鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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トモに貸したダンガンロンパリロードがやっと戻ってきた
で、何か弄ったところが無いか見ていたら罪木蜜柑関係のイベント・処刑シーンがコンプリートされとった・・・・

お前女だったよね?




Pray

 

カタカタ・・・・・

 

広い書斎の中でリズミカルなキータイプの音が響く

少女は意図してそうキーを打っていたわけではないが。その響きはリズミカルでアンダーソンが1950年に作曲した名曲「タイプライター」を思わせた

彼女の名前は「御崎海香」

ティーンエイジャーのライトノベル作家であり現実世界でもそれなりの成功しているが、この夢の牢獄の中の「世界」ではもはやギャグと言えるほどに成功していた

いま彼女が文章を打ち出しているパソコンには、あのビルとかゲイツとかいう眼鏡オヤジが彼女の為だけに組んだ特殊な文書ソフトがインストールされているし、今彼女がいる書斎には「カンタベリー物語」から、マルキ・ド・サドの「悪徳の栄え」、そしてサドと同時代に生きた魔道士であるダレット伯爵の「屍食教典儀」まで網羅されている

濃厚なゲイ描写のある「私家版:虚無への供物」などは、ゲイ雑誌「アドニス」で掲載された部分に加筆が施されていて、その存在は噂の範疇を出ることが無かった

しかし、それも海香の手元に収まっている

そしてそれを可能とするほどに、彼女は名声を勝ち得ていた

 

「おーい、海香!!」

 

階下からの明るい声に、海香がデスクから立ち上がる

昨今のようなリニアを使った無音式の開閉機構を持つ窓を彼女は好まない

小説家に必要なこと

それは多岐に渡り、様々なジャンルの小説を読みふけることも重要だし、逐一アイディアを書き留めることももちろん大切だ

しかし、かのヘミングウェイは言った

「小説を書くことは黙ってタイプライターの前で血を流すことだ」、と

つまり、想像や妄想だけでは小説は書けない

例え無駄や無謀、意味のない事であってもそれに挑戦し経験を得ることは決して無駄ではない

ただ立ち上がって、古いガラス窓を開く

たったそれだけでも、錆びついて軋むレールや窓枠の隅にこびり付く泥の臭いなど、様々な経験を得ることができる

そうやって小説家は手にした砂の中からアイディアという砂金を見つけることができるのだ

 

ヒュォォォォォォォォォ!!!

 

階下から吹く風に巻き上げられ、海香の群青色の髪が巻き上げられる

それを手で押さえながら、海香が見ると、そこには屈託なく笑っている彼女の親友である「牧カオル」が立っていた

短く切りそろえられた燈色の髪が穏やかな秋風に揺れる

何処からどう見ても、それは彼女の知っている親友の姿だった

でも彼女は既に知っている

ここが「夢」の中であるということを

目の前で笑っている親友も所詮はNPC、いうなれば魂のない人形に他ならないことを

 

「カオル、お茶にしない?ちょうど、ハワイから上等のコナコーヒーが手に入ったから・・・」

 

「へぇ~~~アップルパイもある?」

 

「今なら、アイスクリームも添えるわよ?」

 

「ははっ!太っ腹だな海香は!」

 

「カオルも食べ過ぎて太っ腹にならないようにね」

 

「相変わらず手厳しいな海香は」

 

見れば見るほど、階下の友人は彼女の「友人」だった

気持ちをフラットにして、海香は何時もの「海香」を演じた

 

 

何時もと同じ「日常」

学校で授業を受け、帰宅して執筆し友人と楽しい時間を過ごす

夏のように暑くもなく、さりとて冬の寒さも感じない「凪ぎの時間」

此処には停滞した時間しかない

ずっと「子供」のままでいていい

正直、海香は自分の将来に思い悩んでいた

このまま自分はライトノベル作家としてやっていけるのだろうか

もしかしたら、飽きられてしまうのではないか?

そんな思いがこの世界を「生み出した」

だからこそ、最初にサキと「一人の少年」が現れた時も彼女は拒絶した

でも・・・・・

 

 

少年は夜毎に現れた

そして、一晩に一話いろいろな話をした

怖い話や悲しい話、面白い話や快刀乱麻の冒険譚、それに哲学的な話や宗教の話

彼「宇佐美真」はアラビアンナイトに出てくるシェラザード姫のように様々な話を知っていた

海香もそれなりに話を知っているつもりだったが、真が話してくれる説話はそのどれとも違った

そして彼はこういった

 

― この世界には貴方の知らないことも沢山ある。この世界は貴方が思うよりも広いのですから・・・・ ―

 

そうだ

そうだ!

私にはまだまだ知りたいことがある!

私にはまだまだ書きたいことがある!

 

そう強く叫んだ瞬間、彼女を覆うイドの闇は光に包まれた

 

 

「怖いのかい?海香」

 

「私は怖がりよ。だから、こうして分析をしているのよ」

 

魔法少女形態をとった御崎海香が分厚い本型の魔道具を開いて「イクス・フォーレ」を展開する

彼女自身、聖カンナを信じないわけではない

でも、海香自身が解き明かした規則性を無視した存在である以上は、用心を重ねる必要がある

イクスフォーレに浮かぶ映像

その中を見たカオルの顔が強張る

 

「小説家は物語を完結させる義務があるのよ」

 

「こんな状態でも小説の話かよ」

 

カオルの顔が曇る

 

「モチベーションの話よ。カオルにはこの夢の牢獄から脱出してからやりたいことはないの?」

 

「そりゃまぁ・・・・・」

 

「夢の牢獄はいうなれば私達の理想そのもの。自分で自分を信じられなければまた飲み込まれるわよ」

 

海香の顔は真剣だった

 

「そうだな・・・・決めた!この牢獄から脱出したら真の奴と飯を喰いに行く!!」

 

「それってデート?」

 

「いやいやそんなんじゃなくてだな・・・、色々と真の奴には迷惑をかけてるから・・・・・」

 

「いいんじゃない。それも人生の一ページよ」

 

海香は親友のあまり見せない表情を見て、微笑んだ

 

 

 

 

 

 




そういえば、バディコンプレックスを見たけど、そこはかとなく「種死」と「ヴァルヴレイプ」のハイブリット悪臭を感じた・・・・

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