鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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今週のワタモテも心が痛い・・・・・



出会い

「私の大切な人物だから」

 

そう「彼」は彼女にとって大切な人物だった

「魔法少女」契約で得た魔法で出会った真琴は、その旅の始まりに変わり果てた母親に出会った

そして彼女は全てを知った

魔法少女達の運命とインキュベーターの企みを

知ったことはそれだけではない

母親の「美国織莉子」と父親である「宇佐美真」のこともだ

母からの誕生日プレゼントであり、その遺産でもある「魔女の辞典」には、母がどのように父と出会い、そして・・・・別れたかが記されていた

その思いも・・・

誰よりも優しく

そして誰よりも聡明だった

特異な「魔法少女」に変身できる少年、「宇佐美真」

真琴は辞典を読むにつれ、自分自身が父親に惹かれていくのを感じていた

そして彼女は「父親」に会いたくなったのだ

会いたい

会って話してみたい

少女らしい思いだ

だが、彼女にはそれを可能とする権利と力があるのだから

 

「思いを一つにして・・・・・・・」

 

少女が手のひらを正面に突き出して、くるりと円を描く

その瞬間、彼女の姿は円の中へ消えていった・・・・

そして少女を飲み込んだ穴は消えていった

まるでそこには最初から何もなかったのように・・・・

 

 

「真さん!そっちに行ったわ!!」

 

白銀の雪原を思わせるような髪をした少女が空中に水晶を幾つも浮かべる

少女の姿は白を基調とした豪奢なドレス

それを彼女は一国の姫君のように着こなしていた

少女はその美を誇ると同時に、その表情は獲物を見定める狩り人のそれだった

 

ウォォォォォォォォォ!!!!

 

少女の目の前には白い僧侶のような「モノ」

その顔面は幾つものホログラムが浮かび、まるで一昔前のモザイク映像のようなもので隠されていた

そしてその大きさはまさに巨人といえるほど巨大だった

白い僧侶のような巨人が少女の展開した水晶玉に近づく

その光景を一人の少女が見ていた

少女の名前は「宇佐美真琴」

そして白いドレスを着た少女は彼女の記憶なら、彼女の母親である「美国織莉子」に間違いなかった

あの目の前の巨人は、白魔が言っていた「魔獣」と呼ばれる存在に違いない

巨人が白い少女にその手を伸ばす

 

― いけない!!! ―

 

咄嗟に真琴が魔法少女形態へと変身し、その固有魔法を展開しようとした、が

織莉子の方が早かった

 

「オラクル・レイ!!!」

 

シュオン!!!!!

 

空中に浮かぶ無数の水晶が少女を壁に様に守り、それらが魔獣に向かって一斉に光線を放った

その光線は寸分違わず、魔獣の急所である頭部を粉砕する

 

「行くよ!!!!!」

 

織莉子の攻撃が成功した瞬間、もう一人の少女が前に歩みだした

張りのある声

その声は少年の声とも、少女の声とも取れた

真琴が振り向く

 

「ええ!真さん!!!!」

 

魔獣が顔面をその手で覆い、身悶えしている瞬間、灰色の影が躍り出た

風に翻る白銀のマント

青を基調とした戦闘服

銀のガントレットとレッグアーマー

そして、顔を覆う「鉄仮面」

彼女、いや彼こそが・・・・・

 

「てぇぇぇぇぃ!!!!!!!!」

 

灰色の髪の少女が周囲のビルを足場にして高く飛ぶ

風に揺れ、真の蒼いプリーツスカートがまくりあがる

清楚な青と白のショーツ

それはいやらしさよりも、ある意味神神しくもあった

・・・・・織莉子がカメラを構えていたのはこの際置いといて

 

「インフェルノ・イ・パラディーゾ!!!!!!!」

 

空中の真が前傾姿勢を取って魔獣へ突っ込んでいく

スピードが速くなるにつれ、真の身体をガントレットから放たれた青い炎が包む

 

ジュオォォォォォォ!!!!

 

そして蒼い炎の弾丸になった真が叫ぶ

 

「ひ・か・りになれぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!!!!」

 

真の絶叫とともに魔獣は粉砕された

そして、燃えさかる魔獣だったモノから一人の少女がゆっくりと歩いてくる

少女には傷一つ見えなかった

 

「やったわね真さん!」

 

「ありがとう織莉子さん!」

 

戦いを終え、真と呼ばれた少女が仮面を外した

 

パチッ!

 

ビルの谷間から吹く夜風に巻き上げられ、少女の灰色の髪が舞う

彼女、いや彼こそが「宇佐美真」

真琴の実の父親に他ならなかった

 

 

「すごい・・・・・」

 

真琴は二人の戦闘を見て、素直にそう呟いた

織莉子が牽制し、その隙に真が一気に殲滅する

非常にオーソドックスな戦法ではあるが、それ故両方に息の合った密な連携を必要とする

彼らの動きは完璧だった

真琴は周りをもう少し確認すべきだったかもしれない

彼女の足が瓦礫を崩してしまった

 

ガラッ!

 

「誰ッ!」

 

織莉子が再度、周りに水晶を展開する

 

シュォン・・・シュオン・・・・・

 

「やばい!」

 

母から受け継いだ辞典にも書かれていた

魔法少女の中には、魔獣を倒させてから襲撃してグリーフシードを奪取するような輩もいることに

真琴自身はそういうつもりがなくとも、二人にそう認定されたらかなり困る

真琴は何とか脱出しようと試みるが・・・・

 

シュオン・・・シュオン・・・・・

 

例の水晶が先回りしていた

 

「なら・・・・!」

 

真琴が振り向いた瞬間だった

 

「なら・・・・どうするんだい?」

 

目の前にはガントレットを構えた「鉄仮面」の魔法少女「宇佐美真」が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今年の夏は海に行けなかったよ・・・・

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