鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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では投下します


世界を救う為に・・・

カラン!カラン!

 

真鍮製のドアベルを鳴らし、一人の少女がドアを開いては入ってくる

目にも鮮やかな、まるで空の色を移したような淡い青色の髪の少女

しかし、少女は目深に帽子を被り、決して顏を上げようとはしなかった

初老のマスターが声を掛けるよりも早く、少女は喫茶店にある奥の予約席へと向かう

少女の歩みはややぎこちかったが、その歩みは一歩一歩踏みしめるかのようだった

そこには、まるで太陽を写し取ったかのような金色の髪の少女が彼女を待っていた

 

「・・・・・・あの日の話を聞かせて」

 

「喜んで。救済の魔法少女よ」

 

 

あすなろ市市内

病院から歩いて5分程の距離にある喫茶店

古めかしいデザインのポーチ

青々として植え込みの観葉植物

「ザ・純喫茶」といった風情の喫茶店

少女「夏樹真理」は、あの日の夕暮に出会った「金髪の少女」とあの日の話の続きを聞くために、入院している病院の担当医師から外出許可を取って外出していた

無論、彼女の体力を考えての時間制限はつけられていたが・・・

とはいえ、病院内でリハビリとして歩くことしかなかった彼女にとって、初めての外出は新鮮だった

上を見上げれば、どこまでも青い空が広がり、病院内にある吹き抜けで切り取られた四角の空とは大違いだ

ふと見ると、幼稚園児くらいの男の子が彼女を見ていた

目に涙を溜めて

 

~ いけない・・・・・ ~

 

真理は手にもっていた白い帽子を目深に被り直すと、俯いて足早にその場を去った

背後から男の子の鳴き声が響いてきた

その無垢な声は真理の心を傷つけた

男の子に悪気が無いのはわかる

でも・・・

あの男の子の目では私は「おばけ」なのだ・・・・

真理は不安になってきた

アノ少女は本当に私を助けてくれるのか?と

 

 

真理は目の前の少女を見つめる

太陽のような金色の髪

あの時は黄昏時で夕日に輝いて見えたが、喫茶店の人工光の中でもその髪は輝いていた

そして丸みを帯びた女性らしい身体

きっと男の子なら、彼女と身体を交えることができるなら魂すらも渡してしまうだろう

同性である真理が見ても、それほどまでに彼女は性的な魅力にあふれていた

そして・・・・

彼女を見れば見るほど、自分の醜さが目に付く

今すぐにもこの場から逃げ出したい衝動に駆られる

本当は嘘ではないか?

本当は彼女は醜い自分をただ笑いたいだけなのだろうか?

心の奥で渦巻く醜い考え

 

「・・・・?」

 

不意に身体が軽くなった

少女が黒いサイコロ程の大きさの立方体を彼女の指に嵌めた銀の指輪にあてていた

 

「それは・・・・・?」

 

真理は初めて見たそれを、目の前の少女に尋ねた

 

「魔法少女の魔力の源泉、グリーフシードよ」

 

「グリーフシード?」

 

「そうよ。あの白い悪魔は貴方にそんな基礎的な事すら教えていなかったの?」

 

真理が首を振る

 

「魔法少女の契約の際、キュウベエは私に魔獣を狩る宿命を教えてくれた・・・・でも、私戦いなんて・・・・」

 

真理が顔を伏せる

幾ら少女に適正があるとは言っても、実際に戦うことのできる少女は少ない

特に急ごしらえの魔法少女では、真理の様に身体的なハンデを持っているなど、様々な問題を抱えていることが多い

それで戦えというのが無理がある

だが、キュウベェに感情はない

ただ彼らの目的に沿って行動しているだけだ

この計画が失敗したら別の計画を実行するだけのこと

そこに人の尊厳なんて、ない

 

「わかるわ・・・・貴方はただ願い事をしただけだもの・・・」

 

少女が真理を見る

 

「でも、貴方は自分自身を過少評価している。」

 

「過小評価?」

 

「ええ。あの白い悪魔は貴方に言わなかったことだけど、私達、魔法少女の魔法は平均してみて、良く似たものを持つ者は居ても、魔法は誰一人同じものはない・・・・オンリーワンの存在なのよ」

 

「こんなボロボロの身体でも・・・?」

 

「貴方が貴方らしく生きていけるように私がサポートするわ。だから・・・」

 

少女が真理の手を握る

少女の手は暖かかった

 

「終りに手を伸ばさないで」

 

その日、真理は「魔法少女」となった

 

 

「慣れてきた真理?」

 

「うん!真琴が色々と教えてくれたからだよ!」

 

真理と真が会ってから、数日後

二人は風見台にいた

此処は縄張りにしている魔法少女もなく、魔獣もさほど多くは涌いてこない

新人の魔法少女を鍛えるにはちょうどいい

真理の体は見違えるように変わっていた

骨ばかりの青白い肌は血の通う、少女らしい体へと変わり

その枯れ枝のような薄青色の髪は豊かなモノへと変わっていた

真琴は彼女に魔力の使い方を教えた

そして、失った分の魔力の補充方法も・・・・

 

「楽園のことは考えてくれた?」

 

「うん・・・・・」

 

楽園システム

それは魔法少女達を救い、そしてインキュベーターを消去するシステム

そして、彼女達を救う為に真琴は彼女に同士になる事を望んだ

真理は真琴が邪悪な思いで行動しているわけではない事を知っている

 

「ソウルジェムと身体の結合を解除し、ソウルジェムから身体を維持するだけの最小限の魔力を取り出し、魔法少女の身体を普通の少女に戻せるようになるまで保存する」

 

それが「楽園」

そして、少女達は目覚めるまで、楽しい夢を見続けることになる

キュウベエに騙されたことを忘れて

それこそが・・・

 

「私の救済だから・・・・」

 

起動を始めた楽園

その中心で眠り続ける少女は、夢を見続ける

魔法少女を救う為に・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




しかしガッチャマンクラウズ
ちゃんと終わらせられんだろうか・・・?

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