鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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有線で「K-Poop」が無理矢理流されてうざい・・・・


二人っきりのイブ

 

ザザァ・・・・・ザァ・・・・

 

 

「・・・・・んっ・・・・」

 

潮の匂い

鼻腔を刺激するその香りと共にシルバーブロンドの少女の意識は静かに覚醒する

 

「ここは・・・・?」

 

身を起こした少女が周りを見る

ゴミ一つない白い砂浜

人が入り込んだことのない、パステルブルーの海

そして、風に吹かれて葉を揺らす、今時なかなかお目にかかれない大きなヤシの木

あまりにも現実感のない光景

それは逆に少女を冷静にさせた

 

「そうだ・・・・アタシはアイツの監視をしていて・・・」

 

少女が記憶の糸を辿る

そう

そうだ

あの時に!

 

 

ユウリとミチルが用意したアプリを入れたスマホ経由で念話をしたあとだ

 

シャァァァァァァ!!!!

 

何の前触れもなしに、里見が二階にある自分の部屋の窓を開けた

そして、一般人では決して認識できないはずの「彼女」を見た

それは決して、たまたま視線がその方向にいったといったものではない

明らかに彼女を「見ていた」

 

~ 何で認識を阻害させているアタシの方を見てるんだ? ~

 

思えばこの時、異常に気がつけば・・・・・

疑問はすぐに解決した

 

ダァァァァァァァァン!!!!!!!

 

耳をつんざくような轟音

 

「・・・・・・?」

 

身体に弾丸が突き刺さるような痛みはなかった

私が周りを見渡した時だ

突如、丸い球体が浮かび上がる

 

「何ィィィ?!」

 

私は回避行動をとることもできず、球体からの光に包まれた

 

 

そして・・・・・

この浜辺にいる

 

「ここは天国なのか?」

 

まるで天国のようなビーチ

思えば、「かつての世界」で私は限界値以上の穢れを溜めて、魔女になることで一度「死んでいる」

死の瞬間の苦しみや痛みは今でも思い出せる

でも「死」の先にはいわゆる「天国」も「地獄」もなかった

あったのは・・・・・

この「世界」だった

 

~ 此処にユウリが居てくれれば・・・・ ~

 

私がパステルブルーの海を見ながらそう思っていた時だ

 

― 誰・・・・か・・・・いま・・・・ ―

 

微かに人の声が聞こえてきた

 

「お~~い!!!!!!!此処だ!此処にいるぞ!!!!!!」

 

少女「杏里あいり」はありったけの声を絞り出し叫ぶ

頭の片隅で、ここへ彼女を誘い込んだ「敵」を呼び込む可能性を考える

しかし、それよりも今の状況を確認する必要がある

敵の正体、目的は何にも勝るのだ

 

ガサッ!

 

「誰か・・・・あいり!!!!!!」

 

茂みを掻き分け、何者かが白銀の少女「杏里あいり」を背後を抱きしめた

咄嗟に逃げようとするが、この拘束を抜け出すことは叶わなかった

魔法少女に変身することも考えるが、背後で彼女を抱きしめているのが敵ならば、当然対処法も心得ている可能性がある

むやみにカードを切るのは愚か者だ

狡猾に動かなければならない

せめて、抱きしめているのが誰なのか?それだけでも確認しようとあいりが振り向いた時だ

 

金色の風が吹いた

 

踝まである金色のツインテール

切れ長の瞳

忘れるはずがない

忘れてはならない

その少女は・・・

その少女の名は!

 

「ユウリィィィィィィィィィ!!!!!!!」

 

あいりが振り向き、小柄な少女を抱きしめた

不治の病に侵された彼女「杏里あいり」に、魔法少女の「契約の対価」で彼女に魂を分け与えてくれた無比の親友である「飛鳥ユウリ」に他ならなかったのだから

 

 

ザザァ・・・・・ザァ・・・・

 

 

「じゃあ、ユウリも急に現れたあの光の玉に吸い込まれたのか?」

 

「うん。気が付いたら森の中に倒れていて・・・・」

 

見れば見るほど

その声を聞けば聞く程

目の前の少女は「飛鳥ユウリ」に他ならなかった

だが・・・・・

 

「ユウリ・・・・アタシがおねしょをしていたのは何歳までだった?」

 

ユウリの表情が驚きに染まる

 

「そんな・・・急に・・・」

 

「いいから答えてくれ!」

 

私を拉致した「敵」が人と全く変わらない複製品 ― シュミクラ ― を作れるなら、目の前のユウリも「ニセモノ」の可能性がある

 

「確か小学三年まで・・・だよね」

 

「・・・・正解」

 

やや恥ずかしいが、これでユウリが本物だと確認できた

仕草や容姿ならいくらでも似せることができるが、人にあまり話したがらない事柄ならば必ずぼろが出るはずだ

これで目の前のユウリが本物だと信じることができた

 

「あいり、理由を教えて?」

 

「ああ・・・」

 

 

「ひどっ!あいりは私をニセモノだと思っていたっての!!!!!」

 

「ゴメン」

 

白銀の髪の少女「杏里あいり」が頭を下げる

 

「あの里見はニセモノだった。だからつい疑ってしまった・・・・」

 

「じゃあ、あいりもニセモノかもしれないんだ・・・・・」

 

ユウリが疑わしげにあいりを見る

 

「私がおねしょしていたのは?」

 

「・・・・・小学三年」

 

「正解!本物のあいりだよ!!!」

 

再び、ユウリがあいりを抱きしめる

その時だった

 

ビィィィィィィィィィィィィ!!!!!!

 

唐突なサイレンが二人の睦事を邪魔する

 

「なんだ?」

 

あいりが当たりを警戒する

その手には愛用の銃である、「トーラス・ジャッジ」が握られていた

 

「行ってみようよあいり!」

 

二人は砂浜から立ち上がると、サイレンのした森の所へと向かった

 

 

「此処って・・・・・」

 

「ホテル・・・だよな?」

 

森の奥

そこには小振りなリゾートホテルが鎮座していた

看板には「ホテル・カリファルニア」と表記されていた

 

 

 

 

 

 




「ホテル・カルフォルニア」は名曲
和訳すると、結構歌詞は意味深ですが

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