面白いんだけど・・・・「O☆T☆O☆N☆A!」分が足りない
タッタッタ!!!!
「こういう時にアノ魔法があったら!!!」
黒髪の少女「暁美ほむら」は走りながら、知らず知らずの内に指の爪を噛んでいた
― 時間を操る魔法 ―
「かつての世界」で、彼女を救ってくれた「たった一人の友人」を絶望の運命から救う為に、インキュベーターと契約して得た魔法だ
彼女はこの力で運命に立ち向かった
何度失敗して
何度悲しみを知り
何度裏切られても
彼女は「絶望」することはなかった
それは残酷な事だが、目の前で見知った人物が死んでも彼女は「魔法でまたやり直せばいい」と考える、いや逃げ道があったからに他ならない
故に彼女は何度も繰り返した
擦り切れたレコードが同じ歌詞を繰り返すかのごとく・・・・
彼女が冷酷なら、親友が「魔法少女」になる要因である「美樹さやか」、「巴マミ」をこの能力で密かに暗殺してしまうこともできただろう
彼女がもっと穏便な方法だったら、まどかとその家族を引き連れて見滝原から脱出することもできただろう
しかし、彼女はそのどれも選ばなかった
鉄面皮のまま口では「まどか」さえ守れればいい、と言っていても彼女の本質は「希望」を奏でる魔法少女なのだから
だからこそ、あの絶望の権化である「ワルプルギスの夜」に真正面から闘いを挑む様な事をしたのだ
見逃せば多くの犠牲者が出る「ワルプルギスの夜」という「敵」を見逃して、自分たちだけが「安息」を得ることは「かつての世界」で魔女に襲われた彼女を助けた「まどか」の望みではない
ほむらは喫茶店で三人と別れた
彼女達はほむら同様、かなりの手練れ
三人で行動することも一瞬考えたが、それは相手の術中に嵌ると同義だ
得体の知れない敵は、織莉子曰く「人間の複製」を使ってミチルのみならず、ほむらや織莉子、そしてミチルを騙し、彼女の仲間達を襲った
最大限の隠ぺい工作のお蔭で、三人の秘密 ― 「かつての世界」の記憶を持つ転生者であること ― を隠してきた
これだけは隠し続けなければならない
恐らく、普通の魔法少女が聞いてもそれは「夢物語」としか思わないだろう
あのインキュベーターも事実であるとは認識できてはいない
だが、その前提も怪しくなってくる
なぜなら、私達をハメた「人間の複製」を作れる魔法少女は、「かつての世界」でミチルと行動を共にしていた「神那ニコ」という魔法少女のみであるというのだ
「転生者」が「かつての世界」と同じ魔法を得る可能性はある
また、ミチルさんや織莉子のように魔法少女となった瞬間に記憶を「思い出す」こともありうる
とはいえ、このパターンは異常だ
ミチルの仲間がかつてのように魔法を使い、そしてかつての仲間達を拉致した
同時にミチルの協力者も葬る為に
かつての世界ではほむらも織莉子もミチルほどの幅広い交友関係はなかった
しかし、この世界ではほむらも、ましてや織莉子もたった一人ではない
この世界には守るべき「仲間」や「家族」がいるのだ
だから、散開してそれぞれ撤退することにした
相手の追跡を巻くためだ
ミチルは養親である「立花宗一郎」に事の詳細を伝えてから、見滝原の「マギカ・カルテット」に合流する手はずになっている
無論、織莉子もキリカと一緒に彼女達と合流する
「敵」が織莉子のような魔法を使っているのなら面倒だが、それでもお互いに情報を共有し抵抗できるのなら多少は勝機がある
ほむらは焦っていた
自分が今の「安息」に満足していたことに
だからこそ取り戻さなければならない
「まどか」を救うために研鑽を重ねた、「戦闘者」としての自分を
彼女は自らのスカートの中に忍ばせたホルスターに触れる
丈夫なゴアテックス製のホルスターに包まれた、銀のリボルバーは彼女を安心させた
あすなろ市
アンゼリカ・ベアーズ地下
金色の髪の少女が傷つけないように細心の注意を払いながら、一人の少女を柔らかなクッションの上に横たえる
身じろぎしない少女は見ようによっては死体とも、人形とも思えた
「その子が千歳ゆまね」
蒼色の髪の少女が覗き込む
「ええ。ところで制御装置は問題ない?」
「大丈夫!と言いたいところだけれど、こればっかりは例の人物を組み込んでからじゃないと判断がつかないよ」
「穢れを浄化したら迎えに行くわ。華はいつでも起動できるように準備しておいて」
金色の髪の少女「宇佐美真琴」からの指示
しかし、蒼色の髪の少女「秦愛華」の表情は優れない
「真琴・・・信じないわけじゃないけれど・・・・」
「どうしたのかしら?」
愛華が意を決して、言葉を紡ぐ
「・・・・・・・本当に居るのか?ソウルジェムを浄化できる魔法少女なんて」
ソウルジェムの穢れを浄化するにはグリーフシードしかない
それは常識だ
真琴はそれを覆した
「ソウルジェムの穢れを魔力に相転移させる」魔法の存在
本当ならそれは「因果」への叛逆に他ならない
彼女をこの楽園システムに組み込めば、ほぼ永久的にあすなろ市を隔絶させられる
そればかりか、他の市にも広げることが可能だ
「間違いないわ。だって・・・・・」
真琴が愛華に微笑む
「私の大切な人だもの」
彼女の瞳には何の曇りもなかった
クラウズも話が動いてきているし、個人的にはかなり注目作