期待できるな
「キャッ!」
「ごめんなさい!!!」
艶やかな黒髪を振り乱しながら、一人の少女が街を走る
「転生者」美国織莉子から伝えられた情報
― 魔法少女の連続失踪事件 ―
あすなろ市を中心に各地で起きている魔法少女達の連続失踪
被害者の年齢も、そして経験もバラバラ
共通するのは、失踪前皆一様に「楽園に行く」と家族や友達に告げていること
見滝原では主に私の所属している「マギカ・カルテット」には、その手の事件の報告はなかった
だが、いずれはそれが起きる可能性がある
そして・・・・懸念していた事態が起きた
「破戒」の魔法少女「和紗ミチル」
彼女は「かつての世界」 ― まどかの居た世界 ― の記憶を持つ私と同じ「転生者」だ
そしてミチルは私のように、「かつての仲間達」を魔法少女となる絶望の未来から救うために暗躍していた
今日彼女から連絡があったのだ
― 仲間達が失踪している ―
織莉子を許せない自分もいる
当然だ
彼女は「救世」の為にまどかを殺した
しかし、その情報は確かだ
ならば・・・
黒髪の少女「暁美ほむら」は走りながらも、手にしたスマートフォンを操作する
ウェヒヒ・・・ウェヒヒ・・・
懐かしいまどかの笑い声をサンプリングした呼び出し音が鳴る
「・・・・美国織莉子」
「暁美ほむらさん?どうしたのかしら」
鈴を鳴らすような織莉子の声
私は心を静めて声を出す
「・・・・貴方の助けを借りたい」
彼女の「したこと」は今でも許せない
だが・・・・・今は彼女以外に頼れるものはいなかった
「わかったわ。暁美ほむら」
~ ユウリ聞こえるか? ~
~ 師匠感度良好です!!すごいですね!この中継システム! ~
汎用型スマートフォンを使った「念話」の中継システム
これは「かつての世界」で、ミチルとともに戦った「少女」が構築したシステムを参考にミチルが再現したものだ
無論、彼女が作っていたものより感度はよくなく、したがって通話可能距離は限られてくるが、電話を掛けるように複数の魔法少女達との念話を切り替えることが可能であり、作戦を遂行するにはもってこいだった
~ 里見の様子はどう? ~
~ 本屋で・・・その・・・ ~
~ ? ~
~ あの~オトコノコがですね・・・オンナノコの恰好をしてオトコ同士でナニをする本を立読みしています・・・・・ ~
~ ・・・・・監視を続けて ~
~ はい・・・ ~
数日前、「かつての世界」ではともに戦う魔法少女であり、「救済」されたこの世界では同じ劇団に所属する劇団員であった少女達が立て続けに謎の失踪を遂げている
彼女達が魔法少女にならないよう様々な活動をして、その契約を防いでいた
ではなぜ、彼女達を拉致するのか?
その行動には理由が全く見えてこない
なぜ、魔法少女にもなっていない彼女達を狙うのか?
・・・・・前例はある
彼女「和紗ミチル」は以前、一人の少女に命を狙われた
― 杏里あいり ―
彼女もミチルと同じく、「かつての世界」での記憶を持つ転生者だった
あいりはユウリが「プレイアデス聖団」に倒される結末を否定し、彼女を助ける為に、プレイアデス聖団を結成される前に、その中心人物であるミチルの命を狙った
幸い、ユウリの取り成しであいりは復讐を諦めた
しかし、過去の記憶を持つ魔法少女はあいりだけではない
彼女が研修に行っていた見滝原には「暁美ほむら」という、転生者がいた
ほむらの話によると、もう一人転生者がいるようだ
身近にこれだけ「転生者」がいるのだ
何が起こってもおかしくない
~ あいり、みらいの様子は? ~
~ ん~~~~?あいり様が抜けてるな~~~~~? ~
~ あいり様、みらいの様子に変わったところはございませんか? ~
小馬鹿にしたような口調でミチルがあいりを呼ぶ
~ チッ・・・。あの眼鏡チビ僕っ娘なら、部屋でクマのぬいぐるみをしこしこ作ってるよ ~
~ そうか・・・・ありがとう ~
あいりの態度は最悪だったが、ミチルは素直に礼を述べた
~ 勘違いすんなよ!アタシはユウリに頼まれたから・・・・ ~
~ それでも手伝ってくれていることには変わらない。感謝する。 ~
~ それよりも、お前が応援を頼んだ見滝原の魔法少女は信頼できるのかよ? ~
~ 大丈夫だ、問題ない ~
~ わぁったよ!何かあったら連絡すっから!あと、報酬の二人分の期間限定キャラメルバケツパフェMAX盛りを忘れんなよ! ~
~ わかっているさ ~
ミチルは静かに通信を切った
ユウリとアイリ
この二人はそれなりに実力を積んだ魔法少女だ
彼女達の力なら問題なく、未知の敵の手から二人を守れるだろう
それにこれから、「暁美ほむら」が合流する
彼女が連れてくるといっている「美国織莉子」という魔法少女のことは気になるが、ほむらの話によると彼女も「転生者」らしい
「転生者」なら「かつての世界」を知っている
ならば、ほかの誰よりも信頼できる
あの絶望に彩られた世界に戻りたい人間はいないのだから
これなら・・・・・
「空の彼方で見ていて!もうひとりの私!私は愛する皆をきっと守り切って見せるから!!!!」
ミチルは夏の雲に決意の言葉は呟く
その言葉は希望に彩られ、夏雲の中に消えて行った
ああ~ギャグが書きたい