にあるのは破滅しかない

 

~ ・・・・・・・・・・ ~

 

サキが左腕の甲に付けられた緑色の宝石を見る

 

― ソウルジェム ―

 

見た目はエメラルドのように輝き、希少な宝石としか見えない

事実、これは世界に二つとてない希少な宝石だ

これには「浅海サキ」としての「魂」が込められている

魔法少女の契約、それを行った瞬間に少女は「死ぬ」

死んで、戦う為だけの存在「魔法少女」へと再誕するのだ

インキュベーターは事前にそのことを説明をすることはない

説明すれば、まず契約などしなくなるからだ

例え、インキュベーターに詰め寄っても「契約の時に説明を省いた」、「聞かれなかったから答えなかった」としか言わない

それに・・・・・

このソウルジェムは「命」だ

比喩的な表現ではない、文字通りのものだ

これを戦闘で破壊されれば、即「死」に繋がる

おまけに、それは魔法少女の精神状態にも左右される

穢れが溜まり切ったら、その先には死しかない

ゆまが魔法少女であることを自覚し、両親の死も乗り越えているのなら別だ

でも、彼女は「織莉子」の手で記憶を改竄されている

もしも、全てを知ったら?

間違いなく、ゆまと言う少女は・・・・・

 

 

サキは静かに真の頭に手を乗せた

そしておもむろに・・・・・

 

わしゃわしゃ

 

「・・・・?サキさん」

 

サキが真の髪をくしゃくしゃとしていた

 

「キミは深く考えすぎるよ」

 

「・・・・・でも!」

 

「聞きなさい!」

 

サキが真を鋭く見つめる

 

「いくら真君や織莉子さんが、ゆまちゃんからその事実を遠ざけても事実は変わらない。それに魔法少女は長生きできない・・・・それは事実だろ?」

 

理論上、魔法少女の身体は魔力の続く限り修復が可能だ

個々の適正に違いはあるが、普通の人間なら即死でも魔法少女はそうではない

でも、穢れが浄化するスピードを追い越すことになれば別だ

そして、それが魔法少女の死因の殆どであると言える

 

「真くんも、その織莉子と言う魔法少女も確実にゆまちゃんよりも早く死ぬ。いずれはゆまちゃんも事実を受け入れなければならない」

 

サキは一呼吸する

 

「いつかは今じゃない、でも必ず今になる。なら、今できることをするしかない」

 

 

 

 

 




キルラキルは安定のクォリティー

サムライフラメンコ・・・・・・・
本当に2クールやんのかよ?

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