時間軸はどのあたりにあたるんだろう?
「美国織莉子」
「宇佐美真」
二人が「魔法少女」となった切っ掛けは些細な事だった
織莉子さんの父親は議員として、日々を栄光の中に生きていた
しかし、彼女の父親に生き馬の目を抜くような、政治の世界を生き抜くには優しすぎた
同情心からの行動を、マスコミが目ざとく糾弾したのだ
日々やつれていく父親
織莉子さんは「すべてを知ること」を願い、魔法少女となった
そして、ある日魔獣の手から救い出した少年が私の父親である「宇佐美真」だった
お互いの両親の紹介で、自分たちが許嫁の関係であることにも驚いたが、それよりも真が求めていた「ヒーロー」に再び会えたことが一つの転機になった
真さんが願ったことは「彼女の痛みを引き受けて一緒に戦いたい」
そして宇佐美真は「魔法少女」になった
織莉子さんと真さんはともに人々の幸福を願い日々、戦い続けていている
だからこそ、街渦巻く瘴気とともに現れる魔獣
それを討伐する以外にも二人はその魔法や身体能力を使って罪なき人々を陰ながら救っていた
いたいけな少女を秘密裡に拉致し、男装させてから写真を撮る変態少女集団をボコッたり
いたいけな少年を秘密裡に拉致し、女装させてから写真を撮る変態少女集団をボコボコにしたり
日々、人々の幸福と正義の為にその身を捧げていた
「茉子さんも活動になれた?」
鉄仮面をずらし、やや女性的に変わった真さんが私に語りかけた
父である「宇佐美真」
彼女、いや彼が魔法少女になれる存在であることは知っていた
魔法少女として、男性体から女性体へ変わっていく瞬間は驚いたが
おまけに胸の大きさは私よりも大きかったのは、女として少し悔しくはあった
「うん!織莉子さんや真さんが真剣に教えてくれるから」
私自身、魔法少女の力の根源や魔力の応用範囲については母親から受け継いだ「辞典」で知っている
知っていることと、実際に使えることは違う
しかも、命のかかった実戦となると、そこは実践での経験と教え導く存在の有無がモノを言う
その点では、あの夜にこの二人の「弟子」になったことは間違いではなかった
彼女達の弟子となって半年、一般人から姿を隠す「認識阻害魔法」や魔法少女の結界を薄く張って簡単な変装を行う方法など、魔獣討伐にも魔獣以外の悪人を倒すことにも役立つ魔法や技を多く習得していた
その日は真さんと街のパトロールをしている
ここ見滝原は真さん曰く、近年の開発で非常に活気がある反面、その影も濃く瘴気が溜まりやすく、そして瘴気が結晶した魔獣も涌きやすいとのことだ
だから、日々こうやってパトロールをしてあらかじめアタリをつけておくのだ
こうして瘴気の分布表を作っておけば、魔獣の数を把握しておけば少ない人員でも効率的に狩りができる
「さてと・・・・じゃあ、これでパトロールは終了!」
一日分のパトロールはもうすぐ終わりだった
「・・・・あれ?」
茉子こと、「宇佐美真琴」の目の前にはボロボロの服を着た少女
恐らくは中学生にもなっていないだろう
その瞳は虚ろだ
明らかに異様な状況だ
「真さん。あの子・・・・何かおかしい・・・」
明らかに普通の状態ではない
少女がどんな状況なのか理解できないが、放っておくわけにはいかない
二人が少女に近づく
それにつれ、真琴は件の少女が何事かを呟いているのに気が付いた
ボソボソと途切れ途切れに何事かを繰り返している
茉子がその声に耳を澄ます
「みんなみんなきえちゃえ・・・・しろいうさぎさんが力をくれた・・・・みんなみんなきえちゃえ・・・・ぱぱもままもきえちゃえ!!!!!」
「白い兎」
間違いなくインキュベーターだ
そしてそれを裏付けるように少女の身体からは魔力が感じられた
~ この子・・・・・魔法少女! ~
真琴は急いで回避行為をとろうとする
しかし遅かった
その瞬間、辺りを黒々とした魔力が充満した
茉子が自らのソウルジェムを取り出して変身しようとするが、そのブラックオパールのような輝きは既に失われていた
「穢れ」が急速に溜まっていたのだ
「みんなみんないなくなっちゃえ!!!!!!!」
少女の姿が変わる
緑をイメージカラーにしたメイド服、しかしその手足には包帯が幾重にもまかれていた
魔力でも癒せない傷を表しているかのようだ
その瞬間、彼女の体から黒い矢が無数に発射される
到底回避は間に合わない
茉子が目を瞑った瞬間だった
「?・・・・・」
いくら待っても、身を抉るような痛みは襲ってこなかった
茉子が恐る恐る目を開けると、
「大丈夫かい・・・・・」
茉子を庇って、黒い矢に貫かれた真がいた
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!」
その瞬間、彼女から「世界」が消失した
その後、私は何度もあの悪夢をやり直そうとした
でもそこに戻ることはできなかった
私の魔法は「平行世界へと渡る能力」
つまりは私はもうあの世界へと戻ることはできなかった
私は訪れた世界で何度も二人を救おうとした
しかし、その運命を否定することは叶わなかった
その精神が擦り切れるような旅路の果て
二人を救うためには「システム」を変えなければならない
だから・・・・・
「楽園の礎になって・・・・・お父さん・・・」
目の前には懐かしい宇佐美邸が姿を現していた
このSSでは「かずみ☆マギカ」の世界をどう扱うか、未だに悩む